宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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暑い日が続きますが、皆様気をつけてお過ごしください。
執筆中に意識が吹っ飛びかけました。(一敗)


第十六話 猛虎内定せり

【第16話】

 

……極東管区による外宇宙の脅威の喚起を経てもなお、統一政府サミットは激論を要した。

表面的には罵声は無論、怒号もなく、終始穏便な論議が続けられた。

2200年6月・第8回まで継続されたサミットは終幕まで緊張した対決が行われたのである。

 

だが、人類はその上で断を下すことに成功した。

第8回サミット後、ついに全管区合同で国連を発展させる形で新たな地球人類統一政府を

立ち上げることを宣言した。統一政府の名は「EARTH FEDERATION」、

すなわち「地球連邦」である。

 

政体としては旧アメリカ合衆国をモデルとした大統領制が採用される。

だが、現在地球上の管区群はその復興に全力を注いでいる最中であり足早な建設はまず不可能である。

そのため、人事や設備その他の用意は段階的に行われるとされ、具体的な設立時期は

新世紀を迎える2200年の12月31日から2201年1月1日とされた。

 

当然ながら、新政府樹立に関わる懸案にも討議に重なる討議の末に一応の回答が出された。

 

各管区群の自治権については、連邦政府は大きく介入できないが議会の承認を得た

大統領令には服す必要があるという絶妙な具合に設定された。

 

各管区領域内にある植物・鉱物資源については一括で連邦政府が管理するという

方向性で決定し、連邦成立までも抜け駆けで鉱物資源を採掘することは許されず

国連の監査官が各管区へ渡り連邦成立の時まで監督することになっている。

 

国連軍もまた、地球連邦防衛軍へと再編されることが決定した。

ただし、その規模は今のところ往時と比べると遥かに弱小であり有力な戦力は「ヤマト」のみである。

 

そして、地球連邦の首都はどこに置かれる予定かというと、極東管区の旧神戸~岡山にかけた

地域が地球連邦首都・メガロポリス特別区に設定され大統領官邸ほか重要施設が配されるという。

この決定は、実は極東管区が率先して立候補したりした結果のものではない。

藤堂や芹沢はヤマト航海記録の公開で全管区を牽制したことを配慮して以降あまり

主導権を狙っているように受け取られかねない素振りはとことん避けてきた。

にもかかわらず地球連邦の首都という極めて重要なものが何故極東管区の手に委ねられたかというと、

管区指導者たちが、自管区に敵性宇宙勢力の第一目標とされるようなものを置きたくないという

考えを持っていたからである。

また、今後ガミラス他宇宙勢力と交渉する際連邦の首都は

そうした勢力が最初に降りてくる場所になるはずだ。宇宙戦艦ヤマトを送り出した極東管区なら

その任は十分に果たせるだろうし、宇宙人使節への地球人によるテロなどの可能性も考えれば

少しでもガミラスなど宇宙人と交流・交渉した実績のある人々の本拠地こそが対宇宙外交を

睨む首都の受け皿にふさわしいだろう……という思惑もあった。

 

かくして、極東管区は都市の再建と地上復員に加え、首都新設という難事も加えて

復興へ動き出すことになったのである。

そして復興は軍主導であったため、

必然的に極東管区国連軍司令部ビルはその最前線となっていた。

 

 

時に、西暦2200年8月3日。

地下都市の司令部ビル会議室にて、藤堂は行政部門の各部長から報告を受けている。

 

「……軍工廠及び、南部重工の協力もあり、我が核融合発電所は海洋への対応工事が

 完了し海水からの水素抽出が可能となり、再稼働できるようになりました。

 現在、試験運転中で今週内にも発電が再開できます。尤も、ヤマトの波動機関ほどの

 出力はありませんが……」

 

「いや、あくまでヤマトの機関動力転用は非常手段、前回行った電力供給も一年ほどで

 使いきる計算だったのだ。それまでに正規のエネルギー獲得手段が回復できて何よりだった。」

 

「……現在のところ、OMCSによる食糧生産について問題はありません。

 配給量も三年前のレベルに戻り、飢餓の懸念はまず消失したといってよろしいかと。」

 

「結構。医薬品生産のほうはどうなっているのかね?」

 

「は、中央大病院などから発注される薬剤は滞りなく生産・納入されています。

 また、森田製薬の要請に応じて医薬品用OMCS二基が一定期間貸与される予定です。」

 

「ふむ、その理由は?」

 

「先方の説明によりますと、遊星爆弾症候群の治療薬開発に活用すると説明が。

 どうにも数か月前、偶発的ながら特効薬となりうるベースができたとのことで……」

 

「……それが事実なら大変喜ばしいことだ。完成の暁には大勢の命が救われるだろう……。」

 

 

極東管区は、ここ半年間で窮状からすっかり回復し急速に復興へ向けて動き始めていた。

それは極東管区ばかりではなく地球全土でみられた光景なのだが、窮状脱出の立役者たる

宇宙戦艦ヤマトを擁する管区であり、地球連邦の首都に内定しているだけにその意気は高い。

 

 

そして、会議終了後に行政局長執務室へ戻った藤堂は芹沢虎鉄の訪問を受けた。

 

 

「……どうしたのかね、芹沢君。わざわざ執務室に来るとは珍しいじゃないか?」

 

「……はっ。……長官にお聞きしたいことがありまして、参上した次第です。」

 

藤堂を見据える芹沢のまなざしに並々ならぬものを感じ取り、藤堂は腹を据えた。

室内にいた秘書官に退室を促し、芹沢との一対一の話し合いを始める。

 

「……では、話を聞かせてもらおうか。」

 

「はい。……こちらは、当然ながら藤堂長官にも伝わっている情報かと存じます。」

 

「うむ。」

 

芹沢が取り出したのは電子端末。その画面には、「地球連邦政府及び諸機関 人事基本案」

と銘打たれたレポートファイルが映し出されていた。

 

 

そう、地球連邦創設決定直後、国連は麾下の人事機関や各管区政府・議会と共同して

新体制を主導する人事を計画した。国連の中央部署のみならず、各管区政府の

人員も新役職への推薦の声がかけられるなど、急ピッチで人事策定は進められ

人事の是非を最終決定する特別会議が4度ほど経られたあと、2200年7月22日に

新連邦政府及び付属各機関の基本人事案が決定、関係各所に送付されたのである。

 

無論、極東管区の重鎮であるこの二人にも新職就任への依頼が来ていたのだが。

 

 

芹沢は言った。

 

「……長官、極東管区行政長官職への留任をお決めになったのは何故です……?」

 

「……その事かね。」

 

藤堂平九郎は、なんと人事計画で防衛軍のNo.2へ推されていたにも関わらず辞退し、

現職(連邦体制になり若干の改称などはあるが)への留任を決めていたのである。

 

 

芹沢は内心、全くの予想外の展開に驚いていた。確かに藤堂長官はもとは文官であり、

自分が見た記憶で防衛軍統括司令職にあるのはおそらくヤマト計画の成功の功を、

軍と銃後の橋渡し役・動員能力を買われたからだろう。

藤堂が防衛軍に参加しないのでは未来視で得た知識と全くことなる展開になる可能性がある。

芹沢は冷や汗を流しつつ、藤堂の新連邦での去就について問おうとしていた。

 

 

「芹沢君、君がその事を訪ねてきたのは、私が新防衛軍の統括副司令官に推挙されていたことを

 知っているからで、いいのかな?」

 

(……やはり……!)

 

藤堂は話し始めた。芹沢は藤堂が新体制のどの職に推されているか知らなかったが、

未来でのことを考えて防衛軍の役職であると予測していた。

その予想通り、藤堂は軍への推薦を受けていた。それも、新防衛軍内でのNo.2である。

では、なぜ藤堂はそれを拒んで現職への留任を決めたのか……?

 

「……はい、どこからとは申せませんがその旨を聞いたため、こうしてお尋ねに来た次第です。」

 

「……まぁ私も情報源は問うまい、国連本部の人事方あたりだろう?

 情報保全は万全に願いたいのだがね。」

 

芹沢はとりあえず話を合わせた。藤堂は特に疑いもせず腕組みし、どう話すか勘案している様子だ。

 

(……何故だ?……そもそも防衛軍への推薦ではなく現職留任を本部から提示されたのでなく……

 どうして防衛軍に推されたにも関わらず行政長官職に?)

 

芹沢は一向に、藤堂があの未来視と違う進路を進もうとしているかの理由が見えず、困惑する。

 

 

そんなうちに藤堂は答えを語り始める。

 

「……それで、それを蹴った理由か。

 ……簡潔にいえば、君のことを見直したからだ、芹沢君。」

 

「……私を、ですか?」

 

「……うむ。ヤマトが帰ってくるまでの君は、確かに地球人類のことを思って働いていたが、

 正直なところ、率直すぎて周囲から誤解されやすいように見えていた。

 これには余裕のない状況がそうさせていたんだろうとも思うがね。

 それで、ヤマトが帰ってきて以降の君は傍目から見ても変わった。

 そうだな、言うなれば遠大な目標を見て、一つ一つ積み上げ重ねるという方向性に

 行動が変わったように感じたよ。………全く心外であったら済まないと思う。」

 

藤堂は感慨深くしみじみと語った。

 

「……いえ、長官のご慧眼には恐れ入るばかりです……。」

 

「……もし、君がヤマトが帰ってくる以前と変わらなかったら、私もきっと例の推薦を

 受け入れて防衛軍へ入っていただろう。……率直に言って悪いが、あの頃の君の真価を理解し、

 活用し得る人間はあまり多くはないだろうからな。」

 

「はっ……。」

 

「……だが、今の君には安心して諸事を任せることができる。

 そう思ったからこそ、私は君を私の代わりに防衛軍統括副司令へと推薦した。」

 

「……!!」

 

芹沢は目を剥いた。芹沢に来た就任要請は、未来で見た自分と同じ防衛軍統括副司令職。

ヤマト帰還から3年たった未来でようやくあの職に就いているのだから、

いきなりその職に就くことに違和感を覚えていた芹沢だが、ようやく合点が行った。

 

そして、藤堂は再び芹沢を見据えて語り始めた。

 

「……芹沢君。」

 

「……はっ。」

 

「……これから私も君も忙しくなる。そして、極東管区の行政と国連本部の軍司令部と

 職場も大きく分かたれる。丁度いい機会だから、君にいっておきたい。」

 

藤堂の言葉に、芹沢は身を引き締める。そして、藤堂が頭を下げた。

 

「……ヤマトを、沖田の子供たちを頼む。」

 

「……長官……!!」

 

芹沢は驚愕した。藤堂が、自分を信頼して、かつて沖田と反目していた自分を信じて

頭さえ下げて、あの未来視で藤堂が庇護していた沖田の後継者というべきヤマトクルーを

任せようというのである。

 

……芹沢は、少しの戸惑いと逡巡の後、軍人としての最敬礼を藤堂へ送り、宣言した。

 

 

「……この芹沢虎鉄、一身を賭して貴方の御期待にお応え致します。」

 

 

頭を上げた藤堂は、心底安心した表情で頷いた。

そして、息を吐いて別の話を始めた。藤堂行政局長にしては実に珍しく、

プライベートのことを語り始めたのだ。

 

「……最近、娘と話をしようと思うようになった。……君を見ていると、

 私も何か変わらねばと感じてね。……千晶のことを呑み込んで、

 初めて我が家にとってのこの戦争が終わる。

 ……この場で話すべきようなことではないが、独り言として聞き流してくれ。」

 

「……長官。……貴方なら、ご息女とまた上手くやっていけましょう。

 いつか、長官と茶でも飲みたいですな。語らいたいことがありすぎる。」

 

「……ああ、そうだな。」

 

二人は、肩書きを外した一人の人間としてこの一、二言を交わした。

おもむろに芹沢が言う。

 

「…お忙しい中、失礼致しました。小官は職務へ戻らせていただたきます。」

 

軍人として、軍務局長としての自分を再確認するように敬礼をとり、退室する芹沢。

藤堂は、去り行く彼を自分以外に聞こえないような呟きで見送った。

 

「……ありがとう。」

 

 

 

 芹沢は、新体制下において未来視で見た以上の役職を得ることが確定した。

芹沢は、自身の変容を以て他者の意識をも動かした。いよいよ芹沢の行動により、

世界は歩む歴史を本来のものと大きく違えようとしていた……。




ネタバレ注意!





ガルマン星のシャルバート(?)聖堂の屋根の意匠がガミラスのつくしビルと
そっくりで、文化的な連続性が暗示されていてとてもよかったです。
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