みんな『メリークリスマス!』
クリスマスの夜が更けていく中、
滑走路上に集まった全員が笑顔を浮かべていた。
(うん、今年のクリスマスも上手くいったみたい)
指揮官は楽しそうにしているみんなの姿を、みんなから少し離れた所から微笑ましく見守っていた。雪が舞い降りる中、年少組の面々は無邪気に走り回り、セラスティアは命美を始めとする捕獲隊の面々と健闘を讃え合い、スロカイとマティルダは身を寄せ合って夜空を眺めている。
(何だかんだで色々あったけど、本当に……)
そこで指揮官は、自分の視界が少しだけ暗転したことに気づいた。当初、疲れのせいだろうと目を擦ってみるも、視界の暗転は一向に止まらず……
(え……?)
次の瞬間、指揮官の目の前が真っ暗になった。
エピローグ
指揮官が目を覚ますと、景色が変わっていた。
つい先程まで夜だったはずが、いつのまにか天高くお日様が姿を現し世界を明るく照らしていた。天候は晴れ渡り、頭上には澄んだ青空が広がっていることに加えて、冬とは思えないほどの暖かい空気が周囲に満ちていた。
滑走路だったはずの場所は一面に色とりどりの花が咲き誇り、コンクリートの地面はすっかり美しい花々で埋め尽くされてしまっていた。
(…………)
足元を覆い尽くす花々の中を、指揮官は1人で佇んでいた。
周りを見回すも、他には誰もいない。
いや、いた。
それはひっそりと花々の中に横たわっていた。
1人ではない、もっと多い
彼ら、彼女たちはまるで日向ぼっこでもするかのように花のベッドに横たわって、安らかな表情で永遠の眠りについていた。
上空を飛び回る鳩の群れが翼をざわめかせた。それはまるで、エンドロールの際に巻き起こる観客の拍手の如く……静寂に包まれた世界の中で、やわらかな音を立てて響き渡った。
それは人類に残された、最後の奇跡
この尊い大地に生まれた者たちが放つ、最後の残り香
終わりなき命のバトンの終着点
この世界が放つ、最後の息吹
そして、滅び
我々は、敗北した。
「おーい、指揮官!」
(……!)
気がつくと、指揮官の目の前にはシェロンがいた。
そればかりか景色もすっかり元に戻り、何一つおかしな所のない、クリスマスの夜へと戻っていた。
「どったの指揮官、こんなところでぼーっとして?」
(いや、何でもないよ。ただちょっと疲れただけ)
「そう? まあ、なんだかんだ言って忙しかったからねぇ疲れるのも無理はないかー……そう言うあたしも疲れたしー……ってことで、お大事にー」
(ありがと、シェロンもゆっくり休んでね)
シェロンが司令部の方へ歩いて行ったのを見送って、指揮官はふとみんなの方へ視線を送った。年少組の子達もセラスティアもスロカイも、みんな先ほどと変わらず、その表情は明るかった。
(…………)
いつもと変わらないみんなの様子に胸を撫で下ろしつつ、指揮官は先ほどのフラッシュバックを回想した。
それから再び、みんなのことを見つめた。
そこには指揮官の事を信じ、国家、民族、人種、制度、社会、風習、宗教、国境……人と人の繋がりを阻む、あらゆる弊害を超えてまで集結した者たちがいた。
その彼らをまとめ、
一人一人を丹精込めて鍛え上げ、
長い時間をかけ、彼らとの絆を育んできた。
それは帝国や日ノ丸、機械教廷などの盟主とて同じである。
『「……ハッ、世界中で手広くやっているお前が何を言うか?」』そこで指揮官は、スロカイが言っていたことを思い出した。
そして、指揮官主導で行われた共同開発計画。
次世代兵器の開発
既存の兵器にはない、まったく新しいテクノロジー
空中戦艦を始めとする、空中艦隊の構想
……今や、世界最強の軍事力を持つに至った
『「いつも1人で頑張りすぎなのよ!」』
指揮官はそこで、セラスティアの言葉を思い出した。
自分のことを気遣って言葉なのだろう。
しかし、そうしなければならない理由があった
金のため?
国際的な地位のため?
自分の名誉のため?
いや、違う
人を集め、金を稼ぎ、戦力を増強したのは……指揮官が成してきたことは全て……全ては、たった1つの目的へと帰結する。
失われた未来を取り戻す為に
みんなが笑っていられる明日を作るために……
だから