宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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個人的に波動砲艦隊っていうのは、イメージ的にモンタナ級(アンドロメダ)を旗艦に多数のサウスダコタ級(ドレッドノート級)が集まった艦隊だと思ってます。


第十七話 猛虎巡遊せり その1

【第17話】

 

西暦2200年 10月7日。

極東管区・地下都市地上出口近傍。

ここには国連軍工作部隊の手によって、地球人類の地上復員のための橋頭堡となる

拠点基地が造られていた。とはいえ、広大な土地こそ樹木は伐採・整地されているが

そこに建つ建造物と言えば整地された土地の中央にある工兵部隊が使っている宿舎や

倉庫、重機車庫ばかりで、それも広い土地の1割も占めていない。

だが、これから地下都市で解体されたブロック工法のビルの部品が地上へ輸送され、

この開かれた土地に移設される予定である。こうしたビルに工事作業員などを中心に

住まわせ、一層の都市再建作業の進展を図るのである。ある程度もすれば抽選から始まるだろうが

一般人の地上への帰還とて可能になると見込まれている。

今、世界中の管区の地表部で同様の事が行われている。厄介な統一政府策定が一段落し、

人員リソースを振り分けることが出来るようになったのがこの一因だ。

工事の責任者の一人である、国連極東管区軍の工作部隊指揮官・下村光次郎二佐。

作業着に身を包んだ彼は、地下都市から移設するビルの建設予定地を見回りつつ、

女性副官と話していた。

 

「……ふむ、どうやらここも問題なさそうだ。」

 

「はい。地盤的にも問題はないはずです。一週間後に基礎工事に取りかかれます。」

 

「結構。……ところで、聞いたかね?新連邦の人事は。」

 

「えぇ、藤堂行政局長は留任されるそうで、芹沢軍務局長は防衛軍全体のNo.2になられるとか」

 

「そうだ。我らがボスは相当に上に行っている。出世も期待できるかな?」

 

「ふふっ、ご冗談を。……防衛軍移行後は、我々の命令系統はどうなるのでしょうか?」

 

「うむ。……私が聞いた話では、井上宙将補が極東管区駐屯部隊の統括者らしい。」

 

「あの、航空隊部門の部長だった井上玄三宙将補ですか。」

 

「あの人もイズモ派、いや芹沢派だったからな。……もう今となってはあまり意味のない事だが。」

 

「……相変わらず我々は忙しくなりそうですね。」

 

「どこも同じさ。……ただ、本当に我々が防衛軍本部お抱えになる可能性はあると思うね」

 

「……?」

 

下村の言葉に首を傾げる副官。下村はヤマト乗艦時に行ったあの任務を思い出していた……。

 

 

 

 

一方。地上の二人が話題に出していた芹沢と井上は、奇しくも丁度面会していた。

場所は国連軍極東管区司令部ビル内・軍務局長執務室である。

 

「呼びつけてすまんな。まぁ、かけてくれ。」

 

「は、お言葉に甘えさせていただきます。」

 

井上に対し茶の置かれたローテーブルのソファに着席を勧め、芹沢は率直に用件を話し出す。

 

「君を呼んだのは他でもない、極東管区の軍再編を代行してもらいたいのだ。」

 

「……私が……ですか?」

 

いきなりの芹沢の頼みに度肝を抜かれる井上。芹沢は補足するように続ける。

 

「無論、一人でとは言わん。宇宙海軍の方は引き続き土方にやってもらう。

 君は地上部隊と航空部隊の方をまとめてくれたまえ。

 なに、極東管区駐屯軍の指揮官になる貴官だ、予行演習のようなものと思ってくれ。」

 

「……はぁ、分かりました。ですが、その理由をお聞かせ願えますか……?」

 

いま一つ要領を得ない表情をする井上。芹沢は腕を組んで語った。

 

「うむ、そこが重要だからな。……私はこれから、地球の各管区の部隊を視察するつもりだ。

 無論、藤堂長官や国連軍の上層部、防衛軍発足後の上官となるプリエーゼ軍務局長に、

 各管区政府にも話は通してある。これから2ヶ月、防衛軍発足までに各管区の軍の状態を

 把握し増強をどうするかの叩き台を作らねばならん」

 

「……なるほど。閣下のお考えは分かりました。

 軍再編代行の任、心して当たらせていただきます。」

 

「あぁ。基本方針と権限委任状は渡しておく。

 ……そうだ、視察の足について頼まれてくれないか?」

 

「了解しました、輸送機及び護衛戦闘機の手配はお任せください。」

 

 

こうして、芹沢次期統括副司令の各管区軍視察のための下準備はほとんど整えられた。

その出立は10月12日。97式空間輸送機コスモシーガルで、

二機の99式空間戦闘機コスモファルコンの護衛のもと視察に向かう。

 

芹沢は、井上が退室した後の執務室で最後に残った課題である自身の身辺整理を行おうと

椅子に沈めていた身を持ち上げる。だが、その気勢を削ぐように執務机に置かれた端末機器に

メッセージが入ってきた。

 

「……おっと、もうこんな時間か」

 

メッセージは、極東管区国連軍技術本部での会合の時刻が迫っている、というものだった。

軍務局長は同組織の開発方針や開発リソース投入の可否を決定するこの類の会合への

出席が義務付けられている。

芹沢は秘書官を伴い技術本部のある国連軍ビルの別棟へと移動し、会合を行う会議室へと入室。

長机が組み合わされた長方形のテーブルには極東管区の頭脳である技術者や研究者が着席する。

彼らの出身は軍の開発部であったり、研究機関だったり、民間企業だったりと様々だ。

そんな彼らを尻目に、当然芹沢の席は最上座である。

 

 

今回の会合は各位に、各管区の技術本部が防衛軍への再編に伴って防衛軍直轄の技術本部へ

結集されることを知らせるもので、いくつかの質問こそ挙がったが特に議事は行われなかった。

 

そんな中でも、芹沢はとあることに気づき技術本部長へと尋ねた。

 

 

「……すまないが、今日の会合でテーブルの末席にいた女性は誰だ?

 ……あの席にいた……白銀の髪の女性だ。」

 

「……あの席の……あぁ、航空技術部門の椎名博士ですか。

 そうですね、閣下がご存じないのも無理からぬことです。会合参加は今日が初ですから。」

 

「……それはどういうことだね?」

 

「はい、実は今回の会議では航空技術部門次長が体調不良で欠席していまして、

 その代理で参加してもらっていましてね。お教えするのが後になり申し訳ありません。」

 

「いや、それは構わんのだが……。

 ふむ。その椎名女史は航空技術部門でどのような研究をしておるのだ?」

 

これまでの会合で見たことがなかった研究者について興味を持つ芹沢。

技術本部長は軍務局長の反応に対して意外の念を隠そうともせず応じた。

 

「気になられますか?」

 

「うむ。彼女の経歴も併せて知りたい。」

 

芹沢は技術本部長に、タブレット型端末上に件の女博士のパーソナルデータを表示させた。

 

 

 椎名冥、2170年生まれ。家族構成は父母と年の離れた弟がいたが遊星爆弾により全員死別。

工科大学を優秀な成績で卒業し、欧州の大企業デヴォン・エレクトロニクス&マシーナリー社の

日本支社・航空宇宙工学部門に開発研究員として入社。しかし直後ガミラス戦争が勃発し、

家族と死別。それを契機に軍の技術研究者募集に参加し航空技術研究部門員となる。

研究としては航空機のインターフェースとそれに追随できる機体設計が主テーマ。

ただし対ガミラス戦争中は自身の研究分野は凍結し99式、零式空間戦闘機の開発チームに在籍。

 

 

「……なるほど、彼女も遊星爆弾で……」

 

「……はい。特に弟くんのことは可愛がっていたようで……。

 彼女が技術本部の研究員募集でやってきた時から見知っているのですが、

 いまだに引きずっているようです。」

 

「……。」

 

険しい顔を見せる技術本部長に、芹沢は言葉を失う。

それを見かねたのか、芹沢の秘書官が技術本部長へ質問した。

 

「……あのぅ、椎名女史の研究テーマの航空機インターフェースや機体設計というのは

 具体的にどのような物なのでしょうか?いまいち要領を得ないのですが……」

 

「あ、あぁ確かに。少しわかりにくい説明だったようですね。」

 

技術本部長も場の空気が悪くなっていたことに気付いたのか秘書官の質問にすぐ対応した。

彼は端末を操作してとあるレポートを表示させる。

 

「……これは?」

 

「椎名女史の工科大学時代の論文です。例としてみるには一番わかりやすいかと。」

 

レポートの表紙には、確かに「椎名冥」の文字があった。その上の、レポートのタイトルは……

 

「……宇宙空間での無人航空機の活用……?」

 

「はい、その通りです。彼女が本来専門分野としていたのは無人航空機の設計だったんですよ」

 

「!?」

 

 

芹沢は目を見張った。

無人航空機といえば、自分が視た未来のガトランティスとの戦争で活躍していた。

ヤマト航空隊から学習したAI制御で敵艦隊へ攻撃をかける漆黒の猛禽たち(ブラックバード)の姿を思い浮かべる。

未来視での無人機隊は技術が未熟で投入も遅かったことからあまり戦果を挙げているようには見えなかったが、

もしも今の段階から研究を進めていればどうだろうか。

結果はまた違うものになるのではないか。

今から航空部隊の飛行データの収集を開始すれば艦載機AIの完成度は一層向上するはずだ。

ガミラスの進んだ航空機技術を受け入れる上でも技術の下地の有無で大きく変わる。

 

その考えが頭をよぎり、芹沢は即座に結論付けた。

“これは使える!”と。

 

 

「……本部長。貴官は防衛軍技術本部では素材部門の部長に内定していたね?」

 

「は、はい。おっしゃる通りですが。」

 

「……今後地球防衛軍は対ガミラス戦争で受けた人的損耗に悩まされることは必定だ。

 よって当然省人化・無人化兵器は必須となるはずだ。彼女の研究は役に立つ。

 私からも防衛軍技術本部の航空部門長に話をつけるつもりだが、君からも一つ頼みたい」

 

「……もちろんです。彼女のほうにも、私から伝えておきましょう。

 “君の研究に、次期防衛軍No.2が興味を示した”と。」

 

芹沢の動きは実に早い。即座に布石・根回しに打って出た。

 

「よろしい。……近いうちに、彼女と話がしたいものだな。」

 

「……閣下が視察行より戻ってこられるあたりに予定を入れておきましょう。」

 

 

こうして芹沢は思わぬ収穫を得た。

まだまだ足元の極東管区にも注目すべき人材が未発掘だったのである。

では、海外はどうか?猛虎の視察への期待は嫌が応にも膨らんでいくのだった。





・元ネタ解説

 井上玄三(極東管区国連宇宙軍・航空部隊責任者→
       地球連邦防衛軍・極東管区駐屯部隊指揮官)
 
 ・新選組の6番隊隊長、井上源三郎が名前の元ネタです。
  声優は堀内賢雄さんあたりをイメージしてください。
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