まずは犯行現場の調査だ。さっきは色々と慌ただしくて調べられなかった。
「村田、ちょいっと調べるぞ」
「わかりました。・・・あれ、他の人たちは?」
「あっちにいる。死体を見れない角度とはいえ、こちらからは見張れるんだ」
「色々と都合がいい角度だな!おい!」
まず、ローランは死体に苦痛の表情がないことに気がついた。
つまり、本人にも何が何だかわからないうちに死んだということだ。
そして、首と胴体の切断面はあまりにも綺麗だった。
まるで、刀ですぱっと切られたかのようだ。
「ふむふむ・・・なるほど」
(ローランさん、今回も変な推理で解決しそうだな・・・)
「よし、いったん証言取るか。村田、答えてくれ」
「・・・まあ、そりゃ俺も第一発見者か。
確か・・・あの、ももことかいう子に声をかけられたんだ。
なんか、怪しい男がいるって。その男っていうのはアンタのことだったけどな。
・・・待てよ、なんか向かってる途中でももこさんがいなくなってたような」
「いなくなった?」
「一瞬、気のせいだと思ってたけどな・・・。
でも、後から急に駆けつけてきたし・・・」
「そうか・・・ありがとう。謎は全て解けた」
(死体見たのと、俺から証言取っただけだよね!?)
そこに不死川刑事が走ってきた。
「ま、間に合った・・・!犯人分かったのか!?」
「ああ、わかったんだ。いや、わかってしまった。
死体にブルーシート掛けといてくれ。今から、ここに皆を呼ぶ」
「ああ、あそこの角にいるのか」
こうして、死体にブルーシートが掛けられ、関係者が集められた。
「・・・集まってくれたか。まず、今回の事件。犯人は二人いる」
「俺は犯人じゃない」
「いいや、義勇。お前が犯人の片割れだ」
レナは唖然とした。
「ちょ、ちょっと!ローラン!義勇さんは刑事よ!
それなのに、犯人だなんて、馬鹿な事言わないでよ!」
「レナ、残念だが、かりんをあんな感じに殺せるのは義勇しかいないんだ」
ローランは、義勇が探偵時代から持っている刀を指差した。
「死体を見てみたが、あんな切断面は刀でしか再現できない。
それに、停電している間の数秒間で殺せるのも義勇くらいだ。
同じ帯刀者とはいえ、村田にはそんな芸当はできないからな」
「さらっと俺のことディスりやがってる・・・」
「でも、ワイヤートリックとかいうやり方だってあるじゃない!」
「ナノ・マテリアルは研究機関以外は製造・所有は禁止されている。
たとえ、色付き探偵だろうが、刑事だろうが、ワイヤートリックは不可能だ。
そうなると、一流の刀の使い手だけが今回の事件を引き起こせる。
そうだろう、義勇?死体を見ようとしてないかったのも、動揺を隠すためだった」
「そ、そんなわけないじゃない!ねえ、義勇さん?」
「だから、お前が嫌いなんだ・・・ローラン」
「ねえ???もうちょっと抵抗してよ???
なんでそんなにあっさり認めちゃうのよ????」
だが、レナのツッコミは無視され、話は続いた。
「すまない、レナ・・・。だが、ローラン。
確かにかりんを殺したのは俺だ。だが、あくまで今回の事件は俺の単独だ」
「いいや、お前の単独犯だと色々と不十分だ。
そこで、もう一人、この事件を計画した犯人がいる。
それは・・・十咎ももこさん、あなただ」
「そ、そ、そんな証拠がどこにあるんだ!」
「待って、ももこ。冷や汗流さないで。焦ったような口調にならないで」
「まず、君はこっそりと義勇と連絡を取り、彼に君たち二人の後を尾行させた。
そして、レ何とかと一緒に歩いている途中で、適当な人間を見つけて、
その人間が怪しいと言って、警察を呼びに行く。
だが、君は警官を呼んだあと、はぐれたふりをして、かりんに密会した。
おそらく、手ごろな展示品があると言ったんだろう。
君はかりんに協力者のふりをしていたんだ。
そして、手はず通り、君は何らかの方法で館内を停電させ、
かりんはそれを合図に展示品を盗もうとする。
だが、それは罠だったんだ。そこには一流の刀の使い手がいたんだから。
まんまとかりんは首ちょんぱされてしまったというわけだ」
「ま、参った・・・九級とはいえ、さすがは探偵か・・・!」
「ねえ、待って??証拠は???
全部、コイツの妄想だったような気がするけど???
なんで、その妄想が当たるわけ??」
だが、またしてもレナのツッコミは届かなかった。
「さて、どうしてこんなことをしたのか聞かせてもらおうか」
「俺は嫌われていない」
「義勇、今はそんなことは聞いていないんだ。・・・ももこさん」
「・・・あの女は、私の友達の夢を奪ったんだ。
三か月前、友達の秋野かえでが義勇さんに弟子入りして、探偵になったんだ」
「えっ、そんな話聞いたことないんだけど???」
「そりゃ、レナには内緒にしていたからな。
かえではお前を驚かせたくて、一流の探偵を目指していたんだ。
それなのに・・・この女は、かえでの探偵バッジを盗んだんだ!」
ももこは目に涙を浮かべながら、ブルーシートを指差した。
「なあ、ローランさん。底辺とはいえ、同じ探偵なんだからわかるだろ?
探偵バッジの再発行の審査はあまりにも厳しすぎる。
たとえ、怪盗に盗まれたとしても、再発行される確率はあまりにも低い。
探偵バッジは、探偵の命だって、アンタにもわかるだろ!」
「・・・ああ、痛いほどな」
「それでかえでは自殺してしまったんだ・・・。
私たちの目の前で、崖から飛び降りたんだ」
「ねえ、家庭菜園の修行のために旅に出るっていってなかった?
あれって嘘だったの??聞いてないんだけど???」
「それはお前を傷つけたくなかったからなんだ、レナ。
・・・それで、義勇さんと一緒に、この女を殺すことにしたんだ」
「そんな・・・ももこ、嘘でしょ。嘘だと言ってよ」
「すまない、レナ。でも、もういいんだ。
不死川さん、私たちを逮捕してくれ」
「・・・わかった。十咎ももこ、冨岡義勇。
お前たちを殺人罪で逮捕する」
「俺は捕まりたくない」
義勇はそう言うと、短刀を取り出して、自らの腹に突き刺そうとした。
だが、短刀は彼の腹に刺さることはなかった。
ローランがとっさに手を刃先と義勇の身体の間に挟んだからだ。
もちろん、ローランの手は大惨事になっている。
「ローラン・・・!なぜ、邪魔をした・・・!」
「それはそれ、これはこれだ。生きて罪を償うんだ。
・・・どうして、青はこんなに縁起が悪いんだろうな?」
「冨岡・・・このクソ探偵の言う通り、生きて罪を償え」
「不死川・・・刑務所でも鮭大根は食べれるのか?」
「義勇さん???もう、どっからツッコめばいいの??」
こうして、二人は連行され、事件は解決した。
レナは色々と疲れた。
「ふう、タダ働き完了っと。・・・レナ、どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないわよ!レナの親友は自殺してたし、
もう一人の親友と恩人は逮捕されちゃったし・・・!
レナには、もう友達がいなくなっちゃったんだけど!?」
「だったら、俺が友人になってやろうか?」
「友達と恩人を豚箱にぶち込んだ要因が何言ってるの??」
「飯が美味いwww」
「「「黙れ、この野郎」」」
言峰はローランとレナと村田にリンチされた。
後日、秋野かえでの死体の捜索が行われた。
「えっと、その・・・なんというか・・・ごめんなさい」
「別に気にしなくていいわよ。確か、善逸くんだったかしら?」
「ええ、そうです」
(ずいぶんと若いわね・・・)
「・・・その、ローランさんのこと、悪く思わないでください」
「わかってるわよ・・・というより、レナがツッコミたいのは、この子なんだけど?
どうして人間なのに、警察犬みたいに匂いをかぐことができるの???」
「・・・炭治郎はもともと嗅覚が鋭くて、よく警察犬の代わりになってたけど、
上司の冨岡さんが捕まったショックで、本当に犬になってしまったんだ。
俺にも何を言っているのかわからないけどな???
どうしてショックで犬になるんだよ???」
「レナにそんなこと聞かないでよ???」
「「・・・」」
「LINE交換しよう」
「ええ、そうしましょう」
ようやくレナは村田以外にまともな人間を見つけることができた。
村田もまともだが、同年齢の方が嬉しいのだ。
「わんわん」
「おっ、炭治郎。見つけてくれたのか」
「本当に墓標あったわね。思った以上に、朽ちてないわね」
「・・・待ってくれ、何か匂いがおかしい」
「「喋れるなら最初からそうしろや」」
だが、炭治郎に二人のツッコミは届かなかった。
「これは・・・ヒトモドキマンドラゴラの匂いだ!」
ヒトモドキマンドラゴラ、それはこの世界において、マネキンの材料になる植物だ。
人の血を垂らすことにより、そのマンドラゴラは本人そっくりになるのだ。
うん、実に『ちみつなせってい』だ。
そのマンドラゴラの匂いがするということは、そこに埋まっているのは偽物だということだ。
本物の、秋野かえではどこに行ったのか?