「私ですけど、神木くん、いる?」
「副司令ですか。ちょっと待っててください」
神木は急いでドアを開ける。「さぁ、どうぞ」
スピカは部屋の中に入ると、しばらく室内を見渡す。
「……この部屋も見納めね。神木くんがいない時は交代で掃除してあげるから」
「あ、ありがとうございます。それで、一体……?」
「あぁ、そうそう」スピカがベッドに腰かけながら用件を伝える。
「実は明日、溜まっている書類を片付けるんだけど、一人じゃとても終わらない量なのよ。空組は空組で別の用事があるし……。だから神木くん、明日手伝ってくれない? ご飯ぐらいは奢るわよ」
「良いですよ。明日は特に用もありませんし……」
「ありがとう、じゃあ明日の朝十時に私の部屋まで来てね。それじゃ」
スピカはそれだけ言うと、神木の部屋を後にした。
*******
次の日。神木は十時ぴったりにスピカの部屋を訪れた。ドアをノックして来訪を告げる。
「神木裕一郎、10:00、ただいま参りました」
『どうぞ、入って』中からスピカの声がする。
「失礼します」
室内に入ると、机の上に山盛りの書類の山に囲まれて作業をしているスピカが目に入ってきた。
「あぁ、神木くん。来てくれてありがとう。早速で悪いけど、こっちにある資料に目を通してハンコ押してくれない?」
「あ、はい。分かりました。──にしても、何です? この書類の山は?」
「カール大帝との一件で溜まっていた分と、ヨハンを倒したことでの後始末とが一気に来たのよ。とりあえず、さっと目を通すだけでいいから」
「は、はい」
言われるがまま書類を読んでハンコを押していく。単純作業ではあるが、いかんせん量が多いため中々終わらない。
気が付くと、14時を過ぎていた。
「あら、もう4時間経っていたのね」
時計を見たスピカが驚きの声を上げる。
「神木くん、ちょっと遅いけど昼ご飯にしない? 私が奢るから」
「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えて……」
二人は食堂に出てオムレツを注文する。休演日のため客の姿はない。
「ごめんね。すっかり手伝わせちゃって」
「いやぁ、そんな。副司令こそ、僕らの何倍も仕事をこなしていて頭が下がる思いですよ」
神木がそう言うと、スピカはスプーンを置いて頬杖をついた。
「──私はね、神木くん。欧州星組を離れてからの時間の方が長かった。現場に復帰して真っ先に思ったことは、何が何でも四季組・空組の皆に頼られる存在でいようって。ラチェットが紐育で頑張っているのも知っていたから、余計そう思ったのかもね。でも、皆と一緒にいて、もっと皆を頼っても良いのかなと思ったの。神木くんも、最初の頃と比べてすごく逞しくなったし」
「そ、そうですか……?」照れる神木。
「だから、神木くん。日本に帰っても、私たちのことは忘れないで。何かあったら、遠慮なく頼っていいんだから」
「……分かりました」
神木の力強い返事を聞いて、スピカはゆっくり頷く。
「──さ、そろそろ食事も終わったころだし、作業に戻るわよ」
そう言ってスピカはさっさと立ち上がって部屋に戻る。神木は「待ってくださいよー」と言いながらスピカの後を追って食堂を後にしていった。
【サクラ大戦Ⅵ ハロー・マイラブ(スピカエンド)完】