【二次創作】Fate Grand Order 〜英霊が生まれる時〜 作:麻宮鈴
今作はFGOの第5異聞帯クリア直後の世界を舞台としています。
主人公は男主人公の予定ですが、今回は冒頭なので名前だけしか出てきません。次回以降から活躍してもらう予定です。
また、とあるカルデアでの話という設定なので、漢字表記を公式のものと少し変えております。
オリジナルキャラが出てきます。既存のキャラとの絡みや、一方的にオリキャラのことを知っているなど捏造した描写も出てくるので、苦手な方はご注意下さい。
投稿主のFate履修状況は、FGO(地獄界曼陀羅までクリア)(初期のイベントはわかりません)、Fate/Stay Night(UBWテレビアニメのみ視聴)、ヘブンズフィール(2章まで視聴済み)です。
設定や世界観など掴み切れていない部分があるかもしれませんがご了承ください。
この話はCP要素はなく、ストーリーを楽しみたい人向けになっています。
それでもいいよという心が広い方はぜひ読んでくれると嬉しいです。
カルデアがゲーティアを倒して人理を守ったのも束の間、世界は異星の神なる存在とクリプター達の手によって白紙化された。
カルデアは、人類最後のマスターである藤丸立花(ふじまるりつか)を筆頭にした数人のサーヴァントと共にこの状況を打破すべく、異聞帯攻略を行っていった。現在、キリシュタリア・ヴォーダイムが育てた第5の異聞帯、星間都市オリュンポスを攻略し、カルデアの一行は彷徨海で激戦の疲れを癒している。カルデアにとって、こうして安全に滞留できるのは今や地球上においてここしかない。なぜなら、白紙化の影響で大陸は文字通り真っ白になってしまったのだから。カルデアが確認した限り、一部建物が残っている箇所もあったが、それ以外は食べ物はおろか、生き物一匹見当たらない。そんな地球で生き残っている生命など存在しないだろう。それがカルデアのブレインこと、英霊シャーロック・ホームズと万能の人の置き土産、新生ダヴィンチちゃんが下した結論だった。もはや自分達以外に生き残っている人間など、クリプターやシオンなど事前に対処できた者だけなのだ。
そう、そのはずだった。そのはずだったのだが………
プロローグ ~人外たちの邂逅~
白紙化した大地で何が動いた。カルデアの一行が気づかぬ場所で、それはただあてもなく孤独に彷徨い歩いていた。
それは、一人の人間のようだった。フード付きのボロボロのマントを被り、顔を隠すように布を巻いているため性別はわからない。ただ、体格は小柄で140センチ半ばほど。マントの下からは細く白い脚がのぞいており、まだ中学生くらいの子供であると思われる。
なぜ子供がいるのか。なぜ白紙化から逃れることができたのか。一体何者なのか。彼、ないし彼女のことを知るものは誰もいない。
その人物はフラフラと彷徨っていたが、ふと何かに気がついたように徐に足を止めた。
「…………何者だ」
その声は変声機を使っているのか、子供とは思えないほどしゃがれている。体格と不釣り合いな声が余計にその人物の異様さを際立たせていた。
謎の子供の視線の先には、相変わらず真っ白な大地が広がっているだけで何もない。しかし、子供が声をかけた直後、突如空間が歪み出し、魔力が集まっていく。魔力は徐々に人の形となり、一騎のサーヴァントが姿を現した。
「気付かれたか。子供に見えるが、やはり貴方は普通の人間ではないようだ」
こげ茶の髪に深い藍色の法衣を身に纏った神父の男は、胡散臭い笑みを浮かべて言った。
謎の子供は、相手が突然何もないところから現れたことに少しだけ驚いたように肩を揺らしたが、すぐに相手へと向き直った。
この男から目を逸らしてはいけない。
ずっと日陰の道を歩いてきた子供には、相手がどの程度の強者なのか一目見れば大体把握できる。目の前のこの男は、今まで会ってきた人の中でも群を抜いて危険な気配がする。
子供は変声機で変えた声をより一層低くして問いかけた。
「何者だと聞いている」
「申し遅れた。私は擬似サーヴァント。クラスはアルターエゴ。見ての通り神に仕えている身ですよ」
神父の男は胸に手を当て優雅に一礼する。
「擬似、サーヴァント…? アルターエゴ…?」
フードの子供は訳がわからないと言ったふうに首を傾げる。
サーヴァントという存在は魔術の心得があっても、知らない者がいるくらいだ。空中に現れた時の反応も併せて察するに、子供は魔術とは無縁の人生を歩んで来たのだろう。
そんな子供の反応を見て、神父の男は眉をひそめた。
「ふむ。白紙化した大地を歩いている者がいると聞いて来てみたが、どうやら君は部外者のようだ。何故こんなところにいる? 見たところ魔術師でもはぐれサーヴァントでもないようだが、どうやって白紙化を逃れた?」
神父服の男は当てが外れたのか、今までの丁寧な態度から少し砕けた言葉遣いになっている。
子供はそんな男の態度を気にすることもなく静かに首を振る。
「…….わからない。気がついたら世界が真っ白になって私一人になっていた」
「なるほど」
(地球上の生物は全て白紙化されたはずだ。虚数空間に逃げ込むことで生き延びたカルデアの様に、魔術師であれば生き残る何らかの方法があるのかも知れないが、魔術も知らないただの人間には不可能なはず。この人物は一体何者だ?)
神父服の男は警戒と少しの興味を瞳に抱きながら、目の前の人物を見つめた。
フードの子供は男の様子に気付いているのかいないのか、特に調子を変えることなく話しかける。
「それで、アルターエゴ…?さんでしたか?」
「アルターエゴはクラス名だ。私のことは見たまんま神父とでも呼べばいい」
「では神父様、貴方が地球をこんな風にしたのですか?」
先程より丁寧な言葉で、淡々と問いかける。どうやらこちらの言葉遣いの方が子供の素らしい。あるいは感情を読み取らせないためにわざとこうした喋り方をしているのかもしれない。
神父の男は興味深そうに目を細めると、口を開く。
「そうだと言ったら?」
「いえ、特にどうもしません。少し気になっただけです」
フードの子供は、怒るでも喚くでもなく本当にどうでもよさそうに淡々と言った。
「おかしなことを言う。君は地球がこんな風になって困ってはいないのかね? 食べる物も帰る場所も家族も無くなってしまったというのに」
「私は食事を必要としません。家族も帰る場所ももうとっくに失くした身ですから特に困ることもありません。まぁ、強いて言えば仕事がなくなったのは少し困りましたが」
「食事を必要としない…? 君はやはり人間ではないのか?」
「……………」
「面白い」
神父の男は値踏みするように黒い瞳を光らせる。
子供はそんな神父の様子を気にすることもなく、むしろ一歩距離を縮めた。
「………神父様、私を雇いませんか?」
「何?」
「貴方は私と似た匂いがします。与えられた仕事ならば、例え人殺しであろうと淡々とこなす、人でなしの匂いです」
神父の男は一瞬目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべた。
「ほぉ。君の職業は殺し屋かね。人外の殺し屋………なるほど面白い」
「興味を持っていただけたなら幸いです」
「それで報酬は何を要求する?」
「報酬は何でもかまいません。今は他に依頼者はいないですから」
「………どういう意味だ?」
「ホワイトエンド。それが私の通り名です。この意味がわかりますか?」
「!」
神父服の男はその名を聞くと、笑みを深めた。
ガワである彼はその名を知らないが、彼の中の反英霊がその存在を知っている。
「ホワイトエンド」、裏の世界では遥か昔から都市伝説として語られている伝説の殺し屋。素顔を知るものは誰もおらず、ただの一度の失敗もなく、戦場を血の海へと変える。
彼の中の反英霊の記憶によると、一人で戦況をひっくり返すことができるほどの存在故に、かの存在を雇いたい者は多く、雇う権利を決めるルールが存在する。
それは依頼者が複数存在する場合、一番良い報酬を用意した者に付くというもの。依頼の最中でもより良い報酬を用意した者は雇う権利を得るため、依頼者は他には用意できない様な報酬を提示しなければならない。ただ、今回は白紙化の影響で他に依頼者もいないため、報酬は何でもいいということだろう。
「なるほど。そういうことか。私の中のサーヴァントが君のことを知っているようだ」
「その、サーヴァントとは何ですか?」
「サーヴァントとは、英雄や偉人が死後、信仰によって精霊の領域にまで昇華されたものを魔術によって使い魔として現世に召喚したもの。 まぁ歴史上の人物の霊を魔術で呼び出したものだと思えばいい」
「歴史上の人物の霊………」
「私は器で、私の中にはサーヴァントがいる。その名はラスプーチン」
「! ……帝政ロシア末期の怪僧ですか。なるほど、直接会ったことはありませんが、彼に関する依頼は受けたことがあるのでその時に知ったのでしょう。それにしても、本当に魔術で死人の霊を呼び出すことができるのですか。面妖ですね」
子供の反応を見て、神父の男ーーラスプーチンはより一層興味深そうに笑みを深める。
「どうやら君は人間よりも長寿のようだな。流石、不死身の殺し屋といったところか」
「………それで、私は何をすればいいのですか?」
「殺してほしい人物がいる。詳しい話は南米大陸でするとしよう」
「南米? ここは中東あたりでしょうからかなり距離がありますが?」
「南米に私の仕えるお方がいるのでな。資料を見るにも、そこの方が都合がいい。それに距離は気にしなくていい」
そう言うとラスプーチンはパチっと指を鳴らす。
すぐ近くの空中に光が現れ、やがてそこから女の姿が現れる。
女はピンクの長髪を左に流し、眼鏡に白いスーツと、敏腕キャリアウーマンのような格好をしている。
女は二人の姿を確認すると妖艶に微笑んだ。
「はいは〜い。NFFサービスのご利用ありがとうございます♡ ラスプーチン様」
「! また突然……これも魔術というやつですか?」
「あら、貴方が噂の「白紙化を逃れた謎の生命体」ですか? イメージと違って随分幼い見た目ですのね」
ピンクの髪の女は、子供を値踏みする様に眼鏡に手を添えて口角を上げる。
子供はそんな様子も意に介することなく、感情の読み取れない声で女に問いかける。
「あなたは?」
「彼女はコヤンスカヤ。彼女が私たちを南米まで送り届けてくれる」
「なるほど」
「は〜い、ご紹介に預かりましたコヤンスカヤです♡ 旅路は一瞬ですが、どうぞ今後とも当サービスをよろしくお願いしますね」
コヤンスカヤはさっきまでとは一変し、ニコッと可愛らしい笑みを浮かべる。その口元からは鋭い八重歯が少しのぞいていた。
「おや、随分友好的な態度だな。珍しいこともあるものだ」
「私が嫌いなのは人間ですから。この方は人間ではないでしょう? 人間の血や恨み辛みといった匂いがプンプンして、とても好感がもてます」
「………あなたも人間ではないようですね。私は与えられた仕事をこなすだけです。さぁ、早くいきましょう」
子供はコヤンスカヤが浮かべた獰猛な笑みをするりと躱して淡々と答える。
ラスプーチンは一つ息をつくと、空気を変えるように手を叩いた。
「ホワイトエンドの言う通りだ。とりあえず南米に移動するとしよう。報酬は………」
「今回はおまけにしておきます。これから面白そうなことも起きそうですし。ウフフ。
それでは参りますので、私の肩に手を置いてください」
コヤンスカヤの言う通りに二人が肩に手を置くと、3人の周りに魔力が渦巻く。
「では南米異聞帯へ参りま〜す」
光が広がり、3人の姿が包まれる。そして、光が一際強く瞬いた瞬間、もうそこに3人の姿はなくなっていた。
あるのはただ真っ白な大地だけ。
これは、白紙化された地球で起こった人外達の邂逅。何かが起こる前触れ。しかし、カルデアはこの邂逅をまだ知らない。
最後まで読んでいただきありがとうございます。続きも投稿する予定なので、気楽に待っていただけたらと思います。
このお話はお察しの通りオリジナルキャラ、謎の殺し屋ホワイトエンドが出しゃばる話になっています。今後も活躍してもらう予定なので楽しみにしていただけたら幸いです。
次回からは藤丸くんが活躍します。今後は他のオリキャラも登場します。お楽しみに!
この作品はpixivの方でも挿絵付きで公開しています。