「隊長、ちょっといい?」
「秋奈くんか。どうぞ。カギは開いているよ」
部屋に入ってきた秋奈はどことなく動作が固い。
「どうしたんだい、それで?」
「隊長。──実は、日本に帰る前に日本大使館でパーティーを開くの。それで、隊長にも是非参加してほしくて」
「パーティー? 一体、何のパーティーだい?」
「ほら、前回の梅雨祭りの時は敵が現れて満足に出来なかったでしょう。せっかくこの街も平和になったことだし、やり直しも兼ねてもう一回催すことにしたのよ」
「なるほど。そういうことなら、喜んで参加するよ。副司令も呼ぼうか、じゃあ」
「い、いや。副司令は、忙しいみたいだから、隊長だけで良いって……」
「ふぅん、そうかい……」
急に慌てふためいた秋奈を若干訝しげに思いながらも、神木は大使館のパーティーに出席することにした。
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翌日。神木は久しぶりにクライナ・トーキョー内に足を踏み入れた。魔の脅威が無くなったからか、コミュニティ内の日本人たちの表情が明るい。公園の前を通ると、子供たちが元気よく鬼ごっこをして遊んでいた。
『平和になったんだなぁ』
そんなことをしみじみ思いながら、大使館へと向かう。大使館の庭にはすでに大勢の来客がおり、皆笑顔で語り合っている。
「神木くん!」
声のした方に視線をやると、赤ら顔ですでに出来上がっている正毅が近づいてきていた。
「やぁやぁやぁ、調子はどうだい?」そう言う息は酒臭い。
「はぁ、おかげさまで。大使もお変わりないようですねぇ」
「私は何も変わらんよ。これからもこの伯林で、大使としてやっていくぞ!」
「はは……。そう言えば、秋奈くんは? 姿が見えないようですが……」
「秋奈は中にいるよ。──なぁ、神木さん。私は、秋奈は目に入れても痛くないと思うほど可愛いと思っている。それは、これからも変わらない。秋奈を泣かせたら、この私が許さないからな」
そう言う正毅の眼は真剣だった。
「……分かりました」
神木も真面目に返答する。その答えに満足したのか、二、三度肩を叩いてその場を後にしてしまった。
神木は大使館の中に入って秋奈を捜索する。大使館の屋上に秋奈はいた。
「秋奈くん。ここにいたのか」
振り返った秋奈は水色のドレスも相まってとても美人だった。
「隊長……来てくれたの」
「こんな所にいると風邪をひくよ。下に行こう」
「隊長。ここからの風景を見て」
秋奈に言われるがまま景色を眺める。伯林市内を一望でき、なかなかの壮観だ。
「へぇ。大使館の屋上からこんな光景が見れるとは知らなかったよ」
「私……ずっとこの街にいる意味を見出せなかったの。街に遊びに行く時も大和撫子でいるように言われて、ずっと窮屈な思いをしてきたの。だから、ここから見下ろす伯林も好きじゃなかった。でもその鳥籠から私を解き放ってくれたのが、隊長だったのよ……」
「秋奈くん……」
神木を見つめる秋奈。
「隊長……。これからも、私のことを見守ってくれる?」
「……もちろんだとも」
秋奈は満面の笑みを浮かべる。二人はいつまでも、屋上からの伯林の街並みを眺めていた。
【サクラ大戦Ⅵ ハロー・マイラブ(秋奈エンド)完】