「あ、見つけた! ここにいたのね、ナターシャ!」
二人の後ろから声がする。目線を向けると、フレアスカートを着た茶髪ロングの女性が近づいてくるところだった。女優のグレタ・ガルボ似の美形で、年齢はマレーネと同じくらいに見える。
「もう、勝手に出歩いちゃダメでしょう?」
「いいじゃねぇか。伯林はあたしも初めてなんだから」
「だからダメなのよ。劇場まで無事に送り届けるのが私の義務なんだから。──あら、あなたは?」
隣に立っていた神木に気づく女性。
「あ、じ、自分は日本から参りました伯林華撃団・四季組の隊長、神木裕一郎です」
「あぁ。あなたが神木くんね。はじめまして、伯林華撃団副指令のスピカ・レンテです」
スピカはそう言って手を差し出す。神木も握手をし返す。
「副指令……あなたが。お噂はかねがね」
「ふふっ。どうせロクでもない噂でしょう?」
「そ、そんなことないです。ニーナくんをスカウトしたって……」
「ニーナがそう言ったの? まぁ、半ば強引だったけどね……。ま、いいわ。立ち話もなんだし、早く劇場に戻りましょう」
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「というわけで、この劇場にまた戻ってきました。みんな、よろしくね」
みんなの前に立ってスピカが笑顔で挨拶をする。
舞台終了後、ニーナとマレーネを交えて一同はサロンに集合していた。ニーナは久々にスピカに会えて感動している様子だ。
「じゃあ、これからはずっと私達と一緒なんですね?」
「えぇ、そうよ」
「やったー!」
「──なに吞気に喜んでいるのよ」
キセルを吸いながら、手放しで喜ぶニーナを見てため息をつくマレーネ。
「スピカが戻ってくると言うことは、海外でのスカウトは芳しい結果ではなかったということなのよ」
「……マレーネの言う通りね。でも、そう簡単に霊力の持ち主がいるとは考えてないから、あまり気を張らないことね──さて」
スピカはサロンの隅の方で座って待機していたナターシャを連れてくる。
「今日から新たに、伯林華撃団・四季組のメンバーに加わることになった、ナターシャよ。ナターシャ、みんなに挨拶して」
ナターシャは一同を品定めするように一瞥してから自己紹介を始めた。
「ナターシャ・イヴェールです。生まれはモロッコで、17歳の時に巴里に移住してフランス外人部隊の傭兵として4年間前線で戦ってきました。戦闘や戦術面に関しては皆さんより長けてると思うので、どうぞよろしく」
深々と頭を下げるナターシャ。一同はパチパチと拍手する。
「フランス外人部隊って凄いな。エリートじゃないか」
拍手をしながら神木が声を掛ける。
「しかも4年も前線にいたって、並大抵のことじゃないぞ」
「ありがとう。そう言う隊長も、日本では海軍にいたんだろう?」
「一応ね。君とは比べ物にならないけど」
「──さぁ、ニーナとマレーネは明日も舞台でしょう? ナターシャも明日から舞台に上がるから、今日はここまでにして早く寝ましょう」
「えぇ? ナターシャをもう舞台に上がらすんですか?」
驚きの声を上げる神木。
「そうよ。彼女も女優ですもの。良いわよね、ナターシャ?」
「これでも、ガッツと度胸は人一倍あるからね。舞台だろうがなんだろうが、ヘッチャラさ」
そう言って、腕の筋肉を見せるナターシャ。
「──あ、神木くんは夜の見回り、お願いね。それじゃ、お開きにするわよ」
スピカの一声で、一同はサロンを後にした。