本当は前後編で作りたかったのですが、前編の時点で話が思いの外長くなったので3話(+1話)にしたいと思います。間に合うのです?……これ?
現状、指揮官とセラスティアの関係についてはご想像にお任せ致します。
それでは、続きをどうぞ……
非公式クリスマスイベント(前編)
それから数日後……
早朝
空には一面に厚い雲が広がり、まだ早朝なだけあって周囲は薄暗く、それでいて冬らしい青色の世界が広がっていた。
シンと静まり返った世界の中で、時折行き交う凍えるような風が効果音の如く響き渡り、今日という特別な日を迎えるに相応しい、ロマンチックな雰囲気を演出していた。
エリア████ベース████(指揮官の基地)
静寂に包まれた基地の中。いつもは多くの人で賑わうこの場所も、この時間帯だけは束の間の休息を貪るかのように音が消えていた。
また、多目的ホールから通路に至る全ての空間が暗闇に包まれ、唯一、各所に設置された非常灯の明かりだけが物寂しく光り輝くのみだった。
基地で働く殆どのスタッフが眠りにつき、夜明けに備えている中……
(zzz……)
眠りについていたのは指揮官も同じだった。
昨日も朝から大量の業務に追われ、それらをこなし、眠りについた時には既に日を跨いでいた。
疲労困憊の状態で床に入り、熟睡する指揮官……夜が明ける間際まで、(スクランブルが発生する以外では)何があってもしばらくの間は起きることはないだろう。
ピッ、ピッ、ピッ……
その時、暗闇に包まれた指揮官の部屋に、何やら小さな機械音が鳴り響いた。
ピッ、ピッ……
それは部屋の入口からだった。
部屋の扉にかけられた電子ロックの操作音が静寂の中に響き渡り……今まさに、何者かが部屋の中へと侵入しようとしている。
ガチャ……
その人物は、例の一件以来、厳重になったはずの電子ロックをいとも容易く解除し、部屋の中へ侵入を果たした。
「…………」
部屋の中に現れた小さな人影は、息を潜めて物音一つ立てることなく真っ暗な部屋の中を進み……やがてベッドの上の指揮官を見つけた。
(zzz……)
「…………」
指揮官が良く眠っていることを確認すると、侵入者は意を決したように指揮官の元へと近づき……そして、指揮官が被っている毛布に手をかけた。
ーーーーー
約1時間後……
長い夜が明けた。
(…………?)
いつもの習慣から、夜が明けると共に覚醒した指揮官は、そこで自分の体が妙に重いことに気づいた。まるで仰向けで眠る自分の上に、何かがのしかかっているような……
おまけに体が妙に温かい。いくら毛布を被っていたところで、普通ここまで温かくなるだろうか? 寒い朝なら体が冷えていてもおかしくないのだが、この時ばかりはつま先どころか、体の芯までポカポカとしていた。
意識がハッキリとしていくたびに、指揮官は徐々に自分の置かれている状況について思考が追いついてきた。自分は動いてもいないのに布が擦れる気配が感じられる、かすかな息遣い、シーツの中に自分以外の人肌の温もりが感じられ、体を包み込むような柔らい質感がとても心地よかった。
眠気も相まって、しばらくの間、その心地よさに身を委ねていた指揮官だったが……ふと普段の冷静さを取り戻し、動きにくい中で何とか腕を動かすと、指揮官の手が温かくて柔らかく何かを掴んだ。
「んぅ……」
すると、指揮官の胸元から小さな声が上がった。
(……え?)
指揮官は自分の部屋に、もといベッドの中に自分以外の何者かがいる事実をハッキリと理解した。目を開け、やけに盛り上がった毛布をめくると、そこには指揮官の胸板を枕がわりにして寝息を立てている青色の髪の毛があった。
そして、指揮官は彼女の肌に触れていることに気づき、慌てて手を離すと……彼女はくすぐったそうな声を上げて、それからゆっくりと目を覚ました。
「……あ、起きた?」
青い髪の毛の少女は指揮官の胸板から顔を上げ、眠そうな目を擦りながら指揮官へと笑いかけた。
(セラスティア……?)
「うん、おはよ……指揮官」
(お、おはよう……)
挨拶を返すと、青髪の少女……セラスティアは胸板に顎を乗せ「ふふん♫」と目を細めて微笑みを浮かべ、それから手を伸ばし、指揮官の頬を優しく撫でた。
ふわふわと揺れる青いツインテール
いつも通りの、露出の多い服装
顔にイタズラっぽい笑みを浮かべ
その頬は、にわかに赤く染まっている。
(えっと……急にどうしたの? というか、どうやってここに……?)
自室に呼んでもいないし招いた覚えもないのに、セラスティアがここにいることを疑問に思った指揮官は、思わずそう呟いた。
そもそも、部屋の扉には電子ロックがかけられていたはずだ。解錠のパスワードは自分しか知らないし、前回の事案でセキュリティを強化したことにより、ハッキングや総当たりでの解読も難しくなっている筈なのに……?
指揮官がそう思っていると……
「あ、電子ロックのこと? あんなもの、この天才セラスティア様にかかれば、解錠なんてお茶の子さいさいよ」
(さいですか……まあ、聞くまでもなかったね)
自慢げに話すセラスティアに、指揮官はため息をついた。
それにしても、こんな朝早くから部屋に忍び込むような真似をして、しかもベッドにまで潜り込んでくるとは……一体、セラスティアはどういうつもりなのだろうか?
セラスティアの意図が読めず、指揮官が戸惑っていると
「ねえ、指揮官」
そんな指揮官を見かねてか、セラスティアは小声で続けた。
「今日って何の日か、分かるよね?」
(今日? 今日は確か、12月24日……)
指揮官が今日の日付けを告げた直後、セラスティアの赤い瞳が怪しく光り輝いた。彼女のそんな様子を目撃して……
(あ……)
指揮官はセラスティアの言いたいことを察した。
「ふふっ、分かった?」
(ああ、完全に理解した)
「そう? じゃあ、賢い指揮官のことだから、私が今からすることも、分かるわよね?」
挑発的な視線に、指揮官が頷くと
「んしょ……んしょ……」
セラスティアは指揮官の体の上を這って登り、仰向けに眠る指揮官と目線の高さを合わせた。
それから、至近距離でお互いに見つめ合う……
……近い
あまりの距離の近さに、指揮官が思わず視線を下に向けると、そこには自分の胸板の上で柔らかく潰れる、セラスティアの大きくて形の良い双丘。
(……っ)
その魅惑的な光景もさながら、胸と胸が密着して擦れ合う独特な感触に、指揮官の口からくすぐったそうな声が漏れる……
「ふふふ……指揮官ってば、どこを見ているのかしら?」
(…………)
思考を読まれたことに気づいた指揮官は、ならばと顔を横に向けて視線を逸らそうとするも……
「だーめ、ちゃんと私のこと見なさい」
だが、セラスティアに顔をがっちりと掴まれてしまい、指揮官は無理やり視線を引き戻されてしまった。
白い肌、部分的に赤く染まっている
きめ細やかで整った顔立ち
そして、見ているだけで吸い込まれてしまいそうな感覚に陥る、深い赤色をした彼女の瞳……
「えへへ……」
再び至近距離で見つめ合う2人。セラスティアは気恥ずかしそうな笑みを浮かべると、両手を指揮官の後頭部へ回して手前側に引き寄せ、彼女もまた身を乗り出し、鼻の先端同士をチョン……と触れ合わせた。
唇は辛うじて離れてはいたが、それでも触れる一歩手前のギリギリの距離で、呼吸の為に漏れた吐息がお互いの唇を薄く湿らせていた。
側から見れば、2人はそのままキスをしてもおかしくない雰囲気に包まれていた。
(気が早いね……)
「待ちきれなくて、つい……」
そんな言葉を交わしてお互いに小さく笑うと、セラスティアは身を起こして指揮官の腰の上に馬乗りの状態になった。
「ふふん、いい眺めね」
指揮官を見下ろし、セラスティアはまるで勝ち誇ったような、Sっ気たっぷりの表情を浮かべた。
「重くない?」
(大丈夫)
「そう? ああ、一応言っとくけど、この前と同じように、私……こういうことするのは、今回が初めてなんだから」
(うん、だろうね)
「へぇ、言ってくれるじゃないの……」
赤い瞳を血に飢えた肉食獣の如く光らせると、セラスティアは指揮官の両手を取り、手綱にするかのように握りしめた。
「その余裕、いつまで保てるのかしらね?」
(お手柔らかに頼むよ……)
「ふふっ……今更謝ったところでもう遅いわ。途中で根を上げても止めてあげないんだから……んっ、よいしょ……っと」
カチャカチャ……
彼女の手元で、金属同士が擦れ合う音が響いた。
「それじゃあ、するね……」
セラスティアは少しだけ恥ずかしそうにしながら、指揮官の耳元でそう囁くと……
カチッ……
(…………?)
指揮官は、自分の腕に何かがかけられたのを感じた。
「はい確保ーーーー!!!!」
次の瞬間、セラスティアはニヤリと笑って高らかにそう告げた。指揮官が自分の手元に目をやると、両腕に銀色の光を放つ手錠がかけられていた。
(やられた……)
指揮官は半ば呆れたようにセラスティアを見上げた。
「残念でした! これで、今年は好きにさせないわよ!」
セラスティアはそう言って指揮官の腕を取り、両腕にかかった手錠をカチャカチャと鳴らした。
「ねぇ、サ・ン・タ・さ・ん。いえ……ニセモノのサンタさんってところかしらね?」
その言葉に、指揮官は思わず両手を上げようとしたが、両手が繋がれていることと、セラスティアに掴まれていることから諦めざるを得なかった。
プロローグにてサンタクロースを捕まえようと画策していたセラスティアが、なぜ指揮官を捕まえるような真似をするのか……?
これに関して、詳しくはムジナの著作である『12の月の小夜曲』を参照して欲しいのだが……初見の方の為に説明すると、サンタクロースの正体は指揮官(あと龍馬とスノー)だった。
1年前のクリスマス……
サンタクロースを捕まえようとするセラスティアに対し、サンタクロース型のパワードスーツに身を包んだ3人は、セラスティアとスロカイ様率いる捕獲隊を陽動・撹乱し、基地に出没する本物のサンタクロースが動きやすい状況を作っていた。
それによって捕獲隊全員を出し抜き、本物のサンタクロースたちは誰1人として捕捉されることなく、無事にプレゼントの搬出に成功するのだった。
しかし、1年前のその出来事をセラスティアはずっと根に持っていたのだろう……なので、今年は指揮官が何かしらの作戦を実行する前に先手を打ち、こうして指揮官の寝込みを襲い、動きを封じにかかっていた。
「今日一日、指揮官のことは監視下に置かせて貰うわ」
(まさか、こんな手を使ってくるとはね……)
「ねえねえ? 今どんな気分〜?」
(正直、悔しい……かな)
「そっか〜、あはっ!」
敗北宣言とも取れる指揮官の言葉を聞いて、セラスティアは満足げな表情を浮かべた。
……なんてね
指揮官は悔しがるそぶりを見せつつも、しかし内心では密かにほくそ笑んでいた。
サンタクロースの正体が自分であるということが基地の中で公の事実となっている以上、今日この日に捕獲隊から何かしらのサボタージュがあるのは想定済み。
なので、既にサンタクロース型のパワードスーツと、皆に配るプレゼントは本物のサンタクロースに託してある。
作戦に関しても予め伝達してある。自分がいなくとも、彼女たちなら上手く立ち回ってくれるはずだ。
まあ、サンタクロースの正体が発覚したところで別にどうということはない。今だけは皆が戦いのことを忘れて、今日という1日を楽しんでくれれば……それでよかった。
先程はチラッと、セラスティアが夜這いをかけてきたのではないかと期待したものの……自分は彼女からあまり良く思われていないという前提を思い出し(プロローグを参照)、その可能性をすぐさま否定した。
しかし、何かあるだろうなとは思ってはいたが……よもやこのような手を使ってくるとは、思ってもいなかったのは事実
『マフィア(本物)は殺す相手に贈り物をしてから』と言う……最初にセラスティアの放った甘い雰囲気も、恐らくその類のものだろう(最初に相手を油断させておいて)
天才と名高いだけあって、メカのことだけではなく、セラスティアはそういう戦略も心得ているようだった。
因みに、贈り物を意味する『ギフト』だが、ライン連邦の言語においてギフトは『毒』を意味する……らしい。
指揮官がそんなことを思っていると……
「ねぇ、指揮官……」
先ほどまでの高飛車なセラスティアは何処へやら、彼女は指揮官のお腹に手を置いて、どこかしおらしい様子で指揮官の顔を覗き込んできた。
「その……ドキドキ、してくれた?」
(ドキドキ?)
セラスティアの言葉に、指揮官は少しだけ考えるそぶりを見せた。彼女がベッドの中にいることに驚いたのは事実、セクハラになってしまわないように焦ったこともあり、総じてドキドキしたと言える……考えた末に、指揮官はそう判断した。
(……まあ、それなりに)
「そっか……もー、指揮官ってばムッツリさんなんだからー!」
指揮官が答えると、セラスティアはニヤニヤと笑って、右手の人差し指で指揮官の頰を優しくツンツンとした。
「……あー…………」
それから少しして、急に言葉をなくして再び顔を赤くしたセラスティアは、仰向けに寝そべる指揮官の上へ覆い被さり、その耳元へ唇を近づけ……
「その……後で、指揮官が満足するまでさせてあげるから……だから、お楽しみは夜まで待っててね?」
妙に色っぽい声で、そう囁いた。
(……?)
……夜に何かあるというのだろうか?
確かに、今日1番のお楽しみであるクリスマスパーティは夜に行われるが、そこで何かしらのサプライズでもあるというのだろうか……?
そんなこんなで、2人のすれ違いは続く……
波乱のクリスマス・イヴが幕を上げた。
機動戦隊アイアンサーガ
非公式クリスマスイベント:『星降る夜のイヴ』
第1話:ベッドシーンのイヴ
数分後……
セラスティアに連行され、指揮官が連れてこられたのは基地の多目的ホールだった。
「とりあえず、指揮官はここで待っていなさいな」
(ちょっ……!?)
多目的ホールの中へ乱雑に押し込まれ、指揮官はホールの床を転がった。そして、立ち上がった時には既に多目的ホールの扉は閉ざされ、ご丁寧に鍵までかけられてしまっていた。
(そこまでする……?)
指揮官は扉へと歩み寄って、手錠で繋がれた両手で2、3回ほどドアノブを捻ってみるも、鍵のかかった扉が開くはずもなく……
「あ、先生!」
その時、指揮官の背後からそんな声が響いた。
(龍馬くん?)
指揮官が振り返ると、そこには1人の少年……高橋龍馬がいた。指揮官と同じく手錠をかけられ、某チューピカをモチーフにした可愛らしい黄色のパジャマ(フード付き)を着ている。
(どうしてここに……?)
「それが、僕にも分からないんです。部屋で寝ていたところを五十嵐先輩に起こされて、この部屋に連れてこられたんです。おまけに、手錠をかけられて……」
龍馬は不安そうな表情で手元の手錠を見つめた。
「僕、何か悪いことをしちゃったんでしょうか……?」
(いや、これは多分……)
「その声は、指揮官様ですか?」
その時、多目的ホールの奥から1人の少女が姿を現した。
(スノー!)
「やはり、指揮官様でしたか」
その少女……スノーは指揮官の姿を見るなり、礼儀正しく敬礼をしようとした。だが、水玉模様のあしらわれた白のパジャマ姿で、その腕には手錠がかけられていることもあって、いつも通りの引き締まった敬礼をすることはできなかった。
「むぅ……私も龍馬と同様に、部屋で寝ていたところを起こされ、理由も説明されないままここに連れてこられました」
スノーは敬礼を諦め、指揮官へ現状報告を行った。
「とりあえず、状況を確認するついでに私なりに何か手錠を外す方法がないか部屋の中を探ってはみたのですが……特にこれといって役立ちそうなものはありませんでした」
(ん、分かった)
2人を見据え、指揮官はため息を吐いた。
「ねえ、先生。これってどういうことなの?」
(それは……)
手錠をかけられ、多目的ホールに監禁された3人の共通点……それは、全員が去年のクリスマスにサンタクロースのダミーを演じていたということ。
「なるほど……つまり、本物のサンタクロースを捕まえられなかった昨年の報復という解釈でよろしいでしょうか?」
(報復っていうほどじゃないけど、大体合ってる)
こうなってしまった理由を話し合いつつ、3人は多目的ホールの中心で、円を描くように腰を落ち着けた。
(あと、自分たちのような偽物のサンタの動きを封じて、じっくりとサンタクロースの捕獲に専念するためってところかな)
「じゃあ、僕たちが動かないと本物のサンタクロースさんが捕まっちゃうんじゃ……」
(うん、そうだね……)
不安そうな龍馬に、指揮官は頷きを送った。
「ですが、今の私たちにはどうすることもできないのが現状です。あいにく、剣も取り上げられてしまったので……」
「僕は電気の能力を使うことができるけど、それでも手錠を切るだけの力はないし……」
サンタクロースが捕まってしまうのではないかと慌てる2人に対して、全ての事実を知っている指揮官は落ち着いていた。
(2人とも、サンタさんについては大丈夫だから)
「なぜ、そう言い切れるのです?」
スノーの問いかけに、指揮官は何らかの妨害工作があるのは想定済みだったということを説明した。
(『戦場では常に最悪の事態を想定して行動すべき』……これに関しては既に手を打ってある。だから、今はサンタさんを信じて待とう)
「なるほど、そうでしたか」
「へー! やっぱり先生は凄いや!」
とても感心したように2人は指揮官のことを見つめるも、指揮官はそこで首を振った。
(……とはいえ、まさか皆が自分たちのことを拘束してまで、サンタクロースを捕らえることに躍起になっているとは思ってなかった)
そう言って指揮官は
(2人とも、迷惑かけてごめんね……)
と、小さく謝った。
「そんな、先生が謝る必要なんてないですよ!」
「そうです! 寧ろ、ご一緒できて光栄です!」
(2人とも……ありがとう)
2人のフォローに、指揮官は少しだけ微笑むも……しかし、それでも指揮官の顔色は険しかった。ため息を吐き、手錠で繋がれた両腕を上げて、髪をかきむしる。
(まずいな……)
サンタクロースが捕獲されてしまう以前に、指揮官には別の懸念があった。
「先生、どうしたの?」
「まさか、ご気分が優れないとか……?」
指揮官が難しい顔をしているのを見て、龍馬とスノーは心配そうな表情を浮かべた。
(いや、そうじゃなくて……)
指揮官が抱いていた懸念
それは、指揮官の業務に関することだった。
いくらクリスマスとはいえ、基地の最上級スタッフとしての役割を持つ指揮官には、今日中に終わらせないといけない仕事が大量にあった。
いや、それだけではない。
仕事を終えた後もツリーの設置、会場の飾り付け、音楽関係のセッティング、料理の準備……など、夜に行われるクリスマスパーティーに向けての準備に取り組まなくてはならないのだ。
(セラスティアたちを説得して、早めに拘束を解いてもらえるようにしなくては……)
焦りを覚えつつ、指揮官はその時を待つことにした。
ーーーーー
数十分後……
「お邪魔するわね」
退屈していた指揮官たちが、日ノ丸の伝統的な暇つぶし方である『しりとり』をしていた時、突如として多目的ホールの扉が開け放たれ、1人の人物が姿を現した。
(命美……)
「あっ、五十嵐先輩!」
指揮官と龍馬は同時にその人物の名を呼んだ。
「ご機嫌よう。指揮官様、龍馬くん、スノーさん」
多目的ホールに現れた黒髪の少女……五十嵐命美は、上品な挨拶と共に全員の名前を口にした。
「朝食よ」
見ると命美の背後には一台のカートがあった。
カートの上には2つのお膳が乗っており、命美はホールの中にカートを押し入れるべく、扉を開けっぱなしの状態に固定した。
「(指揮官様……)」
……ん?
ふと、視線を感じた指揮官がチラリと横に目をやると、スノーが何か言いたげな表情を浮かべていた。
……何だ?
指揮官はスノーとのアイコンタクトを試みた。
「(扉が開いています)」
スノーは命美に気づかれないよう、大きく開かれた扉を見て、素早く視線を戻した。
「(今が、この状況を打破するチャンスなのでは?)」
……何か策でも?
「(はい。私が今この場で五十嵐さんに飛びかかり、彼女を怯ませます。両手を封じられようとも、体当たりをして動きを封じる事くらいは可能です。その隙に、指揮官様は龍馬を連れて逃走してください)」
……ネガティブ、許可できない
「(なぜですか)」
…………
指揮官は軽く首を動かして、ホールの端を示した。
「(あれは、監視カメラ……?)」
……そう、見られている
スノーに視線を送りつつ、指揮官は小さく頷いた。この部屋で何か異常があれば、監視している命美の仲間がすぐさま飛んでくる事だろう……
「(ですが、失敗すると決まったわけでは……)」
……だが、ただでさえ手錠に繋がれ動きを制限された状態で、その賭けにでられるか?
「(……)」
……それに
「(……?)」
……今日はせっかくのクリスマスだ。なるべく穏便に済ませたい
「(しかし、指揮官様の仕事は……)」
……仕事と仲間、どちらが真に大切かくらい理解してる
「(失礼しました。出過ぎた真似を……)」
……いや、気遣ってくれてありがとう
指揮官はそう言って、スノーに微笑みを送った。
「はい、どうぞ〜」
そう言って命美は龍馬の前に朝食の入ったお膳を置いた。メニューは白米に味噌汁、焼き魚に漬物という至ってシンプルな和食だった。
「ありがとうございます。うわぁ、美味しそう」
美味しそうな湯気を立てる料理を前に、龍馬は歓声をあげた。
「スノーさんも和食で良かったかしら?」
「はい、頂きます」
命美はスノーの言葉に頷くと、カートから龍馬のものと同じ料理が乗ったお膳を取り、スノーの前に置いた。
「それでは、ごゆっくり〜」
配膳し終えた命美は礼儀正しく頭を下げて、そそくさとカートを押して多目的ホールから立ち去り始め……
(あれ……?)
……何かおかしくないだろうか?
そう思い、指揮官は自分の前を見下ろすも、そこに龍馬とスノーに配膳されたような朝食はない。
(あの……命美?)
「ん? どうしたの……って!」
指揮官が呼び止めると、命美はハッとした表情になり
「ごめんなさい、すっかり忘れていたわ!」
慌てたようにそう言って、通路の先にカートを放置して3人の元へ舞い戻り、何やらスノーと龍馬の前へ膝をつくと……
「手錠をかけられっぱなしじゃ食べにくいわよね! 今外してあげるわ」
命美は服のポケットから二本の鍵を取り出すと、龍馬とスノーの腕にかけられた手錠をあっさりと外した。
「ありがと〜」
「あ……これはご丁寧にどうも」
そんな命美に、2人は解放された腕の感触を確かめながらお礼を述べた。
(…………)
「あら? 指揮官はどうしちゃったのかしら?」
指揮官が黙ってそんなやり取りを見ていると、振り返って指揮官を見据えた命美は、いたずらっぽい笑みを浮かべていた。
(……わざとだよね?)
「そんなに怒らないでよ〜」
(いや、怒ってはいないけど……)
「慌てないで、指揮官には別に用意しているから」
その時、命美のその言葉を裏付けるかのように……開けっ放しにされた廊下の向こうからキュルキュルという、カートの下部に取り付けられた車輪が回る音が聞こえてきた。
「お! 噂をすれば何とやらね」
命美の視線を追い、指揮官が扉の方へ注目していると……やがてホールの前に一台のカートが姿を現し、続いてカートを押している人物が見えてきた。
それはとても小柄な少女だった。
黒い髪、幼い顔立ち、姉譲りの紅い瞳……
(睦月……?)
「はい、指揮官様の睦月ですよ」
驚く指揮官を前に、睦月はフワリとした笑みを浮かべた。
そして命美の補助を受けつつも、睦月がカートから下ろしたのはお膳ではなく、表面に豪華な装飾が施された重箱だった。
「指揮官様、どうぞ」
睦月が蓋を開けると、重箱の中には色とりどりの料理が所狭しと並べられていた。高級食材である伊勢海老(?)や鯛、和牛に始まり、縁起の良いとされるアワビ、昆布、栗、カズノコ、里芋などといった日ノ丸の海の幸、山の幸がこれでもかと詰めこまれ、美しい輝きを放つそれは……日ノ丸の縮図であり、まさに小さな宝物庫のようだった。
(す、凄い……)
「うわぁ、綺麗……」
「なんと……」
重箱の中身を間近で目撃した指揮官は勿論のこと、側にいた龍馬とスノーもこれには驚きを隠せなかったのか、それぞれの口から感嘆の声が漏れ出た。
(まさか、これ全部……)
「はい! 指揮官様の事を想って、睦月が一つ一つ、丹精込めて作らせて頂きました!」
とびっきりの笑顔を浮かべる睦月に、指揮官はとても感激し、手錠さえなければ今この場で睦月のことを抱きしめ、その労をねぎらいたい気分に駆られた。
(早速、食べても良いかな?)
「はい!」
睦月の作ってくれた手料理にありつこうと、指揮官はお箸を受け取るべく腕を上げるが、手錠が引っかかり上手く腕を動かせないでいた。
(命美、手錠を外して欲しいんだけど……)
「あー……それは無理な話ね」
指揮官の頼みに、命美は首を横に振った。
(どうして?)
「だってセラスティアさんから、何があっても指揮官の手錠だけは外すなって言われてるし……そもそも鍵はセラスティアさんが持ってるし」
(じゃあ、どうやって食べろと?)
「そりゃあ勿論、決まってるでしょ」
命美が示した先に指揮官が視線を向けると、指揮官の隣でニコニコとした表情を浮かべた睦月がいた。その手には、指揮官の為に用意されたであろう、お箸が握られている。
(えっと……つまり?)
「はい、睦月が食べさせてあげます!」
(え?)
戸惑う指揮官だったが、睦月は料理の一つをお箸で挟むと、落ちないように空いた手で皿を作り、料理をゆっくり指揮官の口元へと運んだ。
「指揮官様、あーん」
(あ……あーん?)
仕方なく、指揮官は睦月の運んできた料理を口で受け止めることにした。
「お味のほどはいかがでしょうか?」
(うん、とっても美味しいよ!)
味わうように咀嚼し、飲み込んでから指揮官がそう答えると……睦月は両手で自分の口元を隠し、目を大きく見開いた。
「本当ですか!? よ、よかったです!」
指揮官の言葉を聞いた睦月は、どこかホッとした様子で、しかし、とても嬉しそうだった。顔を緩ませて微笑む彼女の周囲には、無数のハートマークが浮かんでいた。
「沢山作ったので、いっぱい食べてくださいねっ! はい、あーん♡」
そう言って睦月は次から次へと、指揮官の前に料理を運んでいく……睦月の作ってくれた料理は、どれも今生味わったことのない美味で、指揮官は目の前に差し出された料理を次々と食べ進めていく……
(でも……)
指揮官は高く積み上げられた重箱を見つめた。
(いくらなんでも5段は作り過ぎなんじゃ……)
「ふふっ、全部食べてもいいんですよ?」
(うん、それはちょっと無理かな)
睦月の言葉に、指揮官が苦笑いを浮かべていると
「あらぁ? 指揮官、そんなんでいいのー?」
それを見ていた命美が、ニヤニヤとしながら指揮官へ声をかけてきた。
「貴方のことをこんなにも慕ってくれているんだから、全部食べて、彼女の期待に応えてあげないとね〜」
(いや、そうしたいのは山々なんだけど……)
そこでふと、視線を睦月の方へ戻した指揮官は、こちらを一心に見つめる睦月が、何やら期待しているかのようにキラキラと瞳を輝かせていることに気づいた。
……
自分の為に作ってくれたのだから、こちらも食べてあげなければ不相応というもの……ならばせめて、自分にできる最大限の誠意を示さねば。
指揮官は決意した。
それから数十分後……
(ご馳走様でした)
「お粗末様でした〜」
激闘の末に、指揮官は睦月の用意した料理を全て平らげることに成功していた。
「まさか、本当にあの量を全部食べきるなんて……」
(美味しかったからね)
驚きを通り越してゲンナリとした表情の命美に、指揮官は涼しい様子でそう答えた。とはいえ、指揮官のお腹がもう限界なのは確かで、これはもうお昼は要らないな……と、心の中で呟くのだった。
「あの、指揮官様……」
そんな指揮官の思惑を知ってか知らずか、睦月は少しだけ焦った様子で指揮官の服の裾を引っ張った。
(うん?)
「無理……しちゃってませんか?」
(全然そんなことないよ。むしろ、睦月が自分の為にこんなにも美味しい料理を作ってくれたと思うと、食べ終えた今でも嬉しさが止まらないくらいだ)
指揮官がそう言って笑いかけると、睦月は非常に可愛らしいデレデレとした表情を浮かべて頰を真っ赤に染めた。
「そ、そんな風に言っていただけるなんて……睦月は本当に嬉しいです! 指揮官様の事を想って、この日の為にずっと料理の練習をしていた甲斐がありました!」
笑っている睦月を見て、心の中に温かなものが湧き上がってくる感覚を抱いた指揮官だったが……その一方で
……この日の為に?
指揮官は、睦月の言葉に引っかかりを覚えていた。
解釈にもよるのだろうが、睦月のその言い方は……まるで、最初からこういう展開になることを知っていたかのような言い方に聞こえなくもなかった。
……まさか、睦月も一枚噛んでいるとでも?
そもそも、指揮官が拘束されているのを見てもなお、指揮官のことを慕っているはずの睦月がそう驚いた様子を見せていなかった時点で、その可能性は高かった。
「指揮官様のためなら、毎日でもお作りいたします!」
(あー……毎日は流石に太りそうかな)
「大丈夫です。例え指揮官様が食べ過ぎてぶくぶくに太ってしまっても、睦月は……睦月だけは、ずっと指揮官様のお側にいることを誓います!」
(あはは……)
睦月の重い愛情に、少しだけ押され気味になる指揮官だった。
「うん、龍馬くんたちも全部食べて偉いわね」
命美は龍馬とスノーが食べたお膳を片付けながら、2人ともご飯を一粒も残さずに完食しているのを見て、感心したようにそう告げた。
「はい、ご馳走様でした!」
「えっと……ごちそうさまでした」
龍馬が日ノ丸流の食事終わりの挨拶をしているのを見習って、スノーも同様に手を合わせて挨拶をした。
「スノーさん、和食はお気に召したかしら?」
「ええ。とても美味しかったです」
しみじみとした様子でスノーが答える。
「これは日ノ丸の伝統的な朝食なんですよね」
「よく知っているわね? 伝統的って言うほどじゃないと思うけど、まあ白米に汁物、焼き魚の組み合わせがウチの定番メニューであることには変わりないわね」
「ラインで言うところの硬いパンに卵、そしてソーセージというところでしょうか? なるほど、勉強になります」
「やっぱりどこの国でもそういうのってあるわよね。そういう朝のメニューから、その国独自の国民性を分析するのも面白そうね」
「そうですね。では、朝食のお礼と言ってはなんですが……今度、私の方からラインの朝食をご紹介するというのはいかがでしょうか?」
「いいわね、それ! じゃあ、またこのメンバーで集まる機会があったら、是非そうしましょう♫」
スノーとそんな約束を交わしつつ、命美はカートの中に2人分のお膳を片付けた。
「それでは皆さん、ご機嫌よう」
(命美、待って)
カートを押して多目的ホールを後にしようとした命美を、指揮官が呼び止める。
「うん? どうしたの指揮官?」
(そろそろ仕事したいんだけど)
「仕事? 仕事って?」
指揮官は命美に仕事の内容を説明し、その内の幾つかは今日中にやらなければならないということを伝えた。
「へぇ、クリスマスなのに指揮官も大変ね……」
命美は気の毒そうに指揮官のことを見つめ、それから頰に手を当て少しだけ考える様子を見せた。
「というか、他の人に任せればいいじゃないの」
(そうしたいのは山々だけど、中にはスタッフのプライバシーに関わる大切なものもあるから、そういうのはあんまりね……)
「ああ、それは仕方ないわね……それじゃ、この件に関しては私からセラスティアさんに伝えておくわ」
(ありがとう、命美)
「あの、僕もいいかな?」
指揮官たちが話し終えると……そこへ龍馬がそわそわと、どこか落ち着かない様子で手を上げた。
「次から次へと出てくるわね……どうしたの?」
「その、トイレに……」
「ああ、ごめんなさいね。扉はこのまま開けっぱなしにしておくから好きに行ってもいいわ。あ、そうそう……手錠に関してだけど、2人はもう無理してつける必要はないから」
「え? いいんですか?」
龍馬は驚いたように命美を見つめた。
「勿論よ。というか、さっさと行ったら?」
龍馬は命美の言葉に頷くと、彼女の脇を通り過ぎて、急ぎ足で多目的ホールから少し離れたところにあるトイレへと向かった。
「では、私もお手洗いに行ってよろしいので?」
それを見ていたスノーが控えめに手を上げた。
「はぁ……あなた達は、いちいち許可を貰わないとトイレくらい行けないのかしら? いや、それもこれも元はといえば私たちのせいなのよね」
「あ、では失礼します」
申し訳なさそうにため息を吐く命美。その脇を静かに通り抜けるようにして、スノーも多目的ホールを後にした。
(じゃあ、自分も……)
「おっと、指揮官はここから出ちゃ駄目よ!」
指揮官がさりげなく両手を上げて立ち上がろうとすると、その前に命美が立ち塞がった。
(なんで2人は良くて、自分は駄目なのさ?)
「あー……元々、私たちのターゲットは指揮官ただ1人だったのよ。あの2人は、指揮官が寂しくないようにっていう意味でこの部屋に連れてきただけだから」
(そんな理由で2人を拘束してたの!?)
「ごめんなさいね。そうしろって言われてたから」
……ターゲットは自分1人……?
指揮官は命美の言葉に違和感を抱いていた。
確かに、サンタクロースの司令塔である自分を拘束さえすれば、指示に従うだけの龍馬くんとスノーは動くことができなくなる……それを見越してのことだったら、まだ分かる。
しかし、これは元々……本物のサンタクロースを捕まえる為の拘束だったはずだ。もし自身が捕獲隊の指揮官であるならば、龍馬くんとスノーには偽りのサンタクロースを演じて捕獲隊を妨害したという前科があることから、今年は2人が重要なポジションについていなかったとしても、有事に備えて徹底的にマークする。
しかし……手錠も外して貰えない、トイレにも行かせて貰えないという、自分に対して行われた厳重過ぎるマークに対して、2人への緩すぎる扱いは一体どういうことなのだろうか?
……何か、別の目的があるのでは……?
そんな風に考え始めた指揮官だったが……しかし、指揮官のそんな思考は途中で中断せざるを得なくなった。
(いや、それはいいとして命美さん)
「何よ? そんな畏まって……」
(マジでトイレ行かせて)
指揮官は朝起きてからというもの、着替えなどロクな準備もさせて貰えずここに連れてこられたのだ。当然、トイレにも行っていない……指揮官の膀胱は、もう間も無く限界を迎えようとしていた。
「あー……その、安心して。指揮官には……その、別の物を用意してるから」
(……別の、『物』?)
珍しく辿々しい様子で赤面している命美を、指揮官が不審に思っていると……隣にいた睦月が指揮官の袖を控えめに引っ張った。
(ん?)
「指揮官様……はい、どうぞ」
にわかに頰を赤く染めた睦月が、そう言ってニッコリと、指揮官の目の前に一本の半透明な空のボトルを差し出してきた。
ボトルと言っても、上部についた取っ手のことを考慮すると、それは形としてはジョウロにも似ており、明らかに飲料水を入れる為のものとしての形をしておらず、その口はやけに大きかった。
(これって、まさか……)
次の瞬間、指揮官の顔がサァッと青ざめた。
それに対し、睦月は嬉々とした様子でこう続けた。
「はい、尿瓶です!」
指揮官の嫌な予感が的中した。
(戦略的撤退ッッッ!!!)
全てを察した指揮官はメフィストフェレス並みの素早い動きで立ち上がると、そのまま多目的ホールの出入り口めがけて脱兎の如く駆け出し……
「うふふ、どこへ行くのですか〜?」
(ぐっ!?)
しかし、多目的ホールから脱出しようとしたところで、睦月の体から放たれた念動力の鎖に捕まり、指揮官は睦月の前へと引き戻されてしまった。
「ごめんなさい指揮官様……でも、仕方ないんです。睦月は、くれぐれも指揮官様をこの部屋から出さないようにと言われているので……」
(睦月……君もか……!)
つい先ほど、指揮官が立てていた『睦月もこの件に一枚噛んでいる』という予測は当たっていた。
睦月は指揮官の体を念動力でがっちり固定する。
「ああ、でも指揮官様は手錠をしていらっしゃいますので……この状態では瓶を固定できず、うまく排泄出来ないかもしれませんね……」
指揮官に裏切りのショックから立ち直る暇を与えることなく、睦月はさらに……少しも嫌そうな顔をせず、こう切り出した。
「なので……睦月が、指揮官の排泄をお手伝います!」
(め、命美……!)
最悪の事態を想定した指揮官は、命美へ助けを求めた。
(せめて手錠を外して……! そうすれば自分で……)
「だから、手錠の鍵はセラスティアさんが……」
(……っ!)
恥ずかしそうな顔をして目を合わそうとしない命美に、指揮官がハッとした表情を浮かべると……
「大丈夫です、指揮官様」
睦月の落ち着いた声に、指揮官が恐る恐る振り返ると……そこには、尿瓶の口をこちらに向けたまま、両目を瞑る睦月の姿
「ちゃんと、指揮官様の恥ずかしいところは見ないように……睦月はしっかりお目々を閉じて、ご奉仕致しますから」
(そういう問題じゃないッッッ!)
「さあ、指揮官様。遠慮なくこの睦月(の持っている尿瓶)に、指揮官様の熱い滾りを……ぶつけてください!」
(待って睦月! 決して間違ってはいないのかもしれないけどその言い方は駄目! いや、そもそもこんなことしてる時点で駄目だから! 本当に! おかしいからっ!)
「指揮官様、遠慮せず(尿瓶の)中にいっぱいいっぱいびゅ〜びゅ〜って、一滴残らず出しちゃって、いっぱい気持ちよくなってもいいんですよ〜?」
(わざとだよね!? 分かってて言ってるよね!)
「? 何のことでしょう……? さあ、そんな事よりも指揮官様……? 指揮官様のここも、もう溜まりに溜まったものを吐き出したくてお辛いはずでしょうし、指揮官様の下のお世話はこの睦月にお任せください」
誠心誠意、受け止めて差し上げますから!
いやだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッ!!!!!!!
クリスマスイブの基地に、指揮官の絶叫がこだました。
つづく……
17日投稿……クリスマスまで約1週間……
とても間に合わねぇ……というかダッチー、クリスマススキンの実装まだなのです?(24日追記、なぜクリスマススキンの追加がないのか? これじゃあキャラの追加出演ができないのです……ハッ! まさかムジナ対策……?)
セラスティアとのアレなアレについてや、睦月とのアレな展開についてなどと言った内容に関して、文句など色々と言いたいことがあるのは分かります。ですが、そこは抑えてですね……
何か言いたいことがあればお気軽にコメントにてどうぞ(矛盾)
それではまた……