神木たちはアイゼンクライトⅡから降りてくる。地面には、カール大帝が倒れこんでいる。
「う……うう……」
倒された衝撃で苦悶の表情を浮かべている。
「互いにもう戦う力は残っていない。これ以上の抵抗は無駄だ」
神木が諭すように言う。
「分からぬ……どうしてこの私が負けたのか……力では決して劣っていなかったはずなのに……」
「伯林華撃団の、この街を守りたいという強い気持ちが、お前を上回ったんだ。カール」
「気持ち……だと……?」
「僕たちは、伯林に住む人たちの平和を笑顔、そして未来を守るために戦っている。カール、君の失望からのドイツを新たに生まれ変わらせるという気持ちは、根底は同じだろうがやはり間違っている。僕たちは、時代と共に変化しながら未来へと向かっているんだ」
「未来……」
「この国は、僕たちが良くしていく。僕たちを、信じてくれないか?」
カールはしばらく逡巡していたが、やがて肩を揺らして笑い始めた。
「──そうか……この懐かしい気持ち……。貴様は、若かりし頃の私に似ているんだな。馬鹿みたいに青臭く、ひたすらに明日を信じていたころの、私に……」
カールはよろける足をバランス取りながらゆっくり立ち上がる。
「……私の肉体が死んだ後、私の魂は幾人もの人間の肉体を経て来た。目覚めることは無かったが、世間の変化ははっきりと見てきた。そして、時代が過ぎ行く度に失望してきた。だがそれは、私が1200年前の人間だったからなのか──。歳を取ると、頑固になっていかんな。──貴様、名を何という」
「伯林華撃団隊長、神木裕一郎です」
「カミキか。──この国の未来、貴様らに託すぞ」
そう言って、右手を差し出すカール。神木もそれに応じ、二人はがっちりと握手を交わす。
「ふぅ……。急に肩の荷が下りた気分だな……」
そう言って目を瞑るカール。その途端、カールの体が急に光り始める。
「な、何だ……?」戸惑う一同。
「……どうやら、時間のようだな」カールが安らかな表情で呟く。「カミキ、最期に貴様と出会えて本当に良かった。私は少し疲れた。──これからは、空の上から、この国の未来を見届けることにしよう……」
次の瞬間、カールを包みこんだ光は一羽の白鳥の姿に変化して天高く昇って行った。神木は最敬礼をして、カールが天に昇るのを見送った。
「……カールも分かってくれたし、危機も未然に防ぐことが出来た。みんなのおかげだ、ありがとう!」
改めて礼を言う神木。得意満面な笑顔を見せる一同。
だが、突如大きな揺れが皆を襲う。
「な、何だ?!」
「カールが天に召されたから、この塔も消えるってことなのかしら?!」
「いかん! 全員退避!」
カールのアジトであった天空の塔は、激しい揺れを起こすと共に壁が崩壊し、ピンク色の花びらが舞うかの如く天に吸い込まれていった。
「まるで、桜が舞っているみたいですね」
劇場の前から様子を見ていたつぼみが呟く。
「そうね。伯林に咲くサクラか……。案外、ロマンチックかもね」
「あ、見てください! 神木さんたちです!」
「本当だ! おーい!」
アンジュとリンが口々に叫びながら飛んでくるアイゼンクライトⅡに手を振る。
6人は機体から降りるとスピカの前に整列した。
「伯林華撃団・四季組、ただいまを持ちまして、全員帰投いたしました!」
神木が敬礼をする。スピカも応答する。
「ご苦労。──みんな、よくやってくれたわね」
「カールは分かってくれました。この国の未来を──天で見守るそうです」
「ふふっ。なら、カール大帝に恥じない国にしないとね」
「さぁさぁ、神木さん! スピカさん! 戦いも終わったんですし、いつものアレ、やりましょうよ!」
ニーナが急かす。
「そうだ。今回は、神木さんが音頭を取りませんか?」秋奈が提案する。
「お、それ良いな! よし隊長、景気よく決めてくれよ!」
「そうだな。──よし、それじゃあ──!」
「勝利のポーズ、決め!!!!!!」