今回の登場人物
影山蒼
春風瑞浪
以上2名
付き合い始めた俺と春風は、前に交換していたLINEで結構話すようになった。前までは1週間に1回話せれば多い方だったんだが、今は毎日欠かさず連絡を取りあっている。
〈影山くん、今度デートしない?〉
〈いいよ。いつがいい〉
〈明日とか?〉
〈オッケー〉
俺はすぐに返信した。明日でもどうせ暇だし。俺は春風に場所について聞こうとしたが、「内緒」と言われて聞けなかった。どんなデートだろう。集合場所は両方の中間地点の立川駅になり、時間は7:00となった。
明日、どんな服装がいいかなど、俺は考えていたが、結局いつも出掛けるときに来ている普段着にした。今年は寒波が居座り、まだ寒いから黒に灰色のラインが入ったジャージを上に着て、あとは黒で統一させた。ここまで黒の人もそう多くはいないだろう。
そして朝になり、片倉6:09発各駅停車八王子行きに乗って八王子へ。デートだったら早く行った方がいいし、通勤ラッシュの混雑を避けるとこの時間になる。
八王子には6:12。ここから中央線だが、中央線はもう通勤ラッシュが始まっているため座れない。結構すいてる方だけど。6:21発の中央特快東京行き。立川までは各駅に停車するため混んでいない。
立川には6:32。改札の外に出ても、春風はいない。まだ30分くらい前だしそりゃそうか。
6:40過ぎ、改札口から人が大量に出てきた。電車が着いたんだろう。そこに、春風が俺を見つけて寄ってきた。そして、俺に抱きつく。顔は真っ赤。
「なんか本読んできただろ」
「…うん…だって、デートだから楽しませないとって思って!」
春風は焦っている。俺は春風を落ち着かせたあと、手をつないで周辺を歩いていた。
「ねぇ、影山くん」
「なんだ?」
「呼び方変えない?いつまでもこのままじゃ親近感わかないじゃん」
「わかった。なんて呼んでほしい」
なんて呼んだらいいかこっちも分からない。春風は答えた。
「名前?」
「分かった。瑞浪」
春風はピクッと動いたあと、顔を赤くした。かわいい。
「か、影山くんは?」
「同じく名前で」
「うん…蒼くん」
俺も緊張しているのか、返事が出なかった。俺は駅周辺を歩いてるだけだった。
「蒼くん、行きたいとこある?」
早速さっき決めた呼び方だった。
「そうだな、御苑とか行くか?」
「新宿の?でも電車混んでない?」
「じゃあ車出すよ」
18歳になった途端にくるまの免許を取ったからもう結構運転している。
「じゃあ一回帰る?」
「そうなるね。ごめん、戻る方向なんだけど」
「大丈夫だよ。行こう」
俺は来た方向とは真逆の電車に乗って帰宅した。
家で車に瑞浪を乗せ、俺はカーナビに新宿御苑までの道のりを調べさせた。
「京王片倉の方向まで行ってずっと首都高だな」
「蒼くん、運転できたんだね」
「まぁな。今逮捕されるのは怖いから法定速度もバッチリだ」
40km/h制限のところを60km/hでいく人はよくいるけど、逮捕されたくないからちゃんと40km/hで走ってる。急いでても40km/hを1、2km/hオーバーするくらい。
家を出て京王片倉駅の方向に向かって走る。瑞浪は発車前は話してきたが、発車後は話しかけてこない。さらには揺れに合わせて揺れるだけ。
「どうした、瑞浪」
「……運転の邪魔かなって…」
「話していいよ。ガンガン話してくれ」
瑞浪は遠慮がちな表情から笑顔に変わった。
「蒼くんは新宿御苑行ったことあるの?」
「数回だけ。けど、滞在時間はどれも2時間も居なかったな」
ただ気分転換に行っただけだったし。今回瑞浪と行くことは楽しみだった。
「瑞浪は行ったことあるのか?」
「ない。蒼くんに任せるよ」
俺も知ってることは少ないけど、なるべく案内できるようにしよう。
「そうか?案内できるか分かんないぞ」
「いいよ。だって行ったことないんだもん」
瑞浪は笑って言った。瑞浪がなんかかわいくて、俺は抱きたかった。しかし運転中で抱けない。
「蒼くん、あの、自分を責めるようで申し訳ないんだけど、どうして私なんかと付き合ってくれたの?」
「明るい人が、俺、好きになれないんだ」
「どうして?」
俺は昔の話しがてら理由を話した。
「俺が中学生のとき、転校生が来たんだけど、俺のとなりの人が明るい人だったんだ。その時は明るい人も気にしてなかったんだけど、転校生が来たら仲良くしたいだろ?」
「うん。私も仲良くしたい」
俺は話を続けた。
「俺も仲良くしたくて、転校生が来たら話そうと思ったんだけど、隣の明るい人がズカズカいって仲良くしちゃってさ、転校生は俺に見る気もなくなったんだ」
「それから好きじゃなくなったの?」
「そう。瑞浪がよかった」
瑞浪よりいい人はいない。というか、探したくない。もう1番だと思っていたいから。
新宿御苑の駐車場に10:20に到着。車を止めて中に入る。中で俺と瑞浪は手を繋いだ。周りは平日だからか人はいない。
「貸し切りみたい…」
「2人で満喫しよう」
俺と瑞浪は手を繋いで端まで歩き始めた。