アーマード・コア ~鴉の証~ (ver2.0) 作:ダイヤモンド傭兵
翔が変えた未来では、どのような物語が紡がれるのだろうか···?
DLCです。本編(番外編と外伝を含む)を全て読み終わってない方は、読み終わってから来てください。
喫茶店の扉が開き、ドアベルが軽やかな音色を響かせる。
翔&愛海「「いらっしゃいませ~!」」
2人は笑顔で客に挨拶し、客の頼んだコーヒーを用意する。
車椅子での生活となった翔は、動かせる右腕を使って器用にコーヒーを入れたり、チーズケーキを切り分けたりしている。
客は優しい味に、思わず笑顔になる。
男性客「美味しかったです、また来ます!」
翔&愛海「「ありがとうございました~!」」
翔と愛海の喫茶店は、この地域で評判の店であると共に、憩いの場や助言を求める場としても確立されていた。
現在、翔と愛海は仲睦まじく暮らしており、愛海の父親である竜志は昨年亡くなっていた。
閉店時間になり、2人は片付けをした後車に乗り込み、山の中へ向かう。翔がコルヴィスと共に落ちてきた山を抜け、喫茶店と反対側へ向かうと、海に面した大きな屋敷があり、そこへ車を停めると2人は屋敷に入っていく。
この山は竜志がかつて所有していた敷地であり、現在はその所有権は愛海に移っており、この屋敷は頂上決戦の直後に建てたものである。
屋敷は和と洋の要素を合わせた造りであり、中も広い。
翔と愛海は今はこの屋敷で暮らしており、夕食を食べ終わると同じベッドで就寝している。
翔と愛海の住む地域に、かつて翔が自身の書いた小説を渡した少年が住んでいた。
夜中、少年は隠れて月明かりを頼りにその小説を読んでいた。少年はその小説の主人公と、自身に小説をくれた男性に憧れを抱いていた。
少年(こんな、俺でも···あなたのように、なれますか···?)
少年は薄い布団に寝そべり、白いタオルケットを体にかけて眠る。少年の寝具は、その2つと枕だけであると同時に、少年の体には痣や小さな火傷の痕があった。
憧れの人が夢に出ることを祈ったがその日、少年は世界が燃える夢を見てしまったのだった。
世界はすっかり復興が進み、AIに関する規制は厳しくなっていた。例えそれが根本的な解決にならないとしても、エクシーナインでの1件で、人々はAIに対する恐怖心が植え付けられていた。
しかし政府や研究機関人々は、自らがしてきたことから目を背け、逃げることを選んでしまっていた。
人々はAIから離れ、自らの手で未来を切り開こうと宣言したものの、環境破壊や利権争いなどの身勝手な行動を減らすことはしなかった。
全ての責任をAIと研究者に押し付け、言葉を着飾り、口では切り開くと言ってはいたが、結局は変わっていなかった···
そればかりか、コルヴィスとそのパイロットを血眼になって探し、利用しようとさえしている。
翔が守った世界は、本来起こり得た未来での企業達と大きな差は無かった。
それを目の当たりにした翔は、それでもと少しずつ起きている変化に目を向け、人知れず支援をしていた。
反戦を訴え、戦争が起きてしまった際の対応策を伝えたり、真に戦争を無くそうとする者や、人々の役に立とうとする者へ資金援助をしていたり···
そしてそれらは少しずつ実を結び、起きかけた戦争を結果的に止める事にも繋がった。
しかしそれでも、普段の生活は変えずに喫茶店を経営している。
···が、それでも翔は覚悟を決めている。
何かあれば、進んで戦場へ向かうことを。愛海を、誰かを守るためなら自らの命を進んで差し出すことを。
ある日、少年は学校の行事として臨海学校へ行くこととなる。少年はいつもと同じ、憂鬱な気持ちで過ごす。
そしてやはり、いじめの標的になった少年はボロボロになっていた。殴られ蹴られ、罵倒され···しかしそれでも少年は優しさを失わなかった。
なぜなら、翔からもらった小説の言葉と翔の言葉が、少年の心を守っているからである。
そのため、少年はしばしば誰かを助けようとしている。しかし少年は既に広められている悪評により、誰も翔の手を借りようとはしなかった。
そしてその日の夜、少年を4人の同級生が1人の男子を外に連れ出すのを見かけた少年は同級生を尾行する。
尾行して着いた先は、旅館の近くの崖だった。そこで同級生達はその男子を攻撃し始める。
すると、少年の頭の中に小説にあった言葉が浮かぶ。
『弱くても、できることはあるんだよ!』
少年「や···やめろぉぉぉ!」
少年は同級生達に突進し、殴りかかる。しかし満足に栄養の摂れてない体では力が入らなかった。そのため、相手を怒らせてしまうこととなった。
男子生徒「なんだテメェ!」
同級生達はその場で少年をリンチし始め、先程まで攻撃されていた男子はすぐに逃げ出す。
その男子と入れ替りで、担任の女性教師がやって来る。その女性教師は、同級生達がいないことに気づいて探しに来たのだ。
女性教師「ちょっと、そろそろ帰らないと~」
女性教師は同級生達にのみ目を向け、少年のことなど無視していた。
男子生徒「うっせぇ!こいつが殴ってきたから、解らせなきゃいけねぇんだよ!」
同級生は少年への暴行を続け、崖の向こうに向かってよろけた少年に、飛び蹴りをする。その飛び蹴りは少年の胸に当たり、崖の向こうに少年は飛ばされてしまう。
その瞬間、少年の視界はスローモーションになった──
少年は背後の海に真っ逆さまに落ちていく──
空と海が反転し、月明かりのみが周囲を照らしている──
そして少年は海へ落ち、少年の視界は泡で埋め尽くされる──
視界から泡が消えると、そこは暗く冷たい海中だった──
少年は意識を失う直前に、小さな声を聞いた気がした──
シズメ
その声は、怨嗟や悲しみ、慟哭など、様々な感情の混じったようだった──
そして少年は、自然と手を伸ばしていた──
暗く冷たい、深海に······
それから年月は過ぎ、大海原で再び轟音が鳴り響く。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回のお話は私の別作品『鴉の航路』に繋がっています。
このお話を投稿した時点ではアップデートされてませんが、この小説のアップデートが終わり次第、鴉の航路もアップデートする予定です。
まだ時間はかかりますが、楽しんでくれたら幸いです。