鈍感な彼氏と直接言えない彼女の物語 完結   作:月島柊

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今回の登場人物
影山蒼
春風瑞浪
春風瑞季
お母さん
お父さん
大島先輩
以上6名


第17話 婚約相手

 瑞季が起きて来ると、みんな口を揃えて「遅い!」と言った。高校は俺たちと同じ高校だ。

すると、お父さんとお母さんが言った。衝撃的な言葉だった。

 

「結婚を認めようと思うんだ、俺と母さんは。そこで、影山くんにも意見を聞きたくてね」

 

結婚を認める、か。嬉しいことに限りない。だが、この2人だけで決まるものなのか?

 

「あの、お祖父様やお婆様の許可は大丈夫なのですか」

「ああ、もう了承を得ている。ただ、1つの点が問題なのだよ」

 

お父さんは険しい表情をして言った。

 

「瑞浪にも、付き合っていた人はいた。その人と、別れきれていないそうなんだ。影山くんはいないのかい」

「えっと……大変言いづらいのですが……」

 

これは言ってもいいのか……言ったら怒鳴られないだろうか……と考えつつも言った。

 

「バイト先の女性の方が、俺とベッタリくっついていたりします……」

「それ、本当?」

 

お母さんが口を開けた。

 

「はい。流石に付き合うとかはないと思いますが、一応あと1ヶ月待ってほしいかなと」

「そうだったの。いいわよね、瑞浪」

「うんっ!その代わり、蒼くんとくっついてていい?」

 

すると、瑞浪が言った。

 

「Mizuna and So-kun is a “Love love couple”!」

「Wrong, So-kun and I is marriage partner.」

 

もう何言ってるか分からん。理数系の目の前で英語を話すのやめてくれ……

 

「わ、わぁ……」

「ふふっ」

 

瑞浪が微笑んだ。俺は何を言っていたのか瑞季に聞いた。

 

「何て言ってたんだ」

「え?えっとね、私が『瑞浪と蒼くんはラブラブカップルだね!』って言ったら、お姉ちゃんが……」

 

瑞浪は俺の顔を伺ってから言った。

 

「『違う、蒼くんと私は婚約相手だよ』って」

「おぉ……」

 

なかなかやるな。

この会話を聞いていた瑞浪はニコニコ笑っている。

 

「蒼くん♪」

 

瑞浪は手を胸の前にして、手首を下に曲げ、頭をこっちにアピールしてくる。まるでうさぎが立っているときのような体勢だ。

 

「撫でてほしいのか」

 

俺は瑞浪の頭を撫でた。瑞浪は嬉しそうな声を出す。

 

「きゅぅん……」

 

瑞浪は次に、俺の腹に頬を擦っていた。

 

「すりすりー」

 

俺は瑞浪がしているようすを黙って見ていた。

とてつもなくかわいいっ!

瑞浪がすごくかわいく見え、さらに、世界一なように見えた。

 

「あはは……本当のカップルみたい」

「違うって言ってたじゃないか。婚約相手だろ」

「あ、そっか」

 

瑞浪は照れていた。すごく照れていた。今までにないほどに。

 

「瑞浪……」

「蒼くん……」

 

俺と瑞浪はぎゅっと身を寄せ合った。瑞浪っぽい感触が身体全体に伝わってくる。

 

「蒼くんの温もりが伝わってくる……」

「感触が全身に伝わるよ、瑞浪の」

 

瑞浪は俺が離れようとすると、離れることを許さないと言わんばかりに強く抱き締める。

 

「ダメ。離れないで」

 

瑞浪は顔を向けずに言った。俺も拒否しない。

 

「……分かった。しばらく、な」

 

今日は俺も帰らないといけない。昼飯くらいは自分で食おう。

学校からの特例で月10万、政府へのある協力で月島30万。月に40万貰うのだが。今持っているのはその内の10%とバイトからのお金。日給5000円だ。普通くらいだろう。というか、少し抑えてもらってこの値段。妥当な日給だろう。

要するに、今は45000円持っている。

口座には40万貰ってるのが3ヶ月で、120万近く入っている。もうそろそろ調整しないとな。無駄遣いはしないが、何か必要なものとか買うか。

旅行とかもいいな。親孝行とかもいいかもしれない。生まれてから19年目だし。その分世話になっている。

俺は瑞浪の耳を塞いで言った。

 

「瑞季、瑞浪に、行きたいところないか聞いといてくれ。俺の名前は出すな」

「うん。どこか行くの?」

「それはまたチャットで……」

 

俺は瑞浪の耳から手を離した。瑞浪は微動だにしない。寝てるんだろう。

俺は瑞浪をクッションの上に寝かせた。

 

「……さて、帰るかな」

「あら、帰るの?雨合羽そこに掛かってるわ」

 

お母さんが雨合羽を取ってくれる。

 

「ありがとうございます。また、瑞浪に会いに来ます。俺の家にも来ていいよって、瑞浪に言っておいてください」

「分かったわ。そういえば、まだ電車来ないけど、どうするの?」

 

そうか……八王子じゃなくてもいいし……昭島の方が駅近かったよな。

 

「昭島までバスで行きます。それでは、お邪魔しました」

 

俺は外に出て、小宮駅入口のバス停まで向かった。

行き先は、日野駅か八王子駅。八王子駅行でいいだろう。

9:38発大11の八王子駅北口行。

途中、北八王子駅や、京王八王子駅も経由したが、八王子駅で降りた。10:12、若干遅れて到着。ここからどうするかなぁ。

そう考えていると、後ろから聞き覚えのある声がした。

 

「影山先輩?」

 

先輩呼びで、俺より年下っぽい。ということは……

 

「大島先輩?」

 

俺が後ろを振り向くと、大島先輩がお辞儀していた。

 

「お久しぶりです、影山先輩」

「こちらこそ。どうしたんですか、八王子に来て」

「ああ、その……バス乗りたかったので、八王子に……」

 

そんなこともあるんだな。

 

「大島先輩はこれから帰宅ですか」

「はい……」

「だったら、一緒に帰りましょうか」

 

俺は家に帰らず、大島先輩の家まで一緒に行くことを提案した。

 

「え!そんな、迷惑ですよ……」

「俺はいいんですけど……大島先輩はどうですか」

「……確かに、一緒に帰った方が安心ですし……」

「じゃあいいですね。帰りましょう、先輩」

 

俺は大島先輩と一緒に八王子駅に入った。

 

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