アーマード・コア ~鴉の証~ (ver2.0)   作:ダイヤモンド傭兵

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これは、少年の物語が始まる前の、前日譚である···


DLCです。本編(番外編や外伝を含む)を全て読み終わってない方は、読み終わってから来てください。


DLC④ 新世代(新実装)

国家解体戦争の、11年と少し前──

 

 

とある丘の上にある小さな家に、妊婦とその夫がいた。

茶色のロングヘアの妊婦は、穏やかで優しげな表情で大きくなった腹部を撫でており、黒い短髪の夫は育児に関する本を読んでいた。

夫の名前は『義人(よしと)·クライン』であり、その妻である妊婦の名は『天城(あまぎ)·クライン』である。

 

家は街から少し離れているが、街が見え、何かあれば街へすぐに行ける位置にあり、庭にはキャベツが植えてある。

義人はかつて警備部隊の指揮官、天城はその部下で参謀を務めていた。

2人は引退と共に結婚、今は街から少し離れたこの家に住んでいる。

 

義人「もうすぐだな。名前はどうする?」

 

天城「そうね···男の子だったらヒロ、女の子だったら(ひめ)かしら。あなたは?」

 

義人「男の子だったら武龍(たける)、女の子だったら赤城(あかぎ)。どうだ?」

 

天城「ふふっ、どれも良さそうね···あとは、産まれた時に決めましょう」

 

義人「そうだな」

 

義人は天城の腹部を撫で、微笑む。

 

それから1週間後、産気ずいた天城を車で病院に連れていった義人は、赤子の出産に立ち会う。

産まれてきたのは男の子であり、天城が休んでいる間に義人は家から着替えなどを持ってくることにした。

 

2人はとても喜び、名前をどうするかは義人が着替えなどを持ってきてから決めることにした。

義人はウキウキしながら車を走らせると共に、これからの育児の大変さに腹を括った。

そして、それは天城も同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義人が病院に戻り、再び天城と名前を話し合っていると、外から爆発音がする。

義人が窓から外を見ると街の一部が燃えており、建物の間をオストリッチが横切るのが見えた。

 

義人「MTだと!?」

 

天城「なんですって!?」

 

義人が病室を出ると、医者や看護士達は逃げる準備をしていた。そして、1人の看護士が赤子を抱えて義人の元へ駆け寄る。

 

看護士「あなた方のお子さんです。この子を抱えて逃げますよ!」

 

義人「はい!」

 

義人は産後間もない天城を、余っていた車椅子に乗せ、赤子を抱かせる。

その後義人は周囲を見渡し、車椅子を押して病院から他の患者や医者達と外へ出る。

 

義人「この混乱だ、車は使えないか···」

 

義人は爆発音やオストリッチの影のある方向とは逆の方向へと、天城の乗った車椅子を押して走る。車道は義人の予想通り渋滞しており、車が通ることはできなかった。

 

大きな爆発音に赤子は泣き出し、天城が必死にあやす。義人もできるだけ笑顔で赤子に声をかけ、安心させようとする。

しかし前方から別のオストリッチが現れ、義人は急いで右へ方向転換する。

 

 

 

 

 

 

義人は車椅子を押しながら路地裏を抜ける。すると2人の男性と1人の女性と出会う。

 

義人「君達も逃げてきたのか?」

 

女性「はい!」

 

男性A「向こうはまだMTがいないはずだ!」

 

男性B「おい···あれって!?」

 

男性Bの指差す方向には、白くずんぐりとした見た目の、後にノーマルに分類される機体である、ゲッペルトが街中を歩いていていた。

見ると、右手に持つレーザーライフルで民間人の乗った車を撃ち抜いている。

更には歩兵が4人ほどゲッペルトに追従しており、もう動かない民間人の頭部を撃ち抜いていた。

 

天城「味方じゃないようね···」

 

その後も義人達はは街を出るために走る。義人達の出会った男性はそれぞれ、アレス、ジョシュア、女性はフィオナという名だった。

そして地下鉄を見つけた義人達は、停電した地下鉄の構内を進む。幸いにも懐中電灯を拾っていたため、道に困ることは無かった。

 

ジョシュア「このまま行けば、街から出られるな」

 

アレス「ああ!」

 

義人達は一度休憩した後、再び進み始める。しかし街の外へ出れる駅は瓦礫で埋まっており、仕方なく別の通路から外へ出る。

しかし、路地に入ったところで6人の歩兵に発見されてしまう。

 

 

 

 

 

歩兵A「···撃て」

 

歩兵が手に持っているSMGを連射するが、その瞬間路地に入っていたフィオナに、天城は赤子を投げ渡す。フィオナは見事に赤子を受け止めるが、天城と義人は共に腹部に銃弾を受けてしまい、ジョシュアは左腕に銃弾が掠めていた。

 

フィオナ「天城さん!」

 

天城「行きなさい!」

 

義人「ここは俺達に任せろ!」

 

銃声に泣いている赤子を尻目に、天城は車椅子から立ち上がり、義人と共に構える。

 

義人「行け!」

 

天城も義人も、互いに死ぬつもりであるが、本当なら絶対安静にしていなければならない。しかし、我が子とフィオナ達を守りたいという意志により、2人は立っている。

 

 

 

 

 

フィオナ達は駆け出し、義人は左腕で銃弾を受け止めつつ道に落ちていた小石を歩兵の1人に投げつけ、天城は腹部から流れる血を別の歩兵の顔に払うようにかける。

 

歩兵B「貴様らっ!」

 

義人は歩兵の1人の左腕をへし折り、SMGを奪うと歩兵の首を掴んで盾にすると、折れた左腕の隙間からSMGを突き出して連射する。

首を掴まれた歩兵はホルスターから拳銃を出そうとするが、義人はその歩兵を蹴り飛ばし、ぶつかった歩兵と合わせてSMGで撃破する。

 

天城は気を失ったような表情で倒れ込むと、落ちていたSMGを掴んで歩兵の足に向けて連射し、倒れた歩兵の頭に1発だけ撃ち込むと、転がって銃弾を回避し、別の歩兵の右腕を撃ち抜く。

しかし、天城はその時に左肩に2発の銃弾を受けてしまう。

 

義人は天城の方に持っていたSMGを投げ、すると歩兵はそのSMGを見てしまう。

その時には義人は奪った拳銃でその歩兵の首を撃ち抜き、その隣の歩兵の頭部も撃ち抜く。

 

しかし義人は右側面からSMGを腹部に連射されてしまう。天城はその歩兵の頭部を撃ち抜く。

 

天城「あなた···」

 

義人「天城···」

 

2人は這って近づき、見つめ合ったまま手を繋ぐ。

 

天城「ごほっごほっ!あの子達、無事かしら···?」

 

義人「大丈夫だろう···ガハッ···きっとな···!」

 

天城「あなた···私、幸せでした···」

 

義人「俺もだよ···天城···」

 

2人は互いに見つめ合い、その命は燃え尽きてしまった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィオナ達は無事に逃げ切り、天城と義人の赤子は義人の親戚に引き取られる事となったが···

 

初老の男性「あのレオス·クラインの子孫なんぞ、引き取れるか!」

 

着飾った女性「私も嫌よ」

 

義人の父親「俺はアイツとの結婚なんか、初めから反対だったんだ!」

 

そうして、子宝に恵まれなかった遠い親戚に、押し付けられるようにして引き取らせる事となったが···

 

引き取り先の女性

「うちは子宝に恵まれなかった···けど、まさかレオス·クラインの子孫なんてね···」

 

女性を不安そうに見つめる赤子を、女性は鼻で笑うと赤子を残して部屋から立ち去る。

 

引き取り先の女性

「まあ、寛容な親とでも見られるかもしれないし、むしろチャンスね」

 

引き取り先の男性はソファーで寝ており、その周囲にはビールの空き缶が大量に散らばっていた。

赤子が残された部屋の窓は開いており、そこから1羽の鴉が部屋に入り込む。

 

そしてその鴉は、眠っている赤子にずっと寄り添っていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして1年後──

 

赤子が引き取られた先の街は、その日MTを使ったテロに襲われる事となる。

赤子は新しい親に捨てられ、這って家の外へ出た赤子は、とあるハイエンドと出会う···

 

赤と黒のカラーリングに、9の数字のエンブレム──

 

その名は、ナインボール──




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はDLC第4弾として、翔の出生とプロローグに繋がるお話でしたが、どうだったでしょうか?

●義人·クライン
黒い短髪で身長175cm、享年30歳で12月9日生まれ。

引っ越す前に住んでいた街では警備部隊の指揮官をしており、優秀なレイブンでもあった。
天城と結婚後に今の家に引っ越した。
また、結婚前は『黒鉄(くろかね) 義人』という名前だった。

●天城·クライン
茶色のロングヘアで身長160cm、享年27歳で5月12日生まれ。

かつては義人と同じ警備部隊に所属しており、義人の部下であり参謀を務めていた。
時に義人のオペレーターを務める事もあり、次第に義人と両想いになっていった。

レオス·クラインの孫であるが、本人と会ったことはほとんど無く、顔は朧気である。

●レオス·クラインの子孫
過去に大罪を犯したレオス·クラインの親族は迫害の対象となっており、彼らに手を差しのべる者達は極めて少なかった。
そして、その迫害は生まれて間もない赤子にまで及ぶこととなってしまっている。
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