初投稿というのもあり、文がふわふわするかもしれませんがご了承ください。
では!
おかあさん。
ーなぁに?
ぼくはこわいひとなの?
ー…怖い人?
みんながね、ぼくに言うんだ
ばけものって。言うんだ。
ー違うわ。あなたは化け物なんかじゃない。
ーだって。
ーあなたは優しいから。
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僕の記憶に残っている、母との最後の会話。
ある日僕は、スキマの妖怪と出会った。
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「…」
寒さで目が覚めた。
外からは太陽の光がのぞいている。どうやらもう朝らしい。
しっかりと掛けていたはずの布団がはだけている。
「さむっ…」
またかけなおして丸くなる。やはり冬は布団だなぁなんてことを思いながら、二度寝を試みる。
寒い日の朝にわざわざ早起きする必要もない。幸い、今日は用事などなかったはず…
「ーーあ」
布団をかけなおし横になると同時に、ある約束が脳裏をよぎった。
あった、忘れていた。今日は慧音に手伝いをして欲しいと頼まれていたっけ。
確か九時に行けばよかったはずだ。今の時間は七時四十分を過ぎようかというところ。人里から少し離れたこの家からでも十分間に合う時間だ。
「準備するかぁ。」
重たい体をどうにか起こして支度をする。間に合うと言ってものんびりするほどの時間はない。
とりあえず朝食を取ろう。白米と味噌汁でいいか、起きたばかりであまり腹も減っていない。
他に誰かいるならもっとしっかりしたものを作るが、自分一人ならいいだろう。
そそくさと準備を終わらせる。
「しっかし、寒いなぁ」
一枚上に何か羽織ろうか。いや、朝食ももうすぐ出来上がるし今はいいか。
それにしても寒い。冬というのはこんなにも寒かったか、体をくすぐる冷気はいつにも増して猛威を奮っているように思えた。そもそも例年ならもうそろそろ暖かくなっていいはずだが、まぁそんな年もあるか。今年は冬が長いのだろう。
「よし」
そんなことを考えているうちに朝食も完成。
…質素だ。だからなんだというわけではないけれど。
ないけれど、さっさと食べよう。虚しくなる。
ポツンと置かれた自らの手料理にそんな感想を添える。
そういえば今朝は何か夢を見ていた気がする。なんだったか。
忘れる程度の夢だ。どうでもいいか。
朝食を終えて今度は髪を直した。男性にしては長めの黒髪が、寝癖でところどころはねている。この髪と、そこそこ細身の体と、元々が女顔寄りなせいで時たまに女性と間違えられることもある。
鏡を見て、黒い髪に似つかわしくない白色が目に入った。生まれつき前髪の右側の一部が白く染まっている。昔は気にしていたが、今はそうでもない。
ある程度髪を整え、外出用の着物に着替える。青年の身体のサイズにピッタリあって動き易いということもあり、着物は結構気に入っているのだ。
「行くか」
着替えも終えて家を出る。
少し厚着をした。流石に着物だけでは寒すぎたので、上にもう一枚羽織ることにした。
もう少し暖かそうな着物を買うべきだろうか。どうせ人里に行くのだ、服屋でも見ていこう。
家を出る。
雪が降っていたのだろう、辺りは少し雪が積もっていた。木々に囲まれた家だが冬になると葉がなくなり見渡しが良くなる。普段は木々の隙間から覗いている日の光が、今は直接ここまで届いている。こういう景色も冬らしくて好きだ。
まだ足跡のついていない雪を歩き進んでゆく。人里まではそう遠くない。決して近くもないが、時間があれば散歩程度に行くことも少なくない。買い物なども人里で済ませるため、顔見知りがほとんどだ。今向かっている慧音のところに手伝いに行くのも一度や二度ではない。もともと外を歩くのが好きなタチなので理由もなく歩いていることも多いが。それに、森の中で生活をしていると自然と誰かとの会話も減ってしまう。それがなんとなく嫌だったのも、人里によく行く理由かもしれない。
なら人里に住めばいいと思うかもしれないが、それは違う。森の中には動物や魚や植物も多いため食費が浮くのだ。人里から山に行けばいいとも考えたが、毎日山まで向かうのは少し気が滅入ってしまう。
こんなことを考えていたら歩く足がどんどん遅くなっていることに気がついた。まずい、時間ギリギリになりそうだ。
余計なことを考えすぎて遅れたなんて馬鹿馬鹿しいにも程があるので、少し急ぐことにした。
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「遅いぞ、''三日月''」
「すみません…ゆっくり歩いてたせいで…」
「まぁ別にいい。手伝いを頼んでいるのは私なんだ。」
人里の唯一の寺子屋。今日呼ばれたのはここの手伝いのためだ。
そして彼女。第一声で「遅い」と指摘してきたのは上白沢慧音。寺子屋の先生をしている。
見た目的には少女だが、これでも立派に大人だ。身長に似合わない長い青みがかった銀髪が、彼女のどこか不思議な感じを表しているように思えた。
ちなみに、前に身長について触れて頭突きをくらったことがある。軽く飛んだ。意識的な意味で。
「今日は手伝いに来てくれてありがとう。助かるよ。」
慧音が優しい声で感謝を告げてきた。
中性的で威圧的な話し方だが、声音は意外と優しいのだ。
「いいえ、予定も特にありませんので」
三日月も少し緩ませる。
予定もないし、それどころか暇だったので今回の慧音の申し出は、三日月にとっても悪いものではなかった。寺子屋の子供たちとも仲良くやれているし、最近は顔を出せていなかったし。
「そうだとしてもだよ」
「っはは、そうですか。慧音さんらしいですね」
「こんなのは常識だよ」
そう言う慧音は、やっぱり慧音らしかった。
「ところで、今日はどうして呼ばれたんですか?」
「それが、今日は他の職員が休んでしまってね。人手不足なんだ。」
慧音さんは少し申し訳なさそうに理由を告げた。体調でも崩してしまったのだろう。最近は特に冷え込んでいる。冬の風邪は色々怖いものがあるし、重症になったら大変だ。無理に来て子供達にうつりでもしたら尚更。
「迷惑をかけて申し訳ない」
「こんなの迷惑でもなんでもないですよ。あいつらにもそろそろ会いたかったですし」
「そう言ってもらえると助かるよ」
あいつらとは、ここに通う子供達だ。幸いにも彼、彼女らにはそこそこ好かれている。最近はあまり寺子屋まで来ていなかったから、会うのは久しぶりだ。
…忘れられていないだろうか。
「みんな三日月に会いたがっているよ」
そんな三日月の不安を読むように慧音が言う。驚いてビクッと肩が少し震えた。
「そうですか」
図星を突かれたことが少し気恥ずかしくなって、安心したことを隠すためになるべくそっけなく返した。
そんな三日月の様子に、慧音は小さく、面白そうに微笑んでいた。
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「うぉぉ!にいちゃん!」 「え!ほんとに?」 「三日月だー!」
「ミカおにいちゃんだ!」
教室に入ると子供たちの元気な声が聞こえてきた。朝から本当に賑やかだなぁと感心してしまう。ここに来ると大体決まってこうなるのだ。最初の方は圧倒されたが、今ではもう慣れたものだった。
「久しぶり、みんな。元気だったか?」
「げんきー!」 「そこそこー!」 「なんとなくー!」
何人もが一斉にしゃべる。もちろん聞き取れないがなるべく努力。
というかなんとなくってなんだよ。
子供達が三日月に一斉に喋るのはいつものことだが、やはり勢いがすごい。なんというか、ものすごい威圧感を感じる。子供達の元気さが、このわちゃわちゃで伝わってくる。外はあんなにも寒かったのに、ここの熱気の凄さに思わず感服してしまうほどだ。
突然、ガラガラと音を立てて後ろのドアが開かれた。三日月が視線をやると、そこには慧音が立っていた。
「ほらほら、座りなさい。授業始めるよ」
「「はーい」」
慧音の一言で子供達が席に着く。おお、さすが慧音さん、鶴の一声だ。あんなにもぐちゃぐちゃだった三日月の周辺に空間が生まれ、ものの数秒で生徒たちが静かになった。
それを見た慧音がスタスタと三日月に寄ってきた。
「三日月は困ってる子を助けてあげて」
「あぁ、はい。了解です」
仕事が割り当てられた。
「なあにいちゃん」
「ん、なんだい」
「ここわかんない」
「ここは前の文をしっかり読んでごらん」
「あー!これか!ありがとうにいちゃん!」
「いえいえ」
つい笑みが溢れる。こういった人に教えることは柄ではないと思っているのだが、こうも真っ直ぐに感謝されてしまっては断るのも忍びなかった。こんなにも明るい笑顔を向けてくれる子供達に、嫌な思いはしてほしくない。
「けーね先生の授業は楽しいけどさ、難しいんだよ」
少年がこそこそと三日月に言う。三日月もあははと笑ってしまった。
ふと、背中がゾワっとした。何か殺意のようなものを感じて、咄嗟にその感覚がする方へ向き替える。
「聞こえてるぞ」
「ひッ」
少年が横で小さく声を上げる。
そこには冷たく燃える笑顔をした慧音が、三日月と少年を見つめていた。うわぁ、慧音さん地獄耳。今の聞こえるのか。
「全く、難しいことなんて何もないだろう」
慧音は「失礼な」と言った感じでいる。今度はどうやら拗ねているようだ。腕組みしながら眉を顰めている。
さすがの三日月もこれには苦笑いするしかない。
「にいちゃんの方がわかりや」
「なんて?」
「ひッ」
少年よ、今は何も言うな。
そんな一幕を、三日月は心から楽しく思うのだった。
導入となります。
いかがでしたかと言うほど量を書いていないので次回からをお楽しみに。
では!