パート1
*******
「お姉さまが、やられた……そんな……」
ユッタは愕然として床に崩れ落ちる。
「お姉さまを倒すなんて……許さない! 兄者、ここは是非あたしに、復讐のチャンスをください!」
「待て、ユッタ」
ハインリヒがたしなめる。
「俺たちの目的を忘れたのか? この伯林を根城に、世界を征服することこそが真の目的。それを忘れて、ただ仇討ちのために行くなんて本末転倒だよ」
「でも……」
「ハインリヒの言う通りだ……」
兄者と呼ばれた男の声が響き渡る。
「ユッタ……。お前は少し頭に血が上りすぎている……。ハインリヒよ。今度はお前に任せる。伯林華撃団を倒し、人間どもを震え上がらせろ」
「分かりました」
「期待しておるぞ……」
*******
「──リンちゃーん。本当にこの辺りに落としたのかい?」
埃まみれになった顔で神木が尋ねる。
「おかしいなぁ。確かに、この辺りに落としたはずなんですけどー」
顔をススだらけにさせながら、リンが首をかしげる。
事の発端は、朝、リンが舞台に使う設計図を無くしたと騒いでいるところから始まる。
「だからちゃんと持ち物は整理しなきゃダメだって、言っているでしょう?」
つぼみがやれやれといった顔をする。
「だってー……」
「それで、リン。心当たりはないの?」
アンジュがリンの顔を覗き込んで尋ねる。
「うーん……。昨日の記憶が大道具部屋で止まっていて……」
「じゃあ、きっとそこにあるんだよ! 神木さん、一緒に探してあげてください!」
「えぇっ?! 僕が!?」
いきなり流れ弾が飛んできて焦る神木。
「だって神木さん、大して用事ないでしょ? リンに付き合ってあげて下さいよー」
「うーん。ま、こっちは構わないけど……」
というわけで、朝からリンの設計図探しに付き合っているというわけだ。
「もう一回、1から探してみましょう!」
「えー、だってもうこれで3周はしているよー! 他の場所も探してみた方がいいんじゃないかなぁ?」
「そんなことありません! 絶対この大道具部屋のどこかにあるはずです! さ、神木さん。探しますよ!」
「あら、二人とも」
入口からスピカの声がする。
「どうしたの、こんなところで?」
「あ、いや……。リンの設計図探しを手伝っているんですけど……」
頭をかきながら説明する神木。
「あら。設計図って、もしかしてこれのこと?」
話を聞いたスピカが手に持っていた紙を差し出す。
「こ、これです! これこれ!」
目を輝かせながら、差し出された設計図に目を通すリン。
「どこにあったんですか?! これ!」
「どこって……資料室のテーブルの上よ。誰かが置き忘れてたみたいだから、持って来たんだけど……」
「……へ? 資料室?」
「お役に立てたのならよかったわ。それじゃ、私はこれで」
スピカはそう言うと足早に大道具部屋を後にした。神木は黙ってリンを睨む。
「──そう言えば、大道具部屋に行った後、資料室に寄ったよーな、寄らなかったよーな……」
「……リン!」
「わー、ごめんさーい!」
平謝りするリン。
「お詫びに、神木さんが絶対喜ぶ場所に連れていってあげるから、許してー!」
「……絶対喜ぶ場所?」
神木は訝しげに首を傾げた。