ベルリン歌劇場は、18世紀に建築されて以来数々の歌劇を人々に提供してきた由緒ある劇場である。伯林華撃団開設に伴い、賢人機関が施設を買収。作戦指令室の設置等整備が進められてきた。
「凄く大きい建物だなぁ。圧倒されちゃうよ」
馬車から降りた神木は、劇場を見上げながら呟く。
「神木さん。こっち、こっちですよ」
ニーナにせかされるがまま、正面玄関から入る。中は吹き抜けでとても広く、洗練された印象を持つ。
「じゃあ、神木さん。まずは事務室で着任届を書いてください。その後に、支配人室に寄ってください。私はひとまずこれで失礼します」
「あぁ、ありがとう」
ロビーでニーナと別れた神木は、奥の方に歩いていき『事務室』と書かれた部屋に向かう。ドアをノックすると中から「どうぞ」という女性の声が聞こえた。
「失礼します」
中に入ると、20代くらいのおしとやかそうな着物姿のアジア人女性と、お団子ヘアーの白人の10代の少女が立っていた。
「本日、伯林華撃団に配属になりました、神木裕一郎少尉です。着任届を書くようにとのことなのでこちらに参りました」
「あなたが、神木さんですか。お話は伺っております」
着物女性が口を開く。
「はじめまして。事務をしております、野々村つぼみと言います。よろしくお願いします」
「は、はい。こちらこそ。……あの、日本の方、ですよね?」
「はい。乙女学園を卒業後、伯林華撃団新設に伴い、こちらにやってきました。これでも、帝国華撃団にお手伝いに行っていたこともあるんですよ」
「そうなんですか! 凄いですねぇ」
「はい。──そしてこちらが……」
「アンジュ・ヒメルでーす! 売店で売り子をやってまーす!」
つぼみと対照的に元気いっぱいのアンジュ。
「ハハハ、よろしく。──それで、着任届ですが……」
「あ、はい。ではこちらにサインをお願いします」
「売店でブロマイドも売っているから時間があったら来てねー! じゃーねー!」
アンジュはそれだけ言うと事務室を後にした。
「元気があって良い子ですね……はい。これでいいかな?」
「はい、ありがとうございます。支配人は隣におりますので、よろしくお願いします」
「ありがとう。……君たちも、伯林華撃団の一員なんだよね?」
「はい。私達は、伯林華撃団・四季組を影でサポートする、伯林華撃団・空組です。実はもう一人いるんですけど、今は外出をしていて……」
「そうか。今後色々と世話になるんだね。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします……」
事務室を後にした神木は、隣にある支配人室に移動する。
『ここか……よし!』
満を持してノックをする。
「失礼いたします! 大日本帝国海軍より参りました、神木裕一郎少尉です!」
一拍おいて、聞こえてきたのは「ど~ぞ~」という気の抜けた軽い返事だった。