パート1
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「ふん、ヨーゼフめ。伯林華撃団相手に尻尾を巻いて逃げてきたらしいね」
トゥルーデが嘲笑しながら言う。ユッタもニヤニヤしている。
「まったく、あれだけ啖呵を切ったのに、情けないよ」
「姉貴、言いすぎだぞ。ヨーゼフ兄貴だってあぁ見えてショックを受けているんだ」
ハインリヒがたしなめるが、トゥルーデはフンっと鼻で笑う。
「何だい、男どもは女々しいねぇ。情けないと言って何が悪い? 事実だろう」
「トゥルーデ!」
「我が弟妹よ……」
闇に包まれた声が奥から聞こえる。三人はその場で直立不動になる。
「あ、兄者!」
「……ヨーゼフは失敗した。だが、こちらも奴らを甘く見ていた節がある。──トゥルーデよ、次はお前に任せる」
「はい。お兄様の期待に応えられるよう、このトゥルーデ、命に代えても尽くすつもりです」
「……期待しておるぞ」
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《あぁ、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの?》
《ジュリエット、君はどうしてジュリエットなんだ?》
舞台の上で、ニーナとマレーネが圧巻の演技をしている。観客は息をのんでその芝居に食い入るように見ている。
伯林歌劇団五月公演『ロミオとジュリエット』は、初日以来連日満員御礼で立ち見を擁するほどの盛況ぶりだ。特にマレーネは【ブロードウェイから舞い降りた大天使】として批評家たちからこぞって称賛の声を浴びている。ニーナも新人ながら、その堂々とした振る舞いに早速ファンが出来、こぞってブロマイドを買い漁っている。
神木も慣れないモギリに悪戦苦闘しながら、何とかチケットをさばいた。
空組の三人も、舞台の準備や手伝いにてんてこ舞い。特にリンは舞台監督も兼ねているため、不備が無いように夜遅くまで何度も点検をしていた。
何もしていないのは、ヨハンただ一人だけだった。
額ににじみ出た汗をハンカチで拭いていると、ヨハンが「神木ちゃん」と近づきながら声を掛けてきた。
「支配人。何ですか?」
「今、ヒマ?」
「は?……はぁ。まぁ、モギリの仕事は終わりましたけど……」
「ならちょうどいい。──実は今日新入隊員が来ることになっててね。神木ちゃん、迎えに行ってよ。待ち合わせ場所はベルリン中央駅だから。よろしくねー」
「えぇっ? ──そういうのは、支配人の仕事じゃないんですか?」
「何言ってんの! 僕ちゃんこれからお昼寝タイムなんだから。さっさと行ってきて!」
言うだけ言って、ヨハンはさっさと奥に引っ込んでしまった。
一人残された神木は、言いつけを無視するわけにもいかず、結局迎えに行くことにした。