「隊長、いるかい?」
「ナターシャか、いるよ。カギは開いているから、入っておいで」
部屋に入ってきたナターシャは、どことなく照れている表情をしている。
「どうしたんだい。珍しいね、僕の部屋に来るなんて」
「ハハ、まぁね。なぁ、隊長。明日、ヒマか?」
「明日? 特に用事はないけど」
「そうか……! いや、実は、明日久しぶりに市内をランニングしようと思っててさ。ほら、ずっと戦いっぱなしでトレーニングする時間を作ることが出来なかったから。それで……隊長も一緒に走らないか、と思って……」
「えっ? 僕が?」驚きの声を上げる神木。
「い、いや……。嫌なら良いんだ。本当に、走るだけだから……」
「──確かに最近、あまり体を動かせてないなぁ。海軍に戻ることだし、きちんと体を作っておくのはアリだな。いいよ、ランニング行こう」
「ほ、本当か?! じゃあ、明日13時にロビーに集合な!」
ナターシャは顔を明るくしながら神木の部屋を後にした。
*******
翌日。約束時間の五分前に運動着姿で神木はロビーに向かうと、すでにランニングウェアに着替えたナターシャが先に待っていた。
「やぁ、ナターシャ。お待たせ」
「お、来たね隊長。ふぅん、なかなか似合っているじゃないの」
「海軍士官学校にいた時に着ていたやつさ。ナターシャこそ、なかなかサマになっているよ」
ナターシャは半袖シャツにショートパンツを穿いており、彼女のプロポーションの良さを惜しげもなく表している。
「それで、どこに行くんだい?」
「シュプレー川沿いを走っていって、トレップトアーパークで休憩しようと考えている」
「トレップトアーパークか。中々走るね」
「ランニングは長距離走らなきゃ意味無いからな。よし、じゃあ準備運動したら早速走りに行こうぜ!」
二人は入念に準備体操をして、ランニングを始める。元傭兵らしく、ナターシャは疲れを見せず走り続ける。神木も、士官学校でしごかれまくった体力で軽快に走り続ける。
「へぇ、あたしの走りについてこれるなんて。隊長、案外タフなんだねぇ」
トレップトアーパーク内のベンチの前に立って汗を拭きながらナターシャが言う。
「これでも、海軍士官学校を主席で卒業したんだ。これくらいへっちゃらさ」ベンチに座りながら神木が言う。
「なるほどね。さすが隊長だ」神木の隣に腰かけるナターシャ。
「さすが隊長だ、か。君の口からそんな台詞が出るとはね」
「な、何だよ」
「最初のころは僕に楯突いて来たじゃないか」そう言ってハハハと笑う神木。
「あ、あれは! あたしも、まだ隊長のことをよく知らなかったし……」
そう言って照れてしまうナターシャ。そのまましばらく無言になる。
「──なんかさ。隊長とこうして話していて、つくづく感じたよ。こういう何気ない光景が、実は幸せなことなんだよな。平和じゃなかったら、こんなこと、出来ないだろうし」
「……そうだな、こういう何気ないことが平和へとつながるんだ」
「だからさ、隊長……。これからも、あたしの道標となってくれないか?」
「もちろんだとも。僕はずっとナターシャの味方さ」
「へへ、ありがとよ、隊長。──さて、休憩も済んだし、隊長、ランニング続けるぞ!」
「お、おい。急に走り出すなよー!」
二人は笑いながら、伯林の街をバックに走り続けてた。
【サクラ大戦Ⅵ ハロー・マイラブ(ナターシャエンド)完】