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「忠実なる我が弟妹たちよ、姿を現せ」
誰にも知られていない洞窟。闇に支配された謎の男の言葉で、四人の男女が姿を現す。
「兄者よ。なぜもっと早く行動を起こさない? 伯林華撃団など、取るに足らない存在ではないのか?」
次男坊のヨーゼフが詰め寄る。
「慌てるでないよ、ヨーゼフ。先走りは命とりだよ」
長女のトゥルーデが牽制する。
「トゥルーデの言う通りだわ。あんたは黙ってなさい」
次女のユッタも口を挟む。
「チッ、どいつもこいつも」
「しかし兄者。我々を呼び出したわけを聞かせてください」
三男坊のハインリヒが尋ねる。
「……明日、伯林はポツダム広場に攻撃を仕掛ける。──ヨーゼフよ、指揮はお前に任せる。存分に暴れてこい」
「言われなくても分かってるよ。善良な市民どもを、恐怖のどん底に突き落としてやる」
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神木はドアがノックされる音で目を覚ました。窓の外を見ると、すでに陽は落ちている。
『もう夜か……』
ニーナに案内してもらった後、旅の疲れからか少し貧血気味になったため、大事を取って部屋に戻り今までベッドに横になっていたのだ。
ノックはまだ続いている。時計を見ると、もうすぐ22時になろうとしている。
『こんな時間に誰だ?』
服装のシワを伸ばしてドアを開ける。立っていたのは意外な人物だった。
「マレーネ……」
マレーネがつまらないといった顔立ちでドアの前に立っているのだ。
「ど、どうしたんだい?」
「支配人から、これから毎晩劇場内の夜の見回りをやるようにとの言伝を預かってきたのよ」
「へ、へぇ。でも、珍しいね。その、君が伝えに来るなんて」
「たまたま支配人室の前を通りがかった所を捕まったのよ。──それじゃ」
「あ、待って!」
足早に去ろうとするマレーネを呼び止める。
「その……一緒にどうだい? 見回り」
「……」
「僕も今日来たばかりで、まだ劇場のこと、詳しく知らないから……。無理にとは言わない、けど……」
「女性を誘う時くらい自信を持ったらどうなの?」
マレーネはポケットから懐中時計を取り出して、「30分だけなら付き合ってあげるわ」とだけ言った。
マレーネはシャネルの仄かな香水の匂いがした。身長は神木とほぼ同じくらいだ。
「マレーネって、前はアメリカにいたんだろ? 凄いなぁ」
見回りをしつつ何とか話を盛り上げようとする。
「君なら、男性役も似合いそうだし、僕も来月の舞台が今から楽しみだよ」
「……」
何の反応も示さないマレーネ。流石の神木もムッとする。
「少しぐらいは興味を示したらどうなんだい?」
斜め上の反応だったからか、マレーネが驚きの表情に変化する。
「君が気難しい性格なのは会った時から分かっているけど、それでも相手が何とか話を盛り上げようとしてんだ。少しぐらいは興味を持ってくれてもいいだろう?!」
言ってから神木は後悔したが、しばらくしてマレーネが「フッ」と笑みを漏らした。彼女の笑った表情はこれが初めてだった。
「……真っ直ぐなのね。確かに紳士に対しては相応しい態度では無かったわね。──でもいいこと? 私は望まれてここに来たわけじゃないから」
「えっ……?」
「そろそろ30分ね。おやすみなさい、隊長さん」
マレーネはそれだけ言うと自室に戻っていった。