星降る夜のイヴ   作:野生のムジナは語彙力がない

5 / 6
お帰りなさい! 指揮官様!

非公式クリスマスイベント!堂々完結、なのです!


第4話:星降る夜のイヴ

パーティー終了後……

すっかり日も落ち、世界は暗闇に包まれていた。

 

そんな暗闇の中でも、指揮官の運営する基地は眩いばかりの光で溢れていた。基地内の各施設からは人の活動を示すかのように光が漏れ、滑走路の誘導灯もまた、暗闇にポツンとした光を直列に並べて、まるで地面に巨大な一本の線を引いているかのようだった。

 

つい先ほどまで基地の中で繰り広げられていたパーティーの騒がしさも鳴りを潜め、もう間も無く日を跨ごうとしている今、辺りはシンと静まり返っている。

 

まだ雪は降っていないものの、凍えるような風が基地の上空を通過し、空気は極限まで冷え切り、厚い雲が空を覆い尽くしていることから、今すぐにでも雪が降りそうな気配が感じ取れた……

 

(……寒い)

 

今、指揮官の姿は基地の外にあった。

他には誰一人としていない。

 

遠方より来られたパーティーの出席者達が帰宅するのを見送るか、基地のVIPルームへ案内するなりし終わった後……指揮官はセラスティアたちに引っ張られるようにして、赤い光点が並ぶ滑走路上へと連れ出されていた。

 

それから、準備が整うまでここで待つように言われた。

 

しかし、指揮官は朝起きてから着替えなどもさせてもらえないまま拘束・連行されていた。その為、指揮官は今薄着の状態で極寒の中へ晒されている。

 

指揮官はどうにか寒さを凌ごうと、手錠で繋がれた両手を擦り合わせるも、鉄製の手錠が冷気を吸収したことによりヒンヤリと冷たい。下手をすれば皮膚に張り付いてしまうのではないかと思われるほどだった。

 

「先生ー!」

 

待つように言われてから10分が経過した頃……いよいよ指揮官が寒さの限界を感じていたちょうどその時、指揮官は後ろから誰かが走ってくる気配を感じた。

 

(龍馬くん……?)

 

「はぁ……はぁ……よかった、まだ居てくれた!」

 

龍馬は何やら息を切らして指揮官の前へ辿り着くと、「はいこれ!」純真な笑顔を浮かべて指揮官へ一対の手袋を差し出した。

 

(これは?)

 

「あげる、手袋だよ! 指揮官寒いかなって」

 

(自分に?)

 

「うん、付けてみて!」

 

龍馬に促されるまま、指揮官は手袋をつけてみた。手袋は手先から前腕までカバーできるもので、手錠の冷たさを感じなくて済むようになった他、ふわふわな質感がとても暖かかった。

 

「先生、どうかな?」

 

(ありがとう。とっても暖かいよ)

 

「そっか、良かった〜」

 

満面の笑みを浮かべる龍馬に、指揮官が優しく笑いかけていると……

 

「指揮官様」

 

そこへ、スノーが現れた。

 

「これをどうぞ」

 

スノーの手にはマフラーが握られていた。

「失礼します」

そう言ってスノーは指揮官の前に立つと、その首にしゅるしゅるとマフラーを巻き始めた。

 

「指揮官様、お加減はいかがでしょうか?」

 

(うん、いい感じかな。ありがとう)

 

「いえ、少しでもお役に立てたのなら光栄です」

 

指揮官が礼を述べると、スノーは屈託のない笑みを浮かべた。龍馬がくれた手袋も、スノーがくれたマフラーもとても暖かかったが、指揮官にとっては2人の笑顔が何よりも暖かく感じられた。

 

(ところで2人とも、その格好は……)

 

そこで指揮官は改めて2人を見つめた。

2人は今、サンタクロース服を着用している。

ただし、それは一般的な赤色と白色を基調としたものではなく、全体的に黒色をした……いわゆる『ブラックサンタ』と呼ばれるコスチュームだった。

 

そして、この『ブラックサンタ』は、1年前のクリスマスにおいてセラスティア率いるサンタクロース捕獲隊の皆が着用していたものと同じものだった。

 

(これを着ているということは、つまり……)

 

「…………申し訳ありません」

 

そう言ってスノーは俯きがちに謝罪した。

 

指揮官はそこで、パーティーの最中にスノーが命美と話し合っているのを思い出した。今思えば、あれは命美に懐柔されていたのだろう……とすると、龍馬も同様であると考えられた。

 

(いや、別にいいよ)

 

その時、冷たい風が3人の間を通り過ぎていった。指揮官は2人のくれた手袋とマフラーで部分的に防寒してはいるものの、着ている服が薄着であることから、あまりの寒さにうめき声をあげた。

 

「先生、大丈夫?」

 

(うん、でも流石に寒いね……)

 

指揮官は体を縮こませつつスノーと龍馬を見つめた。2人は最新の防寒機能が搭載されたブラックサンタの服を着ている為、そこまで寒くはなさそうだった。

 

「指揮官様、もう少しの辛抱です」

 

寒そうにしている指揮官を見かねて、スノーが体を擦り寄せてきた。彼女にしてみれば、少しでも指揮官に当たる冷気を防ぐことができればいいと思ってのことなのだろう。

 

(……っ)

 

しかし、指揮官にしてみればそれはあまりにも心臓に悪い行動でもあった。横からスノーに右から抱きつかれる形となり、彼女の体温、柔らかさ、息遣い……それらを至近距離で感じられた。

 

(えっと、スノー? 一体何を……?)

 

「こうすれば少しは寒さも和らぐでしょう?」

 

(あ……そ、そうだね)

 

スノーの行動に、指揮官がドキドキとしたものを感じていると……

 

「なるほど、おしくらまんじゅうだね!」

 

それを見ていた龍馬が、無邪気な様子で指揮官の左側へと抱きついてきた。それからスリスリと、まるで自分の体温を分け与えるかのように体を押し付けてくる。

 

ベカスが見たら絶対に羨む光景である。

 

(……おしくらまんじゅうってこんなだっけ?)

 

龍馬が抱きついてくれたお陰で何とか心の平穏を取り戻した指揮官は、抱きしめてくる龍馬に向かったそう聞いてみた。

 

「うん! 寒い日には、よくお姉ちゃんとこうやってたんだ。お姉ちゃんはこれをおしくらまんじゅうって言ってたけど、合ってるかな?」

 

一応、体を押そうとする体はあったものの……しかし、龍馬もおしくらまんじゅうについてはよく知らなかったようで、彼の言葉には疑問符がついていた。

 

恐らく、龍馬の義理のお姉さんである高橋夏美にしても、弟と自然に抱き合う口実が欲しかったのだろう。

 

だがそれ以上に、仲の良い兄妹が寒い日に仲良く抱きしめ合っている様子を想像すると、指揮官は心が温かくなるのを感じるのだった。

 

しばらくの間、3人で抱きしめ合って寒さを凌いでいると……

 

「へぇ……いいご身分ねぇ、指揮官?」

 

(……!)

 

その声に指揮官がハッと顔を上げると、そこには不機嫌そうな表情を浮かべたセラスティアがいた。しかも、露出の多いいつもの服装ではなく、スノーと龍馬がつけているものと同じ、ブラックサンタの服を着用していた。

 

(セラスティア、ああ……これはおしくらまんじゅうって言って、日ノ丸に伝わる伝統的な防寒方法なんだよ)

 

「へぇ、そうなの? 私の目には、どっからどう見ても部下2人を侍らせて公衆の面前で抱きしめ合っているようにしか見えないんだけど?」

 

そう言ってセラスティアは疑り深い目で指揮官のことを見つめた。それに対し、指揮官は(これはただのおしくらまんじゅうであって、やましいことなど何1つない)……と、心の中で念を押した。

 

「はぁ……まあ、そういうことにしておいてあげる。特に、今日くらいは……」

 

(セラスティアも来る? 今なら前と後ろが空いてるけど)

 

「な!?」

 

冗談交じりに指揮官がそう提案すると、セラスティアは顔を真っ赤に染めた。

 

「だ、誰があんたなんかと……」

 

(だよね)

 

セラスティアが少しだけ顔を背けたのを見て、指揮官は小さく溜息を吐いた。

 

「ま、まあ……あんたがどーしても、その……私とおしくらまんじゅうしたいって言うんだったら、やってあげても……」

 

指揮官が少しだけ残念そうな顔をしていると、それを見かねたセラスティアは、指の先をツンツンさせていると……

 

「おぅ! おしくらまんじゅうかー!!!!」

 

その時、セラスティアの脇を走り抜ける影があった。

 

「くらえーーーーーー!!!!」

 

(く、クルス……? ぐはっ!?)

 

指揮官が此方に向かって走ってくる少女……クルスの姿に気づいた時にはもう遅く、正面から腹部に向かってモロに頭突きを食らった。

 

「どうだ!? ふははははははは!!!」

 

苦しそうな指揮官の顔を見上げるようにして、クルスは全く悪びれることなく天真爛漫な表情を浮かべ、さらには頭突きをした場所をバンバンと叩いた。

 

(どうだって、お前さんね……)

 

小さな青筋を浮かべた指揮官が、せめてクルスの餅みたいな頰をつねってやろうと手を伸ばした時……

 

「指揮官様ー!」

 

(うお!?)

 

次の瞬間、ドリスが勢いよく指揮官の背後から飛びかかり、首に腕を回し、まるで蝉のように指揮官の背中へと張り付いた。

 

「ねぇねぇ、おしくらまんじゅうってこうやるのー?」

 

指揮官がクルスのパンチをやり過ごしていると、後ろのドリスが背中に張り付いたままそう聞いてきた。

 

「あの、2人ともそこまでにしておいた方が……」

 

「そうだよ。おしくらまんじゅうっていうのは、もっと優しくして抱きしめてあげないとダメなんだよ!」

 

指揮官の前後に張り付いた2人を、スノーと龍馬が注意した時だった……

 

「あー! 指揮官と抱っこしてる! いいなー!」

 

「指揮官、私も……抱っこ」

 

「なになに? なんか超面白そ〜☆」

 

さらに、それを見ていた蘇瑞とセイン……さらにはキラスターまでもが駆け寄ってきて、まるでテーマパークのアトラクションの順番待ちをする子どもの如く、指揮官の周りへと群がり始めた。[でも並んでないのです……]

 

(ちょっ……待っ、重っ……)

 

やがて年少組の少女たちとキラスターは指揮官の体や両足に蝉のように組みつき、楽しそうな表情を浮かべた。最早、ただじゃれ合っているだけで、おしくらまんじゅうでも何でもなかった。

 

「わ、私の場所は……」

 

その様子を、セラスティアは遠くからただ見つめるのみだった。もっとも、今更指揮官の元へ向かったとしても、空いているスペースなどないのだが……

 

「はぁ……行きたかったら最初から行けば良かったのに」

 

セラスティアの後ろに来た命美が、呆れたような口調で小さく呟いた。

 

「べ、別に……行きたいなんて言ってないわよ!」

 

「あー、はいはいそうですか」

 

命美はめんどくさそうにセラスティアを一瞥した後、群がられている指揮官の元へ近寄り「はい、そこまで!」と言いつつ両手を叩いた。

 

「ほらほら、みんなさっさと降りなさい! 指揮官が困ってるでしょうが……セインにキラスター、貴方たちもよ」

 

命美は普段からクルスの世話をしているお陰か、子どもの扱いは上手で、指揮官にまとわりついていた年少組たちを次々に引き剥がしていった。

 

「指揮官、大丈夫?」

 

(まあ、なんとかね)

 

指揮官は深々とため息を吐きつつ、服の乱れを直した。しかし、おしくらまんじゅうをした甲斐あってか、寒さはそれなりに解消されているようだった。

 

(それにしても……)

 

額に浮かんだ汗を拭いつつ、指揮官はその場にいた全員を見渡した。指揮官を除く、滑走路上に集まった全員が、それぞれ黒いサンタクロースの衣装に身を包んでいた。

 

「どうかしたの?」

 

(なんというか、凄い光景だなって……)

 

「ああ、まあ確かにね……」

 

指揮官の言葉に、命美は苦笑いと共に頷いた。華やかな筈のクリスマスイブの夜に、真っ黒なコスチュームに身を包んだ集団という、何ともカルトじみた光景が目の前に広がっている。

 

さらに基地の方から真っ黒なコスチュームを着たスタッフたちが続々と姿を現し、指揮官の周囲を取り囲むように集結し始めた。

 

「まあまあ、それはいいとして……」

 

命美は気を取り直すかのように咳払いをすると、なにやら集合したスタッフたちを一列に並べ始めた。そんな彼女の様子に、指揮官が何をするのか見守っていると……

 

「ねぇねぇ、指揮官様!」

 

ドリスが指揮官の服の裾を引っ張ってきた。

(なにかな?)

ドリスの話を聞くために、指揮官が腰を落とすと

 

「これあげる〜」

 

そう言ってドリスは赤と白のイヤーマフを取り出し、しゃがみ込んだ指揮官の頭に装着してあげた。

 

(えっと……これは?)

 

突然のことに、指揮官は驚きつつも受け取ると

 

「大事に使いたまえよ! 君ぃ!」

 

さらに、指揮官の背後に回り込んでいたクルスが、指揮官の頭にウシャンカを被せた。[注、ロシアの帽子なのです。なんとなくクルスに似合いそうな見た目をしているのです]

 

(え? あ、ありがと……)

 

2人へのお礼もそこそこに

 

「あたいからは、これあげる〜」

 

「指揮官、これ履いて」

 

さらに蘇瑞がふわふわ素材のあったか靴下を、そしてセインが寒冷地用のブーツを差し出してきた。

 

(履いてって、今ここで?)

 

「勿論!」

「うん」

 

(ん、分かった)

 

2人の言葉に従って、指揮官はその場で履いていた靴を脱ぎ、手錠で苦労しながらも靴下とブーツを履いてみた。

 

(うん……履き心地も良いし、あったかくていいね。ありがと)

 

指揮官がお礼を告げると、蘇瑞とセインはそれぞれ嬉しそうな表情を浮かべた。

 

「アタシからはこれ! アザラシの毛皮で出来たジャケットよ〜☆」

 

最後に残ったキラスターが、指揮官にジャケットを肩にかけてくれた。それにより、吹き付ける冷たい風がシャットアウトされ、指揮官は体の内側から徐々に温かくなっていく気配を感じた。

 

(みんな、ありがとう)

 

指揮官は防寒具をくれた少女たち全員に、改めてお礼を述べた。

 

(それで、これは一体?)

 

おしくらまんじゅうの件のお詫びとばかりに、次々と防寒具を着せてきた少女たちの真意を尋ねるべく、指揮官がそう切り出した時だった。

 

「おにーちゃん!」

 

(っ!?)

 

その時、指揮官の背中に誰かが抱きついてきた。

しかし、彼女の特徴的な声とその呼び方から、指揮官は後ろを振り返らずとも抱きついてきたのがメルルであることに気がつくことができた。

 

(あ、メルル? さっきは大丈夫だった?)

 

「にゃー……さっきは酷い目にあったのにゃー」

 

パーティーで睦月の怒りを買ったメルルは、つい先ほどまで彼女との決死の鬼ごっこを繰り広げていたのだろう……そう語るメルルの声には、どこか疲れているような気配があった。

 

「でも、にゃーはあの程度で捕まるような女じゃないのにゃ! 一旦森の中まで逃げてから、にゃーの能力で適当にあしらってここまで逃げ帰ってきたのにゃ!」

 

(森の中まで行ったんだ……睦月、大丈夫かな?)

 

「にゃー! おにーちゃぁん? せっかくメルルが前にいるって言うのに、他の女の心配するにゃんて! にゃー……それに、ドタバタしてパーティーでのご馳走にもありつけなかったし、こんなに前途多難なクリスマスなんて生まれて初めてにゃ… ……」

 

(ごめんね。お詫びと言ってはなんだけど、ちゃんとメルルの分の料理もキープしているからさ? 勿論、メルルの好きなフライドチキンとかも多めにね)

 

「それは本当かにゃ!? やったにゃ! さっすがお兄ちゃん〜、にゃーのこと分かってるじゃにゃいかにゃ〜〜〜♪ 大好きだにゃ!」

 

先ほどまで疲れを露わにしていたメルルだったが、指揮官がそう告げると、途端にいつもの元気いっぱいな調子に戻るのだった。

 

(よかった、それでこそメルルだ)

メルルの機嫌が良くなったのを確認して、指揮官は安堵のため息を吐いた。それからメルルの頭を優しく撫でてあげながら、密かに周囲を見回すと……メルルの言葉通り、睦月の姿と気配はなかった。

 

「にゃー……お兄ちゃんに撫でられると、とってもきもちくなるのにゃ〜〜〜♪」

 

指揮官に撫でられうっとりとした表情を浮かべるメルルだったが、「あ、そうにゃ!」ふと何かを思い出したかのように声をあげた。

 

「はい、これ、お兄ちゃんにあげるにゃ〜」

 

そう言ってメルルは紙袋を差し出してきた。指揮官が中を開けると、そこには上下セットの黒いインナーが入っていた。

 

(これは……ヒー○テック?)

 

「そうにゃ! にゃーの愛用品だにゃ!」

 

メルルは意外と庶民派なようだった。

 

「さあ! お兄ちゃん、早速着てみるのにゃ!」

 

(じゃあ、そうさせて貰おうかな)

 

そう言って指揮官が着替えをする為に基地の中へ戻ろうとすると……「お兄ちゃん、どこへ行くのにゃ?」と、メルルが指揮官の腕を掴んで引き止めた。

 

(え、だって着替えるから……)

 

「それはダメにゃ〜! この前みたいに、お兄ちゃんは少しでも目を離すと何をするか分からないから、にゃーたちの目の届く範囲で着替えるのにゃ!」

 

(え? それってつまり……)

指揮官が恐る恐る尋ねると、メルルは嬉々とした様子で……

 

 

 

「ここで着替えるのにゃ!」

 

 

 

(戦略的撤退ッッッ!!!)

 

全てを察した指揮官は自分にブーストをかけ、ウァサゴAWAKE並みの素早い動きでスタッフたちの間をすり抜けると、そのまま基地の出入り口めがけて脱兎の如く駆け出し……

 

「逃がさないのにゃ!」

 

(っ!?)

 

しかし、メルルはスキル『緊急回避』を応用して指揮官の逃げた先に瞬間移動すると、指揮官を抱きしめて再び瞬間移動し、元の位置へと帰還した。

 

そういえば朝もこんなことがあったような……指揮官はデシャヴを感じつつも、メルルの抱きしめから逃れようと必死にもがいた。しかし、小柄な体格にも関わらずメルルの力は凄まじいもので、指揮官の体をがっしりと抱きしめて離そうとしなかった。

 

「こら、お兄ちゃん! 動いちゃダメにゃ!」

 

(じ、じゃあいいよ! 着替えなくても!)

 

「それはダメにゃ! 男に二言はないにゃ!」

 

(この寒い中で着替えろと!?)

 

「大丈夫にゃ、早着替えすれば寒いのは一瞬にゃ!」

 

(み、みんなの見ている前で裸になれと!?)

 

「だからそう言っている、にゃ!」

 

そう言ってメルルは指揮官の着ていたジャケットを引き剥がし、シャツのボタンに手をかけてきた。

 

(め、命美……助けて!)

 

メルルに拘束されつつも、指揮官は命美へと視線を送った。風紀委員である彼女なら、上司にセクハラを働くメルルを厳しく叱りつけてくれるだろう……指揮官がそう思っていると

 

「はぁ……メルルさん?」

 

命美はため息を吐くと、ポケットから何かを取り出した。

 

それは一本の鍵だった。

それも、一般的な扉を開ける為のものではなく……あまり見ない、珍しい形をした銀色の小さな鍵だった。

 

「指揮官の手錠の鍵よ。これがないと、指揮官を着替えさせられないでしょ」

 

「あ、そうだったにゃ!」

 

(おかしいよね!?)

 

命美の言葉に、指揮官は絶叫した。

命美は少しだけ顔を赤くしているが、それは実質的に風紀委員が猥褻物陳列罪を許容しているということになる。しかも、子どもたちもいる前だというのに……

 

「フフ……何か面白そうなことをしているわねぇ」

 

その時……スタッフたちの間から、妖艶な気配を漂わせた女性が、命美の前へと姿を現した。

 

(げ!? アマンダ!?)

 

その女性……アマンダを見て、指揮官は悲鳴をあげた。

 

「あら、このアタシを見て悲鳴をあげるなんて失礼ね〜」

 

アマンダは微笑みを浮かべたが、その瞳は指揮官という獲物を前に、熱っぽい色が浮かび上がっていた。彼女は命美から鍵を受け取ると、指揮官の手錠の鍵を外した。

 

「丁度いいにゃ! お兄ちゃんを脱がせるの手伝うにゃ!」

 

「いいわよぉ〜男を脱がせるのは得意なんだから」

 

(…………っ!)

アマンダの言葉に、指揮官は青ざめた。

 

「あの、セラスティアさん……本当に止めなくていいんですか? あれ、どう見てもセクハラですよね?」

 

「うん……でもそういう約束だったから、今更止めろなんて言えないし……」

 

公衆の面前で、2人の女性に脱がされる指揮官を前に……命美とセラスティアは何やら微妙な顔をしてそれを見つめていた。

 

「そうですね……でも、風紀委員としての罪悪感が」

 

「まあ、今日くらいはいいでしょ? それよりも、子どもたちに指揮官の裸を見せないように誘導しましょ」

 

そう言って2人は指揮官の着替えをドリスやクルスたち年少組に見られないよう、周りのスタッフたち(ソフィアやカロルなど)と協力して壁を作るように並んで視界を妨げた。

 

「わぁ! 真っ暗〜!」

 

「あの、あれは止めなくていいのですか?」

 

命美の指示に従い、スノーは龍馬の視界を両手で覆ったが、その顔はどこか納得がいっていないような感じだった。

 

「ま……まあ、いいんじゃないの?」

 

「はわわわ……閣下が、あられもない姿に……」

 

年少組たちの前で壁を作っているソフィアとカロルは、顔を真っ赤にしつつも、チラチラと指揮官が脱がされている様を目撃していた。

 

「うわ、これはかなりショッキングな光景ね……とてもシャロみたいなお子様には見せられないわね」

 

「誰がお子様よ! そういうアンタだってちんちくりんじゃないのよ! 曦夜!」

 

今まさに脱がされつつある指揮官を前に、曦夜とシャロは言い争いを始めた。最早、恒例行事である。

 

「いいぞー、脱げ脱げ〜☆」

 

「脱げ〜」

 

キラスターとセインは指揮官が脱がされる様をテンション高めな様子で観戦していた。

 

 

 

滑走路の上に集まったスタッフたちは、脱がされる指揮官を前にそれぞれ違った反応を見せていた。だが、誰1人としている指揮官を助けようとする者はいなかった。

 

 

 

(なんで!? なんで誰も助けてくれないの!?)

 

 

 

メルルは とアマンダに押し倒された指揮官が魂の叫びを口にした時だった。ゆらり……と、何処からともなく強烈な殺気が漂ってきた。

 

 

 

「何を……している?」

 

 

 

それは恐ろしいまでに響き渡る声だった。

 

強烈な寒気を感じ、一同が振り返ると……指揮官たちから少し離れた滑走路の中心に睦月がいた。つい先ほどまで森の中を彷徨っていたのだろう、彼女の服にはいくつかの葉っぱが張り付いている。

 

(睦月……)

 

この状況に指揮官は当初、睦月が自分のことを助けに来てくれたのだと思っていたが、どうやら違うようだった。

 

彼女の瞳は完全に光を失い

顔には影が落ち

その体からはドス黒いオーラを放っている。

 

「指揮官様ぁ? この睦月というものがありながら、どうしてそこの雌猫たちとイチャイチャしているのですかぁ〜?」

 

(イチャイチャしてるように見える……?)

 

「これは……お仕置きが必要ですね……」

 

そう言って睦月は右腕を基地の方向へかざし、念動力を応用して形成したトラクタービームを右腕に纏わせると、それを基地めがけて放った。

 

(……!?)

 

何をする気なのかと指揮官たちが見守っていると、次の瞬間……基地の方向から地響きが聞こえ始めた。地響きは少しずつ大きさを増し、やがて小さな地震となって指揮官たちの体を揺らし始めた。

 

(まさか……やめろ睦月ッッッッ!!!!!)

 

睦月のやろうとしていることを察し、指揮官は絶叫した。

 

 

 

(格納庫は駄目だッッッ!!!)

 

 

 

立ち上がった指揮官がそう叫んだ時には既に遅く……

ボコン……!

睦月の念動力の影響で、司令部に併設された巨大な格納庫の内の1つが、徐々に空中へ浮かび上がり始めた。

 

格納庫はその大きさもさながら、内部には数十機ものBM、戦闘機、戦車が格納されている他、さらに機体整備用の地下ブロックも存在し、その全てをトータルした重量は計り知れない……なのだが、この少女はそれをたった1人の力で持ち上げていた。

 

「「「うわあああああ!?!?」」」

 

格納庫が浮かび上がるという信じられない光景を目の当たりにして、滑走路に集まったスタッフたちから悲鳴が上がった。

 

「あはっ……睦月は凄いでしょう?」

 

狂気に満ちた表情のまま、睦月は笑みを浮かべた。

 

「これも全て指揮官様との修練の賜物! 指揮官様の為ならば、睦月はいくらでも強くなることができます……これぞまさしく『2人の愛の結晶』。ふふふふふ……今ならA.C.E.学園でも投げられそうです……敷地内ごと!」

 

「嘘ぉ!?」

 

睦月の言葉に、目を丸くしたセラスティアは慌てて指揮官へと振り返った。

 

「あ、アンタ……なんてもの作り上げてるのよ!?」

 

(うーん、凄いね……)

 

睦月の持つ念動力はツクヨミの能力によってある程度の制御が出来るようになっていたのだが、それと同時に念動力の増幅も可能にしていた。

 

しかし、そのツクヨミは現在この基地にはいなかった。つまり、睦月は本当に自分自身の力だけで格納庫を浮かせるほどの念動力を発動させていたのだ。

[ツクヨミの存在意義って……]

 

その事実を前に、指揮官は……

(睦月も成長したんだね……)と、しみじみ思うのだった。

 

「感心している場合じゃないでしょうが!?」

 

セラスティアが悲鳴をあげるも、格納庫の上昇は止まらない……上層部は既に天高く上り、もう間も無く地下ブロックの全てが掘り起こされようとしていた。

 

あんなものは投げられてはたまったものではない。衝撃で滑走路に大穴が空いてしまうのは当然だが、何よりも確実に押し潰されてしまう。

 

「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

流石にクリスマス・イヴの日に格納庫に押し潰されたくはないのだろう……いや、クリスマスじゃなくてもそうなのだが、スタッフたちが蜂の子を散らしたように逃げ惑い始める。

 

「くっ、かくなる上は……スノー! カロル!」

 

そんな中でも命美は冷静だった。子どもたちを安全なところへ避難させ終えると、スノーとカロルの名前を呼んだ。

 

「『プロトコル・キャストオフ』発動よ!」

 

「は、はい……!」

 

「了解しました!」

 

すかさず命美がそう告げると、それに反応したスノーとカロルがそれぞれ何処からともなく剣を取り出し、それから指揮官の前へと跳躍した。

 

(え? 何?)

目の前に降り立った2人を見つめていると……

 

「申し訳ありません! 指揮官様!」

 

「閣下! お覚悟を!」

 

そう言って2人は……指揮官めがけて剣を振り下ろした。

 

(な……なんで……!?)

 

次の瞬間、目にも留まらぬ速さで繰り出された2人の剣技は、指揮官の着ている服だけを正確に切り裂き、一瞬にして指揮官の絶対守護領域だけを残して丸裸にさせてしまった。

 

『プロトコル・キャストオフ』

それは、暴走した睦月を落ち着かせるために、彼女の目の前で指揮官を丸裸にするという、対睦月用沈静化オペレーションの1つだった。

 

いや、むしろ活性化するんじゃ……

普通に考えるとそう思われるのだが、しかし、これはあくまでも対睦月用のプロトコルなのだ。それ故に……

 

「し、指揮官様ッッッ!!!!!????」

 

プロトコルは睦月に対して効果抜群だった。

素っ裸の指揮官を目の当たりにした睦月の顔は一瞬で真っ赤になり、まるで毒気が消え去るかのように黒いオーラも空中に霧散した。

 

「し、指揮官様の裸……裸……裸……?」

 

睦月の放った念動力が少しずつ力を失い、格納庫が落下し始める。やがて小さな地響きと共に格納庫は元の位置に収まった……

 

「きゃ〜〜〜〜〜〜〜」

 

それから睦月は目をグルグルと回し、やがて沸騰したヤカンの如く頭のてっぺんから蒸気を噴き出し悲鳴をあげると……そして、そのままひっくり返って意識を失った。

 

(た、助かった……)

 

それを見て、指揮官は小さくため息を吐いた。

 

「その、ごめんなさい指揮官……」

 

命美が申し訳なさそうな顔をして謝罪する。

 

(いや、いいよ……状況が状況だけにね)

 

何がともあれみんなが無事でよかった……指揮官がそう思って辺りを見回すと、その場に残っていた全員の視線が自分に向けられていることに気づいた。

 

(……?)

 

それはチラチラとしたものだったり、熱っぽかったり……自分へと注がれる様々な視線を前に、指揮官が疑問符を浮かべていると……

 

「ねぇ指揮官……」

 

指揮官の背中を、セインがチョンチョンとした。

それから、指揮官の下半身を指差し……

 

 

 

「隠さないの?」

 

 

 

(……ッッッ!!!)

セインの言葉にハッとなった指揮官は、慌ててその場にうずくまった。服だけを切り裂いたかのように思われた2人の斬撃は、時間差で指揮官の履いていた最後の砦を真っ二つに切り裂いてしまっていた。

 

(さ、寒い……メルル! アマンダ! 服を……!)

 

「おー! おにーちゃん、いい体してるのにゃ!」

 

「ウフフ……私好みのイイ、カ・ラ・ダね〜」

 

服を所望する指揮官に対し、メルルとアマンダは嬉々とした様子で指揮官の体にベタベタと触ってきた。

 

(触らないで……というかセラスティア! 空撮用ドローンを使って写真を撮ろうとするんじゃない!)

 

「わ、私がそんなことするわけないじゃない!」

 

そう言いつつも、セラスティアが脳波コントローラーを使用し、何もしていない風を装ってドローンを操作しているのを見逃す指揮官ではなかった。

 

「その……本当に申し訳ありません」

 

「閣下、これを……」

 

スノーとカロルが破けた指揮官の服を差し出してきた。しかし、丹念に切り裂かれ散り散りになった布切れに、最早服としての価値はなかった。

 

(いや、それはいいから……とにかく服を……)

 

幸いなことに、先ほどスノーや年少組の子たちがプレゼントしてくれた手袋やマフラー、ウシャンカ、ジャケットなどは2人が配慮してくれたお陰か、切り裂かれていなかった。

 

 

 

[以前、ラッキースケベを所望するっていうコメントがあったので書き起こしてみたのです。どうですか? byムジナ]

↑違う、そうじゃない

 

 

 

この後、医務室で意識を取り戻した睦月にはカバーストーリー『夢〜♪ それは夢〜♪ 夢〜♪』が適用され、睦月がそれを信じたことにより事態は完全に収束することとなった。

 

なお、夢の中で見た指揮官の裸を思い出し、睦月が医務室のベットの中でしばらくの間、枕に顔を埋め、悶々と時を過ごしていたのは言うまでもなかった。

 

(もう、お嫁に行けない……)[2回目]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンサーガ

非公式季節イベント『星降る夜のイヴ』

第4話:星降る夜のイヴ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後……

 

着替え終えた指揮官が戻ると、滑走路上は黒いサンタクロース服を着た人で溢れかえっていた。

 

睦月の脅威から逃げていたスタッフたちもそうだが、いつのまにか機械教廷やヴァルハラ同盟面々まで加わり……まるでお祭りの前日のような、ちょっとした騒がしさに包まれていた。

 

(スロカイ様……?)

 

そんな中で、指揮官はスロカイがみんなとは少し離れた場所で、1人佇んでいることに気づいた。珍しいことに教廷騎士の護衛も付けず……何やらジッと、空の一点を見上げている。

 

(…………)

 

声をかけようとスロカイの元へ近寄った指揮官だったが、彼女へ手を伸ばしかけたところで思わず言葉を失った。

 

スロカイは今、みんなと同じように黒いサンタクロース服を身につけていた。[いや、正確には昨年にセラスティアが開発したものをベースに、マント部分が豪華になっていたり、全体的にシルクの素材が使われていたりと様々なカスタムが施され、さらにクラウンやネックレスなどといった装飾品も追加されている]

 

だが、いつもの赤色を基調としたものではなく、ダークな色調の服を身につけたスロカイからは、いつもとは一味違った神聖な雰囲気が発せられていた。

 

基地から漏れる照明の光を背に受け、暗闇の中で光り輝き、そして物憂げに夜空を見上げるその姿は、いつにも増してミステリアスで何とも言えない魅力があった。

 

「なんだ凡人、余に見惚れていたのか?」

 

指揮官の視線に気づいたスロカイが、指揮官へと振り返って不敵な笑みを浮かべた。

 

(ええ、どうやらそのようです)

 

「……っ?」

 

指揮官が正直に告げると、スロカイは少しだけ驚いたような表情を浮かべた。しかし、それも一瞬のこと……すぐさま不敵な笑みを浮かべる彼女へと戻った。

 

「そうか……凡人に言われるのなら悪い気はしないな。まあそれは良いとしてだ、凡人……余の隣に来い」

 

そう言って、スロカイは指揮官を手招きした。

 

(どうかされましたか?)

 

「いや……何というべきか」

 

スロカイは少し唸った後、空の一点を指差した。

 

「分かるか、凡人……あそこに何かいるようなのだが」

 

スロカイが指差した方向へ指揮官が視線を送るも、そこには厚い雲に覆われた夜空が広がっているだけで、特に何かがいるようには見えなかった。

 

(何故に、そう思われたのですか?)

 

「いや、ただ何となくな……」

 

スロカイはポツリとそう答えた。

それからスロカイは、感覚的に空に『何か』がいるということが分かるものの、あらゆるレーダー、センサーを用いたアンチステルスを試みても……結局、空の上の『何か』を看破することができなかったということを告げた。

 

(そうですか。アレに気づくとは流石ですね……)

 

「凡人……アレはやはりお前の差し金か」

 

指揮官はそこでポケットから端末を取り出し、端末の裏面に搭載されたカメラを起動させ、スロカイへと差し出した。

 

(これを通して見てください)

 

「うん?」

 

言われた通り、スロカイはカメラ越しに空を見上げた。そして、次の瞬間……彼女の瞳に驚愕の色が映り込んだ。

 

「これは……船か?」

 

(はい。我が軍で開発中の空中戦艦です)

 

スロカイの隣に立ち、同じ画面を覗き込みながら指揮官はそう説明した。画面の中には、圧倒的な巨体を誇る黒い船体が空中に停泊しているのが目視出来た。

 

「大きいな……以前、チュゼールの地下空間でもこれと似たような船の映像を見たが、それよりも遥かに巨大だ……」

 

(まあ一応、発掘された古代技術を参考にはしていますが、これはほぼオリジナルと言っても過言ではないでしょう)

 

「しかし、ハンニバルのアンチステルスを使用しても看破できなかったのはどういうことなのだ? それに、これだけの大きさの船を隠匿するなど……」

 

(はい、空中戦艦に使われているのはただのステルス装置ではありません。既存のステルスにはない……全く新しいシステムを使用しています)

 

「ほう? それは一体どういうものなのだ?」

 

スロカイは興味深そうに指揮官を見つめた。

 

 

 

指揮官は空中戦艦が持つ独自のステルスシステムについて説明を始めた。指揮官の話を要約すると、空中戦艦の偽装には2つのシステムが使用されていた。

 

1つ目は『クラウドディスチャージャー』というシステム。これは戦車などによく搭載されているスモークディスチャージャー(煙幕)を応用したシステムで、単純に船体そのものを外部からのレーダーやセンサーの効果が及ばない特殊なスモークで覆うことで、人や機械の目から隠れるという……要するに、空中戦艦を雲へと擬態させるシステムだった。

 

これにより、空中戦艦はあらゆる空での隠密行動が可能になり、スクランブルを喰らうことなく敵の中枢へと侵入……戦艦特有の圧倒的な攻撃力で、内部から敵を殲滅することを可能としていた。

 

ただし『クラウドディスチャージャー』は雲に化けている以上、雲に似つかわしくない動きをしてしまうと簡単に偽装が見抜かれてしまうという欠点があった。なので完璧な偽装を発揮するには大気の流れに合わせてでしか動くことができず、空中戦艦は艦尾に巨大なスラスターがあるにも関わらず、常に1方向へレシプロ機以下の速度でしか航行することができないというジレンマを抱えていた。

 

それを解決するべく空中戦艦に組み込まれたのが2つ目のシステムだった。

 

しかし、空中戦艦に秘められた2つ目のシステムについて長々と解説したいところなのだが、この物語はあくまでも非公式クリスマスイベントである。

 

早い話が、折角のクリスマスなんだから難しい話は抜きにして楽しくいこうやっていこう!……ということなのです。

 

2つ目のシステムについてひとことで言い表すとするのなら、人の『認識』に関するフィルターを応用したものである。

これ以上の書き起こしはカットします。

まだ語るべき時ではない……ってことなのです。

 

 

 

「ほお、それは凄いな」

 

指揮官の説明を一通り聞き終えたスロカイは、尚もまじまじと端末上の空中戦艦を見つめていた。

 

(はい。ですがこのステルスシステムも完璧ではありません。光学迷彩のような最先端の技術ではなく、原始的な技術を応用しているので……現に、この端末にはその2つのシステムを看破できるシステムが搭載されています)

 

「対策は可能というわけか……だが、何でもかんでも最先端技術ばかりに酔いしれた今の世界では、このような技術は理解不能だろうに……そういう意味では、これもまた最先端技術と呼べるのだろうな?」

 

スロカイの笑みに、指揮官は小さく頷いた。

 

(それに、雲に擬態するという特性上……宇宙[そら]ではこのシステムは使えません。そもそも、雲がないので)

 

「宇宙[そら]ねぇ、相変わらず……凡人の考えることは常識の範疇を超えているな。これだけの大きさのものを宇宙へ浮かべるなど、今の技術力では不可能だろうに」

 

(ですが、みんなの力を合わせれば可能だと考えています。実を言うと、この空中戦艦の設計にはシンシア様も一枚噛んでいたりします)

 

「シンシアが? ああ、そういえば機械教廷はお前のところの設計局と共同開発を行なっていたんだったな……思えば、ハンニバルもその賜物だったかな」

 

スロカイは端末を下ろして指揮官のことを見つめた。

 

共同開発計画……それは文字通り、世界各地の優秀なエンジニアたちを集め、指揮官の管理の下、共同で兵器開発を行おうとする計画だった。主なメンバーは合衆国からはセラスティア、日ノ丸からは五十嵐命美、ソロモンからはセイン、ヴァルハラ同盟からはアン、そして機械教廷からはシンシアが参加していた。

 

(はい。テクノアイズのトップを務めているだけあって、シンシア様はとても優秀なお方だと、ウチのスタッフたちの間では評判になっています)

 

「待て、それは誰が言っていた?」

 

(セラスティアです)

 

「そうか、お姉ちゃんか……」

 

その名前を聞いて、スロカイは小さく笑った。

 

「フッ……あんな古臭い女でも、しっかり凡人の役に立っているのだな?」

 

(自分の目から見ても、シンシア様が持つ技術力は大変素晴らしいものだと思っていますよ。スロカイ様は良い臣下をお持ちですね……)

 

「良い臣下ねぇ……凡人はそう言っているようだが?」

 

スロカイが発したその言葉は、指揮官に向けられたものではなかった。その時、指揮官は背中に何者かの気配を感じた。

 

(……シンシア様?)

 

指揮官が振り返ると、そこには小柄な女性が佇んでいた。それは金髪で、モノクル(片眼鏡)を付けたゴスロリ風の女性……それはまさしく、指揮官とスロカイの話の中に出ていたテクノアイズの長、シンシアだった。

 

「別に、何とも思っていませんが?」

 

シンシアは淡々とした様子でそう告げた。

 

(ああ、シンシア様……お姿がお見えにならなかったので、今年も来てくださらないのかと思っていました)

 

「別に、私は異教徒の風習になど興味はありません。ただ、この子がどうしてもここへ来たいからと言って、仕方なく付いてきたまでです」

 

そう言ってシンシアがサッと身を翻すと、彼女の背後からもう1人小柄な……本当に子どものような見た目をした少女が姿を現した。

 

(リルル……?)

 

「ねえ、ここにはサンタさんっていう人が出るんでしょ?」

 

紫色の髪の毛の少女……リルルはチョコレートをぽりぽりと齧りつつ、指揮官に向かってそう尋ねた。

 

(あー……一応ね?)

 

「サンタさんは何でも好きなものをくれるんだよね?」

 

(何でもって訳じゃない……と思うけど、ウチのサンタさんなら大抵のものはプレゼントしてくれると思うよ?)

 

「じゃあ、サンタさんはリルルにティラミスとザッハトルテとムースケーキをくれるんだよね?」

 

(えっと……傷みやすいものはちょっと……)

 

「そうじゃなくてもいい。でもキャンディとかチョコレートとかプリンとかショートケーキとかアップルパイとかゼリーとかパンケーキとか綿あめとかクッキーとか月餅とかキャラメルとかチーズケーキとか黒砂糖とかラスクとかロールケーキとかシュークリームとかドーナッツとかチョコパイとかバームクーヘンとかボストンクリームパイとかクレープとかマンゴームースとかスフレとかあずきバーとかカヌレとかマカロンとかピュイ・ダムールとかジャンブレットとかザレーティとかシフォンケーキとかベニエとかカッテージチーズとかオペラケーキとかクレームブリュレとか(略)……リルルにくれるんだよね?」

 

(えっと……そうだね、リルルが良い子にしていたらサンタさんがプレゼントしてくれるかもね?)

 

キラキラと目を輝かせながら自分の食べたいお菓子を次々と挙げていくリルルに、指揮官はまるで子どもに言って聞かせるようにそう告げた。

 

「うん分かった。じゃあリルル、良い子にしてる〜」

 

そう言ってリルルは非常に可愛らしい笑みを浮かべた。

 

「はぁ……この子ったら、去年のクリスマスの話を聞いてからというもの、今日という日をずっと心待ちにしていたのよ。お菓子なら、毎日飽きるほど食べているというのに……」

 

「お菓子は飽きない〜♪」

 

満面の笑みを浮かべるリルルに、シンシアはウンザリとしたような視線を送った。

 

「そういうわけですから、サンタクロースには苦労をかけると思うけれど……本当にいいのかしらね?」

 

(あはは……いいんじゃないですかね)

 

指揮官は小さく笑いつつ、チラリと横を見た。

「…………」

すると、昨年のことを知っているスロカイがじっとりとした目で指揮官のことを見つめていた。

 

「それでは、わたくしはこれにて……」

 

「待て、シンシア」

 

立ち去ろうとしたシンシアをスロカイが呼び止めた。

 

「まだ何か?」

 

「もののついでだ、1つ聞きたいことがある」

 

「何でしょう?」

 

「テクノアイズの実権を握り、極端な拡大主義者で、それまで教廷の外の技術に興味を持っていなかったお前が、凡人たちとの共同開発計画に参加したのは何故なのだ? ……今思えば、引きこもりがちのお前にして珍しい話だよな?」

 

皮肉を交えたスロカイの問いかけに、シンシアは小さなため息を吐いた。

 

「別に……ただ、機械教廷の繁栄の為に、たまには外の技術に目を通しておくのも一興だと思ったまでのこと。そう……全ては機械神の御心のままに、それ以外に理由なんてありませんわ」

 

「ふぅん……実に合理的な判断だな?」

 

「ええ。わたくしの判断に間違いなんてありませんもの」

 

スロカイの率直な感想をサラッと受け流し、シンシアはリリルを従えて、指揮官とスロカイに背を向けてその場から立ち去り始めた。

 

「ただ……そうですね」

 

だが、その途中で足を止め、2人へと振り返った。

それから、指揮官のことをジッと見つめ……

 

「わたくしは雑種どもが編み出した雑多な技術などに興味はありません。ですが、そこな凡人が……これから先どのような道を歩もうとしているのか、それに関しては大いに興味があった…………とでも言っておきましょう」

 

最後まで淡々とした調子を崩すことなくそう言い切ると、シンシアは身を翻してリルルと共に格納庫へと歩いて行った。

 

「聞いたか? 凡人」

 

2人の姿が見えなくなったのを見計らってから、スロカイが指揮官の腕を肘でつついた。それからニヤニヤとした表情を浮かべ、指揮官へ視線を送った。

 

「お前、奴に気に入られているようだぞ?」

 

(そうなんですか?)

 

「そうさ。なにせ奴がただの凡人に興味を持つことなど、今の今までなかったのだから……全く、面倒な女に目をつけられたものだな?」

 

(あはは……)

 

シンシアに対するスロカイの言い方に、指揮官は思わず苦笑いを浮かべた。

 

「余だけではなく、あ奴も変わっているのだ。そしてそれを成したのは、凡人……お前の存在があったからこそなのだろうな」

 

スロカイは手元の端末に視線を落とし、小さく呟いた。

 

(スロカイ様、そろそろ端末をお返しください)

 

「いや、もう少し待て……ところで凡人、これは写真を撮ることができるのか?」

 

指揮官が端末を返してもらおうと手を伸ばすも、スロカイはサッとその手を避けて、代わりにそんなことを聞いてきた。

 

(ええ、まあ。カメラは内側にも設定できます)

 

「そうか、ならば……」

 

スロカイはそう言って端末の使い方を確認する為に、少しの間だけ端末の中を覗き込んだ……一体何をする気なのだろうかと、指揮官が画面を覗き込もうとすると、それに気づいたスロカイは指揮官に背を向けてしまった。

 

(あの、スロカイ様?)

 

「待てと言っている……よし、これで良いはずだ」

 

そう言ってスロカイは少しだけ指揮官へ振り返ると……次の瞬間いきなり後退し、指揮官の元へ背中を押し付けてきた。

 

……何を?

突然のことに指揮官が驚いていると……

 

……カシャ

 

スロカイの手の中で、眩いフラッシュが焚かれると共に、カメラのシャッター音が鳴り響いた。

 

(あの……?)

 

「さて、どうかな?」

 

疑問符を浮かべる指揮官を背後に、スロカイは指揮官と体を密着させたままカメラロールを開き、撮影した画像の確認を始めた。

 

「ぷっ……ひどい顔だな、凡人」

 

スロカイは小さく笑って、端末を指揮官へと返却した。端末には微笑みを浮かべたスロカイと、驚きのあまり微妙な表情を浮かべた指揮官の姿が鮮明に記録されていた。

 

(ほんとですね)

 

それを見て、指揮官も思わず笑みをこぼした。

 

「そうだろう? だが、初めてこのカメラを扱うにしては上手く撮れていると思わぬか? 故に、この愉快な画像を消すことは許さぬ……絶対に消すなよ? 凡人」

 

(承知しました、スロカイ様)

 

そうして、2人は静かに笑いあった。

そして少しの間、寒空の下でお互いに体温を感じあっていると……そんな2人の元へ近づく者があった。

 

「あの、陛下……お取り込み中、失礼します」

 

(……!)

 

背後から聞こえたその声に、指揮官は思わずスロカイから一歩退いた。それから2人が振り返ると、そこには銀髪の教廷騎士……マティルダの姿があった。

 

その場の雰囲気に流されて密着してしまっていた2人だったが、スロカイにはマティルダという正式な恋人がいるのだ。その為、マティルダの顰蹙を買ってしまったのではないかと、指揮官が戸惑っていると……

 

「どうした、マティ?」

 

「はい、実は……」

 

だが指揮官の懸念の反して、マティルダは特にこれといって変わりない様子でスロカイと接し始めた。

 

……あれ、怒らないの?

指揮官がそう思った時だった。

ふと、そこで滑走路に集まったスタッフたちの様子が先ほどよりも騒がしくなっていることに気づいた。

 

「御二方、あの塔の上に……!」

 

そう言ってマティルダは、司令部から少し離れたところにある鉄塔の上を指差した。いつからそこにいたのだろうか……そこには、大きな白い袋を抱えた人物が佇んでいた。

 

赤色を基調とした服装と帽子、太っちょな体型、真っ白なおひげを蓄え、顔は帽子とおひげに隠れてよく見えない。

 

(あれは……)

 

その姿を見て、指揮官は息を呑んだ。

 

「出たわ! サンタクロースよ!」

 

スタッフたちの中心にいたセラスティアが、塔の上のサンタクロースを指差して叫んでいるのが見えた。

 

「ふん、ようやくお出ましか」

 

(スロカイ様、自分たちも向かいましょう)

 

指揮官とスロカイはサンタクロースの元へと急いだ。

 

 

 

[以下、茶番なのです]

 

 

 

「サンタクロース! ここであったが3年目! 今年こそあんたを取っ捕まえて、その正体を明らかにしてやるんだから! だから……さっさと降りてきなさいよー!」

 

セラスティアはメガホンを片手に、塔の上のサンタクロースめがけて声を放っている。

 

(セラスティア、状況は?)

 

「ああ指揮官……いや、どうもこうもないわよ、さっきからあいつ、塔の上から見下ろしてくるだけで何もしてこないのよ……しかも、今年は1人だけみたいね」

 

指揮官がスタッフたちの中に入り込み、その中心にいたセラスティアとそんなやりとりを繰り広げていると……

 

「あ!?」

 

(……!?)

 

それを見計らってか、サンタクロースの隠れた目から鋭い光が放たれると……次の瞬間、サンタクロースの体が塔の上から落下を始めた。

 

 

 

『オープン・ゲット!』

 

 

 

その言葉が放たれた刹那、信じられないことが起こった。指揮官たちの目の前へ落下を続けるサンタクロースの体が、空中でいくつかの塊に分裂してしまったのだ。

 

「む……?」

 

分裂した塊が次々と地面に着地していく……すぐ目の前に落ちてきたそれらを見て、スロカイは眉を潜めた。

 

「なあ、お姉ちゃん」

 

「な、なによ?」

 

「サンタクロースというのは、こんなに小さなものだったか? しかも、8人もいるのか?」

 

「そ、そんなわけないわよ……多分」

 

2人だけではなく、その場にいた全員に動揺が走った。なぜなら、今まで1人だけだと思っていたサンタクロースが合計で8体……滑走路上に出現したからだ。

 

それもサンタクロースをデフォルメしたような形で、1体の大きさは30センチほどしかなく、それぞれ小さな袋を背中に担いでいた。

 

『…………』

ただならぬアトモスフィアを放ち、小さなサンタクロースはスタッフたちを一望した。

 

「え? え?」

 

「な……何なのよ、コイツら?」

 

8体の小さなサンタクロースたちを前にして、シャロと曦夜が戸惑ったような声を上げた。

 

「なるほど、また偽物というわけね!」

 

サンタクロースたちを偽物だと判断したセラスティアは、そう言いつつ隣の指揮官へと視線を送った。

 

「まさかこんな手を使ってくるなんてね……」

 

(いや、こんなの知らないんだけど)

 

「またまた〜、しらばっくれちゃって!」

 

首を振って否定した指揮官だったが、セラスティアはそれをブラフと受け取ったのだろう、少しだけ怪訝そうな表情を浮かべた。

 

……いや、本当に知らないんだけど

だが、指揮官は心の底からそう思っていた。

 

確かに、本物のサンタクロース……もとい、喫茶店バビロンのメンバーたちには、今年もサンタクロース役を演じて貰うべく、指揮官は予め彼女たちに依頼していたのだが、8体の小さなサンタクロースの出現は、依頼した際に伝えた作戦内容と違うものだった。

 

「まあ何でもいいわ! とにかく捕まえるのよ!」

 

セラスティアの指示で、スタッフたちは小さなサンタクロースを捕まえるべく一斉に動き始めた。

 

『…………』

 

目の前に迫り来るスタッフたちを前に、しかしサンタクロースたちは慌てふためく様子を見せることなく身構え……その内の3体が背中に担いでいた袋の中から、大きな黒い何かを取り出してきた。

 

「「「…………!?」」」

 

サンタクロースたちが取り出したそれを見て、スタッフたちは一斉に足を止めた。8つ束ねられた長い砲身、黒い銃身、本体から長く伸びた弾倉は背中の袋に繋がっている……

 

 

 

それは誰がどう見てもガトリング砲だった。

その凶悪な見た目に反して、それを持っているのがサンタクロースという、とてもシュールな光景である。

 

 

 

サンタクロースを捕まえようとして、まさかガトリング砲を向けられると思ってもみなかったスタッフたちは慌てた。

 

「ちょっ……!? サンタクロースが出していいシロモノじゃ……」

 

セラスティアは目を丸くして叫んだ。

 

『…………』

 

1番先頭にいたサンタクロースが「やれ」と言っているかのように顎をしゃくり上げると、3体のサンタクロースたちはガトリング砲のトリガーを引き絞った。

すぐさま砲身が回転を始める。

 

「ぎゃあああああ!?」

 

やがて、3機のガトリング砲から放たれた砲弾が逃げ惑うスタッフたちを次々と襲った。巨大な砲弾の直撃を受け、スタッフたちは絶叫した。

 

「スロカイ様! お下がりを……!」

 

「いや、その必要はない」

 

マティルダは慌ててスロカイを逃がそうとするも、それに対してスロカイは全く慌てた様子もなく堂々とその場に佇んでいた。

 

「落ち着けマティ、あれを見ろ」

 

「…………え?」

 

スロカイの言葉に、マティルダは振り返った。

 

そこにはガトリング砲の餌食となり、地面に膝をつくスタッフたちの姿があった。しかし、巨大な砲弾を喰らってもなお、彼らにはまだ息があった。

 

というか、みんな生きていた。

彼らは皆、不思議そうに撃たれたはずの体を見つめ、そして自分たちのすぐ側に転がる、クリスマスカラーのラッピングが施された小包を見つけて疑問符を浮かべた。

 

『…………』

 

その間も、サンタクロースたちは射撃を続けた。

撃ち抜かれ、1人、また1人と巨大砲弾を喰らうスタッフたち

 

……だったのだが、どうやら砲弾の表面にはバブルが貼られているようで……高速で射出されているとはいえ所詮ただの泡であることから、直撃を受けても大した威力にはならなかった。

 

そして、割れた泡の中からプレゼント箱が出現し、スタッフたちの近くに転がるのだった……

 

「これは……?」

 

マティルダが不思議そうな目でそれを見ていると、サンタクロースの1体がマティルダへガトリング砲の銃口を向けてきた。

 

「……!」

 

マティルダが射出された泡をキャッチすると、すぐさま泡が割れ、マティルダの手元にプレゼント箱が収まる形となった。

 

「えっと……あ、ありがとうございます?」

 

『(*・ω・)ノ』

 

マティルダのお礼に手を振ったサンタクロースは、続いてスロカイの近くに集まっていたウィオラ、シンシア、リルルめがけてトリガー引き絞った。

 

「おっと」

 

「む?」

 

「んー?」

 

3人がそれを難なくキャッチしたのを見て、『( ̄▽ ̄)』サンタクロースは満足そうな感じで頷いていると……そこへ非武装の別のサンタクロースが現れ、いきなり撃ったサンタクロースを殴って地面に跪かせると

 

『( *`ω´)』プンプン

 

『( ;∀;)』

 

機械教廷出身者たちの目の前で、何やらガトリング砲を持っていたサンタクロースに対して激しく叱責し始めた。

 

(…………?)

 

指揮官はそんなサンタクロースたちの様子が気になりつつも、ウィオラたちの受け取ったプレゼントの中身を確認するべく3人の元へ向かった。

 

「これは……新しい料理本ね!」

 

「LEDX……なぜ?」

 

「うわぁい! お菓子だ!」

 

プレゼント箱を開け、3人は嬉しそうな表情を浮かべた[1人、疑問符を浮かべていたが]。しかし、それは指揮官が前もって機械教廷出身者たちの為に用意していたプレゼントだった。

 

(どういうこと……?)

 

指揮官が小さなサンタクロースたちの正体について思考を巡らせていると、ピコピコと可愛らしい足音を立てて、1人のサンタクロースが指揮官の前へと進み出てきた。

 

『(°▽°)』

サンタクロースはプレゼント箱を差し出してきた。

 

(自分に?)

 

『(≧∇≦)』こくこく

 

(そっか、ありがとう)

 

プレゼントを受け取り、指揮官が礼を述べるとサンタクロースは嬉しそうに頷いた。

 

その後も、サンタクロースによるプレゼント射撃は続いた。ガトリング砲で撃ち抜かれるのは、主に年少組の面々を除いた基地のスタッフだけで、トリスタやスロカイといった客人に対してはサンタクロースによる手渡しが行われた。

 

先ほど殴られたサンタクロースは、客人に対して手渡ししなかったことを怒られていたのだろう。

 

そんなサンタクロースたちを、セラスティアは何とかして捕まえようとするのだが、しかし対人用に作られたセラスティア特製の睡眠ガス地雷も、シャロのネットランチャーも全長30センチほどの小さな目標に対しては効果が薄かった。

 

捕獲隊の面々はサンタクロースの素早さについてこれず、1人……また1人とプレゼントを受け取っては無力化されてしまうのだった。

 

年少組の子どもたちに関しては、サンタクロースたちと楽しそうに鬼ごっこを繰り広げていたり、残弾のなくなったガトリング砲から放たれる大量の泡を見て騒いで、最終的にサンタクロースたちからプレゼント箱を手渡しされ、それぞれ満足そうな表情を浮かべた。

 

『( ´ ▽ ` )ノ』

 

そして、全てスタッフにプレゼントを配り終えたサンタクロースたちは横並びになって手を振った後、一目散に何処かへと走り去ってしまうのだった。

 

「アレは一体、何だったのだ?」

 

(さあ?)

 

プレゼント箱を抱えて疑問符を浮かべるスロカイに、指揮官は肩をすくめてみせた。

 

「…………はぁ」

 

セラスティアは手元のプレゼント箱を見つめて大きなため息を吐いた。無理もない、数ヶ月も前から入念な準備を重ねてきたにも関わらず、この結果なのだから……

 

(セラスティア……)

 

指揮官はそんな彼女の元へ近寄った。

 

(その、残念だったね)

 

そう言って指揮官が慰めるようにセラスティアの肩に手をやると、彼女はポカンとした表情で指揮官へと振り返り……

 

「ぷっ……あははははははは!」

次の瞬間、思いっきり笑った。

 

(え?)

まさかショックでおかしくなってしまったのだろうか? 笑うセラスティアに、指揮官がそんなことを思っていると

 

「逃げられちゃいましたね、セラスティアさん」

 

「そうねぇ。まあ、予想通りっちゃ予想通りだけど」

 

命美の言葉にセラスティアは大きく頷いた。

また、予想外の反応を見せているのはセラスティアだけではなかった。

 

シャロ「まさかサンタクロースがあんなにいたなんてねー」

 

曦夜「数もそうだけど、あの素早さ……尋常じゃないわね!」

 

蘇瑞「最初はびっくりしたけど、面白かったよね〜」

 

スノー「本当ですね。まさかあんなものを使うなんて」

 

龍馬「こんなクリスマス! 生まれて初めてです!」

 

ソフィア「あたしだって初めてだよ、でも楽しかったな〜」

 

カロル「はい。なんかいいですよね、こういうの!」

 

サンタクロースを捕まえるべく集まった筈のみんなは、サンタクロースに逃げられてしまったにも関わらず……誰1人として悔しそうな表情を浮かべる者はおらず、その顔色は妙に明るかった。

 

(えっと……?)

みんなの様子に、指揮官が疑問符を浮かべていると

 

「見ろお姉ちゃん、凡人はまだ分かっていないようだぞ?」

 

「あ、ほんとだ。相変わらず指揮官ってば、鈍感なんだから〜」

 

スロカイとセラスティアが指揮官のことを見つめ、そんなことを話し合っていた。訳も分からず、指揮官が2人へ視線を送っていると……やがてセラスティアがゆっくりと口を開いた。

 

 

 

「今日一日、ゆっくりできたでしょ?」

 

 

 

(え……まさかその為に?)

 

「やっぱり分かっていなかったか。相変わらず、凡人は自分のことに関しては驚くべきほど鈍いな!」

 

セラスティアの言葉を引き継ぎ、ニヤリとした笑みを浮かべて話すスロカイに、指揮官は今日一日の出来事を回想した。

 

拘束し、監禁してまで仕事をするのを禁じたこと。

 

仕事の手伝いをシェロンへ依頼した際、めんどくさがりやな彼女にしては珍しく、直ぐに仕事を引き受けてくれたこと。

 

命美と共に、仕事を代わりにやると申し出て、さらに沢山の仕事があることを知って、なぜか怒ってしまったセラスティア。

 

この他にも、仕事をお願いしたスタッフたちが喜んで引き受けてくれたこと。

 

また、スロカイとの親密なやり取りを黙認したマティルダの様子。

 

さらには、龍馬は仕方ないとして自分に忠実な筈のスノーでさえも捕獲隊に加わったこと。

 

今思えば、おかしなところは沢山あった。

それをサンタクロースの捕獲に対するサボタージュを防ぐためのものだと思い込んでいたが、セラスティアたちの真の目的はどうやら別にあるようだった。

 

それは、つまり……

 

 

 

(もしかして、全部自分の為に……?)

 

 

 

指揮官がそう呟くと、いつのまにか指揮官のことを取り巻くように集まっていたスタッフたちの間から笑いが巻き起こった。

 

「いつも1人で頑張りすぎなのよ!」

 

「そうだぞ凡人。独りよがりの努力というのは、存外つまらないものだ」

 

セラスティアとスロカイは穏やかな笑みを浮かべ、指揮官のことを見つめた。

 

みんなの為に日々過剰とも言える量の仕事に励む指揮官のことを、今日この日だけは楽をさせてあげたい……だからこそ指揮官から仕事を奪い、食事や着替え、排泄などの介護を行った。

 

 

 

全ては、指揮官の為を思っての強行策だった。

 

 

 

話を聞くと、基地のスタッフ以外でこの件に関わっていたのは機械教廷だけではなく、トリスタを始めとするヴァルハラ同盟一行も認知していたようだった。

 

まさしく、指揮官の為に国や人種の垣根を超えて、みんなが協力し合っていたと言えるだろう。

 

「申し訳ありません指揮官様。命美さんの話を聞いて捕獲隊に入ったのは、指揮官様のことを少しでも楽させてあげたかったからなんです」

 

「実は僕もなんだ……先生、裏切るようなことをして、ほんとうにごめんなさい……」

 

そう言って深々と頭を下げたスノーと龍馬に、指揮官は2人のくれたマフラーと手袋を示しながら、優しく微笑みかけた。

 

(謝らなくていいよ。寧ろ、2人がそんなにまで自分のことを想ってくれていたなんて……とても嬉しく思うよ、ありがとう)

 

指揮官がそう告げると、2人は安心したように顔を綻ばせた。

 

(まあ昼間の尿瓶の件といい、さっきのプロトコルの件といい……やり過ぎだと思うところも沢山あったけどね)

 

「うっ……」

 

指揮官のそんな呟きを耳にして、流石に思うところがあるのだろう……命美は気まずそうな表情を浮かべた。

 

「まーまー、固いこと言わないの〜」

 

そう言ってセラスティアは命美のことを庇うように抱きしめた。相変わらず仲良いね……指揮官がそんなことを思っていると、ふと、誰かが指揮官の肩を叩いてきた。

 

「ね、あのさ!」

 

(ん、テイラーどうしたの?)

 

「アタシ今、とっても歌いたい気分なの!」

 

テイラーは瞳を輝かせてそう言ってきた。

 

彼女の手には、サンタクロースたちがプレゼントしてくれたものなのだろう、最新型のマイクが握られていた。最も、それを選んだのは指揮官なのだが……

 

「機材の準備は出来てるぜ!」

 

リーゼロッテが基地の方を指差すと、そこにはいつのまにかノイジーバットのバンド隊が集結していた。ステージや音響設備などの準備は終えているのだろう、みんなそわそわとした様子で指揮官のことを見つめている。

 

(あはは……いいよ。お願い)

 

指揮官は周りを見回して、テイラーのゲリラライブに対して誰も否定的な表情を浮かべていないことを確認すると、小さく笑ってそう告げた。

 

「やった! 演るわよ、みんな!」

 

テイラーとリーゼロッテは嬉しそうにステージ上へ飛び乗ると、すぐさま大型のスピーカーから音楽が流れ出し、基地の中に響き始めた。

 

 

 

聞いてください! 『12の月の小夜曲』!

 

 

 

テイラーの歌声が響き渡る。

彼女が1年前のクリスマスに感じたイメージを表現したと語るその曲は、クリスマスのソワソワとした気持ちや楽しさ、そして、ちょっぴり切ない心境さえ感じられるものだった。

 

曲も佳境に差し替かった時だった。

サビの前に奏でられる、長いイントロ部分……

 

「む……?」

 

その時、スロカイは目の前に、空から小さな塊が舞い降りてきたのを見て、反射的に手を伸ばした。

 

(あ。スロカイ様、それは……)

 

スロカイの手の中を指揮官が覗き込むと、小さなそれはスロカイの手で温められ、ちょうど掻き消えてしまうところだった。

 

「わ〜〜〜! 雪だ〜〜〜〜〜!」

 

クルスが興奮した様子で飛び跳ねた。

釣られてみんなが天を見上げると、大量の粉雪が舞い降りてくるのが確認できた。

「やった!やった〜〜〜!」

それを見て、連鎖反応的に年少組の子たちははしゃぎ回り始める。また、いつもはどちらの方がより大人なのかを競い合っているシャロと曦夜も、この時ばかりは年相応に楽しそうにしていた。

メルルや蘇瑞、セインも同様である。

 

スノー「わぁ……凄い」

 

龍馬「ソフィアさん見てください! 雪ですよ!雪!」

 

ソフィア「おお! 雪かぁ〜!」

 

命美「すっごいタイミングで降るわね!」

 

セラスティア「ふぅん、まあ悪くないわね」

 

カロル「うわぁ、綺麗です〜」

 

トリスタ「降雪はヴァルハラでは見慣れているものだが……これは」

 

アン「なんか……いい感じよね」

 

キラスター「ですね!姫さま☆」

 

レイア「ふふ……そうね。あなたもそう思わなくて?」

 

リンダ「……ん」

 

ヒルダ「なるほど、これがホワイトクリスマスなのね」

 

マティルダ「陛下、素敵な光景ですね」

 

スロカイ「ああ、そうだな」

 

リルル「あ〜これが全部、白玉団子だったらなぁ」

 

シンシア「全く……あなたはいつもそればかりですね」

 

ウィオラ「ふふ……今度、お作りしましょうか?」

 

アマンダ「ウフフ……人肌が恋しくなっちゃうわね」

 

空を見上げ、みんなはそれぞれ思い思いの言葉を口にした。それを見ていたテイラーはふっと微笑むと、長いイントロ部分を有効活用すべく「ねえ、みんなー!」と滑走路にいた全員に向かって呼びかけた。

 

みんなの視線がテイラーへ集まる。

 

「あたしが『せーの』で呼びかけるから、今日に相応しい『あの言葉』をみんなで言おうよ! いくよ…………せーのっ……!」

 

 

 

みんな『メリークリスマス!!!』

 

 

 

そうして、クリスマスの夜は更けていくのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

それからしばらくして……

 

 

 

(それじゃあ、やっぱりあのサンタクロースは……)

 

「はい。私たちではありません」

指揮官の問いかけに、べサニーは首を横に振った。

 

基地の管制塔、その最上階にある監視台。

知る人ぞ知るこの空間に集まった2人は、いつものように商談を進めていた。基地でイベントがある度にここに集まるのも、2人にとっては最早恒例となっている。

 

だが、今日は珍しくもう1人……

監視台の中に人影があった。

 

「御二方、お茶の用意ができました」

 

それはアナベルだった。

部屋の隅の方でお茶を淹れ終えたアナベルは、そう言って指揮官とべサニーの前に移動すると、慣れた手つきでティータイムのセットを始めた。

 

また、彼女はべサニーと同じく赤色のサンタクロース服に身を包んでいた。厚手で、とても暖かい素材で作られている。

 

(ありがとう)

 

「ありがとうございます。アナベルさん」

 

2人がお礼を述べると、

「それでは、ごゆるりとお寛ぎくださいませ」

そう言ってアナベルは礼儀正しく頭を下げた。

 

「ところでご主人様。この服は私に似合っているでしょうか?」

 

(え? 似合ってると思うよ、凄く)

 

去り際にそんなことを聞いてきたアナベルに、指揮官がそう言ってあげると、何やらアナベルは少しだけ納得がいっていない様子で頷いた。

 

「お褒め頂きありがとうございます。ですが……うーん、私としてはもっと露出があってもよかったと存じます。特に、胸元とかもっと開けた方が……その方が殿方には、とくに指揮官的には嬉しかったのではないでしょうか?」

 

(……え、それ聞く?)

 

「スカートも、もっと絶対領域を意識して短くした方がよかったような気が……ご主人様さえ良ければ、今からでもクリスマス用の衣装に着替えて参りますが?」

 

(いや、いいよ……気持ちだけで十分)

 

少し風が吹いただけで、女性の大事な部分が見えてしまうというアナベルのクリスマス衣装の存在を知っていた指揮官は、彼女の提案をやんわりと断ることにした。

 

帝国出身……シェフィールド家のメイドであるアナベルは、仕事で指揮官のところへ来てからというものの、何故か最近は露出の多い服ばかりを着るようになっていた。

[清楚なメイドというイメージはどこへ……?]

 

最も、スタッフたちの露出が多いのは今に始まったことではないのだが……

 

「ふふ……指揮官様は沢山の方々に慕われていますね」

 

アナベルが監視台から去った後、べサニーはふんわりとした笑みを浮かべてそう言ってきた。

 

(そうかな?)

 

「そうです。なのでちょっと……妬いちゃいますね」

 

(それは、ごめんね)

 

べサニーの熱っぽい視線に気恥ずかしさを覚えた指揮官は、少しだけ彼女から目を離した。それから咳払いを1つし、気を取り直して話を続けた。

 

(話を戻そう。あの小さなサンタクロースたちが配っていたプレゼントのことだけど……)

 

「はい。確かにあれは、指揮官様が私たちに調達を依頼された品物です。ですが指揮官様たちが滑走路に集まった時には、倉庫から1つ残らず消えていました。すぐさま報告をと思ったのですが、その時には既に皆様に配られた後のことでした……」

 

指揮官は予め、喫茶店バビロンにプレゼントの調達と配布を依頼していた。なので本来ならば、サンタクロースに扮した喫茶店バビロンのメンバーによってプレゼントが配られる予定だった。

 

しかしべサニーの話によると、彼女たちが動こうとする前に、正体不明の小さなサンタクロースたちによって調達されたプレゼントは倉庫から持ち出され、みんなに配られてしまったとのことだった。

 

(そっか……)

 

「指揮官様は、あのサンタクロースさんたちの正体についてご存知なんですか?」

 

(うん、まあね)

 

そう言って指揮官はどこからともなくプレゼント箱を取り出した。それはサンタクロースの1人が指揮官に差し出したものだった。

 

中を開けてみると、そこには647個のスターダイヤ[ダッチーからの配布よりも多いのです!]、そして1枚のメモが同梱されていた。

 

 

 

メモには拙い字でこう書かれていた。

 

 

ーーーーー

拝啓、これをお読み頂いている指揮官様へ

戦いばかりではなく、たまにはこういう日があってもいいと思うのです! それでは、メリークリスマスなのです!

 

追伸

こんな事もあろうかとゲッター線の技術を奪取しておいて正解でした。害悪ゲッターなんかに出来て、647に出来ないことなんてないのです!

ーーーーー

 

 

647という数字、語尾、そして特定の機体に対するヘイト……サンタクロースの正体を察した指揮官は、そこで小さく笑った。

 

「それでは指揮官様、メロンです」

 

(うん、ありがと)

 

「続いて請求書です。勿論、サンタクロース役としての代金は差し引かれていますので、是非ご確認を……」

 

(了解)

 

指揮官はべサニーからそれらを受け取ると、請求書に記載されている数字を確認した後、それから懐へと納めた。

 

「またのご利用、お待ちしております♫」

 

商談を終えた2人は、アナベルが用意してくれたお茶とお菓子を楽しみながら雑談に花を咲かせた。それは本当に大したことのない、ちょっとした世間話だったのだが、2人にとってはとても有意義な時間となった。

 

それからどちらともなく身を寄せ合い、べサニーから膝枕を勧められた指揮官は、そっと彼女の膝の上に頭を乗せるのだった。

 

「指揮官様」

 

(ん?)

 

「今日一日、お勤めご苦労様でした」

 

べサニーはそう言って指揮官の頭を優しく撫でた。眩しささえ感じられる彼女の笑顔に笑みを返しつつ、指揮官は仰向けの状態で天窓に目を向けた。

 

真っ暗な空からは相変わらずシンシンと雪が舞い降りており、基地から漏れる光に照らされ、淡い輝きを放っていた。

 

 

 

それはまさに、星が降っているかのようだった。

 

 

 

「雪……綺麗ですね」

 

(そうだね)

 

2人は天窓を見上げ、しばらくの間、舞い降りる雪を眺めていた。降雪は少しずつ勢いを増しており、朝になる頃には雪で埋め尽くされてしまうことだろう……

 

(ああ、そうだった)

そこで指揮官は何かを思い出したかのように声を発すると、懐を探って小さなプレゼント箱を取り出した。

 

(忘れない内に……はいこれ)

 

「え? これは……」

 

(クリスマスプレゼント、あげる)

 

それは喫茶店バビロンの調達とは別に、指揮官が個人的に用意していたものだった。べサニーは指揮官からプレゼントを受け取ると、頰をにわかに赤く染め、優しく胸に抱いた。

 

「ありがとうございます。一生、大事にします」

 

(そうしてくれると嬉しいかな)

 

陽だまりのような彼女の笑顔を見ていると、指揮官は心の中に温かいものを感じるのだった。

 

「私もサンタクロースの格好をしているのでお返しをしたいところなのですが、あいにく指揮官様に提供できる『物』は持ち合わせていなくて……」

 

(いや、お構いなく)

 

「いえ! 施しを受けておいてお礼を返さない訳にはいきません……なので、私からのプレゼントの代わりと言ってはなんですが……」

 

そう言ってべサニーは前もって用意していたのだろう……1本の小さな白い棒を取り出した。それは両端に一際大きい山を作った綿棒だった。

 

 

 

 

 

「指揮官様、耳かきなんてどうでしょう?」

 

 

 

 

 

その日……この星は有史以来何度目かの、争いのない瞬間を迎えた。

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンサーガ

非公式クリスマスイベント『星降る夜のイヴ』

ーおわりー




どうも、クソ投稿者ムジナです。
ここまでムジナの長い書き起こしにお付き合い頂き、誠にありがとうございます。この第4話なんて約28000文字なのですよ……

とりあえず謝辞を、1週間で書き上げるとか言っておいて2週間以上もかけてしまい申し訳ありませんでした。この時点でもうクソ雑魚ムジナなのです。もうクリスマス明けてから何日経ったよ?って感じなのです。

あと、ムジナが普段からなろう系みたいなハーレムが嫌いって言ってる癖に、ハーレムじみた指揮官の話を書いてるのはおかしいんじゃないかって思う方もいるかもしれませんが……登場キャラはクリスマススキン縛りなので(必要なゲストキャラ以外)、龍馬君以外はみんな女性なので、どうしてもハーレムっぽくなるのは仕方ないのです。まあでも野郎のクリスマススキンは誰得って感じなので要らないです。

そしてダッチー
クリスマススキンの実装が遅いのです。
なんとかリルルとアナベルは出せましたが、出演が叶わなかったポーラとエレインに謝って欲しいのです。あと、イベントの使い回ししてんじゃねえ……なのです。あれ報酬以外そんなにクリスマス要素ないし……

まあまあ、元々はダッチーがロクなクリスマスイベントを作らないから始めたこの非公式クリスマスイベントでしたが、無事に書き終えることができてムジナは感無量なのです。開始から2ヶ月かかりましたが……

まあまあまあ……
これでやっとアイブラサガとおねショタサーガの制作に戻れるのです。これを機に、もっとムジナの書き起こしが見たいと思った方は、是非そちらの方もご確認頂けると幸いなのです。

長々と失礼しました。
お楽しみ頂けたのなら幸いなのです。
それではまた、どこか別の作品でお会いしましょう……ムジナでした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。