影山蒼
春風瑞浪
春風瑞季
お母さん
お父さん
大島先輩
以上6名
瑞季が起きて来ると、みんな口を揃えて「遅い!」と言った。高校は俺たちと同じ高校だ。
すると、お父さんとお母さんが言った。衝撃的な言葉だった。
「結婚を認めようと思うんだ、俺と母さんは。そこで、影山くんにも意見を聞きたくてね」
結婚を認める、か。嬉しいことに限りない。だが、この2人だけで決まるものなのか?
「あの、お祖父様やお婆様の許可は大丈夫なのですか」
「ああ、もう了承を得ている。ただ、1つの点が問題なのだよ」
お父さんは険しい表情をして言った。
「瑞浪にも、付き合っていた人はいた。その人と、別れきれていないそうなんだ。影山くんはいないのかい」
「えっと……大変言いづらいのですが……」
これは言ってもいいのか……言ったら怒鳴られないだろうか……と考えつつも言った。
「バイト先の女性の方が、俺とベッタリくっついていたりします……」
「それ、本当?」
お母さんが口を開けた。
「はい。流石に付き合うとかはないと思いますが、一応あと1ヶ月待ってほしいかなと」
「そうだったの。いいわよね、瑞浪」
「うんっ!その代わり、蒼くんとくっついてていい?」
すると、瑞浪が言った。
「Mizuna and So-kun is a “Love love couple”!」
「Wrong, So-kun and I is marriage partner.」
もう何言ってるか分からん。理数系の目の前で英語を話すのやめてくれ……
「わ、わぁ……」
「ふふっ」
瑞浪が微笑んだ。俺は何を言っていたのか瑞季に聞いた。
「何て言ってたんだ」
「え?えっとね、私が『瑞浪と蒼くんはラブラブカップルだね!』って言ったら、お姉ちゃんが……」
瑞浪は俺の顔を伺ってから言った。
「『違う、蒼くんと私は婚約相手だよ』って」
「おぉ……」
なかなかやるな。
この会話を聞いていた瑞浪はニコニコ笑っている。
「蒼くん♪」
瑞浪は手を胸の前にして、手首を下に曲げ、頭をこっちにアピールしてくる。まるでうさぎが立っているときのような体勢だ。
「撫でてほしいのか」
俺は瑞浪の頭を撫でた。瑞浪は嬉しそうな声を出す。
「きゅぅん……」
瑞浪は次に、俺の腹に頬を擦っていた。
「すりすりー」
俺は瑞浪がしているようすを黙って見ていた。
とてつもなくかわいいっ!
瑞浪がすごくかわいく見え、さらに、世界一なように見えた。
「あはは……本当のカップルみたい」
「違うって言ってたじゃないか。婚約相手だろ」
「あ、そっか」
瑞浪は照れていた。すごく照れていた。今までにないほどに。
「瑞浪……」
「蒼くん……」
俺と瑞浪はぎゅっと身を寄せ合った。瑞浪っぽい感触が身体全体に伝わってくる。
「蒼くんの温もりが伝わってくる……」
「感触が全身に伝わるよ、瑞浪の」
瑞浪は俺が離れようとすると、離れることを許さないと言わんばかりに強く抱き締める。
「ダメ。離れないで」
瑞浪は顔を向けずに言った。俺も拒否しない。
「……分かった。しばらく、な」
今日は俺も帰らないといけない。昼飯くらいは自分で食おう。
学校からの特例で月10万、政府へのある協力で月島30万。月に40万貰うのだが。今持っているのはその内の10%とバイトからのお金。日給5000円だ。普通くらいだろう。というか、少し抑えてもらってこの値段。妥当な日給だろう。
要するに、今は45000円持っている。
口座には40万貰ってるのが3ヶ月で、120万近く入っている。もうそろそろ調整しないとな。無駄遣いはしないが、何か必要なものとか買うか。
旅行とかもいいな。親孝行とかもいいかもしれない。生まれてから19年目だし。その分世話になっている。
俺は瑞浪の耳を塞いで言った。
「瑞季、瑞浪に、行きたいところないか聞いといてくれ。俺の名前は出すな」
「うん。どこか行くの?」
「それはまたチャットで……」
俺は瑞浪の耳から手を離した。瑞浪は微動だにしない。寝てるんだろう。
俺は瑞浪をクッションの上に寝かせた。
「……さて、帰るかな」
「あら、帰るの?雨合羽そこに掛かってるわ」
お母さんが雨合羽を取ってくれる。
「ありがとうございます。また、瑞浪に会いに来ます。俺の家にも来ていいよって、瑞浪に言っておいてください」
「分かったわ。そういえば、まだ電車来ないけど、どうするの?」
そうか……八王子じゃなくてもいいし……昭島の方が駅近かったよな。
「昭島までバスで行きます。それでは、お邪魔しました」
俺は外に出て、小宮駅入口のバス停まで向かった。
行き先は、日野駅か八王子駅。八王子駅行でいいだろう。
9:38発大11の八王子駅北口行。
途中、北八王子駅や、京王八王子駅も経由したが、八王子駅で降りた。10:12、若干遅れて到着。ここからどうするかなぁ。
そう考えていると、後ろから聞き覚えのある声がした。
「影山先輩?」
先輩呼びで、俺より年下っぽい。ということは……
「大島先輩?」
俺が後ろを振り向くと、大島先輩がお辞儀していた。
「お久しぶりです、影山先輩」
「こちらこそ。どうしたんですか、八王子に来て」
「ああ、その……バス乗りたかったので、八王子に……」
そんなこともあるんだな。
「大島先輩はこれから帰宅ですか」
「はい……」
「だったら、一緒に帰りましょうか」
俺は家に帰らず、大島先輩の家まで一緒に行くことを提案した。
「え!そんな、迷惑ですよ……」
「俺はいいんですけど……大島先輩はどうですか」
「……確かに、一緒に帰った方が安心ですし……」
「じゃあいいですね。帰りましょう、先輩」
俺は大島先輩と一緒に八王子駅に入った。