ベルリン中央駅に向かった神木だったが、構内を探してもそれらしき人は見かけなかった。
「おかしいなぁ。行き違いになったのかな?」
不審に思った神木は、蒸気小型コンピューター電話【アイフォトロン】を取り出してヨハンに電話をする。
『……もしもしぃ? 誰?』
「あ、支配人。神木ですけど、駅に新入隊員らしき人を見かけなかったのですけど……」
『……あぁそれならさっき副指令からこっち向かってるって連絡来たから……』
「は?」
『……悪いけどすぐ戻ってきてね~それじゃ、おやすみ』
それだけ言うとヨハンは通信を切った。
「なんだよ、いったい……」
苛立ちながら駅を後にし、劇場に戻る。
伯林の街並みを歩きながら見渡すと、アイゼンクライト改に乗っている時とはまた違った光景に見える。
『そう言えば、まだ市内をゆっくり観光していないな……。今の舞台が終わったらちょっと探検してみるか』
そんなことを考えながら歩いていると、突然前方から銃声と阿鼻叫喚が聞こえてきた。
「ぎ、ぎ、銀行強盗だー!」
太った男が叫びながら神木の横を駆け抜けていく。
「なに、強盗!?」
現場に駆け付けると、警官隊に囲まれる形で覆面をした銀行強盗が女性行員を人質に銃を向けていた。
「おい! 馬鹿な真似はよせ! 銃を下すんだ!」
年老いた刑事が必死に呼びかけるが、犯人は応じない。
「うるせぇー! 早く100万マルクと逃走用の車を用意しろ! じゃなきゃ、この人質を殺す!」
「キャーーー!」
「くっ……」
刑事は歯がゆそうに唇を歪める。
『いかん!このままじゃ──よし、すぐに劇場に戻って華撃団を出撃させよう。そうすれば──』
神木がそう思った次の瞬間、突如銀行の壁が爆発した。
「な、なんだぁ?!」
あっけにとられた犯人が思わず顔を上に向ける。空から埃やコンクリートの破片が降ってくる。
「あ、危な!」
犯人は咄嗟に人質を離し、その場にうずくまる格好を取る。その瞬間を刑事は逃さなかった。
「今だ! 捕まえろー!」
警官隊が押し寄せて、犯人はそのままお縄となった。
「あーあ、情けないねぇ。破片ぐらいで怖がるようじゃ、強盗には向いてないね」
あっけにとられた神木の後方からため息交じりの声がする。振り返ると、バズーカ砲を肩に抱えた金髪パーマで引き締められたボディの、黒のタンクトップに迷彩色のズボンを履いている黒人女性が立っていた。
「そう思うだろ? あんたも」
『な、何だこの軍人は?』
「おや、あんた……日本人だね? もしかして……あんたが神木かい?」
「えっ……? どうして自分の名前を……。まさかっ、君が新入隊員?!」
「やっぱりあんたか。そうさ。あたしが今日から伯林華撃団・四季組に配属されることになった、ナターシャ・イヴェールだ。ナターシャと呼んでくれ」
フランス訛りのドイツ語でナターシャはそう言うと、二カッと笑って握手を求めてきた。