鈍感な彼氏と直接言えない彼女の物語 完結   作:月島柊

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今回の登場人物
影山蒼
大島茜
以上2名


第19話 登山

 俺は京王片倉8:07発準特急高尾山口行きに乗った。空いていて、席に座れた。

これで行くと、高尾山口には8:19に到着する。

 

「あれ、茜先輩……」

 

俺は誰にも聞こえないような小声を発した。そう、待ち合わせ場所こそ言っていたが、時間は教えていなかった。

 

(やべぇ……時間伝えてなかった……)

 

俺はいつの間にか高尾山口に着いてしまった。俺は不安に思いながらも改札を出た。

そこには、茜先輩が立っていた。俺は謝るために急いだ。

 

「あ、蒼先輩──」

「すみませんでした!」

 

俺は頭を下げて謝罪した。

 

「えっ、えぇ!?な、なんでですか!」

「時間を伝え忘れてました……」

「あ、そういえばたしかに……でも、いいですよ!会えたんですし!」

「すいません……」

 

俺は謝ってから、高尾山に登り始めた。未だに敬語を使う癖は抜けないが。

 

「茜先輩は高尾山登ったことあるんですか」

「ないです。蒼先輩はどうですか」

「俺は結構前なんですけど、山頂まで」

 

16歳の時、高校の合格祝いで登った。599mと、結構低めの山だが、登ると疲れる。

 

「結構疲れますか?」

「はい。今日は登るとき慣れて貰いたいので、比較的楽な一号路でのぼります」

 

登ったことがあるんだったら六号路や稲荷山ルートでもいいが、慣れてないんだったら一号路が懸命だ。

 

「……なんか、違和感覚えます……」

「何にですか?」

「なんか、敬語で話してるのです……」

 

敬語は確かに外したことないし、当然だろう。

 

「外しますか?敬語」

「……はい……」

 

俺は茜先輩の手を握った。

 

「ふきゃ!?」

「楽しんでね、茜」

 

茜は顔を紅くして言った。俺は茜の手を握ったまま、高尾山の一号路に向かった。

 

「ケーブルカー乗るか?」

「ううん……」

 

敬語を外して慣れないだろ。急に外したって慣れないんだよ。

茜は顔をブンブン横に振って言った。

 

「フルで登りたいから最初から歩く!」

「よし。じゃあ行こうか」

 

俺は茜から手を離して一号路を登り始める。

 

「蒼……くん……?」

 

ああ、俺が勝手に「茜」って呼んだだけで、茜自身はなんて呼んだらいいかわからないのか。

 

「なんだ?」

 

それでいいと言うように、俺は返事した。

 

「結構キツいね」

「最初は一気に登るからな。ケーブルカーの終点まで来れば楽さ」

 

俺は茜の後ろを歩きながら言った。後ろにいた方が何かあったとき助けられるから。

 

「ここ急……」

「押そうか」

 

俺は茜のことをそっと押した。茜は身が軽くなったように歩き出した。

 

「わぁっ!軽い!」

「よかった。こまめに休憩しような」

「うん」

 

茜は俺の手伝いもあって、金比羅台まで来ることができた。

 

「景色きれぇ~」

「登ってきて良かっただろ。ここから高尾山駅に行って、山頂行くからな」

 

俺と茜は金比羅台で少し休憩した。

 

「蒼くん、新宿見えるよ!」

「そうだな。池袋だって見えるぞ」

 

そんなことをしていると、時間は結構過ぎていた。俺と茜は高尾山駅に向けて歩き出した。

 

 高尾山駅の近くにある高台で、俺と茜はいちごミルクのアイスクリームを買った。2人で一つ食べることにして、スプーンも2つ付けてもらった。「彼女さんですか?」と聞かれたが、俺は「親友です」と答えた。しかし、茜は不満気だったため、「これからデートです」と言い直した。すると、茜はニコニコして笑った。

 

「茜、なんで彼女なんて」

「いいのっ、そういう雰囲気出しておきたいじゃん」

 

そんなもんか。

俺は椅子に座ってアイスクリームを舐めた。両方向から舐め合っていて、途中でくっつきそうになることも度々あった。

 

「あとは茜が食べていいぞ」

「え?もう少し食べよ?」

「……しょうがないな……」

 

俺は茜と一緒にアイスクリームを舐めた。

 

「ほら、終わりだ」

「むーっ……はむっ」

 

茜はアイスクリームの頂点を咥えた。

 

「食い終わったらまた歩くぞ~」

「はーいっ。むぐ……はむっ♪」

 

なんか、瑞浪といい勝負しすぎてる。二股になっちゃうじゃないか。

 

「行こっ、蒼くん」

「あ、あぁ……」

 

俺は山頂に向けて歩き出した。

 

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