パート1
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長い眠りだった。
「う……く……」
男は目をゆっくりと開け、身体を起こす。ずっと横になっていたからか、身体がなまっている感覚がある。
「やっと目覚めたのね」
奥から女性の声がする。男は視線を声のした方に向ける。
「随分と長いお昼寝だったみたいね、ヨーゼフ」
ヨーゼフは頭を振る。
「あぁ。良い休暇になったよ。──ところで、ユッタ・トゥルーデとハインリヒはどうした?」
「──倒されたわ。伯林華撃団に」
「何だって? それで……二人は……?」
ユッタはブンブンと頭を横に振る。ヨーゼフは絶望に打ちひしがれる。
「そんな……嘘だろ……?」
「嘘じゃないわ。可哀想に」
「──す、すぐに、あいつらを倒して……!」
「無理よ。目覚めたばかりなんだから。力だって、通常より下がっているはずよ」
「でも……」
「心配しないで。今回は、私が行くから。私がこの手で、華撃団を仕留めるから」
ユッタはそう言うと、踵を返してヨーゼフの元を後にした。
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"──以上により、伯林歌劇団8月公演『ジャズシンガー』の全てのプログラムを終了いたします。お忘れ物のないよう、お帰りください"
つぼみのアナウンスが劇場内に入る。観客たちはあれこれ言いながら退場していく。
リリィが新メンバーとして入ったことで歌の演目も出来るようになった歌劇団は、ハリウッド映画初のトーキー『ジャズシンガー』をミュージカル風にアレンジして上演することにした。リリィの圧倒的な歌声と、ブロードウェイ出身のマレーネの二人のぶつかり合いは、辛口批評家すら舌を巻くほどの迫力だった。
「みんな、お疲れ様」
終演後、サロンでくつろいでいるメンバーにドリンクの差し入れを持っていく神木。みんなはサロンの椅子に座りながら雑誌や新聞を読んでいた。
「今回の舞台、あらゆる評論家の方が絶賛しているんですよ! "『ウィーン少年少女合唱団』から電撃移籍したリリィ・ヴィンターとブロードウェイの元看板女優マレーネ・ミッドサマーの歌唱は、決して個性のぶつかり合いをせずにこの舞台を高尚なものへと変化している"ですって!」
ニーナがそう言いながら舞台専門雑誌を見せてくる。全ての批評家たちが☆4つ以上のスコアを付けている。
「へぇ。凄いじゃないか」
「マレーネさんの歌も凄いですけど、やっぱりリリィの歌唱力は圧倒的ですよね。何て言うか、心が洗われていくんですよ。お客さんも皆良い笑顔でしたよ」
「良かったなぁ、リリィ。みんなに褒めてもらえて」
そう言ってリリィの頭をポンポンと叩く。照れくさそうに笑うリリィ。
「──あれ? そう言えばマレーネは?」
マレーネの姿が見えないことに気づいた神木が首をキョロキョロする。
「マレーネさん、自分の部屋に戻ると言ってましたよ」ニーナが答える。
「付き合い悪いよなー。まぁ、メンバーの中で年上ってのもあるから、混ざりにくいのかな?」
ナターシャが空組から差し入れされたシャーベットを舐めながら言う。
『──うーん。彼女の事なかれ主義も後々厄介になるかもしれないな。ここは一度腹を割って話し合いをしてみるか』
神木はそう考えると、マレーネの部屋の方をチラリと見た。