まったく戦間期のことが描かれず安心できました!(オイ)
【第13話】
西暦2200年 3月1日。
国連極東管区、基幹地下都市への地上入り口の一つ(旧日本国岡山県所在)。
再生された地球環境の例に漏れずこの場所も森林に覆われていた。
そのため、国連極東管区軍の工作設営部隊は同地の森林を伐採し、開けた場所を作っていた。
それは将来の地上復興・復員の為の基地を建設するためである。
工事現場は、地下都市入り口に隣接する形に工事司令部や作業員宿舎、重機車庫など
いくつかのコンテナ式建物が置かれており、そこを中心にした円状に森林が伐採されている。
伐採された木々は指定された置き場に積み上げられ、ある程度集積されると地下都市入り口の
物資搬入用エレベーターや輸送鉄道線で地下へ運ばれてゆく。
その後は地下工場でOMCSが使用する有機原料ペレットへ加工されるのだ。
工事は地上復員の下準備のみならず地下都市の市民の食糧確保を兼ねていた。
その重要な工事現場を取り仕切るのは、地球帰還後のヤマトに乗り込み、
ヤマトの各管区への電力供給行に並行して残存汚染調査を行った部隊の隊長で、
裏では芹沢軍務局長と通じて
存在確認(名目としては各管区の鉱物資源調査)を実行した、あの下村光次郎二佐であった。
彼はいま、作業本部で女性副官に向かって尋ねていた。
「……第二区画の進行度が予定より少し遅れているようだが、なにかあったのかね?」
「はっ、同区画で作業に当たっていた伐採機のうち一台が先ほど故障し離脱、
現在は車庫にて修理を行っています。エンジニア曰く、軽度の故障だそうです。」
「そうか、わかった。……第二区画はその故障した伐採機が復旧するまでペースを調整しつつ
作業を続行するように伝えろ。無理に挽回をしようとしなくていい。
重機を修理する整備班には時間がかかってもしっかり直すよう言っておいてくれ。」
「わかりました、ですがよろしいのですか?」
「かまわんよ。むしろやっつけ仕事や無茶でケガ人を出したくないのでね。安全第一だよ」
「了解しました。……併せて報告します。来週届く予定の物資が二日ほど遅れるようです。」
「なに?それはどういう……」
「……はい、どうも宇宙戦艦ヤマトの修理に物資が優先されるようでして……」
「なるほど……。まぁ、物資不足もおいおい解決するだろうからな。
物資の遅れの影響については任せてもいいかな?」
「はい、お任せを。……しかし、これでは進行度に遅れが生じてしまいますね……」
「心配には及ばない、しばらくは地上復員などできはしないさ。司令部もそれはわかっている。
……なにせ地上復員よりよほど厄介な問題に先に対処するつもりらしいからな……」
「……それは、“地球統一政府”の設立計画のことでしょうか?」
「あぁ、ちょうど今日、各管区のお偉方が遠隔会合を行うそうだよ。」
話題に国連に代わる新政府の計画が挙がり、下村はふと自らのボスである芹沢について考えた。
彼ならば、その計画に深くかかわっているに違いないからである……。
かくして、下村の想像の通りであった。
芹沢は今、藤堂ら極東管区の首脳たちとともに国連宇宙軍司令部ビルの一室に集まっていた。
その一室は同ビルの司令室はもちろん、会議室よりも小さく狭かったが、設備はそれらと
同等であった。この部屋は海外管区との通信会議を行うためのものである。
部屋の一面を完全に占める巨大モニターの端に映る時計が、日本時間で14時を告げた。
同時に、モニターの大部分を使い映されていた待機画面が切り替わりとある黒人の老爺が現れる。
ネグロイドの中でも特に黒く焼けた肌に、白髪白髭の顔は相対する人間に
彼がゴリラのシルバーバックのように場数を踏んだリーダーであることを悟らせた。
「……各管区の指導者の皆さん、感度は良好でしょうか?
……こちらは、国連総長ロドニー・ムベキです。
今回のサミットでは、議長を務めさせていただきます」
老塾の国連総長が話すとともに、室内には流ちょうな日本語が流れてくる。
だが、画面の総長の口の動きは英語の物であるように見える。
これは、リアルタイム翻訳装置と声帯模写システムのおかげである。
この装置群は、ヤマトがイスカンダル行の際に獲得したガミラスの翻訳装置のデータをもとに
大幅な改良が施されており、データの整理が完了すればガミラス語、ガトランティス語の
同時翻訳も可能になると見込まれている。
ロドニー・ムベキ現国連総長は元アフリカ連邦(南アフリカ管区の前身)の大統領で、
冷静沈着で知られていた。その彼の進行によりサミットは始められた。
「……では、さっそく議題の方に入らせていただきましょう。
……【現在の国際連合の代替となる、新たな全地球統一政体の建設についての提案】、
この提案は、極東管区のトウドウ行政局長の発案によるものです。
この提案については、サミット前に各管区の首脳の方々に資料をお送りしました。
そして、各管区の首脳の方々には予めこの提案に対する可否をいただいています。」
ムベキ総長の言葉に、芹沢などは目を見開き、発案者の藤堂はしわを寄せ、冷や汗を流す。
一つの管区でも反対すれば、一気に統一政体の建設は遠のくだろう。
極東管区司令部・遠隔会議室の温度は一気に冷え込んだ。緊張が渦巻く。
「……同提案に対して、すべての管区の指導陣の方々から前向きな回答がいただけました。」
続いて総長が放った言葉は、藤堂や芹沢が危惧したようなものではなかった。
その事実に安堵し、芹沢は思わず感嘆の声を漏らすのだった。
「……おぉ……」
………さて、各管区が自らの権限を越える統一政府の建設に同意したわけに
何より戦災復興のため、そして来る外宇宙勢力との再接触に備えるという理由があった。
それにしてもなおこの結論に管区内の意見を統一できた背景に、
戦前まで有力なロビイストであった軍と企業群が対ガミラス戦争で壊滅したことがある。
軍に関しては言わずもがな宇宙海軍はガミラスとの艦隊戦に連敗しほぼ全滅、
空間騎兵隊や陸軍など地上兵力は健在ではあったが地下都市に逼塞していたこともあり、
無くなって久しい既得権益を守ろうとするよりは現状への改革志向にあったため
統一政府計画の障害とはならなかったのである。
もうひとつの有力ロビイストであった大企業群に関してはより悲惨な状況だった。
極東管区の南部重工や森田製薬などもとより政府と密接であった大企業のごく一部は
ほとんど政府の外局という立場ではあるが法人として存続できたが、あくまでごく一部。
地球企業のじつに9割超が倒産・廃業、または政府機関に吸収統合される形で消滅した。
地球存亡の危急時に、悠長に金儲けをしている場合ではなかったのである。
こんなエピソードがある。
対ガミラス戦争中期、地下都市への避難が本格化したころ、北米管区のとある
小売系大企業のオーナーが大量の物資とともに地下へと降りてきた。
北米管区政府は物資の供出を求めるがオーナーはこれを私財の侵害として拒否。
その結果多数の市民がこの態度に憤慨、暴動をおこして物資を強奪した。
若かったオーナーは哀れ騒乱の中で命を落とした。
これに震え上がった各管区の企業主たちは次々に会社の資産・データを政府へと
引き渡し、自らは一市民として市井に交わることになった。
……つまり、皮肉にも大きな犠牲を生んだガミラス戦争こそがこういったロビイストを
打倒し、別の意味でも統一政府建設の道を開くきっかけとなったのである。
話はサミットへと戻る。
「……各国の当案件へのご意見については送付した資料をご覧いただき、
続いて地球統一政府建設の段取り、方向性に関する諸案件を議論したく思います。」
議長である老人がサミットの第二幕の開幕を宣言した。
芹沢も、もちろん藤堂も再び緊張に顔をこわばらせることになる。
(……そうだ、ここからが本番なのだ)
各管区が少しでも新政府設立に対して影響力を行使しようとすることは
未来のことを知っている芹沢でなくともこうした政治の道に携わるもの、すなわち
サミットに参加している全員が分かりきっていることだ。
それが、顕在化するこれからこそが真のサミットなのである。
モニタの向こうに移る黒人議長は、手元の端末に目を落としたのち、
再度顔をあげモニタ向こうの各管区のリーダーたちを見回すようにして言った。
「……ではまず、最初の議題に移ります。」
西暦2200年、3月1日。
地球の歴史に長く刻まれることになるサミットは、まだ始まったばかりである。
そういえばリメイクヤマト時空での人類種がみなアケーリアスの末裔という設定がある以上、
進化論とか地球の生物と地球人類の遺伝子的な繫がりとかはどうなってるんでしょう?
ノアの箱舟よろしくアケーリアス人が人類種のみならず地球やガミラスでの現生の生物種
(たとえば猫とクラル)の共通の祖になる生物を一緒に星々に降ろしていたとか?
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