影山蒼
大島茜
以上2名
俺は京王片倉8:07発準特急高尾山口行きに乗った。空いていて、席に座れた。
これで行くと、高尾山口には8:19に到着する。
「あれ、茜先輩……」
俺は誰にも聞こえないような小声を発した。そう、待ち合わせ場所こそ言っていたが、時間は教えていなかった。
(やべぇ……時間伝えてなかった……)
俺はいつの間にか高尾山口に着いてしまった。俺は不安に思いながらも改札を出た。
そこには、茜先輩が立っていた。俺は謝るために急いだ。
「あ、蒼先輩──」
「すみませんでした!」
俺は頭を下げて謝罪した。
「えっ、えぇ!?な、なんでですか!」
「時間を伝え忘れてました……」
「あ、そういえばたしかに……でも、いいですよ!会えたんですし!」
「すいません……」
俺は謝ってから、高尾山に登り始めた。未だに敬語を使う癖は抜けないが。
「茜先輩は高尾山登ったことあるんですか」
「ないです。蒼先輩はどうですか」
「俺は結構前なんですけど、山頂まで」
16歳の時、高校の合格祝いで登った。599mと、結構低めの山だが、登ると疲れる。
「結構疲れますか?」
「はい。今日は登るとき慣れて貰いたいので、比較的楽な一号路でのぼります」
登ったことがあるんだったら六号路や稲荷山ルートでもいいが、慣れてないんだったら一号路が懸命だ。
「……なんか、違和感覚えます……」
「何にですか?」
「なんか、敬語で話してるのです……」
敬語は確かに外したことないし、当然だろう。
「外しますか?敬語」
「……はい……」
俺は茜先輩の手を握った。
「ふきゃ!?」
「楽しんでね、茜」
茜は顔を紅くして言った。俺は茜の手を握ったまま、高尾山の一号路に向かった。
「ケーブルカー乗るか?」
「ううん……」
敬語を外して慣れないだろ。急に外したって慣れないんだよ。
茜は顔をブンブン横に振って言った。
「フルで登りたいから最初から歩く!」
「よし。じゃあ行こうか」
俺は茜から手を離して一号路を登り始める。
「蒼……くん……?」
ああ、俺が勝手に「茜」って呼んだだけで、茜自身はなんて呼んだらいいかわからないのか。
「なんだ?」
それでいいと言うように、俺は返事した。
「結構キツいね」
「最初は一気に登るからな。ケーブルカーの終点まで来れば楽さ」
俺は茜の後ろを歩きながら言った。後ろにいた方が何かあったとき助けられるから。
「ここ急……」
「押そうか」
俺は茜のことをそっと押した。茜は身が軽くなったように歩き出した。
「わぁっ!軽い!」
「よかった。こまめに休憩しような」
「うん」
茜は俺の手伝いもあって、金比羅台まで来ることができた。
「景色きれぇ~」
「登ってきて良かっただろ。ここから高尾山駅に行って、山頂行くからな」
俺と茜は金比羅台で少し休憩した。
「蒼くん、新宿見えるよ!」
「そうだな。池袋だって見えるぞ」
そんなことをしていると、時間は結構過ぎていた。俺と茜は高尾山駅に向けて歩き出した。
高尾山駅の近くにある高台で、俺と茜はいちごミルクのアイスクリームを買った。2人で一つ食べることにして、スプーンも2つ付けてもらった。「彼女さんですか?」と聞かれたが、俺は「親友です」と答えた。しかし、茜は不満気だったため、「これからデートです」と言い直した。すると、茜はニコニコして笑った。
「茜、なんで彼女なんて」
「いいのっ、そういう雰囲気出しておきたいじゃん」
そんなもんか。
俺は椅子に座ってアイスクリームを舐めた。両方向から舐め合っていて、途中でくっつきそうになることも度々あった。
「あとは茜が食べていいぞ」
「え?もう少し食べよ?」
「……しょうがないな……」
俺は茜と一緒にアイスクリームを舐めた。
「ほら、終わりだ」
「むーっ……はむっ」
茜はアイスクリームの頂点を咥えた。
「食い終わったらまた歩くぞ~」
「はーいっ。むぐ……はむっ♪」
なんか、瑞浪といい勝負しすぎてる。二股になっちゃうじゃないか。
「行こっ、蒼くん」
「あ、あぁ……」
俺は山頂に向けて歩き出した。