私は影山くんと話したくて、毎日影山くんと同じ電車に乗った。未だに話せてないけど、いつか話したい。
学校にいると、私は2階の廊下から1階の渡り廊下を見ていた。体育館に通じる渡り廊下で、そこに影山くんが1人だけで通っていった。私がじっと見ていると、体育館から倉山くんが出てきた。影山くんは持っていた何かを投げ渡し、体育館に入った。私はそれが気になって体育館に向かった。
体育館では影山くんに見つからないようにこっそり隅にいた。
「勇気、今日何する」
今日は休日で、体育館の自由活動があった。自由に使っていい日が週に1度だけある。
「バク転するか」
「ホント好きだよな、バク転」
あれ、影山くんって科学科じゃないの?バク転なんてできるのかな。私はジーッと見ていた。
「せーのっ」
倉山くんと影山くんはバク転を始めた。少し長い影山くんの髪が揺れる。バク転ができるなんて、かっこいい。私はそう思った。
3回くらいしたあと、影山くんと倉山くんは戻ってきた。私はそこから離れ、高いところの通路に隠れた。
「そういえば、蒼ってさ、春風のこと気になってないのかよ」
え、私のこと!?だって、少し前に好きじゃないって言ってたじゃん!
「話したことないから何とも言えない。ただ、本人には言えないけど──」
私はそこまで聞いて逃げ出した。もう聞けない!ドキドキしすぎてもう無理!
私は影山くんと同じ電車に今日も乗った。登校は一緒じゃないけど、下校は同じ電車。もうそろそろ話さないと。
「影山くん」
私は勇気を振り絞って言った。影山くんはこっちを見る。
「連絡先…交換しない?」
「いいよ。LINEでいいかな」
「あ、うん」
意外とあっさり交換できた。すぐ立川に着いちゃった気がして、私は家に帰った。影山くんは私とは逆方向の中央線なんだ。
私が家に着くと、すぐにベットに飛び込んだ。スマホを開き、LINEを開く。影山くんと交換したの、夢じゃないんだ。私は枕にぎゅっとした。
「影山くんと交換しちゃったーっ!大好きな人と交換できたっ!」
私は落ち着いてメッセージを送る。もう告白しちゃおうかな。あ、けど、直接しちゃうとドキドキする…遠回しに言おっと。
〈影山くんの好きな色って何?〉
〈紺〉
すぐに返ってきた。私と同じだ。
〈一緒!気が合うね〉
〈そうだな〉
〈私、大好き〉
これで通じるかな。鈍感じゃなきゃ通じるよね。
〈俺も〉
あ、「俺も」って、両思いだったの!?
〈紺色大好き〉
え、紺色のこと?なんだ、私のことじゃないんだ。
【影山蒼視点】
春風から連絡が来た。
〈影山くんの好きな色って何?〉
どうでもいいけど、気になってるし返信しよう。
〈紺〉
冷たかったかな。たった一文字って。
〈私も!気が合うね〉
〈そうだな〉
〈私、大好き〉
これ、俺のことだろ。体育館に隠れてたの知ってるし。けど、知られない方がいいだろ。
〈俺も〉
〈紺色大好き〉
なんか会話が成り立ってない気がする。気のせいかな。
〈…そうだよね〉
俺はスマホを閉じた。明日は休みだし、ゆっくり寝ようかな。6日間よく頑張ったよ、俺の体。
翌日は日曜日。誰にも誘われることなく自由に過ごそう。と思ったが、俺は昨日閉じたスマホを開く。LINEの画面のまま閉じたから昨日の状態だった。更新され、メッセージが数件あった。
〈影山くん〉20:10
〈おーい〉20:13
〈聞いてるー?〉20:13
〈明日のこと話したいんだけどー〉20:14
〈もう話しちゃうよ?〉20:14
〈明日、10:30くらいに拝島駅で待ってて〉20:15
〈絶対だよ!〉20:16
〈無視ぃ?〉20:17
〈待ってるから、返事ちょうだいよ?〉20:18
次のメッセージは約1時間半後だった。
〈返事は?〉21:50
〈もう、明日待ってるよ?〉21:51
〈じゃあ待っててね!〉21:52
これでメッセージは終わっていた。来てたのに気付かなかったが、拝島駅だよな。10:30かぁ。今は…
「やっべ!10:00じゃねぇか!」
俺は急いで支度をして家を飛び出た。集合まであと30分。間に合うのかよ。俺が片倉駅に着いたのは10:10。4分前に出ていった各駅停車八王子行に乗れば拝島には10:30着だったのに、次は10:17発各駅停車八王子行。拝島には30分遅れた11:00。八高線は本数少ないから、30分後になってしまう。俺はひとまず春風に連絡した。
〈悪い、30分遅れる。なにか奢るから許してくれ〉
俺はとにかく急ぎたいがために10:17発に乗っていった。
八王子には10:20。俺は八高線ホームまで歩いた。次の電車は10:48。やってしまった。俺はそう思った。
そして、LINEが来た。
〈今日って何日?〉
〈3月20日?〉
〈ありがとう〉
俺たちの卒業式は3月24日。あと4日しかないんだ。
拝島には11:00。すぐに駅前に向かった。そこには、春風が立っていた。
「ごめん、春風」
「いいよ、大丈夫」
春風は1人で歩いていった。俺、嫌われたかな。
「春風──」
「なに、影山くん」
「なんか俺嫌われたかな」
「どうして?だい…」
なんか言いかけた気がしたけど、気のせいかな?
「言いたいことがあって、月曜日、屋上に呼ぶから」
屋上に?というか実際に会わないとダメだったのか?そういって春風は立ち去ってしまった。
卒業まであと4日