シスカが好きになる相手はまだ悩んでいます。
アンケートとは違う結果になるかもしれませんがご容赦を。
「ネビュリスだと?」
「え…………えぇっ!? と、ということはつまり…………」
「お察しの通り、わたくしは純血種と言われる類いの星霊使いですわ」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
シスカの爆弾発言にジンは怪訝そうに眉をひそめ、ミスミスは困惑の後叫び声をあげた。
「落ち着いて隊長。それも気になるけど、未来から来たって…………」
「そんな与太話を信じろと?」
ジンは銃をシスカに向け、両手を挙げるように促す。
シスカもそれには逆らわず、ゆっくりと手を挙げ微笑む。
「さすがジンさんですわね。冷静な判断と行動、仲間を守るという強い意思。過去の世界であろうと変わりませんわね」
「御託はいい。戦闘の意思がないなら連行するだけだ」
「ちょっとジン君、いきなり連行なんて酷すぎるよ!」
「そうだよジン兄ちゃん! 話ぐらい聞いてあげても…………」
「こいつは純血種だぞ。何をしてくるか読めない上に一人でこんな戦場の最前線をうろついているぐらいだ。よほど強い星霊だろうな。それにさっきも言ったが、そんな与太話を信じる気はない。ここで捕らえ…………イスカ、何をしてる?」
イスカはシスカの前に庇うように立つと、剣の柄に手をかける。
「この子は僕の命の恩人だ。その恩人を傷つけるというのなら、ジンであろうと許さないよ」
「…………はぁ。わかった、好きにしたらいい」
「ありがとう、ジン」
数秒のにらみ合いの後、イスカの性格をよく知っているジンは早々に折れて引き下がる。
剣呑な雰囲気が薄れ、イスカはシスカに向き直ると優しく頭を撫でた。
「ごめん。怖がらせるつもりはなくて、ジンはああ見えて仲間思いだから。さっきみたいな態度をとっちゃうこともよくあるから」
「ええ。存じておりますわ。わたくしは皆さんには良くして頂いてましたから、ジンさんが撃たないことも分かっていました」
「それならよかった。それと、さっきの未来から来たっていうのは…………」
「言葉通りの意味ですわ。未来で襲撃を受け、どこにも逃げ場がないと悟った母と父はわたくしを過去へと逃がしました。しかしこの時代の帝国とネビュリス皇庁は憎しみ合い、わたくしの求める平和などないと悟りました。先程の戦闘を見て、改めて決心しました。どうかわたくしをあなた達の隊に入れてください!」
「えぇっ!? いきなりそんなこと言われても…………」
「足手まといにはなりませんわ。それに…………」
シスカの胸元の星紋が淡く光り、僅かな地響きが起きる。
森の奥の方からズシンという音をたて、人間よりも二回り大きいサイズの
イスカはその巨人像の手の上に何かが乗せられているのに気づき、不思議そうな表情になる。
ミスミスは慌てて逃げ出そうとしたが、ジンが首根っこを掴む形で動けないでいた。
巨人像が膝を折り、身体を屈めるとシスカが手の上に乗っていた物を回収した。
その物を見て驚愕の表情を浮かべたのは、他ならぬイスカとジンであった。
それも当然だ。
『それ』はこの世に一つしかない筈のものだったのだから。
「星剣!?」
「シスカとか言ったな。なぜこれをお前が持っている。これはイスカにしか使えないはずだ」
「わたくしは未来でイスカに剣を師事していたのですわ。そして襲撃を受けた夜、わたくしはその剣を受け継ぎました。この星剣こそが未来から来たという証拠になりうると思いますが、どうでしょうか?」
「イスカ、この剣は本物だと思うか?」
「本物だと思う。だとしたら、この子は本当に未来から来たということになる」
「信じていただけましたか? では、次はわたくしの星霊についてですわね」
「そう言えば君はさっき氷系統の星霊術を使っていた、なのに今は土の星霊術。二種類の星霊を宿すなんて聞いたことがない」
イスカの疑問は的確な部分をついていた。
イスカの言うように、本来は星霊は一人に一種類の星霊しか憑くことはない。
全く違う系統の星霊術を使うなど、あり得ないのだ。
「わたくしの星霊は『鏡』。相手の容姿や声、技術や能力。そしてあらゆる星霊術を模倣することができるのです。例えば…………」
シスカが指をパチンと鳴らすと姿がどんどんと歪んでいき…………表情と仕草はそのままに、ミスミスと完全に同じ姿を形作った。
「え? 隊長が二人いるよ、ジン兄ちゃん!」
「見りゃ分かる。なるほどな、ようは真似っこが得意ということか」
「その通りです。一部を変えることもでき、星紋がない状態のわたくしの姿になることもできます」
「よくわかった。だが、いい加減
「気持ち悪いって、酷いよジン君! あれ、アタシが言われたわけじゃない?」
シスカは元の姿に戻ると、真剣味を帯びた表情で頭を下げる。
「あなた達に迷惑はかけません。ですから、もう一度お願いします。わたくしを…………」
「シスカを僕らの隊に入れてあげてください」
シスカの言葉を遮る形でイスカが割り込み、深々とミスミスに頭を下げる。
「イ、イイ、イスカ君本気なの!? 魔女を隊に入れるなんて…………」
「俺は賛成だ」
「ジン君!?」
以外にもジンが賛成の意を示し、シスカは驚きのあまり目を瞬いている。
「イスカが未来でこいつに剣を継がせたんなら、実力は確かだろ。それに悪いやつじゃない」
「…………ジン君、何か変なものでも食べた? それとも悩みがあるなら聞こうか?」
「はっ倒すぞ」
「音々も賛成!」
「よし、これで満場一致だな」
「アタシの意見は!?」
「隊長は何も言わなくても賛成してただろ。それで、算段はあるのか? まさか無策とは言わないだろうな。今から呑気に士官学校に通っている暇はないぞ」
「もちろん、手はあります。…………ミスミスさん」
「な、何かな?」
「あなたのお友達に璃洒という使徒聖がいるはずです。どうか間を取り持ってはいただけませんか」
「璃洒ちゃんと? それは構わないけど、どうするの?」
璃洒・イン・エンパイア。
未来ではほとんどの記録が抹消され、イスカの語る話の中にも度々出てきた危険人物。
しかし、今のイスカ達の人脈では彼女以外に頼れる人物はおらず背に腹はかえられぬ状況となっている。
「──────直談判。それ一択ですわ」
◆◆◆◆
「ふーん。なるほど、戦闘の最前線とは知らずにバードウォッチングをしにネウルカの樹海に行ったら魔女や魔人に襲われて家族は即死。命からがら逃げてきてミスミス達に保護されて、復讐のために軍属を希望と」
「ちょ、ちょっと璃洒ちゃん! そんな本人の前で口に出して言わなくてもいいじゃない!」
「大事なことだからね。戦闘経験もない子がいきなり軍に入りたいだなんて言われたんだもん。動機や経歴までしっかり聞かせてもらうよん」
「もちろん、出来る限りのことは話すつもりですわ」
璃洒の言うことは最もだ。
怜悧で端整な顔立ち、知的な黒縁眼鏡の気さくな璃洒を見てなおシスカは警戒を緩めない。
事情が事情なためミスミスには同行してもらっているが、そうでなければ一対一で話したいところだ。
シスカの望む未来に進むのを必ず璃洒は邪魔してくる、そんな予感が頭から抜けないのだ。
「名前はシスカ・ルビリス。中立都市出身、十五歳。父親の影響で剣術を嗜んでいたために白兵戦が得意と。シスカっちって中立都市の出にしては戦闘の心得あるとか、珍しいねぇ」
「よく言われます。そのせいか、あまり友達もできませんでした」
「んー、そういうことじゃないんだけどなぁ。まぁいいや、じゃあ軍に入ってもらおっかな」
「軽っ!! いいの璃洒ちゃん? いくら使徒聖でも、いきなり一般人を軍属にするのは不味いんじゃ…………」
「連れてきたのはミスミスじゃん。それにこの子の目、ウチは気に入ったよ。でも、一つだけ条件があるの」
「…………条件、ですか」
「そうそう。君にはある人と戦ってもらって、勝つことができたらウチの権限でミスミスの部隊に入れてあげる。それでどう?」
「異存ありませんわ」
本来なら不可能な要求を条件付きではあるが、了承してくれている。
他に手がないため、シスカにとっても乗り越えなければいけない壁。
「やる気だねぇ。よし、それじゃあ指定したエリアに行って待っててね。今その相手を呼んでくるから」
璃洒がさっさと部屋から出ていくと、シスカも指定エリアへと向かう。
場所は帝都第三セクター内・演習エリア。
──────ノーマルフィールド。
殺風景なグレーの空間が広がっており、遮蔽物が一切ない場所での戦闘を想定した訓練施設だ。
施設内に到着すると、人影らしきものがあることに気づくシスカとミスミス。
「遅かったな入隊希望者。さっさと始めるぞ、時間が惜しい」
身につけたコートスーツは、帝都の制圧兵器研究機関が作りだした光学迷彩衣装となっている。
ネームレス────使徒聖第八席に座する男がそこにはいた。
シスカの星霊術は鏡ですが、サリンジャーとはまったくの別物です。
ネームレスにシスカは勝てるのか!?
追記
アンケートの結果からイスカが最有力候補となりましたが、話の展開によっては変わるかもしれません。
もうひとつアンケートを出すので、よろしければ投票お願いします!