【二次創作】Fate Grand Order 〜英霊が生まれる時〜   作:麻宮鈴

8 / 11
遅くなりましたが、シリーズ8作目です。
この物語はオリジナルの特異点で既存のキャラとオリジナルキャラクターたちが活躍する話です。
ついに敵の正体が明らかになります。

(あらすじ)
敵の偵察と食糧を調達しに地上に出た藤丸、ラーマ、紅子の3人は二手に分かれてそれぞれ敵と遭遇した。藤丸と紅子は人外の少女と、ラーマはラスプーチンと戦闘になったが何とか切り抜け無事に再開した3人であったが、何やらラーマの様子がおかしい。
ラーマはツクヨミの術によって心に深い傷を負わされたのだった。

「………………………端的に言おう。
 私たちは勝つことができない」


【閉塞特異点】邪光降臨神島 壱岐 〜古き神と月満ちる刻〜 第6節 ツクヨミの正体

『それで、あなたが私に提示する報酬は

何ですか?』

 

 まだラスプーチンが聖杯を使って特異点を作る前、南米ロストベルトの薄暗い空き家の中で、殺し屋の少女は今回の雇い主に問いを投げた。

 特に豪華な報酬を期待するわけでもなく、ただ周りが勝手に決めた「ホワイトエンド」と言う存在を雇う際のルールに従って報酬を聞いただけだ。

 だが、雇い主であるラスプーチンには報酬を催促している様に聞こえたのか、僅かに眉を寄せる。

  『報酬は何でも良いのではなかったのか?』

 『はい、何でも構いません。今は他に雇い主候補はいませんから。ですが、もしも今後新たに私を雇いたい者が出てきた時のために聞いておかなくてはなりません』

 『なるほど。では、君は何を望むのだ?』

 

 ラスプーチンの問いかけに、今度は殺し屋の少女が僅かに眉をひそめる。

 

 『私の望みを聞く必要はありませんよ。今は他に候補はいないのですから、あなたが好きに決めていいのです。

 ですが、もし今後候補が現れた時のために、他の人には用意できない様な報酬にすることをお勧めしましょう』

 

 少女の言葉にラスプーチンは少し考え込む様に腕を組むと、まるで値踏みするかの様に少女を観察した。

 そして、

 

 『そうだな、報酬はーーーーーーーだ。どうだろうか?』

 

 それは、今までルールに流されて、周りが価値があると勝手に決めた報酬に従って日々を過ごしてきた人外の少女にとって、今までで最も彼女が望むものに近いものなのだった。

 

 

第6節 ツクヨミの正体

 

 邪悪な月光が支配する島の森の中、月と鍵のシンボルが描かれた旗が風に揺れてたなびいている。

 ここは、ツクヨミの教会。

 正確にはツクヨミとの混ざり物が閉じ込められている教会。

 自身と相性最悪な教会に閉じ込められているにも関わらず、混ざり物は久しぶりに人間を貶めることができて上機嫌に真っ赤な目を爛々と光らせている。

 

「アハハ! いい気味だ! カルデアも大したことはない! 所詮は人間、私の敵ではない!」

 

 そんな混ざり物をどこか呆れた様子で見ていた紺色の法衣のサーヴァントーーーラスプーチンは、気配を感じて入り口の扉を振り返った。

 

 ガチャリ

 

 両開きの扉が開き、予想通りの人物が中に入ってくる。

 その人物は長い白髪を揺らしながら素早い動作でラスプーチンに跪く。

 

 「………成果はどうだった?」

 「すみません、失敗しました。

対象と一緒にいるあの野良サーヴァントが突然力を増し、不意を突かれました」

「君ほどの殺し屋が不意をつかれるとは、一体何者なんだ、そのサーヴァントは?」

 「わかりません、ただ、突然相手の体が光出したと思ったら、見たことのない黄色い生物が現れて、そいつに膝上から一瞬で持っていかれていました」

 

 そう言いながら、殺し屋の少女は膝のあたりを撫でる。もちろん、傷跡は綺麗さっぱり治っている。

 

 「ふむ。なるべく早く、その得体の知れないサーヴァントも始末したほうがいいだろう。引き続き太宰治の捜索と、藤丸立花の殺害任務に当たりつつ、野良サーヴァントの撃破も頼む」

 「わかりました」

 「………おい」

 

 十字架の元で縛られた赤い瞳が、跪く少女を射抜く。

 

 「何でしょうか?」

 

 少女は相変わらず感情の読めない顔で混ざり物を見つめる。

 その瞳は色素が薄く、オパールの様な不思議な輝きをしているが生気がない。だが、少女の様子から何かを感じ取ったのか、混ざり物は愉快そうに血の様に禍々しい目を細める。

 

 「そこの殺し屋、外で何かあったのか?

 前よりも人間味が増したような顔をしているぞ」

 「………そんなこと、ありませんよ。あなたの勘違いでしょう」

 

 少女はいつものように淡々と言い返す。

 だが、その瞳は少しだけ迷うように揺れている。

 

 「勘違いではないだろう、そんな迷子のような顔をして。

 良い、前の無表情より今の顔の方が人間らしくて私好みだ。

 ………そのまま貶めて、壊してやりたくなる」

 

 赤い瞳が弧を描く。

 だが少女はそんな邪悪な視線に構うことなく、瞳を冷たくして淡々と頭を下げる。

 

 「安心して下さい。あなたの探し物はすぐに見つけて見せましょう。そうすればこの特異点はあなたの物になり、人間なんて壊し放題です。

 ですからそれまで、あなたはここで休んでいて下さい…………………大悪魔さま」

 

 

❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

 

特異点が敵の手に落ちるまであと3日

 

黄泉の国

 

 

「……………というわけだ」

 

 太宰への報告のため、黄泉の国まで戻ってきた3人は、ラーマから教会で起きた一部始終を聞いた。その衝撃的な内容になんて声をかけたらいいのか分からず、立花は口をつぐむしかない。

 

 「余は、怒りに任せて人を殺した。余は………もうマスターと共に戦う資格などないのかもしれない」

 「っ! そんな事ないよ!

 ラーマだって操られてたんでしょ! ならしょうがないよ!」

 「だがいくら操られていたからといって、人を殺した事実は変わらない。余は、シータが傷つけられたと思って、それで人々を………」

 「精神汚染系の術だろうね。それもかなり強力なようだ」

 

 ラーマの話を聞いて、なにやら考え込んでいた太宰が徐に口を開いた。

 隣に立っていた紅子は太宰の言葉に首を傾げる。

 

 「太宰さん、精神汚染の術とは?」

 「ああ、それは………紅子、なんか服変わった?」

 「今頃ですか!? 私ずっとここにいたんですけど………」

 

 紅子は不満そうに頬を膨らませて、先の戦闘での霊基再臨によって新調した巫女服の裾をいじっている。その傍らには、プカプカと黄色い謎の生物タマちゃん(命名・紅子)が浮かんでおり、紅子と同調するかのように不満げな顔で太宰を見つめている。

 

 「…………………なんだい、これ。生き物?」

 

 太宰は見つめてくる黄色い生物から若干距離をとりながら、眉を顰める。

 

 「ああ、それは紅子さんの霊基についている付属の生物らしいです」

 「はい藤丸さんの言う通りです! タマちゃんって言うんですよ。かわいいでしょ!」

 「えぇー…………………まぁ、紅子がいいなら私はなにも言うまいよ」

 「どう言う意味ですかそれ!」

 

 紅子はタマちゃんを抱きしめながら、深緑の瞳で太宰をジトーっと見つめている。

 

 「まぁまぁ紅子さん、落ち着いて。太宰さんの話の続きを聞こうよ」

 「………そうでした。それで、精神汚染の術というのは?」

 「ああ、そのことだが………」

 

 コホンと咳払いをすると、真面目な顔つきで太宰は話し始める。

 

 「ラーマ君の話によると、人々の目は金色に変色していたようだし、相手は精神汚染系の魔眼を使ったんじゃないかと私は考えている」

 「魔眼………相手は魔眼持ちって事ですか?」

 

 立花の疑問に、太宰は首を縦に振り肯定する。

 

 「だが、魔眼は直接見なくては効果がないのではないか? ツクヨミは教会から出てこないし、余もツクヨミの姿は一度も見ていないぞ」

「確かに、ラーマの言う通りかも。それだとツクヨミは教会の周りにいた人々に魔眼の効果を飛ばしたってことになっちゃうもんね」

 「ああ、藤丸君の言う通り、そうしたんだろうね」

 「え!? そんな事可能なんですか?」

 

 今までも魔眼を持ったサーヴァントに接したことはあったが、そのようなことが可能だとは聞いたことがない。

 

 「ああ、なんせ敵は神様なんだから、それくらいできても不思議ではないだろう?

 いや、魔眼の力はツクヨミのものではないか………」

 「ツクヨミではないと言うことは、魔眼はツクヨミと混じっている存在の力ということか? なら余と話した奴の人格もツクヨミではないと?」

 

 ラーマの言葉に肯定するように首を振ると、太宰は少し考え込むように顎に手を当てる。

 

 「ああ…………ラーマ君、敵は「人間」かどうかを確認して来たんだったね?」

 「? ああ、そうだ。「人間なら壊すのは容易い」とか言っていたような………それが何かの手がかりになるのか?」

 「月と鍵のシンボル、他人に効果を移せるほど強力な魔眼、そして人間を壊す、教会……………………まさか」

 

 太宰は何かに気づいたのか目を見開く。

 

 「太宰さん、もしかして敵の正体が分かったんですか!?」

 「本当か、太宰!」

 「流石、太宰さんです!」

 

 敵の正体が分かったなら対処のしようがある。弱点がない存在などそうそういないのだから。

 3人は期待の眼差しで太宰を見つめる。

 だが、太宰の表情は優れない。どことなく青白い顔で俯いている。

 

 「太宰さん?」

 「………みんな、ツクヨミと混ざっている存在の正体は予想がついたよ」

 「それで、その正体というのは?」

 

 太宰は一つ大きく息を吐き出すと、どこか諦めたように笑みを浮かべた。

 

 「………………………端的に言おう。

 私たちは勝つことができない」

 「「「え?」」」

 「何せ相手は悪の象徴、神への反逆者、人間を誘惑し、堕落させることに長けた存在、『悪魔』なのだから」

 「悪魔………」

 

 3人は目を見開く。

 まさか日本の神であるツクヨミに混ざっていたものが悪魔だったなんて………

 そして、悪魔の弱点である教会に縛られて弱体化することで無理やりツクヨミとの複合サーヴァントとして現界を果たしている。

 

 なんて、歪なんだ………

 

 立花はそんな歪な現界を引き起こしたであろう、アルターエゴの姿を思い浮かべて背筋に寒気を感じた。

 

 「で、でも、どうして太宰さんは悪魔だと思ったのですか?

 月とか鍵とか、悪魔には関係ないと思うんですけど……」

 

 胸元にタマちゃんを抱えながら、紅子は不安そうに太宰に尋ねる。

 まるで太宰の勘違いであってほしいと願うように。

 だがそんな願いも太宰の言葉で打ち消される。

 

 「昔、月の運行を神に任された天使がいたんだ。前に言ったように、月の光には人々を惑わす効果があったり、月は色々と魔力的な力を持ってたため、その天使が月を管理していた。だが、その天使は人間に月の力の秘密を漏らしたことで、神の怒りを買って天界から追放され堕天した。

 それが、悪魔サリエルという存在だ」

 「悪魔サリエル?」

 「ああ。悪魔サリエルを表すシンボルは鍵であり、そして、サリエルは邪視ーーー魔眼の元祖とも言われているんだ」

 「魔眼の!?」

 

 確かにここまで要素が揃っていれば疑う余地はない。

 でも、まさか悪魔が相手なんて………

 

 「…………藤丸くん。悪いけど、私はここで降りるよ」

 「どうしてですか?」

 「私は臆病者だから勝ち目のない戦いをするくらいなら、地下に引きこもっている方がいい」

 「そんな!諦めるっていうんですか!

 そんなことをしたら、黄泉の国にいる皆んなは!」

 「じゃあ、何か策はあるのかい?

 相手は人間を堕とすことに長けた悪魔で、ここには人間しかいない。唯一神性のあるラーマ君ですらこの有様だ。聖職者もいない、弱点である教会の中にいてすらこれ程の力を使えている。そんな存在相手に私たちになにができると?」

 「それは…………」

 「悪いが、私は戦うつもりはない。私はラーマ君のような立派な英雄でもないし、誰かの為に命を賭けようなんて思えるほど人ができていないんだ。…………やるなら君たちだけでやってくれ」

 

 そう言うと太宰は奥にある自身の書斎へと歩いて行ってしまう。

 立花は咄嗟に手を伸ばしたものの、かけるべき声が見つからずに空を掴む。

 その背中は、丸まっていて、立花には太宰が何かに怯えているように見えた。

 

 「太宰さん、大丈夫でしょうか………」

 

 紅子も同じことを感じたのか不安げに瞳を揺らしている。

 

 「わからない。だけど、太宰さんがいなくても、俺たちは諦めるわけにはいかないんだ。何とかしてツクヨミーーーサリエルを倒さないと!」




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