異変長くなりそうで怖い今日この頃。
では!
「冥界って…あの冥界?死後に行くっていう、あれ…?」
「そう、それ」
衝撃の事実。
一ミリたりとも予想していなかったワードに三日月は目を丸くした。今回三日月たちが調べているのは春にまつわる異変。その真相が冥界にあるとは、これ如何に。
冥界とは、生者が死後に行き着く果て。いわゆる死後の世界というやつだ。一見、それどころか何度見直しても関係がなさそうなその場所に、八雲紫は答えがあると断言した。きっと間違いでも、ましてや嘘なんてこともないだろう。
三日月は理解ができず、頭の中に疑問符を飛び交わせていた。
…端的に言えば混乱した。
「冥界ねぇ…。俄には信じられない話だな。私は冥界に異変解決の糸口があるなんて思えないぜ」
「まぁ、そうでしょうね。それはもっともな意見よ、魔理沙。今私が説明したこの異変の詳細…、春を奪う異変と死後の世界である冥界ーー。この二つは普通どう考えても無縁、関係性なんてないものね」
「あるってのか?」
「えぇ」
紫は間髪入れずに、なんの躊躇もなく肯定を口にした。
それが普通であるかのように、それが当たり前であるかのように。
ーーそれ以外、考えられないというように。
三日月は紫のその躊躇いのない言葉に圧倒された。何をもってこの大妖怪はそう断定するのだろう。一体何を知っていてそんな風に答えるのだろう。
ただ、それは今はまだわからない。彼女は自分の目で見るように言ったのだ。全てを言わず、答えはそこにあるというように言っていた。ならきっと、そうする他ない。
「やっぱり地上が発端の異変じゃなかったのね…。おかしいと思ったのよ。こんな事して一切証拠を残さないなんて、そんなことできるやつが居たら合わせてほしいぐらいだったわ」
「霊夢、気付いてたのか?地上で起きてる異変じゃないって事」
「三日月ねぇ…私これでも一応異変解決のプロなのよ?少なくともあんたよりは多くの異変を解決してきた」
「それはそうだろうけどさ」
これまた驚いた。まさか霊夢がちゃんと博麗の巫女らしいことを言うなんて。
確かに異変解決は彼女の専売特許と言ってもいい。三日月よりも断然場数をこなしてきている。
「なんだよ、霊夢も異変解決しようとしてくれてたのか?」
「違っーー!…わ、私はただ、疑問に思っただけ!」
「なぁんだよぉ、照れるなよ霊夢ぅー」
「魔理沙うっさい黙って」
魔理沙の一言がどうやらクリーンヒットしたようだ。霊夢が顔を赤くして魔理沙を睨んでいる。
魔理沙が「いだっ!」と声を上げた。どうやらこたつの中で足技を食らったらしい。テーブルがガタンと揺れた。
「イッタイなぁもう…ーーあ、なぁ気になってたんだけどさ」
「何かしら?」
「その、冥界?に行けば良いのは分かったけど、それってどうやって行けば良いんだ?。死後の世界なんだろ?」
「あ、それ。僕も気になってた」
「あぁ、その事」
そう、そこが一番の疑問だった。
冥界に行けば良いのは分かった。でもそれからどうすればいいのかが疑問でならなかった。相手は冥界。ドアをノックして入れるわけもなし。入り口から入るどころか、入り口があるのかさえ分からない。
「三日月、ちょっと立ってくれる?」
「え?あ、あぁ」
言われるがまま立ち上がる。こたつから出した足は思いの外寒かった。
紫が三日月の前まで移動してきた。彼女の表情はさっきから一向に崩れない、薄い笑みを浮かべていた。
「後ろ向いてくれる?」
「?…こうか?」
「…ねぇ紫、あんた何しようとして…ーーっ!三日月っ!」
紫の手が三日月の背に触れる。
霊夢の叫びよりも一瞬早く。
「ッーー!」
ドスンと衝撃が走った。
音が聞こえない。
匂いを感じない。
眼の前には、暗闇が広がったーー
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「ーーッ!」
「なっーー」
霊夢と魔理沙が絶句する。二人は目を大きく開け、その光景を疑った。
八雲紫が三日月を…ーー殺した?
「っ!三日月っ!!」
魔理沙が倒れている三日月に駆け寄る。頭を持ち、必死に呼びかける。三日月の反応は一切無かった。
まさか、殺したのか?この八雲紫は三日月を冥界に送るために…そのためだけに殺したと言うのか?
「紫!あんた何してんのっ!?いくら冥界に行かせるためだからってーー、そんなの理由にならないわよっ!」
紫は先ほどまで三日月の背に触れていた手をゆっくりと下ろした。
こいつ…何も思っていない、何とも感じていない。人を一人殺した事を、何ともーー
「仕方ないじゃない、今はこうする他に無かったのよ。スキマを開こうにも向こうから拒絶されてるらしくて。しっかりと対策されてるわね。感心しーー」
霊夢はいつの間にか紫に殴りかかっていた。しかし呆気なく防がれる。いくら女性とはいえ相手は大妖怪なのだ。人間の力ではどうしようも無い。腕を掴まれたままピクリとも動かない。
「…危ないわよ」
「どの口が言ってんのよ」
霊夢の言葉に怒気が乗る。
「あんた、仕方ないって理由だけでこんな事して良いと思ってんのーー?三日月みたいな本来異変とは関係ないようなやつを殺して良いと思ってーー!」
「殺す?」
「………は?」
紫の心底分からないというような声色に思わず霊夢も声が出た。
なんだ、その何を言っているんだか分からないみたいな顔は…
「え…?殺した、でしょ…?。今さっき…」
「殺す?誰を?」
「え?いや、ほら……三日月」
突然、紫が声を上げて笑い出した。心底面白そうに、腹を抱えて笑っている。
彼女の今までのキャラとの変貌っぷりに霊夢は今世紀最大のポカン顔を披露した。見てはいないが魔理沙も同じような顔をしているだろう、しているに違いない。
「ふふっ、霊夢そんなっーーふふっ」
「ちょっーー!笑いすぎでしょ!」
「霊夢っ、わたっ、私がっ、ふふっーー」
「もう!何よ!何がそんなにおかしいわけ!?」
どうやら勘違いをしていたらしい。いや、勘違いというか完全な早とちりか。
魔理沙はあいも変わらずポカン顔。
「はぁ、はぁーー」
ひとしきり笑い終えたらしい紫は、いつの間にかいつもの薄い笑みを浮かべていた。少し息切れをしているが。
「殺してないわよ?殺してない。今の彼は仮死状態になってるだけ」
「だけってねぇ、それはそれで問題あるわよ」
「死んではいないわ、保証します。ただ後ろからゼロ距離で弾幕を打っただけ」
「いやだからだけじゃないっての」
霊夢は頭痛を覚えた。額に手を触れフルフルと頭を振る。
「とりあえず、三日月は無事ってことか?」
「無事かどうかは甚だ疑問だけど、一応はまだ生きてる。…多分」
「まぁそれなら良いけどさぁ、いや良くねぇよ」
おぉ、珍しい。魔理沙がノリツッコミをしている。
魔理沙はそっと三日月の体を倒した。
「えっと、つまり冥界に三日月を送るために仮死状態にしたってことで良いのよね?」
「えぇ、そう言うこと」
「あんたねぇ、せめて一言くらい言ってからやりなさいよ」
「あら、そう?」
この大妖怪、やはり何か大切なものが欠落しているのでは?やっぱり一発ぐらい殴って目を覚まさせた方が良いのでは?
「私たちも同じことさせられるの?」
「して良いの?」
「やめて」
して良いの?じゃないして良いわけがないだろう。
「とりあえずこたつ入りましょう、寒いし」
三人は話を戻すために定位置に戻っていった。
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目が覚めると、そこは冥府の果てでしたーー。
「ーーッ!」
冷たい感覚で目が覚めた。地面の硬い感触がやけに不快に感じた。頭が痛い、そんなに長くは寝ていなかったはずだが。
まぁそんなことはどうでもいい。それよりもーー
「どこ、ここ…」
いつの間にか知らない場所にいた。あたりは暗いし床は石畳だ。どう考えても博麗神社ではない。どうしてここに来てしまったのかを考える。確かーー
「あぁ、あの後…もしかして」
死んだ?
いや、それは多分ないだろう。その点に関して彼女がそうするとは思えない。
方法はわからないが、流れ的に冥界に来たと考えるのが妥当だろう。
とりあえずその場で立ち上がる。辺りを見回す。暗いせいでよく見えなかった。どうにか慣らそうと目を凝らしてみる。
その時だった。
ボッと音を立てて灯りが灯った。灯火は、およそ無限に感じてしまうほど長い階段を照らすばかりであった。