休日。
正確には、日本防衛隊の一部隊員の。
まだ、フル装備でなければ過ごせないほど寒くはない季節。どこかの寮の通路に、ひとつの人影があった。
普段着のその人物は、銀髪。一見して、成人しているかどうか迷うほど若い。端正な目元にすこしだけ髪がかかっている。
足は、
コンコン。
扉が2回叩かれた。ノックだ。返事がない。
「
男がドアノブに手をかけると、あっけなく扉が開いた。
何かあったのか?
嫌な予感を振り払うように、おそるおそる中に入る銀髪の男。
殺風景な部屋の中には、布団の上で横たわる人影が。
「なんで寝てるんですか!」
30歳くらいに見える人物が叩き起こされた。黒髪で短髪。すこしだけあごヒゲを生やしている。
「悪い。きのう飲みすぎて。あたた」
眉毛が二股に分かれている男は、頭をおさえた。候補生とはいえ、防衛隊に入れたことが嬉しくて、かなり酒を飲んでいたのだ。
半袖半ズボンの状態から服を着こむ男。
二人が続けて部屋の外に出た。
「で、なんだっけ?
「
どうやら、
「自主練したほうがよくないか?」
「何をする気ですか。そもそも二日酔いで――」
街は普段どおりの人ごみであふれている。怪獣の姿は見えない。辺りをうかがう男が、ほっとした表情を見せる。
「あと、変身しないように」
「わかってるって。実験台になりたくないし」
普通の人には理解できない会話をしている二人。
その二人を、物陰に潜む黒い人影が見ていた。
何者かは、まったく気づかれていない。
しばらく経過。
「最近、ようやく慣れてきた」
「どうやって変身してるんですか?」
「そりゃ、気合いだよ、気合い」
やはり、二人はまったく気づく様子がない。雑談をつづけている。
しびれをきらして、その人物は自分から現れた。
「堂々と変身の話をするな!」
「おっ。キコル。偶然だな」
「偶然だな。じゃなーい!
ほんとうに偶然なのだろうか。
と思った
キコルと呼ばれた女性は、
「それはそうと、ずいぶん暇をしているみたいね」
「そうでもないけど」
「
「はい。暇っすね」
キコルの有無を言わさぬ
「おい!」
「自分の立場を忘れたなら、思い出させてあげるわ」
キコルの説教が始まった。そして、
いつものように、変身しないように釘を刺されるカフカ。
怪獣の姿になれることを知られると、人体実験の被検体にさせられる、もしくは処分が免れないからだ。
カフカは、怪獣に変身できることを悟られてはならない。
昼まではまだまだ間がある。
カフカ、
ゲームセンターに入るわけでもなく、都会の
「何するつもりだったの?」
「言えるか」
キコルに対し、カフカが速攻で返した。
「ちょっと先輩。そういう言いかたはよくないですよ」
まさか、言えないようなことをしようとしていたなんて。
などと少女が思っているとはつゆ知らず。二人は、キコルから誤解されてしまったようだ。
なぜか怒り出した少女に対し、二人は顔を見合わせた。頭を振ったキコルがいつもの調子を取り戻す。
「トレーニングでもしたほうがマシじゃない」
その言葉に、カフカが食いついた。
「解放戦力の上げかたを教えてくれ」
解放戦力とは、防衛隊のスーツと武器の力をどれくらい引き出せているかの指標である。20パーセント近く引き出さなければ、隊員として活躍できないのだ。
ちなみに、カフカの解放戦力は、選抜試験の時点で0パーセントである。
両肩をつかまれた少女は、頬を染めて口を真一文字に閉じるばかり。
頼むカフカに、キコルは教えなかった。
三人で歩いているカフカたち。
「こっちに行くぞ」
「こっちでしょ」
「落ち着いてください」
そこを、長くて黒い自動車が通りすぎようとしていた。高級車だ。
後部座席に、髪の長い女性が乗っている。
ふつうならありえないことだ。
男女二人の目が合った。
カフカは、心に強く誓っていた。
それを、
カフカは、どうしても解放戦力について知りたい様子。
「特に何もしてないっすよ」
やはり頼れるのはキコル。なんせ、解放戦力が50パーセント近くもある。
そう思い、カフカが期待の眼差しを向ける。
「仕方ないわね。気合いよ、気合い」
キコルは冗談か本気か分からないことを言う。
カフカは気合いを入れる練習を始めた。
「いや、何やってんすか
そのとき、とつぜんサイレンが鳴り響く。
「おい」
「こんなときに」
怪獣だ。