「私です。ニーナです。神木さん、よろしいですか?」
「ニーナくんか。どうぞ、カギは開いてるよ」
部屋に入ってきたニーナは心なしか緊張しているように見える。
「どうしたんだい、ニーナくん?」
ベッドから身を起こしながら神木が尋ねる。
「神木さん、あの……明日からの冬休み、何か予定を立てましたか?」
「予定? いや、まだ決めていないけど」
「あ、あの……。良かったら私と、その、伯林の街を観光しませんか?」
「えっ?」
「神木さん、こっちに来てからずっと舞台と戦いと、あまり観光出来てないですよね? せっかくの休みですし、良かったら私と一緒にあちこち回ってみませんか?」
「そうだなぁ……。よし、行こう! 確かにきちんとは街を見ることが出来ていないからなぁ」
神木の返事に、パァッと顔を輝かせるニーナ。
「良かったぁ。じゃあ、明日朝十時に一階のロビーに集合してから行きましょう!」
「あぁ、分かった。じゃあ、また明日ね」
*******
翌日。先にロビーに着いた神木が待っていると、桜色のドレスに着替えたニーナが笑顔で走ってきた。
「ごめんなさい。待ちましたか?」
「いや。僕も今来たところ。──それにしても、ニーナくんの服装よく似合っているよ」
「そうですか? えへへ、思い切って買ったんですけど、良かったぁ」
「それで、どこに連れていってくれるの?」
「そうですねぇ。──ベルガモン博物館はどうでしょう? 今年開館したばかりなんですけど、古代ローマ・古代オリエント美術のコレクションが売りなんですよ」
「へぇー、それは興味あるな。よし、じゃあそこに行こう!」
ベルガモン博物館は川沿いにある施設で、とてつもない広さを誇っている。何と言っても、中にまるまる古代の建築物が保存されているのだから、その迫力たるや。
「凄いなぁ。これほどの規模の博物館はさすがに日本にも無いよ」
建造物を見上げながら神木が呟く。
「私も前に一回来たばかりなんですけど、本当に圧倒されますよね」
「あぁ。西洋の歴史を肌で感じることが出来る貴重な空間だ」
次のブースへ移動しようとした時、後ろから来たツアー客とニーナがぶつかった。
「危ない!」
床に倒れそうになるニーナの手を握る神木。
「大丈夫?!」
「あ、はい……。ありがとうございます……」
立ち上がりながら顔を赤らめるニーナ。
「そろそろお昼時だけど、どうする?」
「私、前から行ってみたいレストランがあったんです。そこに行きませんか?」
「よし、じゃあそこに行こう」
件のレストランは、ブランデンブルク門の近くにあった。
「ここのレストラン、伝統的なドイツ料理を提供してくれるって雑誌で取り上げられていたんです」
「ほう……そりゃ楽しみだ」
「それにしても嬉しいなぁ。神木さんと二人きりでお食事が出来るなんて」
「に、ニーナくん……」
照れる神木。
だが、突如遠くの方で爆発音がこだまする。
「な、何だ? 爆発か?」
神木が腰を浮かしたのと、アイフォトロンが鳴ったのはほぼ同時だった。
「も、もしもし?」
『もしもし、神木くん?』
珍しくスピカの声が切羽詰まっている。
「副司令。一体どうしたっていうんですか?」
『すぐに戻ってきて。緊急事態なの!』
「緊急事態? ──分かりました。すぐに戻ります!」
アイフォトロンを切ると、ニーナに向かって「すぐに劇場に戻ろう」と言う。
「はい! ──でも、何が起こっているんです?」
「分からない──けど、とてつもなく嫌な予感がする」
そう言って、神木は爆発がした方面に視線を向けた。