カール大帝のアジトは依然伯林の上空に浮遊していた。相変わらず天気は悪く、雷が鳴っている。
神木たちが乗ったアイゼンクライトⅡは、無事にアジトまで乗り込むことに成功した。
「こちら、神木。無事、アジトに侵入しました」
『こちら、スピカ。了解。くれぐれも気を付けて』
「こちら、神木。了解」
通信を切って、ゆっくりと中に入っていく。中は薄暗く、視界が悪い。
「おそらく、カールは塔のてっぺんにいるだろう。みんな、気を引き締めていくぞ!」
「了解!」
と、その時だった。突然背後から差し込んでいた光がすっと消えた。
「何だ?!」
振替えると、無数のゴーレムの大群がウジャウジャいた。
「ご、ゴーレム!? まだ残っていたのか!」
「西欧を統べた国王に、ゴーレムを支配下にいれることはピース・オブ・ケイクというわけね」
マレーネが呟く。ナターシャが歯ぎしりする。
「クソッ。隊長、ここは私が食い止める! 隊長たちは早く先に行くんだ!」
「いかん。ナターシャ! こんな大群に一人で立ち向かうって言うのか!」
「隊長が倒すのはカールだろ?! こんな雑魚相手に足止めされてる場合じゃないだろ! ──大丈夫。こいつらさっさと片づけたら、すぐに追いついてやんよ」
「ナターシャ……分かった。だけど、無茶だけはするなよ!」
神木はその場をナターシャに任せると、急いで上の階へと向かった。
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上の階に上がると、中世の鎧や剣など、現在では非常に価値の高い調度品が所狭しと置かれているフロアだった。
「これら、全部カールの私物なのか?」
「パッと見ただけで、一国分の国家予算ぐらいの値打ちはありそうね」マレーネが分析する。
「でもゆーいちろー、何だかどれも、現実感の無い感じがするよ」
「リリィもそう思う? 何だか、どれも実態として存在しなさそうなのよねぇ」秋奈が同調する。
「ここの階には何もなさそうだな。よし、奥へ進もう」
神木がそう言った瞬間、地響きがしたかと思うと調度品が皆ゴーレムへと変化した。
「クソッ。罠ってことか!」
「隊長! ここは、私とリリィで食い止めます! 皆さんは、早く上へ!」秋奈が叫ぶ。
「いかん。秋奈くん!」
「ゆーいちろー、大丈夫だよ! ボクたちだけで、十分さ!」
「リリィ!」
「隊長。ここは二人に任せて先を急いだほうが良いわ」マレーネが進言する。
神木はしばし歯ぎしりをするが、「分かった」と声を絞り出して言うと、
「無茶だけはするなよ! やばくなったら、急いで上がってくるんだ!」
とだけ残して階段を上がっていった。
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さらに上の階に進むと、調度品は何もない代わりにカール大帝の肖像画が多数飾られている部屋に出た。
「さっきと比べるとずいぶん質素ですね……」ニーナがポツリと呟く。
「さっきから色んなフロア見てるけど、何となくカールの人となりが分かったような気がするわ」
マレーネの台詞を神木は聞きとがめる。
「人となり、と言うと……?」
「さっきは、豪華絢爛な調度品。今度は自らの威厳を示す無数の肖像画……。だけど、もしこれらがわざと着飾ったものだとしたら、カールはきっと自分に自信が無いのよ。でもそれを隠すために、わざと煌びやかに見せているんだわ」
「なるほど……」
「だから、そこがきっと彼の急所ね」
マレーネがそう言った瞬間、肖像画のカールがゴーレムに変化して画の中から大量に出てきた。
「どうやら図星だったみたいね。隊長。ここは私とニーナで食い止めるわ」
「神木さん。ここを片づけたら、すぐに私達も行きますからね!」
「……分かった。だけど、無理だけは絶対するなよ!」
神木はアイゼンクライトⅡを飛ばして最上階へと向かっていった。
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最上階はこれまでのフロアとは違って、中は劇場のロビーくらいだだっ広い場所だった。
その奥、祭壇の上に座っている老人が一人。
「ほほぅ。来たか、我が野望を邪魔する不届き者めが」
カール大帝その人である。
「カール! 貴様の企みもこれまでだ! 神聖ローマ帝国の復活などということは止めて、大人しく成仏するんだ!」
「馬鹿め。この堕落しきった土地を見て、貴様は何も感じないのか。かつて、私が君臨していた時、この地は素晴らしかった。その栄光を甦らそうとすることのどこが悪い?」
「違う! あの頃と今とでは時代が違うんだ。僕たちは、その時代に会った生活に変化をしているんだ! 今さら中世に戻ったところで、人々が戻るわけが無い!」
「分からずやは貴様の方だ。異邦人の分際で生意気を抜かす出ない! ──どうしてもと言うのなら、この私が直々に相手しよう」
そう言うと、カール大帝は立ち上がって太くて長い剣を鞘から抜く。
「さぁ、かかってこい!」