原作より色々と緩い風鳴家にクリスちゃんが嫁いだ話   作:とりなんこつ

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祝いもダブルだッ!

南極物語

 

 

 

「あ~、南極は寒かったぜ」

 

「こうして思えば、まだ日本の冬は暖かいな」

 

クリスと弦十郎は、久しぶりに肩を並べて風鳴屋敷へと帰還。

 

「にゃあ」

 

猫の2号と3号が揃ってお出迎え。

続いてヴァネッサら三人も出てきたが、

 

「おかえりなさいでありますッ!」

 

笑顔で応じてくれたのはエルザだけだった。

しかしクリスは屈託なく、こちらも笑顔で応じる。

 

「おうッ! しこたま土産を持ってきたぜッ」

 

そんな彼女はぶら下げていたクーラーボックスを開く。

中にあるのは大量の氷だった。

 

「正真正銘の南極の氷だぜッ!」

 

「………」

 

「なんだよ、南極から持ってこれるもんなんてこれしかねえんだってば」

 

リアクションの選択に困っているらしいヴァネッサ三人組に成り代わり、弦十郎が疑問を呈す。

 

「むしろクリスはこの氷をどう使うつもりだ?」

 

「そりゃあ…酒に入れたりとか? あと、かき氷?」

 

「この年の瀬にか?」

 

当然すぎる突っ込みに、クリスが憤慨する寸前。

 

「かき氷とはなんでありますか?」

 

「ん? お、おお、氷を削って、シロップとか果物を添えて食べるお菓子のことだよ」

 

「ぜひとも食べてみたいでありますッ!」

 

「おッ! そうか!? よーし、えっと冷蔵庫にイチゴシロップが確か…」

 

意気揚々と台所へ向かうクリスを、弦十郎は苦笑して見送る。

先に居間へと足を向ければ、開け放した障子戸から外気がたっぷりと吹き込んでいた。

さすがに寒いと思った弦十郎が障子を閉めようとしたとき、縁側に訃堂が座していることに気づく。

 

「親父、今戻ったぞ」

 

「む…」

 

返答はそれだけだった。

なんとも薄い反応に、弦十郎は巨大な老木を幻視する。

つい先日まであれほど不気味な生命力を発散していた人物がこれほど枯れようとは。

何となく後ろめたさを感じる反面、本来の老人とはこういうものなのかも知れない。

 

戻ってきたクリスが、コタツの上に器やら果物やらを並べて訊ねてくる。

 

「おーい、ダンナ。かき氷機はあるか?」

 

「む? 生憎とこの屋敷で見たことはないなあ」

 

「マジかよ。うーん、しゃーない、ちょっと買いに…」

 

クリスが財布を手に腰を浮かしかけた時だった。

 

「要は、この氷を薄く削ればいいのかしら?」

 

クーラーボックスから氷の塊を掴み出してヴァネッサ。

 

「まあ、そりゃそうだけど…?」

 

クリスが目を見張る先。

超高速で振動するヴァネッサの手刀が、氷を薄くそぎ落としていく。

次々と舞い散るように落ちてくる氷の欠片を、ミラアルクが器でナイスキャッチ。

小鉢の上にこんもりと盛り上がった氷の山は、見事なまでの均等な欠片で構成され、綺麗な輝きを放つ。

 

「便利なもんだなあ」

 

感心の声を漏らしたクリスは、受け取った小鉢の氷の上にイチゴシロップを回しがけ。続いて練乳も回しがけしたあと、缶詰のフルーツカクテルをよくシロップを切ってから添えた。

 

「おら、食べてみろよ」

 

スプーンと一緒にエルザへ向かって差し出す。

 

「い、いただきますであります」

 

ざくっとスプーンで氷の塊を掬い上げ、大口を開けて一気に頬張るエルザ。

途端に獣耳少女は頭を抱えて悶絶した。

 

「!?」

 

この反応に、ミラアルクもヴァネッサも腰を浮かしかけたが、しかしエルザは片手を上げて制止。

 

「あ、頭にキーンと来たであります」

 

「あったり前だ。いきなりそんな一気に頬張るからだよ」

 

苦笑するクリスの前で、エルザは今度はおちょぼ口でしゃりしゃりと咀嚼。

 

「…とっても甘くて美味しいでありますッ!」

 

「だろッ?」

 

得意げに胸を張るクリス。

その様子に、ミラアルクはごくんと喉を鳴らして、

 

「ヴァネッサ! 次はウチに作ってほしいゼッ!」

 

「はいはい、待ってなさい」

 

たちまち出来上がったかき氷を手にもつミラアルクにクリスは声をかける。

 

「シロップはイチゴのほかにメロンもレモンもあるぞー」

 

「うう、迷うゼ…!!」

 

そんな彼女らを弦十郎は微笑ましく眺めていたが、不意にその表情は曇った。

 

つい先日、彼らはS.O.N.G.を挙げて南極へと赴いている。

かのアダムの末期の予言に従い、何者かの復活を阻止するための一大作戦。

起動した封印防御施設『黄金棺』を辛うじて装者たちは撃破してくれたものの、棺内から発見されたミイラと聖遺物はアメリカ政府に譲渡する流れに。

 

兄である八紘の剛腕を持ってしても、政治という名の怪物はたやすく制御は受け付けないらしい。

帰投途中の通信で、弦十郎は八紘から叱責を受けるどころか逆に頭を下げられている。

 

「なーにしけた顔してんだよッ!」

 

ドンと胸を叩かれて見下ろせば、クリスが立っている。

 

「む。まあ、今日は色々と思うところがあってな」

 

弦十郎は曖昧に言葉を濁す。いくら伴侶とはいえ、あまり政治の汚濁には触れさせたくない。

 

「とりあえず作戦は成功で全員無事に帰還したんだ。なによりの誉れってヤツだろ?」

 

そう断言するクリスの爽やかさを、弦十郎はまるで胸の中を清水で洗われたように感じる。

―――さすが俺の惚れた女だ。

そう口にすれば間違いなく激昂されるだろうから、弦十郎はクリスの髪をグシグシと撫でるだけに留めた。

くすぐったそうに夫の手を受け入れたクリスがお盆を持って向かった先。

縁側に座る訃堂へ向けて、手製の宇治抹茶金時のかき氷を差し出してクリスは笑いかけている。

 

「おら、爺様も。極上の南極土産だぜッ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プランA

 

 

ヴァネッサ、エルザ、ミラアルクの三人が並んで壁際に立つ。

そんな彼女らの前にいる黒髪の少女は小日向未来だ。

 

『それでは未来さん。お願いします』

 

隣室からのエルフナインの声に、未来の口から聖詠が紡がれた。

白と紫のツートーンカラーのファウストローブ。

彼女がかつて纏った『神獣鏡』は、響を侵食していたガングニールの欠片とともに消失。なので今着装しているこれは、別の一枚をエルフナインが新たに作り直したものである。

 

神獣鏡の特製は破邪の光で呪いを打ち消すというもの。

そして呪いと祝福は表裏一体ということで、哲学設定を裏返すことにより、装者たちにとっての祝福であるシンフォギアを打ち消す『聖遺物殺し』として立ち塞がったこともある。

だが、いま未来がその光を向ける先はヴァネッサたちの方。彼女らの体内深く浸食した怪物の遺伝子を消しされないかという実験だ。

扇状のギアのようなものを円形に展開。

鏡を模したそこから光を照射して―――。

 

「…あれ?」

 

放出された光に目を細めたのも一瞬で、たちまち光は消えてしまった。

 

「あれれ?」

 

扇を左右に振ったり叩いたりする未来にクリスが近づく。

 

「おい、大丈夫かよ?」

 

とたんに強烈な光がクリスの顔面を射る。

 

「うお、眩しッ」

 

未来が慌てて腕を下げるも、またもや光は弱まり消えてしまう。挙げ句、ファウストローブも解除されてしまった。

 

「なんだか電池切れかけの懐中電灯みてえだな…」

 

クリスがぼやいてると隣室から声。

 

『やはり未来さんの元々の適合係数の低さが問題ですね。これは未来さん専用のLiNKERを作った方が早いかも…』

 

エルフナインの表情が芳しくないのにはもう一つ理由がある。

神獣鏡の光は融合症例に対しては覿面だったが、遺伝子レベルで調整されたヴァネッサたちの身体には効果は薄いらしい。

 

「…やはりわたくしめらは元には…」

 

ガックリとした顔つきになるエルザに、慌ててエルフナインが言い添えてくる。

 

『いえ、まだ実験を繰り返してみなければ分かりません! それに、プランBの方も…』

 

その声にかぶさってくるアラーム音。

同時に、オペレーターである藤尭朔也の声も割り込んでくる。

 

『アルカ・ノイズの発生パターンを検知しましたッ! 装者は至急発令所へ集合されたしッ!』

 

クリスはさっそく胸元からギアペンダントを引っ張りだす。

 

「ったく、12月は先生だけでなく錬金術師とノイズも走り回るってかッ」

 

そのまま駆けだそうとする彼女を、弦十郎は呼び止めた。

 

「いや、クリス、おまえは本部で待機だ」

 

「なんでだよッ?」

 

「いま先ほど、神獣鏡の光を浴びてしまったではないか。きっちり検査を受けたほうは良い」

 

「あ…」

 

その指摘に、クリスと未来は揃ってバツの悪い顔つきになる。

替わりに、明るい声を張り上げたのは響だ。

 

「大丈夫ッ! わたしたちだけで何とかするからッ! それに、今日はクリスちゃんの誕生日だしッ!」

 

「あ、あたしの誕生日は関係ないだろッ!」

 

「パパっと済ませてきちゃうから! だからご馳走の準備、よろしくね~ッ!」

 

「なんで主役のあたしがご馳走を用意しなきゃなんねーんだ、おい!」

 

顔を赤くして怒鳴るクリスに仲間たちは失笑を向けると、次々と部屋を飛び出していく。

 

「まったく…」

 

腰に手を当てて見送ったクリスの肩に、そっと大きな手を乗せられた。

 

「そういうことだ。今日は安心して皆を信じてやろう」

 

「ん…」

 

弦十郎にそう応じたクリスに、未来も声をかけてくる。

 

「じゃあ、一緒にパーティの準備をして響たちを待とうよ。ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祝いもダブルだッ!

 

 

 

 

その日の夕方。

都内の風鳴屋敷は、普段以上の喧噪に包まれている。

一番広い座敷同士の襖を取っ払ってつなげた広さは20畳ほど。

天井の四隅には折り紙で作られた輪や星がふんだんに飾り付けられ、鴨居には響の字で『クリスちゃん誕生日おめでとう!』の横断幕が。

例年であれば装者たちだけで行っていた誕生会も、クリスが結婚した以上、弦十郎抜きというわけにはいかない。

なので、他の参加者も募って、例年にない騒がしさだ。

 

「ナリクリパイセン、誕生日おめでとう!」

 

「おめでとうございます」

 

安藤創世に寺島詩織も招待されている。

板場弓美はクリスへの挨拶もそこそこに、ヴァネッサへと興味津々の様子。

 

一方でそのヴァネッサたちも、この誕生会に戸惑いを隠せないでいる。

自分たちが世話になっている屋敷で催されているのはともかく、そこに参加していいものだろうか?

三人の中で一番戸惑っていたのはミラアルクで、そんな所在なさげな彼女の前に風鳴翼がやってきた。

じっとミラアルクの瞳を見つめて翼は言う。

 

「…なんとなく、君には因縁のようなものを感じるな」

 

「ああ。何かが違っていたら、きっと殴り合う関係だったろうゼッ!」

 

むろんミラアルクのこの物言いに他意はない。単に売り言葉に買い言葉を口にしたに過ぎない。

 

「ともあれ、今は雪音のことを祝ってくれるのだろう? であれば、陽気に楽しむのが礼儀ではないか?」

 

笑顔で翼が差し出した皿にはローストビーフ。

ぐびりとミラアルクの喉が鳴る。なんとなく料理を取りにいくことが憚られていたからなおさらだ。

 

「そ、そういうことなら頂くゼッ!」

 

半ば引っ手繰るようにして、ミラアルクは皿を受け取る。

一気にローストビーフを頬張り、直後、盛大にムセこんだ。少しばかりニンニクが効きすぎていたらしい。

 

「お、おい、大丈夫かッ!?」

 

結果、涙を流してひーひーいうミラアルクの背中をさすってやる翼がいる。

 

その光景を横目で見るヴァネッサの元へやってきたのは、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。

 

「…なんとなく、貴女には親近感を覚えるわ」

 

柔和そうな笑顔で告げてくるマリアに、ヴァネッサも笑顔で応じる。

 

「ええ、そうみたいね」

 

そんな二人が優しい視線を向ける先。

 

「こ、これはなんという食べ物でありますかッ!?」

 

「イチゴのショートケーキデスけど…?」

 

興奮気味に訴えてくるエルザに、首を捻る暁切歌がいる。

 

「ショートケーキは日本固有のもので、海外では一般的じゃあないんだよ切ちゃん」

 

黒髪を揺らして、慎ましやかな胸を張るのは月読調。

 

「へえ~。知らなかったデス。ところでエルザは、どこの出身なんデスか?」

 

「フ、フランスでありますが…」

 

切歌自身は意識していないだろうが、彼女の距離の取り方はだいぶ響寄りだ。

 

「そうなんデスか! いいデスね! アタシも調も、どこで生まれたかもわっかんねーデスから!」

 

笑顔でさらっと重たいことを言ってのける切歌に、エルザは完全に毒気を抜かれている模様。

 

「はい、切ちゃん、チキンだよ。ほら、エルザもどうぞ」

 

その隣で甲斐甲斐しく世話を焼く調は、非常にお姉さん然としていた。どうやら切歌に続いてエルザも妹に思えているらしい。

 

「うっほほ~い! ありがとうデス、調~!」

 

「早く食べないと、響さんに全部食べられちゃうから」

 

「なぬッ!? 本当デス、やっべえデス!」

 

一気にチキンを頬張った切歌は、エルザの手を引っぱって料理の載ったテーブルの方へ誘う。

 

「チキンもいいデスけど、未来さん特製のビーフシチューも食べるデスよ!」

 

そして響は、未来の給仕で料理の数々と格闘していた。

 

「美味しいッ! 美味しすぎるッ!」

 

「ほら、響、慌てないで」

 

ナプキンで未来に口を拭ってもらい、響は破顔。

 

「いやあ、今日もノイズをぶっ飛ばしてきたらお腹空いちゃって~!」

 

「だからって食いすぎだろうよ、おまえは…」

 

相変わらずのあまりの喰いっぷりに、クリスは苦笑を浮かべてため息をつく。

 

「まあ、料理はたくさんあるからいいけどよ」

 

自分の誕生日関わらず、結局クリスは大量の料理を作っている。

それというのも、忘年会も一緒に済ませてしまおうというクリス自身の提案に因る。

なのでS.O.N.G.の発令所の面々にも声をかけていたが、誰も姿を見せていなかった。

緒川だけは『どうか皆さんで楽しんでください』とメッセ―ジをくれたが、友里あおいと藤尭朔也からは連絡がない。

 

ひょっとしてあの二人…?

 

などと主婦目線でワイドショー的な想像をしつつ、クリスは適当に料理を大皿に取り分ける。

それを彼女が運んだ先は、開け放しの縁側だ。

例によってそこには訃堂が座し、一人で朱塗りの酒杯を傾けている。

 

「爺様も、飲むだけじゃなくて食えよ?」

 

「む…」

 

とんと置かれた大皿に、訃堂は唸る。本人的には礼を言っているのかも知れないが、クリスは特に気にしない。

友里と藤尭が姿を見せない理由が目前に座っていることにも気づかなかった。

 

 

クリスが座敷に引き返せば、場はいよいよ煮詰まっていた。

遠慮ない笑い声が弾け、ちょっと見回しただけで色々な取り合わせが目に入る。

 

ジュースと間違ってワインを飲んで目を回したエルザを、切歌は団扇で、ミラアルクは羽で扇いで介抱している。

ヴァネッサは弓美たちに囲まれて質問攻めを受けていた。

 

「ねえ! ねえ! おっぱいミサイルとかできないの?」

 

「ん~、もう少し仲良くなったら教えてあげる♪」

 

 

 

そんな喧噪の中、一人胡坐をかいてコップを傾ける弦十郎。

 

「騒がしいのは駄目なのかよ?」

 

隣に腰を下ろしクリスは尋ねる。

 

「いや、嫌いではないぞ。むしろ好きなほうだ」

 

弦十郎は答える。

思い返せば幼少期の風鳴家の生活は非常に格式ばったもの。

祭りやハレの日はあれど、このように仲間や身内で屈託なく騒いだ記憶はない。

その反動もあってか、弦十郎は本質的にお祭り好きだ。装者たちを編入させるたびに歓迎パーティを開いていたのは伊達じゃない。

 

むしろ弦十郎が気後れしているのは、この場の圧倒的な女性比率の高さである。

若い、いわゆる女の子ばかりの空間で、おっさんである自分はどんな話題を振って混じれたものか。

 

(それでも、いっちょ手品でも披露してやるか)

 

そう思い、腰を浮かそうとした弦十郎に、そっとクリスは寄り添ってくる。

 

「…クリス?」

 

しおらしい態度に戸惑う弦十郎に、クリスは微かに頬を染めて言う。

 

「その…、来年はもちっと騒がしくなると思うぜ…?」

 

「…?」

 

一瞬、何を言っているのかわからなかった。

しかし、クリスが自身のお腹の上に手を載せているのを見て、弦十郎の顔にじわじわと理解の色が広がっていく。

 

「ま、まさか! 出来たのかッ!?」

 

コクンと頷くクリスに、弦十郎の顔は全力全開で紅潮する。

 

「そうかッ! でかしたぞクリスッ!」

 

クリスの両脇に手を入れて立ち上がる。

そのまま高く掲げて、ぐるぐると回り始める弦十郎。

 

「うわわッ!? 怖いって、おろせってッ!」  

 

この騒ぎに、何事ッ!? と参加者の視線が集中。

未だ興奮冷めやらぬ弦十郎に替わり、ようやく下ろされたクリスが説明する。

今日、神獣鏡の光を受けてからの精密検査で、妊娠していることが発覚したことを。

 

この説明は、弦十郎と同様に、じわじわと仲間内へと浸透。

しばしの間をおいて、歓声は一気に爆発した。

 

「うわああああああッ! クリスちゃん、おめでとーッ!」

 

ぴょんぴょんと飛び跳ねて我が事のように喜ぶ響。

 

「この歳で従兄弟が出来るとは…ッ!」

 

基本的に慶事ではあるが、複雑な喜びを垣間見せる翼。

 

「うひょー! クリス先輩がお母さんデスぅ!?」

 

切歌は調と手を取り合ってこちらも飛び跳ね、

 

「………」

 

マリアは何故かさめざめと目元の涙を拭っていた。

 

 

「おめでとうございますでありますッ!」

 

パチパチとエルザだけが弓美たち三人娘と同じリアクションに準じていたのに対し、ヴァネッサは軽くコップを掲げて乾杯の動作を示す。

 

「ほら、ミラアルクちゃんも」

 

「…けッ」

 

渋々ながらも、二つのグラスがチンと空中で軽く鳴った。

 

 

 

「いやあ、もう、クリスちゃんの誕生日も併せてお祝いもダブルだよ~!」

 

響の良く分からない物言いこそが、現状を的確に説明していた。

 

揉みくちゃにされるクリスの側を離れ、興奮のまま弦十郎は縁側の訃堂へと詰め寄っている。

 

「聞いたか、親父ッ! 俺も親父になるのだッ!」

 

甚だ不器用な物言いをする息子に、訃堂はなにも言わない。

替わりに、手酌で酒を並々と杯に注ぐと、それを一気に飲み干した。

どうやら彼なりの祝いの作法らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






南極隊員「女の子がお腹を冷やしちゃだめだろッ!?」
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