影山蒼
大島茜
市野穂花
影山蒼
影山柚葉
以上5名
……ごめんだけじゃ分からない。普通は怒るはずだ。しかし、俺は無言だった。何も言わなかった。
「あ……蒼くん……」
「……うっせ……」
俺が連れてきた場所はホームの死角になる場所。誰にも見えないところだ。
「え……」
「……バカだな、俺」
茜は「だったら」と言い欠けたが、俺は茜が話す前に言った。
「結局、追っかけてくるんだろ、茜が」
「……ごめん……」
茜は謝った。
「もういい──」
俺がそう言うと、俺の手首がどんどん切れてきた。
「蒼くん……!」
「痛っ……」
茜は俺から出る血を止める。しかし、それでも血が止まることなく、ただ、切れるのが止まっただけだった。
「茜……もう、このお願いを聞いたら、近づかなくても、いいから……俺を、助けて……」
茜は泣き出しそうな声で言った。
「いいよ……助けるから……ずっと、となりにいさせて……」
茜は俺の血をタオルを使って止める。
「……茜」
「なに」
「俺を助けていいのか」
「……今はしないんだし、いい」
茜はタオルを俺の手首に巻く。なんで切れたんだ……
「蒼くん、キツくない?」
「あぁ、大丈夫……」
しかし、何となく嫌な予感はしていた。こんなことが起きて、ただじゃ済まないことを。
何があったか。それは、バイト先が潰れた。というか、マスターが亡くなってしまった。死因は、心不全による急死だったらしい。関係者のみで式は執り行い、俺もその内の1人として行っていた。
「あ、影山先輩……」
「穂花……」
バイトで働いていた人たちは全員来ていた。さらに、その大半はバイトを失い、無職になっていた。
「マスター、突然すぎましたよね」
「あぁ……マスター、もう少しでも居てくれて良かったじゃないですか」
俺は遺影があるところに向けて言った。
終わったのは14:20。場所が目黒だったこともあり、鉄道に詳しい方である、俺に帰り方を大勢が聞いてきた。
「家十条なんですけど、どうすればいいですか」
「だったら、新宿まで山手線で出て、そこから埼京線で帰れます」
「俺中野坂上なんですけど、どう帰れば……」
「そこの女性の方と、一緒に代々木まで出て、大江戸線ですね」
「ありがとうございます!」
みんな聞いてくる。俺は片倉だから比較的簡単だ。家からは、JR片倉駅まで徒歩10分、京王片倉駅まで徒歩5分だ。
「穂花は家どこだっけ」
「東小金井です」
東小金井かぁ。だったら新宿でお別れだな。今日行く予定だった瑞浪との高尾山も、俺の事情でなくなった。まぁ、そのせいで早く帰らないとなんだけど。
「そうか……新宿でお別れだな」
「そうなんですか」
残念そうに言った。けど、しょうがない。
14:17発で新宿に移動した。新宿から京王片倉まで準特急に乗る。だからお別れだ。
「穂花……またいつか」
「はい…また……」
俺は京王線の入り口に向かった。
家に着いた俺はもうすぐ来る予定の俺の従妹を待った。俺と同い年で、双子の女子だ。
「母さん、どうしてこういう日に限って家空けるんだよ」
「いいでしょう?あの2人だって料理は上手よ」
そう、母さんと父さんは今日から1週間家を空けるのだ。だから従妹が来たと言ってもいいんだが。
「言ってくるわね」
「はいよ」
母さんと父さんは出ていってしまった。
すぐに従妹が来てくれて、俺は2人の頭を撫で回した。
「よしよし、よく来たな、
「えへへー、ありがと~蒼くん」
「くすぐったい……」
楓は遠慮気味に言う。そんなに好きじゃなかったか。
「俺と部屋を共用するからな」
「うん。私、隣がいい」
「あれ?楓が隣なの?」
「いいでしょ」
俺はいいから、もう自由でいいんだけど。
柚葉は走ってくると言って、外に出ていった。俺と楓だけの2人きりになる。
「蒼くん、写真撮って」
「いつものだな。いいぜ」
俺は楓と肩を組んで自撮りした。すると、写真ファイルが見えた。
「あれ、残してあるんだな」
「……うん」
楓が残してくれてると嬉しいな。
「楓、俺、トイレ行ってくるから待ってて」
「うん」
俺は部屋から出た。
楓って、すごいクールで、落ち着いてるから好きだな。早く戻るか。
俺が戻ると、楓は何か独り言を言っていた。俺はドア越しに耳を済ませた。
「しゅきぃ、しゅきぃ、蒼くぅん……はぁ……」
俺は少しだけドアを開けてみる。楓の声はまだ聞こえる。隅っこでやっているんだろう。俺は静かに入った。
「好き……蒼くん……」
「俺のどこが好きなんだ」
俺は楓の横に行った。楓は普通に答えた。
「優しくてぇ、気が合うとこぉ…………ふにゃっ!?」
楓は焦って変な声が出る。
「何言ってるんだい、楓」
「はうぅ……」
楓は壁に向かって暗い声で言った。頭を壁にぶつけている。
「死にたい……」
「あのなぁ……そんな隠さなくてもいいだろ」
「本人の前では言いたくなかった……」
なんか、俺が悪いことしたみたいになってる……
「あぁ……悪かった……」
「……好きでいたい……」
「従妹としてな。いいよ」
俺は楓の頭を撫でた。