影山蒼
春風瑞浪
春風瑞希
以上3名
俺は新宿御苑の1番端まで歩いてきた。3月の後半だからか桜が待っていたりして、春の装いを感じた。瑞浪も桜に見とれていて、俺の事など見る気もしなかった。桜がきっと好きなんだろう。
「瑞浪」
「うん」
瑞浪はこっちを向いた。俺は瑞浪と手を繋ぎ、庭園の方に歩いた。バラがあったはずだ。
「蒼くん?」
「なに、瑞浪」
「誰もいないから…しよ?」
瑞浪はハグを要求した。俺はしたいという欲望を抑えて言った。
「今は、ダメだ。家でしよう」
「…だったら、蒼くん今日私の家来て?」
「え?」
予想外だった。今日家に来てと言われるとは思っていなかった。
「分かったよ、じゃあもうそろそろゆっくり戻ろうか」
「うん。あれ、蒼くん、バイトとかやってないの?」
「してるよ。千駄ヶ谷で喫茶店を」
毎週火曜と木曜、土曜の3日間。この近くだからすぐ行ける。まぁ水曜日なんかに行く気にはなれないけど。
「瑞浪はやってないのか」
「してるよ?でも近くのコンビニだから」
コンビニ店員か。電卓とか打つの速そうだよな。
「ほら、帰るぞ。どこだっけ」
「えっとね…」
瑞浪はカーナビを操作して自分の家を示す。俺はそこを目的地にして車を運転した。
「結構近かったな」
「蒼くんの家よりかだったら近いのかな」
片倉と小宮だったらそんなに距離は変わらないけど、近い感じがする。
「少しはな」
俺は来るときとほとんど同じ道を通ったあと、首都高を抜けて一般道に入っていった。
瑞浪の家は思ったより広く、瑞浪の部屋は2階にあった。この時間は誰もいないらしく、直接誰にも会わずに瑞浪の部屋に入った。
「……」
「お茶持ってくるね」
俺はそう言われても黙っていた。え、もしかして俺、女子の家初訪問?たしかに入ったことないし…
「マジかよ…」
「お姉ちゃん、もう部活終わったよ──」
声は瑞浪より少し高く、入ってきた影は瑞浪に似ていた。しかし、見てみると髪型や顔が少し違う。身長も少し低いか。
『誰…』
俺と謎の女の子は同時に言った。聞きたいのは俺なんだけど。
「お姉ちゃんは…まさか、殺し屋…」
「違うから。物騒な呼び方は止してくれ」
謎の女の子は「じゃあなに」と言わんばかりの目をする。きつく鋭い。明らかに怪しまれている。
「蒼くん、お茶持ってきたよ。って、瑞希?」
「お姉ちゃん!怪我ない?切りつけられてない?」
「おいおい…だからそんな奴じゃないって…」
瑞浪は笑って答えた。
「ふふ、そんな人じゃないよ。蒼くんは私の彼氏」
「…え、彼氏?男なんて興味ないって言ってたお姉ちゃんに?」
瑞浪ってそういう感じだったんだ。まぁけど、確かに男と話しているところなんて見たことないからな。
「影山蒼。瑞浪とは同い年」
「…春風瑞希…中学3年で、4月から高校1年…」
瑞希は未だに警戒している。怪しい人じゃないんだけど…
「瑞希、お客さんにそんな目しちゃダメでしょ?」
「……怪しくない…?」
「蒼くんが普段してる事とかないの?」
それで平和なことだと喫茶店のバイトくらいか。あとは休日にサバイバルゲーム、平日は瑞浪と会ってる。休日のは怪しまれるだろう。
「喫茶店のバイト」
「でしょ?平和じゃん」
「……」
瑞希は俺に頭を下げた。
「ごめんなさい」
瑞希は今度は泣き出しそうになった。俺は瑞希の頭を撫でて言った。
「大丈夫。人には勘違いもあるからさ」
「…ごめんね、私も責めるような事言っちゃって」
瑞希の長い髪がうつむいてることによって顔を隠す。床に液体がポタポタと落ちていることから泣いてるんだろう。瑞希は長い髪を揺らした。涙が左右に飛ぶ。
「瑞希、大丈夫?血昇っちゃうよ」
「そうだ、大丈夫だから、起き上がって」
俺は優しく声をかけた。瑞希はゆっくり顔を上げた。顔が赤くなっていて、目は潤んでいる。
「私、人を疑う悪い癖があって…先生にもダメって言われてたんだけど、どうしても…」
そうか。確かに疑うこともいらないって訳じゃないけど、必要以上にいるって訳でもない。
「確かに疑うのは悪くはない。ただ、まずは身近な人と関係がある人は疑わずにいよう」
「けど、それで悪かったら…」
「まずは甘えちゃうんだよ。そのあと見抜くんだ」
「…がんばる…」
俺は瑞希に言うと、瑞希は涙を拭き取って、「がんばる!」と自信付いて言った。