「ゆーいちろー、いる?」
「リリィか。どうぞ、カギは開いているよ」
部屋に入ってきたリリィは、もじもじしながら神木の方を見る。
「どうしたんだい、リリィ?」
「あの、ボク、ゆーいちろーにお願いがあるの」
「ん、何だい?」
リリィはしばらく言いづらそうにしていたが、意を決して「ボク、ゆーいちろーと水族館行きたい!」と言った。
「水族館?」
「うん。ほら、この前動物園行った時、敵が現れたからゆーいちろーと水族館行けなかったじゃん。だから……」
「確かに、この前はそうだったな……。よし、じゃあこの前のリベンジで水族館に行くか!」
「わーい! じゃあ、明日の10時にロビーに集合ね! 遅れちゃダメだよ!」
「分かってるって」
リリィは満面の笑みを浮かべてスキップしながら神木の部屋を後にした。
*******
次の日。神木がロビーに向かうと、可愛くドレスアップしたリリィがすでに待っていた。
「あ、ゆーいちろー!」
神木に気づいて、急いで駆け寄ってくる。
「お待たせ。可愛い服だね」
「へへっ。似合うかなぁ?」照れながら聞くリリィ。
「とても似合うよ。すごく似合ってる」
「ありがとう。ゆーいちろー」
「……さ、行こう。水族館が僕らを待っているよ」
神木はそう言って、リリィの手を握ると劇場を後にした。
水族館は大勢のカップルや親子連れでいっぱいだった。平和になったことで、普段よりも大勢の人出がでているらしい。
「はぐれないように、しっかり手を握っているんだよ」神木がリリィにそう忠告する。
「うん! ボク、絶対離さない!」
「よし。じゃあ、早速イルカショーを見に行こう」
イルカショーは子供たちに大人気のアトラクションの一つで、イルカが跳ねる度に飛び交う水に掛かると願い事が叶うと言われている。
二人は比較的前の席を陣取った。
「ここならイルカもよく見えるし、水も思いっきり掛かるだろうな」神木が呟く。
「ボク、イルカなんて初めて見るよ!」ワクワクしながら、リリィ。
イルカショーが始まる。三匹のイルカが飼育員の言うことを聞きながらコミカルな動きを見せる。その度に会場内に爆笑が起こる。神木とリリィも揃って笑う。
いよいよ終盤。三匹一斉に宙に飛ぶ大道芸。係員から水除けの布を手渡される。
「いよいよだ。願い事、ちゃんとするんだぞ」
「うん、分かってる!」
イルカが宙に華麗に舞う──と同時に猛烈な水しぶきが観客に降り注ぐ。神木もリリィも水除けがあるとはいえ少し濡れた。
「ふー、こいつは凄いなぁ」ハンカチで水分をふき取りながら、神木。
「ね、ゆーいちろー。何か願い事した?」
「ん、まぁね。そう言うリリィは、どんな願い事したんだい?」
「えー、えーっと……秘密!」そう言って顔を赤らめる。
「ハハハ、秘密か。でも、何となく、僕とリリィの願い事は一緒のような気がするな」
「えっ……?」目を丸くするリリィ。「ホント?」
「あぁ」リリィにぐっと顔を近づける神木。「ホント」
リリィはそのまま神木に抱きつく。二人はそこでいつまでもハグをし続けていた。
【サクラ大戦Ⅵ ハロー・マイラブ(リリィエンド)完】