地上で6人の帰りを待つスピカと空組の3人だったが、突然外がガヤガヤと騒がしくなったと思いきや、スーツ姿の老人数名が指令室に入ってきた。
「すみません。部外者の方は立ち入り禁止なんです!」
つぼみの静止を振り切り、男たちはスピカの前に立ちはだかる。
「あら。国防省のお偉方がこぞってこんな所に何しに来られたのです?」
スピカが鼻で笑うような表情を浮かべる。代表の一人が顔を赤くする。
「我々が何度も問い合わせても誰も応答しないから、こっちからわざわざ出向いてやったんだ!」
「あら、それは失礼。ずっと指令室にこもりっきりだったものですから」
「それで、あの奇妙な建物は何なのだね? この伯林に危害を加えるものなのか?」
髭を生やした高身長の老人議員が尋ねる。
「あの建物は、カール大帝のアジトです。現時点で伯林ないしドイツに危害を加える危険性はありません。ですが、常に危機感を持って対応すべきであると考えております」
「カール大帝だって? 馬鹿な。1000年以上前に死んだ人間じゃないか」
「魂は死んでいなかったのです。現在、伯林華撃団・四季組が全力で対応に当たっています」
「くだらん」デブでハゲの老人議員が吐き捨てる。「そんなことで伯林華撃団を出動させているのか。現時点で我々に害がないのならそれでいいじゃないか。今すぐ華撃団を帰投させて、軍を出動させよう」
「あの建物には大量の霊力が流れています。軍が手出しできる代物ではありません」
「何だと、貴様! 我がドイツが誇る軍隊が、あんな建物に敵わないと言うのか! それは我々、国防省に対する侮辱だぞ! 伯林華撃団が国防省の配下にあることを忘れたか!」
デブハゲ議員が顔を真っ赤にさせて激昂する。
「スピカ副司令。こっちの仕入れた情報だと、ヨハン司令は実は敵の大将であり、華撃団内部にスパイとして潜り込んでいたという話が出ているが、それは本当か?」先ほどの高身長議員が資料片手に尋ねる。
「──えぇ、それは事実です。ヨハンは倒しましたが、彼の体内に眠っていたカール大帝の魂が、戦いによって今回目覚めたのです」
「いくら、気づかなかったとはいえ、敵の親玉を華撃団に受け入れていたというのは由々しき事態ではありませんか? 華撃団そのものの信頼にも関わってくる。スピカ副司令は、そこはどうお考えに?」
「お言葉ですが、ヨハン氏を高額寄付者であるという理由だけで伯林華撃団司令というポストに半ば強制的に推薦したのは賢人機関と、あなたがた国防省ではありませんか? 我々現場の人間に全責任を被せると言うのは、あまりにも無責任と言わざるを得ませんが」
「言い訳もそこまでだ」デブハゲ議員がずいっと前に出る。「スピカ・レンテ、貴様を諮問委員会主催の国防審議会に掛ける! 今すぐ国防省に出頭せよ!」
「黙るのはあなたたちです!」
スピカの怒声が室内に響き渡る。これほどスピカが感情を露わにしたのは初めてだ。つぼみ・アンジュ・リンも思わず顔を見合わせる。
「さっきから聞いていれば、一体ここに何しに来たというのですか?! あなた方が今ここでこうして戯言を言っている間にも、私達の仲間が必死になって戦っているのです! そして私達は彼らの帰りを笑顔で迎え入れる義務があるのです! くだらない文句を言いに来たのなら、今すぐここから出ていきなさい! ここは私達伯林華撃団にとって神聖な場所なのです! これ以上ここに居座ると言うのなら、私の権限であなたたちを逮捕します!」
スピカの気迫に気圧されて、すっかり勢いを失った国防省の面々は、犬のように尻尾を巻いて指令室を後にした。