ナターシャの怪我は、3日もせずに9割方回復した。普通に考えても驚異の回復力だ。
「だから言ったろう? 心配するなって」
サロンで、ギプスの外れた腕を見せながら笑うナターシャ。マレーネを除く他の皆も笑顔だ。
「でも良かったよ本当に。大事に至らなくて」
「オーバーだなぁ隊長は。あたしは打たれ強いのさ」
「──みんな、聞いて」
スピカが手を叩きながらやってくる。
「いよいよ明日が『ロミオとジュリエット』千穐楽よ。残り4公演、気合い入れていくわよ!」
「はい!」
皆が返事をした瞬間、警報が劇場内に鳴り響いた。
「おっと、敵さんのお出ましね。みんな、すぐに作戦指令室に集合よ!」
「了解!」
指令室に集まると、モニター画面に赤の市庁舎とトゥルーデの姿があった。
「こいつ……また現れたのか!」
ナターシャが言う。
「みんな! 前みたいな戦闘はしないでね。必ずこいつを倒すのよ!──神木くん、出撃命令を!」
「はい! 伯林華撃団・四季組、出撃! 目標、トゥルーデの撃破!」
「了解!」
*******
赤の市庁舎前の広場では、トゥルーデの高笑いが響いていた。
「あーはっはっは! ヨーゼフの仇討ちに目がくらんで肝心の破壊を忘れていたとは、私もつくづくバカよねぇ。さぁ、忌まわしき人間どもを恐怖に陥れてやる!」
「そこまでだ、トゥルーデ!」
空中からアイゼンクライト改が飛来してくる。
「伯林華撃団、参上!」
「ふん。来たか、負け犬どもめ。また私に倒されたいみたいねぇ」
「その言葉、よく覚えておくんだね」
ナターシャが啖呵を切る。
「泣いて許しを請いてもダメだからな」
「チッ、調子に乗りやがって! すぐ楽にしてやるからな!」
トゥルーデが襲い掛かってくる。神木が素早く命令を出す。
「みんな、【雪】作戦でいくぞ!」
「了解!」
防御力を上げ、持久戦に持ち込む一同。上手いこと『アネモーネ』の攻撃をかわし、相手が隙を見せるのを待つ。
「クソッ。ちょこまか動きやがって……。うぁああああああ!」
痺れを切らしたトゥルーデが一直線に突っ込んできた。
「今だ!」
神木の合図と共に、三人が一斉にトゥルーデに攻撃を仕掛ける。隙を突かれたトゥルーデは『アネモーネ』の防御も間に合わず攻撃を直で受ける。
「ぎゃああああああああああ!!!!」
トゥルーデの断末魔の叫びが響き渡る。
「これで終わりだ!」
ナターシャの渾身の一撃が、『アネモーネ』の急所を突いた。
「お兄様ぁあああああああ!!!!!! お許しをぉおおおおおお!!!!!」
『アネモーネ』は爆破に巻き込まれ、トゥルーデは業火の中で散っていった。
「……終わったな」
燃え盛る炎を見ながら、ナターシャが呟く。
「あぁ、僕たちが勝ったんだ。ナターシャ、君のおかげだ」
「……隊長。あんたの場をよく見た指揮、大したもんだよ。これからもよろしくな」
「さぁ、さぁ。皆さん!」
ニーナが元気よく割って入る。
「リベンジも果たしたことですし、いつものあれ、やりましょう!」
「あれ? あれって?」
「四季組は戦いに勝った後は、いつも『勝利のポーズ』をするんですよ。さぁ、ナターシャさんも入って、入って。──では、行きますよ。せーの!」
「勝利のポーズ、決め!」
*******
翌日の千穐楽は、無事に終えることが出来た。
カーテンコールでは、お客さんのスタンディングオベーションが10分以上も続いた。
ニーナたちキャストは満面の笑みでお客さんたちに手を振り続けた。
ナターシャも舞台の楽しさに目覚めたようで、これから本格的に演技の勉強をするらしい。
また、ナターシャもスピカの尽力でお咎めなしとなった。
舞台袖で見ていた神木は、感慨の笑みを浮かべて惜しげもない拍手を送った。
【Ep.2 完】
【次回予告】
ある時は貞淑な大和撫子。ある時は何にも縛られないモダンガール。
どっちも私。でも本当の私は、一体どっちなの──?
次回、サクラ大戦Ⅵ 第三話『ヤマトナデシコ二変化』
お楽しみは、これからよ!