「私よ、隊長。入っていいかしら」
「マレーネか。どうぞ、カギは開いているよ」
部屋に入ってきたマレーネはいつになく頬を緩めている。
「どうしたんだい、一体?」
「隊長、まずはおめでとう。華撃団での活躍が認められて」
「あ、あぁ。ありがとう。しばらく伯林を留守にするけど、またみんなと会えるから」
「そうね。それで、隊長にお願いがあるの」
「お願い?」
「そう。──実は、私のファンであるヘルマン伯爵が主催する舞踏会にお呼ばれしているんだけど、隊長、私のパートナーとして一緒に参加して下さらない?」
「えぇ、舞踏会?! ……僕はそういうのには参加したことが無いんだ」
「大丈夫。私がリードするから。それに、せっかくの舞踏会なのに踊る相手がいないんじゃ締まらないわ」
「なるほど……。ダンスは自信ないけど、僕で良ければ喜んでお引き受けしよう」
「本当? ありがとう、隊長。じゃ、明日の夜六時にロビーに集合よ」
マレーネはそれだけ言って微笑むと、颯爽と部屋を後にした。
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翌日。正装した神木がロビーで待っていると、ゴージャスにドレスアップしたマレーネが階段から降りて来た。その姿は本当に聖母のような気品さを醸し出していた。
「どうかしら、隊長?」そう言って妖しげにほほ笑むマレーネ。
「すごい、綺麗だよ……」
「あら、ありがとう。うふふ。隊長もなかなか格好良くてよ」
「そ、そうかい……? じゃ、じゃあ、そろそろ行こうか……」
舞踏会でも、マレーネは皆の注目を集めていた。何人もの男性がマレーネに言い寄ってきたが、その度にマレーネは軽くあしらっていた。
「いいのかい? たぶん、皆それなりの貴族たちなんだろう?」
「隊長がいるんだから、それ以上は不要でしょ?」
そう言って微笑むマレーネ。
「こんにちは、マレーネさん」
屋敷の主であるヘルマン伯爵が汗を拭きながら近づいてくる。
「すっかりお客様対応に時間を取られてしまって……。おや、こちらの方は?」
神木の顔を訝しげに見る伯爵。
「私の恋人よ」さも当然のように言うマレーネ。ヘルマン伯爵は一瞬顔をこわばらせたが、一言「どうぞごゆっくり」とだけ言ってその場を後にした。
「これで私は、この屋敷に出入り禁止になったわね」
「おいおい、いいのかい。君のファンなんだろ?」
「私だってこの世界は長いのよ。ファンと、ファンに見せかけて近づいてくる男どもの区別くらいは出来るわ」
会場に流れていた音楽が変わり、ダンスタイムとなる。
「踊りましょう、隊長……」
会場の中心で踊り始める二人。マレーネは神木の胸に頭をあずける。
二人は他の参加者に目もくれず、ただずっと踊り続けていた。
【サクラ大戦Ⅵ ハロー・マイラブ(マレーネエンド)完】