影山蒼
大島茜
以上2名
俺たちは途中から4号路に入った。吊り橋があり、そこまで下がっていた。
「蒼く~ん、まってぇ~」
「茜?速いか?」
「下りだから膝が……」
そういうことか。というか、下山するとき大丈夫か?
「俺の背中のっていいから。吊り橋の前で下ろすからな」
「ありがと~」
茜は俺の背中に乗った。茜は俺の首に捕まる。
「……茜は、なんか嫌な思い出とかない?」
「嫌な思い出?」
茜は無さそうに言った。嫌なことなんて、一瞬で忘れるか。
「あぁ、ごめん……ないよな、茜になんて──」
「あるよ?」
茜はその事を話し始める。
「すっごいいじめがあって、私の中学校とかすごい荒れてたの。運動部の子達が文化部の子達を弱者扱いしたりとか、放送で呼び出して屋上で突き落とされそうになったり」
「結構あったな。けど、俺は思いすぎだったのかもな」
茜はその過去を話し始める。
「私は、一応屋上の呼び出しは断って、部活は運動部に入ったの。でもね、ここであることが起こったの」
「立場の逆転、か」
「分かってるんだ。そう。立場の逆転が始まって、運動部に入部した子達に、文化部の人たちが、避けてるんだろ、とか、弱者扱いされたくないからだろ、とか言ってたの」
俺のところだと、それで軽い戦争みたいなのが起こった。
「私は女子バスケット部だったんだけど、コンピューター部から標的にされて、私たち1年生を思いっきり叩いたりしてたの。それで、20人いた部員はいつの間にか6人まで減っちゃったの。1年生が2人、2年生が3人、3年生が1人でね」
「辞めたってことだよな」
茜はうなずいた。
「そういうこと。そのあとは、私に標的が向いて、傷つけられることはたくさんあった。水をプログラムで落とされたり」
ひどい奴らがいるもんだな。けど、俺は違う。
「もう、そんなことにはなりたくないな」
「あぁ……」
俺が、いじめていた側になっていたなんて、言えない。
「蒼くん、いじめてる側じゃない?」
「っ!」
「分かるよ。そんな分かるはずないもん。蒼くん、降ろして」
茜は先に走っていく。俺から離れたかったんだろう。しかし、俺は追いかける。最悪な人間がやることは百も承知だ。
「茜」
「なに」
「俺は誰」
俺は「殺人鬼」や「罪人」「悪人」とでも言ってほしかった。
「殺し屋」
「……そうだ。ありがとう」
俺は下山し始める。駆け降りた。誰も追い付けないほどに。駆け降りた。
気付くと、俺は高尾駅まで走っていた。もうどこにいるのか分かっていなかった。
「……帰ろう」
俺は家に帰った。
家に帰ると、母さんが言った。それは、今の俺を1番傷つける言葉だった。
「おかえり、蒼。早く帰ってきたわね。さすが、
うるさい。喋るな。口を塞げ。消えろ。
俺は心のなかでそう思った。しかし、これら全て、俺が言ったことだ。
「ありがとう……」
俺が言った言葉にイラついて、なんで自分で自分の首を絞めてるんだ。
「今日、夕飯いらね」
「あらそう?どこかで食べてくるの?」
「あぁ」
俺は嘘をついた。息を吐くように。
部屋に入ると、写真が大量にあった。そのほとんどに人が写っている。俺は、人が写っているもの全てをクローゼットの中に入れた。
「もう、俺は変わってしまったんだ」
いじめていた側なんて、非常識で、ヤンキーっぽくて、ガキなんてことは、よく言われる。しかし、嘘じゃない。事実なんだ。
「事実に怒っても仕方ないよな」
俺は家から出る。夕飯を食いに行くと思っているんだろう。止めもしなかった。
「今度の電車は……というか、行くところすら決めてないな……」
「あ……」
後ろにいたのは茜だった。そうか、北野まで行くから京王片倉に来るんだ。
「なんで降りた」
「ごめん」
俺は次の質問に移る。
「なんで来た」
「ごめん」
「答えられないか」
「ごめん」
れは何故かイラつかなかった。普通だったらイラつくに決まってる。なのに、なぜだろう。
「なんで答えられない」
「ごめん」
「……なんで謝ってる」
「ごめん……」
茜は謝るうちに泣き出す。俺の方が身長が高く、上から威圧をかけているみたいだ。周りからも、恐喝じゃないかと言われている。
「……来いよ」
「ごめん……」
茜は俺について来た。