遊戯王*ASTERISKs*(アスタリスクス) 作:kohatuka
足場「お前は最後に殺すと言ったな。あれは嘘だ」
ベル&ユウ&ヒヨリ「ウワァーッ!!」
劇場版『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』が大人気公開中!!
みんな は 観に行こう!!(まだ観に行けてない決闘者の屑)
煽里の宣言と共に放たれた
だが、そんな怒りの炎に満ちた姉弟の瞳に映ったのは。
「「クカカ……伏せカード発動、《ヒーロー見参》!!」」
悠然と立ち上がる、相手の伏せカードだった。
(やはり、一筋縄では――)
一瞬、煽里は《ミラーフォース》のような攻撃反応罠かと身を固くしたが……突きつけられたソレは『とあるダーク・ヒーロー』が描かれた、全く予想外のカードだった。
「「このカードは相手の攻撃宣言時に発動し、相手に自分の手札を1枚選択させる。それがモンスターだった場合、自分フィールドに特殊召喚できる。とはいえ、ワシ
「……成程、その手札が幻魔という訳ですか?」
「「カカカ、精進が足らぬのう煽里。幻魔がこのようなチャチなカードで操れれば苦労などせぬわ」」
「ならば……単なる上級モンスターを召喚し、壁にするつもりで?」
僅かに感じた焦燥を拭い、煽里は手札事故じみた相手の行動に嘆息をつきそうになった。
このターンもダメージを与えることが叶わなかったのは痛手であったが……相手のフィールドと手札を見る限り『時間の問題』であることは火を見るよりも明らかだ。
それに自分が手を下さずとも、頭に血が上った弟が強烈な一撃を見舞ってくれるだろう。
(いくら幻魔といえど、フィールドに現れなければどうということはない……)
煽里の糸目が僅かに嘲笑の色を滲ませる。
その思考が、油断が『有り得ないモノ』だと気付かないまま。
「「壁……のう?」」
「「お主らが《こやつ》を黙らせる事ができれば……それもまた
カードの効果によって強制的に選択された《1枚きりの手札》が、ゆっくりと異形の男のディスクへと滑り落ちていく。
「「さぁ我がフィールドに現れるが良い……破滅の導き手よ!!」」
漆黒色の膜がついた翼を広げ、心すら鷲掴みにされそうな『目』を向け。
男達の身体から滲み、未だ空間に満ちている闇の瘴気を糧として、ソレは現れた。
《ユベル》
☆10/闇属性/悪魔族・効果/ATK 0/DEF 0
「攻撃力、0……?」
デュエルモンスターズにおいて『攻撃力』は強さを測る物差しでないことは重々承知していながらも、煽里の口からついて出たのはその一言だった。
男性とも女性ともつかない身体つきに、赤紫と黒を基調としたカラーリング。翼を広げた姿もどこか宗教的な『悪魔』を想像させるソレは、取り返しのつかない『どこか』へ誘うようにクスクスと笑みを浮かべている。
本能的に危険を感じ取った煽里だったが、そんな彼女とは対照的に燐路はつまらなそうに鼻を鳴らした。
「……悪シュミなカードだぜ。そいつが『ヒーロー』ってガラかよ?」
「「クカカ、ワシらにとってはこの上ない『英雄』じゃよ」」
そう豪語した男達のフィールドで笑みを浮かべる悪魔は攻撃表示。
光属性でないこのカードが攻撃表示で存在する理由は、残された伏せカード3枚の中にサポートカードが含まれているか、あるいは。
「おい、姉貴。あんなザコさっさと蹴散らして――」
「ガルドニクスのバトルが巻き戻ったことで、私はバトルフェイズを終了。そのままターンエンドします」
「なっ!? バカ姉貴、何やってんだ!!」
「バカは貴方の方。カードの効果はよく確認しなさいと教わったでしょう」
「「……カカカ。少しは『教育』の成果があった、ということかの?」」
煽里の判断に、異形の男達はパチパチと手を叩きながら嗤った。
「そのカードは……戦闘破壊耐性を持ちながら相手へ反射ダメージを与え、更に効果で破壊されると何らかのモンスターを特殊召喚する。そうですね?」
「っ、そんな効果があったのかよ……!!」
忌々しげな燐路の視線を、攻撃力0の悪魔はニヤリと意地の悪い笑みで返した。
「幻魔にばかり気を取られていましたが、厄介な伏兵を紛れさせていたようですね」
「「あの短い時間でよくそこまで判断したものだ……カカカ、見れば中々に器量も良い娘ではないか。このまま幻魔の糧とするのは少々惜しくなってきたな?」」
「……みすみす餌になるつもりはありません。それよりも早くターンを進行して下さい、こちらは既にターン終了を宣言しています」
「「フン、言われずとも……ワシらのターン!!」」
男のドローと同時、ズンと得体の知れないプレッシャーが圧し掛かる。
(ッ!? 何、今のは……!?)
この瞬間に何か決定的な『運命』が決定されてしまったとでも、言わんばかりに。
ぎょろりと剥かれた4つの目が、焦点すら定まらぬまま姉弟を縛りつけた。
「「……カカカ!! 引いた、引いたぞ!! やはり破滅の力はワシらの手中に宿ったのだッッッ!!」」
「何を……!!」
「「ワシらはここで伏せられていた2枚のカードを発動させる!! 止められるものなら止めてみるが良いッ!! 罠カード《
男が発動させたのは、前のターンにもう片方が伏せていたカードだった。
それも、全く同じカードを2枚。
「「エクストラデッキの融合モンスター1体を見せ、そのモンスターにカード名が記された融合素材モンスター1体をデッキから手札に加える!!」」
そう言ってディスクから取り出されたのは、紫色の枠を持つ融合カード。
「「一足先に見せてやろう、世界を喰らう破滅の神の姿を……ワシはこのカード、《混沌幻魔アーミタイル》に記されている《降雷皇ハモン》《神炎皇ウリア》の2体を手札に加える!!」」
「混沌、幻魔……!?」
対峙する煽里も燐路も、言葉を無くして立ちすくむ。
まだフィールドに降り立ってすらいないにも関わらず、そのカードから放たれるプレッシャーはあまりに色濃く、重厚だった。
「「更に魔法カード《手札抹殺》を発動!! ワシらの持つ
「手札抹殺!? 何を……ッ!?」
困惑する煽里の目に映ったのは、たった今手札に加えられたばかり三幻魔が墓地へと送られていく光景だった。
(幻魔皇ラビエル……既に手札にあったのですね)
手札に揃っていた幻魔。それを墓地へ送ったということは、伏せられているカードは恐らく蘇生系のカードだろう。
三幻魔降臨を止める手段はもはや無い。少しでも策を練る為に、煽里は素早く『公開情報』となった三幻魔のカードに目を通した、が――幻魔のカードに記されていた効果には、特殊召喚モンスターによく見られる厳しい『召喚制限』が掛けられていたのだ。
「なっ……そんな!?」
これでは例え召喚制限を満たしていたとしても、ましてや手札から直接墓地へ送られていては蘇生など不可能。いかに凶悪で破滅を呼ぶカードといえど、自身に架せられた『ルール』には逆らえない。ならば、何故――?
「「……カカカ、そうかそうか。お前も暴れたいか?」」
渦を巻く煽里の疑念とは裏腹に、新たにドローしたカードを確認した異形の男はまるで飼い猫を愛でるような声色で《ユベル》へと問い掛けた。
その異様な様子に、燐路は精一杯の虚勢を張って舌打ちして見せた。
「チッ、気色悪ィ声だしてんじゃねぇーよジジイ」
「「よく吼える小猿だ、もうじきにその口を縫い合わせてやろう。ワシらは手札から魔法カード《死者への手向け》を発動!! 手札を1枚捨てることで、フィールドのモンスター1体を破壊する!!」」
「けっ、古臭ぇカード使いやがっ……」
破壊の標的として選ばれるのは恐らく戦闘破壊が《ライオンハート》だろうと燐路は考えていたが。
(いや――違う!?)
――否、直前に煽里が読み解いた《ユベル》の効果が脳裏を過ぎった。
「「ワシらが選択するのは――自分フィールド上の《ユベル》だ!!」」
苦痛の叫びと共に、異形の悪魔が砕け散る。
ニヤリと、呪詛のような冷たい微笑を姉弟に残して。
「「この瞬間――破壊された《ユベル》の効果発動!!
(墓地……!? そうか、前のターンで《手札断殺》を撃ったのはこのためか!!)
ユベルは元々、タッグパートナーであるもう1人の男が所有しているカード。
モンスターを呼び出すにも、リクルーターのようにデッキから『だけ』ならユベルの効果も不発だったのだが……互いの共通エリアである墓地に、既に特殊召喚の下準備を済ませていたのだ。
全ては男達の、四方老の手の内で。
異形の男の嗤い声と共に、闇の瘴気が渦を巻き墓地である魔法陣から『何か』が引きずり出てくる。
「「恨みの深淵より現れよ、《ユベル-
ズルリ、と墓地の深淵より這い出てきたのは、まるで自分の操る主を写したような双頭の竜。漆黒の両翼には確かに《ユベル》の面影はあったが、もはやその姿は完全に別のものと化していた。
《ユベル-Das Abscheulich Ritter》
☆11/闇属性/悪魔族・効果/ATK 0/DEF 0
「破壊されて進化するモンスター……だと?」
「「まだだ!! ワシは更に、守備表示で特殊召喚した《ユベル-Das Abscheulich Ritter》に対して魔法カード《シールドクラッシュ》を発動し破壊する!!」」
「何ッ!?」
召喚されたばかりの双頭の悪魔竜が、再び墓地の深淵へと沈んでいく。
「まさか……まだ『先』があるっていうのかよ……!?」
「「クカカカ、その通りだ!! 我がもとへ来い、深き悲哀に染まりし究極の悪夢よ!! 《ユベル-Das Extrener Traurig Drachen(ダス・エクストレーム・トラウリヒ・ドラッヘ)》!!」」
4枚の翼をはためかせ、双頭竜の姿を模した異形の悪魔が深淵より舞い上がる。
漆黒と赤紫の体色とそのシルエットは、まさに幼い子供が描く原初の『悪夢』、そのカタチ。
悪夢はゆったりと宙に居座ると鋭い爪を不気味に光らせ、身体のあちこちで蠢く無数の『顔』が姉弟へと視線を向けた。
《ユベル-Das Extremer Traurig Drachen》
☆12/闇属性/悪魔族・効果/ATK 0/DEF 0
「レベル12の……最上級モンスターだと……!?」
「にもかかわらず攻撃力は0……このモンスターもやはり何か、特殊な――」
「「お主ら、『主賓』の存在を忘れているわけではあるまいな?」」
そう言って瞳を剥き嗤う異形の男に、姉弟は背筋を凍らせた。
姉弟の中にある『紅い鎖』の力が警鐘を鳴らすほどに、目の前の悪魔は異様なプレッシャーを放っているのだ。三幻魔のカードを捨ててまで召喚に成功したこのカード以上の、何を出そうというのか――。
「「ワシは!! 伏せていた罠カード《リビングデッドの呼び声》を発動、墓地より《ファントム・オブ・カオス》を特殊召喚する!!」」
《ファントム・オブ・カオス》
☆4/闇属性/悪魔族・効果/ATK 0/DEF 0
「……まさか、テメェッ!?」
ファントム・オブ・カオスは墓地のモンスターをコピーするカード。
蘇生不可能な三幻魔を墓地へ送った意味が、ようやく繋がった。
「「更にモンスターが特殊召喚に成功したことで、速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動!!ワシは《ファントム・オブ・カオス》をデッキ・手札・墓地から可能な限り特殊召喚する!! ほれ、お主等もそこで突っ立っているモンスターを好きなだけ特殊召喚して良いぞ?」」
「……私は、デッキから《炎王神獣ガルドニクス》を1体、守備表示で特殊召喚します」
《炎王神獣 ガルドニクス》
☆8/炎属性/鳥獣族・効果/ATK 2700/DEF 1700
他に姉弟の場に存在するモンスターは《トリシューラ》と《ライオンハート》のみ。
エクストラモンスターである彼らを特殊召喚することは、無論不可能だ。
「「さて……3体揃った《ファントム・オブ・カオス》で何をするのか――物分りの良いお前なら分かっておろう、煽里?」」
「……墓地の三幻魔をコピーしても、所詮は贋作です。いくら強力な効果が使えたとしても《ファントム・オブ・カオス》が与えられる戦闘ダメージは0……ユベルの反射効果を使ったとしても、私達のライフを削りきることは――」
「「それは、どうかの?」」
瞬間、ひやりとした何かが煽里の背を伝った。
いや……そんな筈はない。
仮にあのカードを、融合モンスターを呼び出すには肝心の『あのカード』が足りない。
今、男の手札にも、場にも、既にカードは1枚も残されていない。なら――。
「「ワシは《ファントム・オブ・カオス》の効果で、墓地の《幻魔皇ラビエル》《降雷皇ハモン》《神炎皇ウリア》を除外し、それぞれの名前と効果をコピーする!! 仮初の身にて顕現せい、破滅の化身よォ!!」」
《幻魔皇ラビエル》(ファントム・オブ・カオス)
☆10/闇属性/悪魔族・効果/ATK 4000/DEF 4000
《降雷皇ハモン》(ファントム・オブ・カオス)
☆10/光属性/雷族・効果/ATK 4000/DEF 4000
《神炎皇ウリア》(ファントム・オブ・カオス)
☆10/炎属性/炎族・効果/ATK 0/DEF 0
ATK 0→1000
DEF 0→1000
地を砕き、雄叫びを上げ。
それだけで命を奪いかねないほどの雷と業火を渦巻かせながら、遂にそれらは姿を現した。
「まさか、そんな……!?」
手札ではなく、例え
融合を必要としない融合召喚――例こそ少ないが、確かにそれは存在していたのだ。
「「ワシは、フィールドに並んだ三幻魔をゲームから除外することで、エクストラデッキよりこのカードを融合召喚するッ!!」」
男達は両腕を高く宙に掲げ、告げる。
「「魍魎従えし、群青の巨魔よ!!」」
「「雷翻す、黄昏の暗翼よ!!」」
「「業火渦巻く、真紅の邪竜よ!!」」
「「「「混沌の果てに1つとなりて、己が欲望のまま世界を喰らえッ!!」」」」
三色の破滅が、溶けて交わる。
その光景は恐ろしくもあり、そして不思議なまでに美しかった。
「「「「融合召喚ッ!! 産声上げよ、《混沌幻魔アーミタイル》!!」」」」
激しく明滅する白き闇。
その最中から現れたのは――ラビエルの青い半身、ハモンの黄金の翼、ウリアの紅い胴を掛け合わせた異形の巨躯だった。
《混沌幻魔アーミタイル》
☆12/闇属性/悪魔族・効果/ATK 0/DEF 0
「また、攻撃力0……!?」
最上級モンスターとしては、またしても異例の攻撃力0。
しかしそんな燐路の驚愕に、異形の男はさも愉快そうに答えを返した。
「「カカカッ、そう案ずるな。アーミタイルの攻撃力は我がターンのみ、10000まで上昇するのだ……お主らを葬るには十分過ぎるほどの『破滅』であろう?」」
「い、10000……だと……!?」
《混沌幻魔アーミタイル》
ATK 0→10000
「ッ、それでも……!!」
それでも。その先の言葉は、出てこなかった。
反射ダメージのある《ライオンハート》以外のモンスターに攻撃したとしても。10000の攻撃力ではライフ8000には届かな『かった』。
「「さぁ行くぞ……バトルだ!! まずは《ユベル-Das Extrener Traurig Drachen》で《氷結界の龍 トリシューラ》を攻撃!!」」
「なっ……!?」
双頭の顎が開かれ、紅蓮の炎がトリシューラを襲う。しかしその攻撃力は0……だが、デモンズ・チェーンで縛られ、無力化された筈のトリシューラの瞳がその炎と同じ橙色に染まっていく。
やがて自身を縛る鎖を引き千切り――浮遊する悪夢の竜へと、その顎を開いた。
「な、何が――ッ!?」
「「クカカ……『ナイトメア・ペイン』、《ユベル-Das Extrener Traurig Drachen》の効果だ。このカードの戦闘によって発生するワシへの戦闘ダメージは0となり、更に表側攻撃表示で存在するこのカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与え、そのモンスターを破壊する!!」」
トリシューラが放った3本の白熱線は、ユベルが纏う得体の知れないオーラによって乱反射し、燐路達のフィールドへと死の雨となって降り注いだ。
「ぐっ……があああああっ!?」
【燐路・煽里】LP8000→5300
あまりの痛みに、燐路は思わず声を上げてしまった。
自分達が行ってきた『闇のゲーム』とは、根本的な何かが違う。
これが――破滅の力?
「く……こ、これは一体……!?」
「「折角、三幻魔が降臨する記念すべきデュエルなのだ。与えられる闇の深さも、極上でなければのう?」」
燐路と煽里がダメージから何とか立ち上がると、既に氷の魔槍の龍は姿を消していた。
フィールドには3体と、十分な数のモンスターが残されていたが……反射効果のある《ライオンハート》はともかく、無防備に攻撃表示で取り残されていたガルドニクスが致命的だった。
「くっ……!!」
「「これで最後だ……アーミタイルよ、ガルドニクスに攻撃せよ!! 『全土滅殺 転生波』!!」」
唸りを上げて放たれた破滅の波動が、
その攻撃を、痛みを、防ぐ手立ては――無かった。
【燐路・煽里】LP5300→0
**
「く……そ……!!」
想像を絶する苦痛に飛びそうになる意識を何とか保ったものの、燐路は力なく地に伏していた。
これも『紅い鎖』の力を持ったが故なのか、自分達が葬ってきた人間とは違ってすぐに命の灯し火が消えることは無かったが――僅かに残った火を消さないようにすることで精一杯で、もはや立ち上がる気力すら残されてはいない。
「「クカカ、他愛も無い……だが直接幻魔に
「……まだ、だ。もう一度……デュエルを……」
地に拳を打ち付けて、立ち上がろうともがく燐路。
その小さな頭を見下ろしながら、異形の男は何の気無しに踏みつけた。
「がッ……!?」
「「フン、敗者は大人しく地を舐めていれば良い。幻魔の糧という、お主らの役目はとうに終えているのだからな。もっとも……立ち上がれたところで、お前は既に牙を抜かれた子犬も同然だがの」」
異形の男は燐路のディスクからデッキを抜き取ると、目の前にバラバラとカードをバラ撒いて見せる。
「な……に……!?」
燐路の瞳が、驚愕に見開かれる。
彼が愛用していた【ラヴァル】のカード達は――何のイラストも、効果も記されていない紙切れと化していたからだ。
「……俺のカードが。一体、何を……?」
「「完全に目覚めた幻魔の前では、全てのカードが力を失う。この力がやがて世界を覆ったとき……それこそがワシの、
「……バケモノが……!!」
己の無力に打ちひしがれ、燐路の目から伝う涙が地を濡らしていく。
先のデュエルで感じた妙な『違和感』が、彼のプライドをより深く抉った。
出来ることならやり直したい。だが、もう一度牙を立てることすら叶わないのだ。
「「……ほう、まだ姉の方も息があるようだの……?」」
もう片方の異形の男が、倒れたままの煽里へと歩み寄っていく。
その目には元老人らしからぬ、邪な色が浮かんでいた。
「「どれ、幻魔のおかげで我が生も滾っていたところだ。戯れに子を孕ませてみるのも面白いかもしれぬな」」
艶のある長い黒髪を鷲づかみにし、異形の男は人形のような煽里の身体を引き起こす。 だらりと脱力した四肢を舐め回すように眺めてから、男は乱暴に胸元に手を伸ばして――。
「
瞬間、燐とした男の声が響いた。
同時に異形の男の手に突き刺さっていたのは、1枚のカードだった。
「「貴様――まだ息があったか」」
透き通るようなブロンドに丈の長い白いコート、加えて長身の甘いマスク。
絵に書いたような美男子――ユーギ・ムトウの微笑が、そこにあった。
「こんな所で落とせるほど、安い命ではないのでね。さて――その姉弟の気が済んだところで次の順番待ちはこの僕です。ディスクを構えて下さい」
ユーギの申し出に、異形の男は下らないとばかりに鼻を鳴らした。
「「戯言を……聞いていなかったのならもう一度言おう。このカードの前では、全てのカードが無力に――」」
「それは、『この世界のカードなら』というお話です」
《ブラック・マジシャン》。
《E・HEROネオス》。
そう言ってユーギが得意げに見せた彼のデッキのカードは、燐路の【ラヴァル】とは違いしっかりとカードとしての色彩を放っていた。
「「貴様、一体――!?」」
「僕はただのコレクターですよ。ただし、これから貴方達を倒し英雄になる――ですが」
言って、ユーギはディスクを構えた。
最新型デュエルディスクの静かな駆動音が鳴り響き、半実体ARの黒いプレートが浮かび上がる。
「ああ、宜しければ貴方達2人ともまとめてお相手致しましょう。僕の相方は残念ですが、もう使い物にならないようですからね」
ユーギが向ける視線の先には、倒れたままピクリとも動かない幼い姿があった。
呼吸の様子も無く、もはやそこに生命としての温かみは感じられない。
「「……クカカ、自称『英雄』殿が随分と冷酷なものだな」」
「物事に犠牲は付き物です。僕はそんなことで、いちいち歩みを止めている訳にはいかないのでね」
ユーギの言葉に、異形の男達も何か思うところがあったのだろう。
眉を寄せた気難しい表情から一転、狂喜に満ちた表情を浮かべディスクを構えた。
「「いいだろう!! 我ら
先程まで究極の幻魔と悪夢を従えていたディスクとデッキが、再び牙を剥く。
その様子を満足そうに眺めて、ユーギは口端を吊り上げて言った。
「そうこなくては。では――楽しいデュエルを、始めるとしましょう」
【ユーギ】LP4000 VS 【四方老】LP8000
ジジイ's「Das Extremer Traurig Drachen!!」
煽里(ご老体のままでは、確かにあのカード名は酷でしたね……)
※文字が長過ぎるのかフリガナがふれませんでした