鈍感な彼氏と直接言えない彼女の物語 完結   作:月島柊

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今回の登場人物
影山蒼
立花桜
春風瑞季
以上3名


第10話 怪我

 私は現実と生徒会長から逃げた。家から飛び出たのは2:30。走り出した。しかし、生徒会長である蒼くんは来ない。私はここで自殺を決めた。高台で、4mはありそう。

 

「もう、いいよね」

 

私は高台の端にある返しの上に乗った。普通だったら怖いって思う。だけど、今は違う。

 

「行こう」

 

私は4m下に向けて体重をかけた。そのまま重力に身を任せ、落ちていく。

 

「桜!」

 

静かな場所に聞こえた蒼くんの声だった。けど、もういいんだ。遅い。

生徒会長はこっちに来ようとしたが、私が先に落ちていった。

すると、何故だろう。生徒会長が私の横から飛び降り始めた。私より速い。体重をかけてるんだろう。私の真下は芝生。しかし、生徒会長の真下はコンクリート。落ちたら即死に決まってる。

生徒会長は凄いスピードで落下したあと、芝生の上に肩から落下した。そして、立ち上がり、私の真下へ。

 

「え……」

 

私はそのまま落ちていった。

 

 私を支えてくれたのは生徒会長だった。私に怪我はなかったが、生徒会長は肩が動かないようだった。重い打撲だったらしい。全治2ヶ月、左手をなるべく使わないようにと言われていたらしい。

しかし、その事を知ったのは私が四月になって、東鉄指令の仕事を始めてからだった。もう遅くて、怪我をしたのが三月で、もう1ヶ月経っていた。

 

「立花さん、中央方面架線支障物撤去完了です」

「あ、はい。それでは、1228Tから順に吉祥寺から再開します。前の電車は安全取れ次第運転再開おねがいします」

 

【影山蒼視点】

 

 俺は怪我をしていたが、バイト先に用事があって、昼間に千駄ヶ谷へ移動した。1228Tだったが、吉祥寺で架線に支障物で止まってしまった。俺はその隙に一緒に付き添いをしてくれていた瑞希に礼を言った。

 

「ありがとう、瑞希」

「ううん。お姉ちゃんはバイトだし、大丈夫だよ」

 

俺が瑞浪の家に行くと、瑞浪がバイトだったため、妹の瑞希が付いてきてくれた。

 

「何しに行くの?」

「バイト先に荷物を置いててさ」

 

俺は固定されている左肩を眺めながら言った。動かすと痛み、なるべく動かさないようにしているが、癖で動いてしまうときがある。

 

「動かすと痛い?」

「うん。結構痛くて、死にそう」

 

俺は瑞希に左肩の包帯を見せた。血こそ出てないが、ずっと打ち付けられているように痛い。

 

「触るのは?」

「それはあんまり。ただ、痛くないって訳じゃない」

 

俺は痛みをこらえて、元の位置に戻った。

 

「なんで怪我したの?」

「人を守った」

 

自分を犠牲にしたけど、大丈夫だ。

 

「流石だね、蒼くん」

 

人は守りたいっていうのが、何か自分の中であったから。理由なんてただそれだけ。

 

「そうかな。けど、ありがとう」

 

俺は目を合わせることなく言った。

全く、いつもみんなそうだ。

この世界の人類、大半が見て見ぬふりをする。

自分に何かあったら助けを求める癖に

他人に何かあってもなにもしない。

言われるまで

というか

最悪言われてもしない人類だっている。

そんなの

どうかしている。

だったら

他人を助けてやった方が

自分を助けてほしいときも筋が通る。

まぁ、どうせ今回はやり過ぎたが。

俺はそんなことを思いながら、ボーッとしていた。

 

「──くん、蒼くん」

 

瑞季から呼ばれていることに気付く。

 

「あ、あぁ、なんだ」

「ちゃんと話聞いてた?」

 

痛いところをつかれ、俺は正直に白状する。

 

「…ごめん…」

「やっぱり。お姉ちゃんだって守ってくれるって話!」

 

本当になにも聞いてなかったな……

 

「あ、あぁ、守るさ」

 

俺は知ってたかのように言った。本当は一切知らないけど。

 

「じゃあお姉ちゃんにも言っとくね。あ!……」

 

瑞季は何か思い付いたかと思うと、急に黙り込んだ。

 

「どうした?」

「いや、お姉ちゃんのコンビニ来てって思ったんだけど、その手じゃ無理だよね……」

 

瑞浪のコンビニかぁ。バイト先ってことだよな。

 

「行ってもいいよ。駅から近いんだよな?」

「うん。歩いて1分くらい」

 

だったら行けるかな。

 

「じゃあ行くよ。ただ、まずは荷物取りに行こうかな」

「うん。行こ」

 

俺と瑞季はお互い触れないようにして座った。

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