鈍感な彼氏と直接言えない彼女の物語 完結   作:月島柊

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今回の登場人物
影山蒼
春風瑞浪
春風瑞希
以上3名


第5話 デート

 俺は新宿御苑の1番端まで歩いてきた。3月の後半だからか桜が待っていたりして、春の装いを感じた。瑞浪も桜に見とれていて、俺の事など見る気もしなかった。桜がきっと好きなんだろう。

 

「瑞浪」

「うん」

 

瑞浪はこっちを向いた。俺は瑞浪と手を繋ぎ、庭園の方に歩いた。バラがあったはずだ。

 

「蒼くん?」

「なに、瑞浪」

「誰もいないから…しよ?」

 

瑞浪はハグを要求した。俺はしたいという欲望を抑えて言った。

 

「今は、ダメだ。家でしよう」

「…だったら、蒼くん今日私の家来て?」

「え?」

 

予想外だった。今日家に来てと言われるとは思っていなかった。

 

「分かったよ、じゃあもうそろそろゆっくり戻ろうか」

「うん。あれ、蒼くん、バイトとかやってないの?」

「してるよ。千駄ヶ谷で喫茶店を」

 

毎週火曜と木曜、土曜の3日間。この近くだからすぐ行ける。まぁ水曜日なんかに行く気にはなれないけど。

 

「瑞浪はやってないのか」

「してるよ?でも近くのコンビニだから」

 

コンビニ店員か。電卓とか打つの速そうだよな。

 

「ほら、帰るぞ。どこだっけ」

「えっとね…」

 

瑞浪はカーナビを操作して自分の家を示す。俺はそこを目的地にして車を運転した。

 

「結構近かったな」

「蒼くんの家よりかだったら近いのかな」

 

片倉と小宮だったらそんなに距離は変わらないけど、近い感じがする。

 

「少しはな」

 

俺は来るときとほとんど同じ道を通ったあと、首都高を抜けて一般道に入っていった。

 

 瑞浪の家は思ったより広く、瑞浪の部屋は2階にあった。この時間は誰もいないらしく、直接誰にも会わずに瑞浪の部屋に入った。

 

「……」

「お茶持ってくるね」

 

俺はそう言われても黙っていた。え、もしかして俺、女子の家初訪問?たしかに入ったことないし…

 

「マジかよ…」

「お姉ちゃん、もう部活終わったよ──」

 

声は瑞浪より少し高く、入ってきた影は瑞浪に似ていた。しかし、見てみると髪型や顔が少し違う。身長も少し低いか。

 

『誰…』

 

俺と謎の女の子は同時に言った。聞きたいのは俺なんだけど。

 

「お姉ちゃんは…まさか、殺し屋…」

「違うから。物騒な呼び方は止してくれ」

 

謎の女の子は「じゃあなに」と言わんばかりの目をする。きつく鋭い。明らかに怪しまれている。

 

「蒼くん、お茶持ってきたよ。って、瑞希?」

「お姉ちゃん!怪我ない?切りつけられてない?」

「おいおい…だからそんな奴じゃないって…」

 

瑞浪は笑って答えた。

 

「ふふ、そんな人じゃないよ。蒼くんは私の彼氏」

「…え、彼氏?男なんて興味ないって言ってたお姉ちゃんに?」

 

瑞浪ってそういう感じだったんだ。まぁけど、確かに男と話しているところなんて見たことないからな。

 

「影山蒼。瑞浪とは同い年」

「…春風瑞希…中学3年で、4月から高校1年…」

 

瑞希は未だに警戒している。怪しい人じゃないんだけど…

 

「瑞希、お客さんにそんな目しちゃダメでしょ?」

「……怪しくない…?」

「蒼くんが普段してる事とかないの?」

 

それで平和なことだと喫茶店のバイトくらいか。あとは休日にサバイバルゲーム、平日は瑞浪と会ってる。休日のは怪しまれるだろう。

 

「喫茶店のバイト」

「でしょ?平和じゃん」

「……」

 

瑞希は俺に頭を下げた。

 

「ごめんなさい」

 

瑞希は今度は泣き出しそうになった。俺は瑞希の頭を撫でて言った。

 

「大丈夫。人には勘違いもあるからさ」

「…ごめんね、私も責めるような事言っちゃって」

 

瑞希の長い髪がうつむいてることによって顔を隠す。床に液体がポタポタと落ちていることから泣いてるんだろう。瑞希は長い髪を揺らした。涙が左右に飛ぶ。

 

「瑞希、大丈夫?血昇っちゃうよ」

「そうだ、大丈夫だから、起き上がって」

 

俺は優しく声をかけた。瑞希はゆっくり顔を上げた。顔が赤くなっていて、目は潤んでいる。

 

「私、人を疑う悪い癖があって…先生にもダメって言われてたんだけど、どうしても…」

 

そうか。確かに疑うこともいらないって訳じゃないけど、必要以上にいるって訳でもない。

 

「確かに疑うのは悪くはない。ただ、まずは身近な人と関係がある人は疑わずにいよう」

「けど、それで悪かったら…」

「まずは甘えちゃうんだよ。そのあと見抜くんだ」

「…がんばる…」

 

俺は瑞希に言うと、瑞希は涙を拭き取って、「がんばる!」と自信付いて言った。

 

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