遊戯王*ASTERISKs*(アスタリスクス)   作:kohatuka

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◆前回までのあらすじ◆

三幻魔ズ「ステンバーイ……ステンバーイ……」
ヒヨリ「みんな死ぬ気でデュエルするようになぁ~れ♪」
オリカ勢「変な光で……ボスキャラ達に、笑顔を……」
ユウ「アカン(バタッ」


第58話 潜入、魔光の麓へ

「……あれが、三幻魔……」

 

 遠方に立ち上る三色の闇色を見上げ、ベルがそう言葉を漏らしたのは――ユウ達がその毒牙に掛かってからしばらく経ってからのことだった。

 ユウ達が遺跡跡に足を踏み入れた頃に青み掛かっていた人工の陽光も、今は地上であれば「高く上り掛けている」と表現できる程まで明るくなっている。

 勿論、ベル達はそんなことなど知る由も無かったが――それだけの時間を掛け、決闘者からエナジーを貪り『本物』となった異世界の悪夢達は、今一度見せ付けるように声を上げた。

 

「――――――!!」

 

 ビリビリと地鳴りのような咆哮が空気を伝わり、ベルの髪と肌を振るわせる。

 隣で顔をしかめていたアンリエールも静かに毒づいた。

 

「何ともまぁ、下賎な……」

 

 生物の本能が、アレから離れるようにと警鐘を鳴らす。

 しかしそんな身体の意思とは反対に、このまま野放しにしておけばどうなるかと、人としての理性がベル達をこの場に留まらせていた。

 逃げ出すべきか、真実の片鱗を知る者として立ち向かうべきか――振り子のように揺れるベルの心は、やがて1つに傾いた。

 

(……ううん、迷う必要なんかない。あれをどこかでユウさんが見ていたら、ユウさんがいたら、きっと――)

 

 

 「オイオイオイ何やってんだガキンチョ共!! その泥臭いオテテを今すぐマイハニーから離しな!!」

 

 

 何やら騒がしいとベルが振り返ってみると、燐路と煽里の二人に向かって肌の黒い長身の男が猛烈な勢いで詰め寄っているところだった。

 姉弟の傍には綺麗に磨かれた赤い車体のD・ホイールと、燐路の片手には怪しげに折り曲げられた針金があった。買い物帰りで荷物を抱えたままの男性を見るに、そのD・ホイールが燐路の手によって望まぬまま走り出そうとしていたのは誰の目にも明白だった。

 

「盗んだDホイで走り出す~、ってか? よ~く聞けガキンチョ共、もし傷の1つでも付けてみろ? ガキの頃ママに無理矢理教え込まれたユートピア・カラテとパパ譲りのマシンガン・トークでケツの穴を1ダースに増やしてやるからな! 俺様チャンは女子供だろーが容赦はしないぜ? 分かったら大人しく……」

 

 抱えていた荷物を道端に放り出し、男はやけに激しい身振り手振りで唾を飛ばす。

 と、捲し立てる男の眼前に、煽里の手によってキラリと光る鋭い何かが突きつけられた。

 

「…………」

 

 煽里の右手に握られたそれは、まるでナイフのように先端を尖らせた硝子片だった。

 

「あまり時間が無いのです。ここはどうかお引き取りを」

 

 煽里の細目が男の心臓を射抜く。

 既に幾人もの命を手に掛けたその眼光は、それ以上何も語らずとも男の両手を上げさせるには十分だった。

 

「OK、分かった。ここは穏便にいこう。大人は子供に何でも譲るもんだ、そうだろ?」

 

 まるで熊か何かと遭遇したかのように、男は引き吊った笑みを浮かべてゆっくりと後退していく。お互いに十分距離が離れたところで、ようやく煽里が殺気と右腕を引き下げた。

 

「……感謝します。この子はいずれお返しします」

「いーのいーの、どこへご旅行?」

「あの、光の柱の麓へ」

「ワオ! そいつはブッ飛んでるな! どうぞごゆっくり」

 

 そんなやりとりをしている間に、赤いD・ホイールの出発準備が整ってしまった。

 何てこった、何て日だと額を押さえながら絶望的な表情を浮かべる男を尻目に、姉弟は素早くシートに跨がる。

 

「おい、お前らちょっと待て!」

 

 いざアクセルを吹かし……という刹那。姉弟の進路に立ち塞がったのはクラドだった。

 煽里の後ろに跨がる燐路が、背中から顔を覗かせる。

 

「どいてくれよ。頼むからさ」

「そいつは無理だな。お前らの答えによっちゃあ、だが」

「…………」

 

 少し間をあけて、姉弟が話を聞く姿勢かどうかを確認してから、クラドは真っ直ぐに二人を見据えて言った。

 

「……一応聞くが。どこに何しに行くつもりだ」

「決まってんだろ、あの化け物共をぶっ倒しに行く」

 

 間髪入れずにそう答えた燐路に、クラドは無言でその瞳を見据えた。

 周囲の人間も固唾を飲むこと数秒。クラドは深く溜め息をつくと、内ポケットから何かを取り出すと燐路に放って投げた。

 

「そういうことなら、忘れ物だぜ?」

 

 クラドの突然の行動に一瞬身構えた姉弟だったが、ソレが何かを理解した瞬間、丸く目を見開いて驚いた。

 

「お前、これ……何で」

 

 燐路が受け取ったのは、しっかりとデッキが差し込まれた見覚えのあるDパッド。

 続けざまに投げられたデッキケースらしきものは、今度は煽里に向けられた。中身は、見なくとも分かる。

 

「売買屋殿、これは……」

「デュエルモンスターズの化け物を退治しようってのに、丸腰じゃ格好つかねぇだろ?」

 

 ニッと不敵に笑みを浮かべるクラドに、燐路が声を荒げる。

 

「そういうことじゃねぇ! これを渡すってことはどういうことか……お前が一番良く分かってんだろうが」

 

 そう。文字通りカードの力を凶器に変えることが出来る彼らに、矛と盾を渡せばどうなるか。言うが早いか、燐路は手馴れた様子で素早くディスクを操作するとクラドにその切っ先を向けた。

 あっと誰からとも無く声が上がる。2人を取り巻くベル達の間に、一気に緊張が走った。

 

「……この場でぶっ飛ばされても、文句は無ぇってことだぞ?」

 

 紅い鎖は、まだクラドの腕に絡み付いてはいなかったが――それ以上少しでも燐路が動きを見せれば、誰かが『呪文』を口に出すだろう。

 そんな緊迫が流れる中、クラドは少しも表情を崩すことなく答えて見せた。

 

「ああ。そんときは俺の見込み違いだったと思って諦めるよ」

 

 一瞬の、いや……数分続いたように思える空白を挟んでから、燐路はおもむろにディスクを下げ、言った。

 

「……礼なんか言わねぇからな」

「ああ、俺はそんなもん要らねぇよ。けどよ――あの人達には、頭一つくらい下げておけよ?」

 

 クラドが立てた親指で示した先にあった光景は、丁度ガタガタと音を立て白いボックスカーが乱暴に路肩へと乗り付けたところだった。

 

「皆、あそこへ行くんでしょ!? 早く乗って!!」

 

 ひょこっと窓から顔を覗かせたのは、アユカワ博士だった。

 ふと後部座席と助手席に目をやれば、2人の男達が青い顔で目を回している。

 

「だ、だから僕が運転するっていったのに……!」

「痺れるドライブになりそうだぜ……」

 

 ベコベコに凹んだ車体を見れば、彼女がどんな運転をしてきたか想像に難しくない。

 クラドは気まずそうに後ろ髪を掻いてから、燐路達へと尋ねた。

 

「……あー、一応言わせてくれ。まだそのDホイを盗まなきゃいけない理由はあるか?」

 

 諭すようなクラドの声に、燐路は少し俯いたあと。

 

「……事故って間に合わなかったら、お前をボコすからな」

「おう、覚悟はしとくよ」

 

 軽くクラドの腹を小突いて、燐路はズンズンと車の方へと向かっていった。

 煽里もクラドと男へ静かに頭を下げると、燐路の後を追って車に乗り込でいく。

 とりあえずは鎮火した姉弟の暴走にふぅと息をつき、クラドも車へと向かおうとすると……いつの間にか駆け寄ってきたベル達に囲まれてしまった。

 

「全く、ヒヤヒヤしましたわ」

「そうよ、彼らがもしまだ『あちら側』に付く気でいたらどうなってたか……」

「……悪ぃ。相談とかする暇も無くてさ」

 

 心底心配した様子の藍と、ジトリとしたアンリエールの視線がクラドに向けられる。

 一歩遅れて何かを言い出そうとしたベルも、言葉を飲み込んでただ不安そうな表情を浮かべている。

 

「……まぁ、あんまり良い選択じゃねぇってのは分かってるんだが。ここは俺とアイツらを信じてやってくれないか? あの目は多分、本気だ。嘘はついてない」

「クラド君、そんなこと何を根拠に――!」

「そんなのは無ぇよ。だけどさ」

 

 3人の目を見回しながら、クラドは続けた。

 

「短い間だけどさ。アイツを頭に乗っけて一緒にデュエルした俺には分かるんだよ、何となくな。だからせめて三幻魔の件だけは……アイツらにも戦わせてやって欲しい。親の敵だって言うんだ、俺たちが邪魔するモンでもないだろ?」 

 

 クラドの話には、何の根拠も無かった。だが……そう諭すように語る彼の目には、3人を納得させるのに十分な『何か』があって。

 アンリエールの長い溜め息を皮切りに、3人の表情からふっと緊張が解けた。

 

「……ま、いいでしょう。例えあのお猿さん達に掌を返されたとしても、敵でいてくれた方がむしろ好都合ですわ。胸を弄られた御礼をたっぷりと返して差し上げるまでです」

「あはは、そうですね。わたしとしては、クラドさんの言うことを信じたいですけど……」

 

 前向きな2人の決定に続き、藍が言葉を続ける。

 

「……私はまだ、あの2人を完全に信用できてはいないけれど。皆がその調子ならあまり心配する必要も無いみたいね」

 

 柔和な微笑みを浮かべる藍に、クラドもニカッと微笑み返して。

 どこかモヤモヤしていたわだかまりが消えたと同時に、少し遠くから声が投げかけられた。

 

「オイ、何チンタラやってんだ! 早くこっち乗れよ雑魚キャラ共が!!」

 

 車の窓から身を乗り出し、我が物顔で罵声を上げたのは渦中の人物……燐路だった。

 

「ったく、人の気も知らねぇで……!」

 

 そう毒づきズカズカと車へ向かうクラドに、3人は苦笑しながらも後に続いたのだった。

 

 

    **

 

 

 通行止めを行っていたセキュリティを無理矢理に突破し、目的地へと辿り着いた白のボックスカーは無残な形に歪んでいた。

 当然、中の搭乗者も車のアクロバティックな動きに振り回されることになり、ミキサーのように滅茶苦茶に掻き回されたベル達は辛うじて開いた横開きのドアからデロンと這い出してきた。

 

「だ、だから僕が運転するって言ったんだ……」

「痺れるくらいに目が回ってるぜ……うぇ」

「ま、まだ頭がクラクラしますわ……見た目程、慎ましいお方ではありませんのね……」

「アンリちゃん、何か言った?」

「いえ、別に……」

 

 台風の目であった当の本人だけはピンピンしていたが、他のメンバーはどう贔屓目で見てもLP100を切ったような状態だ。

 

「……それにしても」

 

 額を押さえながらゆっくりと立ち上がった藍が訝しげに周囲を見渡す。

 

「……どういうこと? セキュリティは何をしているの?」

 

 異変を受けて駆けつけたのだろう。セキュリティのD・ホイールが何台も見受けられるものの、肝心の隊員の姿が何処にも見当たらない。

 デュエルで交戦しているような騒がしさも無く、光の柱から放たれる異様なプレッシャーだけが更に濃度を上げていくばかりだ。

 藍の疑問に答えたのは、燐路の淡白な声だった。

 

「やられたんだろ。考えるまでもねぇ」

「そんな……」

 

 現場に向かうセキュリティ隊員ともなれば実力は折り紙つきの筈。

 そんな彼らを一蹴するほどの手練が、この先に待ち構えているというのか。

 

「ここまで来たなら、女だろうと覚悟を決めろよな。俺らの足を引っ張るんじゃねーぞ」

 

 ベル達の間に渦巻く不安を蹴飛ばすように、姉弟は遺跡へと歩を進めていく。

 

「……アユカワ博士、タツヤさん、編集長。ここまで同行して頂きありがとうございます。ここから先は――」

 

 藍がそう言いかけたところで、アユカワ博士はそっと唇に人差し指を寄せた。

 

「何言ってるの、ここからが『気になる』んじゃない! 私達だけ除け者なんてあんまりだよ?」

「そうそう。歳を取ると痺れる経験も中々無くなってくるからね! 足を引っ張るつもりはないから、最後まで手伝わせてくれよ!」

「ははは……まぁそんな訳さ。大丈夫、これでもその辺の決闘者よりお役に立てる筈だよ!」

 

 そう言う3人の腕には、しっかりとデッキがセットされたディスクが光っていた。

 彼らの温かさに、ベル達も少し頬を緩めて。

 

「……分かりました。では、ご好意に甘えさせて頂きます。ですが危険と判断したら、すぐに引き上げて下さい」

「「「了解っ!」」」

 

 心強い味方を得て、一同も姉弟の後に続いた。

 

 

    **

 

 

「……どう見ても。あれは研究員の皆さん、って感じじゃないですよね……」

「うん、あの中に知ってる顔が1人もいないもん。絶対ヘンだよ」

 

 物陰に隠れながら様子を伺っていた一同だったが、アユカワ博士のそんな一言で疑念は確信へと変わった。

 遺跡の敷地内を見回るように徘徊している白衣の男達は皆、左腕にディスクを下げて『遺跡の外を』警戒しているからだ。遺跡の内側から吹き出ている光の柱を警戒する訳ではなく、だ。詰まるところ、答えは1つ。

 

「俺らも知ってる顔がいねぇ。てことは……中身はあのフルフェイス共と同じ奴らか」

 

 燐路がギリッと奥歯を軋ませる。

 自分たちを餌として『狩る』為に秘密裏に動いていた人間など、同じ組織であろうとも私情を挟む理由は皆無だ。

 

「これだけ『目』があるとなれば、コッソリ進入という訳にもいかなそうですわね」

「危険だけど、誰かが注意を引いているうちに入り口を見つけて中へ入るしかなさそうね……」

「待って藍さん、とりあえず遺跡の中に入る入り口なら分かるよ。見取り図を皆のDパッドに送るね」

 

 アユカワ博士がディスクを操作すると、それぞれのDパッドに画像が送信されてきた。

 ココへ来るまでにメモしていたのだろうか。遺跡の見取り図には現在地と入り口への進入経路が何通りか、ピンクの線で走り書きされていた。

 

「ナイスだぜ学者先生! やるじゃねーか!」

「へへん、ちょっとは尊敬した?」

「アユカワ博士、こんなものをどこから……?」

「研究者同士でまぁ、色々とね。バレるとちょっと問題なんだけど、今は緊急事態だし」

 

 燐路の軽口にも、藍の鋭い疑問にも持ち前のノリの良さで答えつつ、アユカワ博士は続けた。

 

「えっと、三幻魔のカードが何処にあるかまでは分からないけど……内部の大まかな造りもそれで確認できるよ。最下層に大きな空洞があるみたいなんだけど、中はそれほど入り組んだ作りじゃないから迷うことは無いと思う」

「成程……流石は博士、教養がおありで」

「中に連中が待ち伏せていそうなスペースもねぇな……となれば、ここさえ突破できればジジイ共に一発お見舞い出来るって訳か」

 

 そうなればと、一同は互いの顔を見渡した。

 

「誰が引き付け役になるか、だな……」

 

 言うまでも無く危険な役回りだ。出来れば1人ではなく、複数人が望ましい。

 それも、いざとなればセキュリティ隊員を一蹴する程の猛者を相手に立ち回れる、実力者が。

 

「……仕方がありませんわね」

 

 はぁ、と溜め息をついて、アンリエールが一歩前に踏み出す。

 

「ここはこの幽霊姫にお任せなさい。どの道、あんな生臭い遺跡の中に入るのはコリゴリでしたし、丁度良い役回りですわ」

 

 髪を軽くかき上げながら、アンリエールは不敵に微笑んで見せた。

 

「私も一緒に戦うわ。人の注目を集める『ちょっとしたリハビリ』にもなるし、ね」

 

 そう言って、藍もアンリエールの後に続く。

 意味深な彼女の発言に、ハラダ編集長が喰らい付いた。

 

「おや、何やら痺れるワードが聞こえたけど?」

「その辺の追求はここを乗り切ってからでいいですか、編集長? 終わり次第『真っ先に』ご報告させて頂きますから」

「そういうことなら了解したよ。いやぁ、ますますここでヘマする訳にはいかなくなったね!」

 

 ニンマリと笑顔を浮かべるハラダに、事情が見えない他の一同は首を傾げるばかりだったが、とにかく最適な立候補者が上がったことで、引き付け役2人の逃走ルートも含め作戦ルートが立てられていく。

 

「それじゃ、ルートはこっちでいこう。2人共ヤバイと思ったら無理せずこの場を離れてくれ。そのときの為にコレを渡しとく」

 

 そう言ってクラドが手渡したのは、何やら無骨な鉄の筒だった。

 

「? 何ですの、コレは」

「ディスク装着型、お手製照明弾だ。コイツをあらかじめディスクにつけておけば、エラー信号がトリガーになって弾が発射される。モンスターカードを魔法・罠ゾーンに差し込んだりすれば一発で起動する筈だ。と言っても一時的な目晦ましにしかならないけどな、連中の数が多くなってきたら使ってくれ」

「また、いつの間にそんなものを……」

「いつも戦力にならないからな、コレくらいは役に立つぜ?」

 

 ニカッと親指を立てて笑うクラドに、苦笑を返す藍とアンリエール。

 彼の機転に甘えることにして、早速2人は照明弾をディスクへと装着した。

 

「それじゃ、行って来ますわ」

「十分に引き付けたら『合図』を送るから、あとはルート通りに」

「2人共、気をつけて下さいね」

 

 ベルの不安そうな声に頷いて、2人は物陰から物陰へと移りながら、一同が隠れている所から丁度反対側にあたる場所へと移動していった。そして、そろそろ向こう側へ着いたかという頃。

 

 カーン!! という一際甲高い金属音が、遺跡中に鳴り響いた。

 

 恐らく仮設のテントに使われていた鉄パイプか何かを思いっきり叩いたのだろう。ベル達の近くをうろついていた白衣の男達も、一斉に音の方向へと向かって行く。

 わらわらと集まってくる白衣の男達に向かって、今度は別の方向から突然、セキュリティのD・ホイールが飛び出してきた。騎乗していたのは、ヘルメットこそ被っていたもののどこか見覚えのある長い黒髪の女性――藍だった。

 D・ホイールは引き寄せた白衣の男達を翻弄するかのように2~3周円を描いて走行すると、十分注意を引き付けたとばかりにあらぬ方向へと走り出していく。

 その、次の瞬間だった。青緑のパトライトが独特の音を鳴らして点灯を始めたのは。

 

「今だ、行くぞ!」

 

 藍の発した『合図』をキッカケに、ベル達は一斉に物陰から飛び出した。

 しかし、合図を受けて飛び出したのはベル達だけではなかった。

 

「さぁさぁ、どこをご覧になっていますの!? ショーの主役はこの幽霊姫ですわよ!!」

 

 あらかじめディスクで半実体化させていたゴーストリック達を従えて、()()()()()パレードを始めたのだ。

 そう。入り口は何も1つだけではない。

 藍もアンリエールも、それぞれが『囮』であり入り口を目指す『本命』であり――しかしてその実体は、どちらもベル達を別の入り口へと導く為の引き付け役。

 結果、ドタバタと二分された敵の注意は見事、ベル達から逸れた。

 

「上手くいったぜ、これなら――っ!?」

 

 そう燐路が喜んだのも束の間。

 彼らが目指した入り口には、まだ数人白衣の男達が残っていたのだ。

 

「クソが!! 律儀にジジイ共の言いつけ守ってやがったか!?」

 

 舌を鳴らして反射的にディスクを起動させようとした燐路の手を、ふわりと柔らかな細腕が遮った。

 

「ダメだよ、キミ達はパパとママ達の仇をとらなきゃいけないんでしょ!」

 

 瞬時に伸ばされた紅い鎖を受け止めたのは、一回り、二回り大きな3人の影。

 

「任せて、この人数なら私達だけでも戦えるから!」

「キミ達は今の内に中へ! 早く!」

「そんな! でも……!!」

「悪ぃ、恩に着るぜ学者先生!!」

 

 アユカワ博士、ハラダ編集長、タツヤ助手の3人のディスクが強制起動する。

 燐路と煽里は彼らの意思を汲み取り、するりと白衣たちの間を抜けていく。その一方で未だ困惑した様子のベルに、アユカワ博士はぽんと頭に手を置いて言った。

 

「大丈夫、こういうのは大人の仕事! ベルちゃんは先に行って燐路君達を助けてあげて! あの子達に選ばれたベルちゃんならきっと出来るって、私達は信じているよ!」

「博士……」

 

 彼らとのデュエルで受ける痛みを知っているベルは、どんな言葉を貰っても博士たちを置いていくことを許容できなかった。

 しかし、そんな彼らの意思を無駄にしない為にも。いつまでも立ち止まっているわけには、いかない。

 

「……分かりました。どうか無事でいてくださいね」

「うんっ!」

 

 博士の笑顔を受けて、ベルとクラドも走り出す。

 そんな彼らの背後で聞こえたのは、頼れる大人達の勇ましい声だった。

 

「へへっ、久々のデュエルだ! 痺れさせてくれよ!」

「頼んだよ、僕のデッキ! 精一杯頑張ろう!」

「よしっ、気合十分! 2人ともいくよ!?」

 

 

「「「決闘(デュエル)っ!!」」」

 

 

【アユ&フトシ&タツヤ】LP4000

       VS

【ENEMYS】LP4000




明けましておめでとうございます。
更新出来なくてすいませんでした。やはり年末には魔が潜む……。
いや、私は遊戯王恒例の年末落下を防ぐためにあえて更新を停止していたのであって、決してモンスターを操る決闘者ではなく、狩人になっていたとかではないですよ。断じて。


獣竜種の車庫入れマジ糞だわ(半ギレ
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