年越しって色々大変ですねと一言だけ…
今回もよろしくお願いします。
では!
八雲紫。
数多の妖怪が住んでいるこの幻想郷で、ほんのわずか、それこそ数える程度にしかいない大妖怪の一人。そして、この幻想郷を創り上げた張本人。
遠目から見ても綺麗な金髪は、とてもこの世のものとは思えないような。
触ったら壊れてしまいそうな、さながらガラス細工のような印象を持たせる彼女は、
きっとこの世界において美しさで言えば右に出るものはいない。
だが、彼女の纏う空気感はどこか胡散臭くて、信用しきってはいけないような感じがする。
それが、私がこの女をあまり好きになれない理由かもしれない。
何を考えているのかわからない、何を知っているのかもわからない。
だから、私はこう思う事にした。
彼女は全てを知っているのだと。
だからこそ私には到底理解ができないのだと。
馬鹿馬鹿しい話だと思う。
全てを知っているなんて。
だってそんなのは妖怪なんてものではない。
この幻想郷を創り上げた創造主ともなる彼女は、幻想郷ではどのような立ち位置になるのだろう。
それはもう、神様と言ってもいいのではないだろうか
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「どうしたの、霊夢」
はっとした。いつの間にやら物思いに耽っていた。
こんなどうでもいい事を考えてしまうほど暇を持て余しているらしい。
それにしたってもう少しいい題材があっただろうに。昼食のこととか夕食のこととか。
「いや別に、なんでもないわよ」
「そう?やけに真剣そうだったけれど」
「睡魔と戦ってただけよ。真剣に見えたのなら、貴女が診てもらった方が良いわね」
真剣?そんなわけないだろう。そんな事に真剣になるくらいならもっと他のことに尽力を尽くしている。
例えば境内の掃除とか…あぁ、掃除しないとなぁ。
「ねぇ、あんた誰を待ってるの」
痺れを切らしてこたつでぬくぬくしている大妖怪に再度尋ねる。
これでもう何回目だろうか。
「もうすぐ来るわよ」
「またそれかさっきも聞いた」
ほんとなんなんだこの大妖怪は。勝手に侵入してきたと思ったら待ち人来らずといった感じでお茶飲んでいる。
しかもそれそこそこ良いやつだし。
掃除でもするか、このままこうしているのもなんだか億劫だ。
霊夢はこたつから出て背伸びをした。さっきまで暖まっていた体が急激に冷やされる。
部屋の中だと言うのにどうしてこう寒いのだろう。
「どうしたの?」
「掃除よ、そうじ」
こたつから出ようともしない紫に投げ捨てるように言った。
まったく、手伝う素振りくらい見せても良いだろうに。まぁそんな事をしないのは百も承知だ。
さて、掃除をしよう。こんな寒さの中外に出るなんて死ぬほど嫌だが、どうせ後でやらなくてはいけない事だ。暇なうちに済ませておこう。
決意を決めた霊夢はスタスタと襖の前まで移動した。
再度、外の寒さに覚悟を決め、こたつの温もりとお別れをする。
そして襖を開けようと取手に手をかけたその時だった。
「ん?」
今何か聞こえたような。おそらく人の声、ずいぶんと遠くからだ。
それもやけに聞き馴染みのあるような、ないような…
「れいむー!」
…!やはりそうだ、私の名前を呼んでいる。
しかもこの声は。
霊夢は止まっていた手を動かし、襖を開けた。
目に写った光景は白銀の世界。葉の枯れた木々。飛んで来る人影。
「魔理沙…と、三日月?」
魔理沙だけではなかったのか。箒に二人跨っている。
箒は近づいてきて、二人を乗せて縁側の前で停止した。
「よぉ!霊夢」
「何してんのよ、魔理沙。三日月も」
「あはは…それが色々あってさ」
三日月が答える。
色々って、適当すぎないか。ただまぁなんとなくは分かる。
魔理沙といると言うことは、おそらく三日月も異変解決に協力していると言うことだろう。
「あら、やっときたのね」
部屋の奥から声がした。無論、八雲紫だ。
やっときた、か。どうやらこの二人のことを待っていたらしい。
「おぉ!良いところに!」
魔理沙が声を上げる。こちらも紫に会いにきたらしい。
なるほど、だからうちに来たってわけね。
紫も、魔理沙も。
「異変のこと?」
「そうそう。昨日パチュリーのとこに行って、八雲紫なら何か知ってるだろうって」
それはごもっともだ。何せ幻想郷の管理者な訳だし。
「はぁ…わかったわよ。寒いし上がれば」
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いくらなんでもタイミングが良すぎる。良いにもほどがある。
これは…
「狙ったな」
「あら、なんのこと?」
とぼけやがった。
「それで、二人は異変のことについて聞きたいことがあるんでしょう?」
「…まぁ」
不本意ながら素直に答える。
「どこがわからないのかしら」
「どこがって言われると、何処もかしこも。まだ何もわかってない」
「あら、そう」
紫は面白そうに返事をする。
三日月はその反応に少し不満を持ったが、何もわかっていないのは自分たちのせいなので黙っておく。
「じゃあ、あなたたちが持っている情報は?」
「…少なくとも、これは小さな異変ではない。雪が降っているのはそれ自体が異変なのではなく、もっと他の異変の副産物みたいなもの。これくらいしかわかってない」
自分で言っていて気がついたが、本当に全然わかってないな。
「なるほどね。まぁ今回は言わばイレギュラーみたいなものだしね。目撃情報も何もないだろうし、小規模な異変じゃないってわかっただけ及第点にしておきましょう」
イレギュラー?この異変がイレギュラーなのか?
いや、まあ異変自体が幻想郷にとってイレギュラーではあるけれど。
その中でも、さらに普通じゃないと言うことなのか。
「そうよ、これは雪を降らせる異変じゃない」
「じゃあどんな異変だって言うんだ?」
魔理沙が尋ねる。
「そうねぇ。これは雪を降らせるんじゃなく、言うなれば春を奪う異変ね」
「春を奪う?」
「そう。幻想郷から春という概念そのものを奪う、これはそういう異変」
春という概念そのものを奪う。
だから、花は咲かない。だから、雪は止まない。
だから、春が来ない。
「そんなこと出来るのか?」
「出来るわよ」
迷いなく、躊躇なくそう答える。
「どうやって」
「そうねぇ」
紫は少し考え込んだ。知らないというより、教え方に迷っている感じだ。
「三日月は春と言ったら何を連想する?」
紫が問いかけてきた。
春と言ったら…か。それは人それぞれな気がするけれど、でも、そういうことではないのだろう。
春と聞いて誰しもが連想するであろう物。
「桜、とか」
「そうね」
どうやら正解したらしい。
「春といえば桜。それは誰しもがそう思う。だったら逆はどうかしら?桜といったら、春でしょう?」
何が言いたいのだろう。
桜といったら春。それはそうだ、言い換えただけなのだから。
「あなたたちが行かないといけない場所は白玉楼。そこに今言った答えがあるはずよ」
白玉楼、とはなんだろう。地名だろうか、聞いたことがない。
「ちょっ!白玉楼ってあんた!」
不意に横の霊夢が声を上げる。
「変なとこなのか?」
あまりの慌てっぷりに思わず聞いてしまった。
「変も何も、冥界よ!白玉楼って!」
メイカイ…
三日月は一瞬で理解が追いつかなくなった。