俺は扉が開いて、中に入っていく。左右には椅子に座った父さんや母さん、楓、柚葉、瑞浪の方のご両親が座っていた。もちろん瑞浪もいる。
俺は壇上にあがる。瑞浪が後から来るが、白いカーテンのようなもので顔が隠されている。
「瑞浪」
俺はそのカーテンのようなものを上げる。
瑞浪は笑って、俺に言った。
「蒼くん」
瑞浪は俺の手を握った。
「大切にすることを誓いますか」
誓う以外の選択肢なんて、あるはずがない。
「誓います」
同じことを瑞浪にも言う。瑞浪は「はい」と言って、俺に笑う。
「ウエディングケーキの入刀です」
俺はナイフを持つ。瑞浪が俺の手を握る。そして、ゆっくり、入刀する。
結婚式が終わると、俺たちは急いで走って行った。行く場所は分かっている。きっと瑞浪だって分かっているはずだ。あの時、瑞浪が告白したあの場所だ。俺はそこ場所に辿り着くと、瑞浪に言った。
「覚えてるか、瑞浪がここで告白したの」
「覚えてるよ。蒼くんと両思いだったのも」
あれは、俺の人生で1番印象に残っていることだった。瑞浪が俺に告白をして、今こういう関係になっている。瑞浪にとっても、俺にとっても、嬉しい。
「あの時は桜が舞ってたんだけどな」
「いいじゃん、もう一回、来年、ここに来よう?」
瑞浪は俺の左腕を抱いて言った。
「いっそ、告白記念日に毎年来ちゃうか」
「何その告白記念日って」
瑞浪が笑って言う。しかし、すぐに笑顔で言った。
「でも、いい考えだね、蒼くん」
俺はその流れで言った。
「婚姻届出すとき、珍しいけど、瑞浪の苗字で出そうと思うんだ」
「え、どうして?」
「ほら、告白したとき、桜が風に乗って来てただろ?あれ、春の風みたいだったから。忘れないって思いを込めて」
たまたまだったんだろうけど、そうだとしても奇跡だと思う。あんなこと、もう一生ないと思うから。
「そっか。そうだね。そうしよ」
「あぁ」
俺はベンチに座った。
いまは緑の葉が生い茂っているだけで、あの時とは全く違う光景になっている。それと同じように、瑞浪に対する気持ちは、あの時と全く違う。あの時はただ「好き」という気持ちだったが、今は「大好き」という気持ちになっている。
「瑞浪、大好きだ」
「蒼くん……」
「瑞浪……」
俺は瑞浪とキスを交わした。ある意味ファーストキスだ。
「蒼くん、私も大好きだよ」
「よかった」
俺は瑞浪をハグする。あの時とは全く違うと思っていた。だけど、同じものはあったらしい。それは、
俺たちの身体だった。
Fin.