雪音クリス、暁切歌、月読調、友里あおい、藤尭朔也。
和気あいあいと旅行を楽しんでいる様子だったが、何か目的があって訪れたようで…
謎の妙に陽気な男性と、対照的に精気のない老人。
湖より、汽笛と共に、
‟ソレ„がやってくる
ソレは常に、微睡の中にいた。
温かい揺り籠の中、言葉を発さずに。
時たま薄目を開けた際に見える、かすかな光をじっと見つめ、再び目を閉じる。その繰り返し。
ソレはただ、待っていた。 じっと待っていた。
そしてようやく、やってくる。
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「着いたデェェェス!!!」
ワンボックスカーのドアを勢いよく開け放ち、金髪に特徴的な髪留めの少女が躍り出た。途端に目に入ってくる強い日差し。
「切ちゃん!急に飛び出したら危ないよ!足元の石につまずいちゃうかも!」
そう言って続くのは、黒髪ツインテ―ルに、ピンクが所々に入った服をきた少女。
「大丈夫ですよ~調。子どもじゃあるまいし、常識人たる私にかかれば…」
そこまで言って、顔をあげた先には、ツインテ―ルの少女の膨れ顔。慌てて金髪の少女は、頭を掻きながら舌を出した。
「ご、ごめんなさいデス…それよりも調、見て見て!あそこ!!」
「元気だなぁお前ら」
荷物を下ろしているのは白髪の綺麗な髪に、赤を基調とした服装の少女。そして別の扉から大きなボストンバックを引っ張り出した男性に声を掛ける。
「管理人に声を掛ける必要は、ないんだよな?」
男性はボストンバックを肩にかけ、その重さに辟易している様子だ。
「ここの売りは、『外見はレトロに中身はハイテク』らしくてね。事前に電子ロックの解除キーがメールで来ているから、現地での手続きとかは不要なんだ」
「都会の喧騒から離れたいってお金持ちが、少なからず来るみたいだし、防犯あたりもしっかりしているんでしょうね?」
運転席から降りたのは、短い髪に理知的な顔立ちの女性。男性は親指を立てる。
「周辺はさっき通ったゲートに囲われていて、監視カメラも配置されてる。野生動物と遭遇ってこともないから大丈夫、らしい」
金髪の少女が意地悪な顔をしながら、男性に近づく。
「もし何かあったら男手としてちゃんと守って下さいデスヨ。藤尭さん?」
男性は若干引きつった笑みを浮かべる。
「えっと…ここにいる誰よりも僕が一番よわ——」
「ん?どうかしたの?サクヤくん?」
運転手の女性が笑顔で近寄る。いや、その笑顔の裏に仕込まれたモノを察知し、男性は勢い余って敬礼をした。
「ハイ!全力で守らせていただきます!!」
男性一名、女性四名。彼彼女らは一様に笑い合う。そんな彼らの目の前に大きなコテージが。
そして
「ほぉ…これが例の……」
白髪の少女がそう言って道の向こうへ目を向ける。
「そしてこれが、ここの最大の目玉。
蛻馬(セバ)湖だ!」
男性の言葉と共に、皆の視線が向けられる。
そこにあったのは、森の中に鎮座する、正しく巨大な湖だった。
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荷物を運び入れる一同。女性たちのテキパキとした動きに、若干男性、藤尭朔也が頼りなく見えてしまう程だ。
「蛻馬湖。地下水が吹き上がってできたものだとか、局所的に降った雨によって作られたとか、いろいろ説があるけど、未だその出自が謎な湖。一説には隕石が落ちてきて、そのクレータから水が湧き出たなんて話もあるけど、真相はまだ不明」
意識で何とかカバーしようとするが、あまり女性たちには相手にされていない様子である。
「調ぇ~このバック何が入れたんデスか?」
「それ、切ちゃんがもってきた荷物だよ?夜中にこっそり詰めていたみたいだったけど」
「え?!……あ、おやつ入ってました。テヘヘ」
そんな二人のやり取りに、白髪の少女、雪音クリスがやってくる。
「おやつっておまッ!これ全部かよ?!どんだけ持ってきたんだ??」
「もしかして、おやつは三百円までデスか?」
金髪の少女、暁切歌が見上げる形でクリスの顔を覗き込む。
「切ちゃん、最近お金貯めてると思ったら、もしかしてコレのため?」
ツインテールの少女、月読調が横からカバンの中を見る。甘い系だけでなく、ピリ辛なものや、一波乱起きそうなものなど、バラエティ豊かな駄菓子が入っていた。
「だって、この前の縁日でいっぱい使っちゃったデスけど、皆でまたお菓子パーテイーしたかったんデス…」
しょんぼりとした切歌の顔を見、クリスは呆れたように首を振った。
「二泊なんだからこんなにあっても食いきれねぇぞ…」
「?!それじゃあ!!」
クリスは二人に向かってウィンクした。
「食べねぇとは、言ってないだろ?」
嬉しそうにハイタッチをする切歌と調。そんな少女たちのやり取りを遠目から見、優しく笑うと、藤尭は自分の荷物を持って
「ストップ」
その行く手を、女性、友里あおいが制した。疑問符が浮かんでいる藤尭の前で、外を指差した。
「貴方は、あっち」
指差した先には、今いる大きなコテージとは別の、プレハブ小屋程度まで小さくなった宿泊施設だった。
「え??え???」
友里は腰に手を当て、眉を吊り上げる。
「年頃の少女たちと、男を同じ屋根の下に寝かせられるわけないでしょ?寝るのは別々よ」
先程まで得意げに説明していた表情は消え、まるでしわくちゃな子犬のような顔になる藤尭。よほどコテージ泊が楽しみだったと見える。そんな彼を見、友里が慌てて付け足す。
「寝るのは、って言ったでしょ?食事は勿論こっちでだし、そもそも貴方が作るんでしょ?」
その言葉を聞き、藤尭は気を持ち直した。
「そうさ!この日のために新しい調理器具も…」
「それじゃ、荷物を置いたらこっちに集合ね」
藤尭が言い終わらぬうちに友里は扉を閉めてしまった。会話相手が消えた彼はしばし口を開けたまま硬直していたが、やがて後方、己が泊る施設を見、小さいながらため息をこぼした。
すると、見計らったかのように、彼の端末に通知が入る。画面には友里からのメッセージが表示されていた。
『部屋を分けるのは、もしもの時のリスク分散のため。湖はそこからの方が観測しやすいし、こっちは私が見ておくから、定時連絡をお願い』
その文字を見、藤尭は上を見上げた後、演技くさく、大き目のため息をこぼした。
「やあ!」
突然声がかかる。驚いて声を出さないよう自制をし、恐る恐る後ろを振り返る。そこには少し身なりが汚れた痩せた男性が立っていた。
「キミもここの宿泊かい?ここはいいよ~周りのコテージも大きくて、あっちの方がいいに決まっていると思うところだけど、案外こっちも良い材質のソファがあって過ごすには困らないさ!じゃ!!」
男性の格好は、ハイキングなどで着られる動きやすいカーキの服である。首からは年代物のポラロイドカメラが下げられていた。
「貴方は——」
藤尭がそう聞こうとした時には、既に湖の方へ意気揚々と歩き出していた。藤尭は後ろ姿を見送り、何とも言えない表情を浮かべる。しかし、自分の手に持った、銀色のアタッシュケースに意識を戻し、改めて自分にあてがわれた部屋へと向かおうとする。
「………」
「ッ?!?」
彼の脚は、先に進めなかった。酷く青い顔の老人が、こちらを見ている。老人はただ動きもせずじっと、彼を見つめていた。
「えッ!!えっと……」
藤尭が何を言ったものかと冷汗を流していると、
「……いらっしゃい」
老人が重苦しい口を開いた。瞬きをせず、じっと見つめるこの薄気味悪い老人。
「ど、どうも…」
藤尭がようやく言葉を返すと、老人は何も返さず、窓枠に何かを置いた。この施設のパンフレットらしい。
「あ、ありがとうございます」
そう返した彼の前から、いつの間にか老人は姿を消していた。あたりを見渡す藤尭だったが、気味の悪さに身震いをすると、改めてドアノブを握った。
「……」
老人は彼を見ている。ずっとずっと、
その青白い眼を向けていた。
湖は、ただ、ソコにある。
皆様、こんにちは。
サリッサと申します。
お読みいただき、誠に有難うございます!
こちらは絶ステ18で無料配布させていただいたコピー本になります。
ちょこちょこと、作りつつ
願わくば次々回あたりの絶ステ、参戦のあかつきには…
なんと夢想してみたり(;^^)
時間が、欲しいですね…