アーマード・コア ~鴉の証~ (ver2.0) 作:ダイヤモンド傭兵
とある事件が、世界を動かす。
DLCです。本編(番外編と外伝を含む)を読み終わってない方は、読み終わってから来てください。
その日、とあるレイヤードにある採掘工場で働く黒い短髪の青年がいた。その青年の名は『
親方「翔ぅ!そろそろ昼飯にすんぞ~!」
翔「はいっ!」
MTを所定の位置に移動させた翔は、降りてすぐに給食弁当を取りに行く。
しかしその日の給食は弁当ではなく、出前のラーメンだった。
親方「お前らにはいつも世話になってるからな、給料増やせない代わりの、礼ってやつだ」
翔「ありがとうございます!」
翔にとって、このレイヤードではこの仕事と食事がなによりの楽しみであり、同時に他の楽しみを知らなかった。
親代わりでもある親方は、現状では翔に他の楽しみを教えることができずにいることに心を痛めていた。
そして昼休憩が終わり、再び作業を再開しようとした矢先、工場の入り口付近から爆発音がする。
親方「なんだ?」
すると、無線から叫び声が響いてくる。
作業員A《逃げろぉ!MTだぁ!》
作業員B《作業用じゃない、軍用だぁ!》
作業員C《み、皆殺され···ギャアアアアアア!》
親方が監視カメラの映像を見ると、白い2脚型の軍用MT『アリオール』が右手に持ったレーザーライフルを撃ち、作業員や設備などが撃ち抜かれていく。
その影響で再び爆発音が響き、翔達は戦慄する。
親方「逃げるったって···ここからじゃあ、無理だぞ!」
翔達は必死に脱出法を考えるが、なかなか良い方法が出てこない。翔が辺りを見渡すと、先程自身が使っていた作業用MTが目に入る。
翔「そうだ···親方!僕、行きます!」
翔はパーツ交換用の装置の元へ走る。
親方「おい!何をする気だ!?」
翔は、MTの胴体パーツを軽装甲のものからもう少し厚い装甲のものに変える。次に腕部パーツを掘削用ドリルのものから人型の腕に変更し、脚部はキャタピラ型から運搬用の2脚に変更する。
そして、ブースターを最低限のものから出力の高いものに変更する。
次に、右手に採掘用の水圧銃を装備させ、左腕に工作用のレーザーブレードを装備させる。
更に頭部をスコープ型から採掘用のものに変更する。
続けて、ジェネレーターを持続型からバランスのとれたものに変更し、最後にラジエーターを採掘用から低燃費のものに変更する。
翔「よし···これなら!」
親方「翔!まさか···軍用のMTと、やりあおうってんじゃないだろうな!?」
翔「···その通りです」
親方「やめとけ!どうせやられるのがオチだ!」
翔「でも!このままだと皆殺されます!なら、誰かがなんとかしなきゃいけないんです!···大丈夫、必ず生きて戻りますから!」
翔はMTに乗り込み、システムを起動させる。
そして、所々錆び付いた赤いMT『チック』は未だ爆発音の響く作業所へと歩いていく···
その様子を、親方は呆然と見ているしかなかった···
白いMT、アリオールは部分的に流線型のある無骨な感じだが、どこか先鋭的なフォルムであり、右足でメンテナンス用の機械を踏み潰す。
アリオールのパイロットである『アンドレ·クローズ』は逃げ惑う作業員や破壊された機器を見ながら鼻で笑う。
アンドレ「フンッ、ゴミの集まりが」
アンドレは新事業を始めるため、最新のMTであるアリオールを賄賂と引き換えに入手しており、その運用試験にこの工場を選んだのだ。
更にアンドレは、緑色のカラーリングの逆関節型MT『ピンイン』を2機連れてきており、ピンインの攻撃により被害は更に大きくなっている。
ピンインは右腕の武器腕ガトリングで周囲を薙ぎ払い、工場の奥へと向かう。
しかし工場の奥から翔の乗ったチックが現れ、ピンインが武器腕ガトリングを撃つ前に、チックは右手の水圧銃でその武器腕ガトリングを破壊する。
翔「うおおおおおおっ!」
チックはブースターを全速力で吹かし、武器腕ガトリングの破壊されたピンインに体当たりする。そしてピンインの左腕をレーザーブレードで切り落とす。
チックは更にピンインの左足の膝を水圧銃で破壊し、もう1機のピンインに向き直る。
ピンインのパイロット
《ふざけやがって!》
チックの前に立つピンインは武器腕ガトリングを向けるが、発射する前にチックのレーザーブレードにより右腕を切り落とされてしまう。
ピンインはなんとか抵抗しようとするが、水圧銃で右肩の関節を破壊されてしまう。
2機のピンインを無力化したチックはアリオールの元へ向かう。
アンドレ「ほう···作業用MTで挑むつもりか?」
推奨BGM『Circulation』
燃え盛る炎の中、チックとアリオールは向かい合う。周囲の炎が2機を照らし、互いに睨み合う。
チックはすぐさま水圧銃を周囲へ向けて撃つ。しかしアリオールはレーザーライフルを撃ち、放たれたレーザーはチックの左胸に命中する。
翔「うわぁっ!」
怯んだチックに向かって、アリオールは突進して左手で殴りつける。
チックは更に怯んで後退るが、水圧銃を撃ってアリオールの左肩に損傷を与える。
そしてチックはレーザーブレードを左右に振り回し、アリオールの胴体に若干の傷をつける。
アリオールはレーザーライフルを至近距離から撃ち、そのレーザーはチックの頭部の左上を抉る。
しかし、チックはブースターを最大に吹かしてアリオールに掴みかかり、壁に激突させる。
アンドレ《このっ!》
激突した衝撃で壁が破壊され、隣の区画へ飛び出る。アリオールは体勢を立て直して踏み留まり、チックはレーザーブレードを振り下ろす。
しかしアリオールは右腕でチックの左腕を受け止め、振り払う。
レーザーブレードを装備した左腕を振り払われたチックは、そのままの勢いで後退し、水圧銃をアリオールの胴体に発射する。
水圧銃から放たれた水はアリオールに損傷を与え、アリオールは怯む。
アンドレ《グウッ!この···ゴミがぁ!》
アリオールは左腕で水を防ぎつつ、レーザーライフルを撃つ。そのレーザーはチックの右肩の関節に命中し、チックの右腕は宙を舞って床に落ちる。
しかし、その際に水圧銃のトリガーは引かれたままであったため、その水はアリオールのレーザーライフルを破壊した。
翔「う、うおおおおおおおおおおっ!」
チックはアリオールに突撃し、アリオールの損傷した部位にレーザーブレードを殴りつけるように突き刺した。
チックがその場から後退るとアリオールは爆発し、翔はチックの中で意識を失う。
その後翔は親方達に救助され、病院へ運ばれた。採掘工場は一時的に閉鎖となったが、親方や作業員達はお構いなしに翔の身を案じていた。
そして、この事件の一部始終をこのレイヤードの管理者は見ており、新たな可能性を見いだしていた。
管理者(これは···人類が進む力として相応しい!特にこの翔·L·レイヴンは素晴らしい!)
管理者はすぐさま行動に移し、MTとは違う機体の製作に取りかかった。
採掘工場の事件から1年──
採掘工場は結局解体する事になってしまい、翔達はそれぞれの仕事を探し始めていた。
(管理者は関与しておらず、必然的なものである)
しかし、翔は未だにバイトをしながら就職先を探す日々を送っている。
そんなある日、翔の元に社員募集のチラシが届く。そこには『MTのテストパイロット募集』とあり、翔はなんとなく行ってみることにした。
そこは『
試験はMTの免許の確認と書類、面接だけで良かったのだが、自分以外に受ける人はほとんどおらず、会場は静かだった···
入社試験の翌日に合格通知が届き、3日後に仕事が始まるということで、翔は嬉しさで舞い上がった。
3日後、翔は桜花工造に向かい最初の仕事を受ける事になる。それはMTとは違う、新機種のテストだった。
また、テストパイロットには特別に担当官が着くこととなっている。翔の担当官は銀髪短いお下げをした女性であり、翔より背が低かった。
担当官「初めまして。ボクはあなたの担当官である『M·ドレッド』です、よろしくお願いします」
翔「こちらこそ初めまして、よろしくお願いします」
M「では、早速仕事に移ります。まずはそこにある機体に乗って、コクピット内の異常が無いか、確認してください」
翔「解りました」
翔が無事に確認を終えると、次に指示されたのは腕部の動作確認である。
手を開いたり握ったり、上げ下げをしてみたりと、様々な動作をしてみる。これも合格したようで、休憩時間になる。
翔はその後も新機種のテストを続け、時に改善点を見つけ、新機種は完成に近づいていく。
1つ1つ、確実に···
翔「そういえば、この新機種の名前って決まってるのかな?」
M「いえ、まだ決まってないようなんですよ。それに、パイロットの名前も特別なものにするようです」
翔とMはいつしか親密な関係となっていた。しかしMは管理者の作った人造人間であり、管理者の意を代行する存在でもあった。
そして翔の入社から2年、遂に機体が完成した。
翔とMは最終試験が無事に終了すると、共に喜び合った。
翔「やった!遂に、遂に完成した!」
M「はい!やっと、やっとです!」
しかし、機種の名前が決まっておらず難航していると、翔から提案が出る。
翔「う~ん···コアパーツを主軸として機体を組み上げて、そして既存のMTとは桁違いのスペック、特に装甲が優れているから···そうだ!『アーマード·コア』ってのはどうかな?」
その後複数の案が出たものの、最も語呂が良かったのがアーマード·コアだったこともあり、新機種の名称はアーマード·コアに決定した。
そして、翔はテストパイロットから正式なACのパイロットとして任命され、披露宴では翔がACに乗ってデモンストレーションを行うこととなった。
しかし名称の決定から2日後、事件は起こる──
その日は雨が降っており、また会社見学の日でもあった。翔とMはACの脚部の点検をしつつ、見学者にお辞儀をする。
しかし、突如見学者の1人が拳銃を出し、案内人の額を撃ち抜く。それと同時に、社内の複数の場所で爆発が起こる。
M「なっ!?」
Mはすぐに服の内側のホルスターから拳銃を出し、案内人を撃った男性に発砲し、放たれた弾丸は男性の首を撃ち抜く。しかし男性は倒れる間際にMに向けて発砲した。
翔「Mっ!」
翔はMを庇い、胴体を撃たれてしまう。更に、倒れた男性は首と口から大量の血を流しながらも、左手でボタンを押す。すると男性の身体が爆発し、その破片はなおもMを庇う翔の背中に大量に突き刺さった。
M「翔さん!」
男性の自爆と共に起こった爆発が、ガレージの天井を破壊し、Mと翔を雨が濡らす。
Mは翔を抱き上げ、必死に声をかける。
M「翔さん!翔さん!」
翔「ゴボッ···ごめん、ね。これじゃあ、披露宴に参加···できないや···」
M「そんな···披露宴なんてもう良いですから、だから···死なないでください!」
翔の生体反応がどんどん弱くなっていく。
翔「ハァ、ハァ···もう、眠くなってきた、な···」
翔の瞼がゆっくり下がっていく。
M「眠らないでください!あなたは···あなたはボク達に、人類に必要になんです!」
翔「あはは···ガハッ···そこまで言われると、照れるなぁ···ねぇ、僕が起きたら···もっと···平和になってたら、良いなぁ···Mや親方達と、皆で、笑っ···て···」
翔の全身から力が無くなり、生体反応も消えてしまう。Mはもう動かなくなった翔を強く抱き締める。
M「い···嫌だあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
桜花工造で起こったテロ事件の後、管理者は他のレイヤードの管理者と連絡を取り、ACのデータを送信する。
セラフ《ほう、アーマード·コア···略してACか》
セレ《なかなかに素晴らしいものですが、パイロットの呼称を特別なものにするとありますが、どんなものです?》
管理者「はい、それは···『レイヴン』です」
読んでくださり、ありがとうございます!
今回のDLCでは、AC誕生の話を書きましたが、どうだったでしょうか?
感想やご指摘は、これまで通りいつでもお待ちしています!
●翔·L·レイヴン
黒い短髪で身長160cm、享年19歳で4月9日生まれ。
親のいない孤児であり、親方が彼の親代わりとなっており、採掘工場でMTでの採掘を担当していた。
性格は優しく、お人好しである。
最期はMを庇って銃弾と爆弾の破片を受け、出血多量で死亡。
また、翔·ニールセンが彼の生まれ変わりなのかについては未だ不明となっている。
●親方
黒髪の角刈りで身長180cm、45歳で1月1日生まれ。
目の前で事故に遭い、親を失った赤子の頃の翔を拾い育てる。
採掘工場を取り仕切っており、人情深い人柄から作業員達からの信頼も厚い。
●チック
旧式だが拡張性の高い作業用MT。
赤いカラーリングは親方の趣味であり、その拡張性の高さから多くの工場などで使われている。
また、名前は英語で雛を意味する。
●アリオール
白いカラーリングで、部分的に流線型のある無骨な感じだが、どこか先鋭的なフォルムをしている2脚型MT。
武装は右手にレーザーライフルを装備しているだけだが、EN耐性や機動力は高く、まさに当時最新のMTと言える性能を持っている。
しかし、狭所での戦闘には適していない。
また、名前はロシア語で"鷲"を意味している。
●アンドレ·クローズ
金色の短髪で身長170cm、31歳で6月6日生まれ。
自信過剰な性格で、常に他人を見下している。しかし今の地位が自分の実力で上がったものではないことに気づいていない。
新事業として、MTを使ったテロ代行を立ち上げようとしていたが、着いてくる者は2人しかいなかった。
また、MTの腕はあまり高くはない。
●ピンイン
緑色のカラーリングの逆関節型MT。
武装は右腕の武器腕ガトリングのみ。
比較的新しい部類のMTであり、耐火性が高いのが特徴。しかしアリオールと同じく、狭所での戦闘には適していない。
また、名前は中国語で"鉛"を意味している。
●桜花工造
主にMTの開発、製造を行っていた企業で、最近会社を建て直した。
桜花工造のMTは主に軍用のものが多いが、作業用MTも作っており、チックもその1つである。
●M·ドレッド
銀髪の短いお下げをしており身長155cm、19歳で4月8日生まれ。
桜花工造のテストパイロットの担当官であり、機器の計測も担当している。
また、管理者の造った人造人間であり、基本的に管理者の指示を受けて行動し、管理者の意を代行している。しかし翔に対し次第に恋心を抱くようになった。
余談だが、桜花工造でのテロの後は翔の代わりに彼女が乗り、デモンストレーションを行った。