アーマード・コア ~鴉の証~ (ver2.0) 作:ダイヤモンド傭兵
しかし、親友を自らの手で殺めた事による心の傷は、確実に翔の心を蝕んでいた···
皆さん、またもや投稿が遅くなってすいません···
ディターの持つライフルから放たれた弾丸はゴーレムのキャタピラを貫き、ゴーレムは動きを止める。更に放たれたライフルの弾丸はゴーレムの左腕の関節を貫き、ゴーレムは無力化された。
しかし翔の腕は以前より落ちており、当てなくて良い部位にもライフルの弾丸が命中していた。
ディターは荒れ果てた市街地を進み、高台にいる狙撃型MT『ウェタ』に向けてライフルを連射する。3発程外しだがなんとか脚部に当て、脚部を連続で撃ち抜かれたウェタは前のめりに倒れ、コクピットから兵士が降りてくる。
ラナ《今ので最後だ、これより回収に向かう》
翔「うん···」
返事をした翔の目にはクマができていた。
その夜、翔は悪夢を見て飛び起きる。
翔「ハァ、ハァ···」
翔は額の汗を拭い、頭を抱える。
翔「また、あの夢だ···」
最近、翔は毎晩アナトリアでのエーアストとの決闘の夢を見ており、ほとんど眠れていない状態である。
翔は自身の手を見つめる。
翔(僕が···僕が、殺した···)
本来翔は戦いに適した性格ではなく、むしろ戦いが嫌いである。しかしこれ以上戦争を続かせないために戦ってきた。
だがエーアストとの決闘以降は翔の心に引っ掛かりがあり、戦争を終わらせるために全てを焼き尽くすと決めてもなお引っ掛かりは残っていた。
そしてエーアストとの決闘の時の夢を繰り返し見るようになってから、翔の心は更に暗くなっていった。
"自分は本当は覚悟ができていなかったのではないか?"という自分自身への疑心により、翔はどうすれば良いのか解らなくなっていった···
翌朝、翔はラナからしばらく休むことを命じられ、翔はラナに連れられていくつかの場所を巡る事となった。
そしてまず最初に訪れた場所は翔がレイブン試験の時に来た工場地帯だった。
ラナ「覚えてるか?ここは、翔の初の晴れ舞台だ」
翔「うん···」
翔は小さな子供のように、自身の服の腹の部分を掴んでいる。
ラナ「あの時、私は攻撃してくる敵を全て撃破するものだと思っていた···だが、初陣だったにも関わらず誰1人として死なせず無力化した。あれはレイブン史上初の快挙であり、新たな可能性が現れた証でもある」
工場地帯は現在でも稼働しており、MTに使われるパーツの製造を続けている。
ラナ「その次の初任務の時は、否応なしに殺すしかなくなったがな···」
翔「うん···」
翔は俯くが、ラナは翔の頭を優しく撫でる。
ラナ「だが、翔は敵とはいえ相手に痛みや恐怖を極力感じさせないように撃った。それは優しさが無ければ決してできないことだ」
優しさ···それは翔にとって最大の長所であるものの、弱点にもなり得る可能性も孕んでいた。
ラナ「しかも、優しさが故に敵機体の関節や武器を正確に狙い撃つ事を習得した」
ラナは翔の頬に手を当て、顔を上げさせる。
ラナ「優しさは、それが弱点になってしまった者をこれまで何人も見てきた。私は優しさが不運を招くとも思っていた···が、翔は優しさが最大の長所になり、大きな変化を生んでいった」
ラナは翔の肩に手を置く。
ラナ「···そろそろ、次の場所へ行こう」
次に来た場所は4.5階層のインターネサインのある場所だった。
ラナ「話の続きだが、翔の優しさによって生まれた大きな変化の1つが、インターネサインだ」
ハイエンドに乗ってる時と違い、インターネサインの巨大さが良く解る。
そしてインターネサインの中の空気は他の地区より綺麗だが、綺麗すぎる空気に翔は若干顔をしかめる。
ラナ「インターネサイン···パルと翔の実力はパルの方が若干だが上回っていた。しかし翔は戦闘による勝敗ではなく、全く違う結果を生み出した。あれは全レイヤード初の偉業だ」
翔はインターネサインを見上げる。すると、どこからか声が聞こえてくる。
パル《···私、今はこの姿より人造人間の方が気に入ってるんだけれど》
翔「やっぱり見てたんだ」
パル《今目の前にいるのが本体なんだから当然よ》
ラナ「人間は話し合いでは争いを止められない事が多い。戦争は特にそうだ···だが翔は戦いの中でその優しさを私達に教えてくれた」
ラナは翔を見て笑みを浮かべる、するとハスラーもその場に歩いてきた。
ハスラー「最初は"ただの優しさ"と"ただの正義感"から来る行動にも見える言動だったが、そうではないことを翔は証明した」
ハスラーは翔の肩にそっと手を置く。
ハスラー「何百年と変わらなかった俺達の心を、翔は動かしたんだ」
翔「そう、なの?」
パル《ええ。これまでの人間達は私達を"機械"としてしか見なかった、けれどあなたは1人の"個人"として私達を見て、接してくれた。管理者だと知ってもなお、個人として見てくれた·····それが、嬉しかったの。とても、とても嬉しかったの》
翔にはパルが微笑んでいるように感じ、少しだけ楽になった気がした。
次に訪れた場所はセレのいるムラクモだった。セレは翔を整備室へと案内し、ネクストのジェネレーターを見せる。
セレ「あなたが発見したアンチコジマのお陰で、汚染はあれ以上深刻化すること無く沈静化へ向かっていきました。それは人類史に残る偉業と言っても良いでしょう」
翔「そうかな···?」
セレは近くの椅子に座るよう翔に促し、2人は向かい合う形で座る。
セレ「はい、そうですとも。それに、あなたは企業連のように独占しようとするのではなく、汚染の除去と平和的解決に向けてアンチコジマを使いました」
セレは間を置きつつ、翔に向けて微笑みながら続ける。
セレ「あなたはとても優しい子です、それは紛れもない事実なのです。初めてミッションを失敗した時にあなたは"失敗したくない"のではなく、"守れるように"と力を求めました」
するとセレは立ち上がり、翔を整備中のハイエンドのある場所まで連れていく。そこで整備されていたのは実験用のハイエンドであり、パーツは全て初期パーツで構成されていた。
セレ「···こんな説を知っていますか?『障がいは人類の進化の過程』という説を」
翔「いや、僕は知らない···ていうか、そんなのあったんだ」
セレ「知らなくても無理はありません。大破壊が始まる前ですら、知っている人は少なかったのですから」
整備中のハイエンドは実験で使われたばかりなのか、所々に損傷がある。
セレ「学校で習ったように、過去の偉人には障がい者が何人もいました。それだけではなく、レイヤードの基礎となる私達管理AIを創ったのも、障がい者です」
翔「てことは、その障がい者の人達ってセレや母さん達にとっては親って事だよね?」
セレ「はい。また、私達管理AIの声はその障がい者達の声が元になっています」
セレは自身の喉に触れながら話を続ける。
セレ「障がい者は健常者より得意分野と苦手分野のものがより顕著に現れる傾向があります。例えば、国語や英語ができない代わりに数学や物理が飛び抜けて好成績だったり」
翔は自身の事を思い浮かべる。翔は昔から筆記、特に数学や物理は壊滅的にできていなかったものの、スポーツに関しては飛び抜けているわけではないものの、好成績ではあった。
セレ「あなたに自覚があるかは判りませんが、あなたはAMS適正95%であること以上に、ネクストの操作が他と明らかに違います。他のリンクス達とは違う"新しい可能性"を、あなたは持っているのです」
するとセレは翔を整備中の武器のある場所へ連れていった。そこでは初期機体に装備されていたライフルとレーザーブレード、そしてムラクモレーザーブレードがそれぞれ整備されていた。
セレ「大破壊の前、障がい者の数は増加傾向にありました。しかし大破壊によって人類そのものが滅亡に瀕し、ハイエンドが栄えていた頃に再び増加していきました」
セレは少しだけ哀れむような表情を見せる。
セレ「しかし国家解体戦争の後、障がい者は差別の対象となり次第に表舞台からは姿を消していきました···」
翔「そんな···障がい者だって、社会に貢献できることは沢山あるはずなのに!」
セレ「はい、ですが当時の企業の上層部の考えは違いました」
整備されていたライフルとレーザーブレードが整備を終え、クレーンによって運ばれていく。
セレ「当時の企業の上層部は"自分達より優れた存在"がいることが許せなかったのです。だからアサルトセルを打ち上げ、国家解体戦争まで引き起こしたのです」
今度はムラクモレーザーブレードの整備が終わり、クレーンによって運ばれていく。
セレ「障がい者達は何かしら健常者より上回るものを持っています。それが許せず、更に元から差別意識も持っていたためにそのような行動に移りました」
セレは翔をアンチコジマの培養室へ連れていく。
セレ「しかし企業の上層部は"障がい者は戦闘には適さない"と判断していました。しかしあなたの出現によりその考えが覆されました」
セレは翔の頭を優しく撫でる。
セレ「しかしあなたが悪いわけではありません。あなたは戦争を終わらせようと必死に努力してきていますから」
アンチコジマは赤く鮮やかで、ほんのり光を放っている。
セレ「あなたが表舞台から消えた後、企業連は障がい者を見つけ次第処刑する暴挙に出ました。元々の差別意識と進化の現実を認めたくなかったかからでしょう···そして障がい者は数を激減させる事になりました」
機械に表示されているアンチコジマの量を示す数値は増加を示している。
セレ「しかし、現在は再び増加傾向にあります」
セレは翔に再び微笑む。
セレ「進化の形は様々です。それがどんなものなのかはこれからの未来が教えてくれます。ただし···」
セレは翔の頬を包むように手を添える。
セレ「あなたは間違いなく人類の進化先だと、私は確信しています。それだけは、覚えておいてください」
翔がムラクモを出るとハスラーがおり、ハスラーは翔をある場所へと連れていく。
それは、翔がエーアストと決闘をした···コロニー·アナトリアのあった場所だった。
コロニー·アナトリアのあった場所はもう既に荒廃し、朽ち果てていた。その様子から、緑が戻るにはまだ時間がかかることが判る。
ハスラーに渡された花束を翔はかつてストレイドのあった場所に供える。
そして翔は自身の手を見つめる。その手は震えており、翔の心にそれだけ大きな傷を残していることが判る。
ハスラー「俺は昔翔に胸を張れと言ったが、あれはまだ早かったのかもしれないな」
ハスラーは翔の隣に立つ。
ハスラー「もしそれが重荷になってるのなら、すまない」
ハスラーは翔の方を向く。翔もハスラーの方を向く。
ハスラー「俺は様々なレイブンを見てきた···気弱な者もいれば、傲慢だったり、正義感の溢れる者もいた···当然、イレギュラーも」
ハスラーの目は翔を見据えているが、その目は優しげである。
ハスラー「レイブンとは、自由であるべきだ。そして翔はレイブンだ。どうしようと自由であり、翔は悪くない。エーアストの事も、翔が悪いわけじゃない」
そしてハスラーは翔の肩に手を置く。
ハスラー「···翔が望むなら、ACを降りたって構わん。翔は自由である他に、俺とラナの息子でもある。自分の子供が苦しんでいるのは見ていられん」
翔「でも、僕は···」
ハスラー「気にするな。無理をしてでも続ける必要は無いし、仕事ならレイヤードにいくらでもある。レイヤードの外が良いと思うならそれでも良い」
ハスラーは翔に向けて微笑む。それはトップランカーやナインボールとしてのハスラーではなく、父親の表情だった。
ハスラー「すぐに決めなくって良い。じっくり、翔のペースで考えて決めろ」
その後家に帰る頃には夜になっており、夕食を済ませると翔は自室でアルバムを開く。
家族並んで撮った写真···ノーネイムを背に撮った写真···コルヴィスを背に撮った写真···エーアスト、リリウム、ダン、カニスと5人で撮った写真···様々な写真からそれぞれの思い出が翔の脳裏を駆け巡る。
翔「僕は、どうしたら···」
翔はとりあえず寝ることにし、布団に入る。
そして、翔は不思議な夢を見た──
読んでくださり、ありがとうございます!
改めて、遅くなってすいません。
翔は心や決意が弱いわけではなく、ただこれまで無理をしてきてしまっただけなのです。
そしてラナ達は翔に寄り添っていますが、さてどんな夢を翔は見たのでしょうか?
●ウェタ
逆関節型で脚部に固定用のパイルが備わっている、狙撃に特化したMT。
機体上部にスナイパーキャノンを搭載しており、機体そのものを固定して対象を狙い、接近された時に備えて機銃も装備されている。
しかし照準に欠陥があり、それを補うためにレーザーポインターが搭載されているが、そのせいで位置を特定されやすくなっている。
また、スナイパーキャノン、レーザーキャノン、スラッグガンの3つのタイプがあり、スラッグガンはCE属性となっている。
●スラッグガン
ショットガンをそのままキャノンにしたタイプ。
名称は本来別のものだが、開発者によってこの名称が採用された。