宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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コメントで、どうも地球連邦防衛軍・宇宙海軍でなくて地球連邦防衛軍・宇宙軍・宇宙海軍であるという指摘をいただきましたが、
拙作の世界線では地球連邦の防衛軍は地上軍(地球大気圏内が活動範囲・治安維持が主任務の陸上各部隊、航空部隊、水上艦艇部隊から構成)と、宇宙海軍(地球大気圏外の宇宙が担当活動圏・対外警備が主任務の宇宙艦隊、艦上機中心の航空隊、海兵隊もしくは海軍陸戦隊的役割の空間騎兵隊から構成)の二軍から成り立っている設定とさせていただきます。
イメージとしては二次大戦時の海軍(=宇宙海軍)、陸軍(=地上軍)からなる旧日本軍です。


第十八話 猛虎巡遊せり その2

 

【第18話】

 

 

 そして、出立の日がやってきた。富士宇宙軍港地上部に併設されている臨時飛行場から、

二機の99式空間戦闘爆撃機と、97式空間輸送機が発進する。

 

設定された巡遊ルートとしては、東亜・東南亜・オセアニア・南米・北米・欧州・

北ユーラシア・地中海・北アフリカ・南アフリカ・中東・南亜の順となっている。

各管区での滞在・視察時間はおよそ5日。2200年12月20日、今世紀が終わる直前に

極東管区へ帰還し、防衛軍体制への引き継ぎの最終調整が行われる予定だ。

勿論、視察行中でも連絡は密に行われることになっている。

 

 

さて、東亜管区到着までの間、暫し機上の人になった芹沢虎鉄。

彼は輸送機内に設えられた横4×縦5列の客席、中間三番目の右から二席目に座る。

同じ三番目の横列に座るのは秘書官のみ、その秘書官も通路を挟んだ左端の席にいて

芹沢の行動予定表を再確認している。芹沢の護衛を担当する警備兵は最前列・最後列に二人ずつ座っており仮眠を取っている。

芹沢と同じコスモシーガル客室内に居る誰も、芹沢に注意を向けていない。

 

これ幸いに彼は懐から、人造皮革のカバーがされた紙製のメモ帳と鉛筆を取り出し

筆記を始める。既に芹沢のメモ帳には自分が視た未来やそれに関わる事象などについて

記してあり、芹沢の中では最高機密といって差し支えなかった。

そんなメモにこれから示すのは、今後名目上の主任務である軍の視察と別に

海外管区で自らが行うべきことのリストアップであった。

 

(……ここから2ヶ月、うまく使わねばな。)

 

メモに筆記する手を一旦止めて、ふと右を向き窓の外を流れて行く空を見やる。

コスモシーガルと護衛機の計3機は日本海上空を西へ、一路東亜管区北京へと向かった。

 

 

 

 一方、極東管区科学技術本部ビル。その一角にある艦船設計部門の室内では

三人の男が作業を行っていた。

 

「部長、いまデータのファイル送りました」

 

「うん、いま来た」

 

部長と呼ばれたのは、ボサボサ髪をした角縁メガネの中年男性。

彼こそ極東管区科学技術本部・艦船設計部門の責任者である。

彼と共に作業しているのは、艦船設計部門の中でも砲熕兵器班と称されるショックカノンや

レーザー砲の艦艇への設置を担当する部署のチーフであるスキンヘッドの男と、

機関班と称される艦船のエンジンや動力源関連の配置を担当する角刈りの男だった。

 

部長は部下から送られたデータファイルがダウンロードされているタブレット型端末の画面を

眺めつつ、座っていた椅子に身を沈めてぼやいた。

 

「……まったく、無茶を言ってくれますよ軍務局長どのは……」

 

「まぁ、致し方ありません。部長はきっとこの数年後には……」

 

「やめてくれ!」

 

上司のぼやきに、角刈りの機関設計班長が返す。返しの意味を理解している

設計部長はそれを遮り、聞きたくないとばかりに耳を手で塞いで首を左右にふった。

 

彼は極東管区科学技術本部・艦船設計部門長、藤本喜雄。

 

……芹沢は過日の技術本部での会合の際、あの無人機研究を行っている椎名博士の

一件のやり取りのあと、技術本部長を伴い藤本のもとに訪れて依頼したのである。

 

「藤本くん、既存の艦級に波動エンジンを搭載するための改設計。

 それを本格的に進めてくれたまえ。」

 

「え?」

 

「君が個人的にその改設計を研究していたことは本部長から聞かせてもらった。なぁ?」

 

(そんな急な)

 

「はい。……君がヤマト設計にも携わる傍ら、片手間にやっているところを見ていたよ。」

 

(ちょっと)

 

「……本格的な既存艦艇への波動エンジン搭載計画は、技術本部が防衛軍直轄のものに

 再編されてからになるが、その基礎を今から君に造ってもらう。

 二ヶ月後を楽しみにしているぞ。」

 

(待ってくだs……)

 

……と、こういった拍子に藤本の元に既存の金剛型宇宙戦艦、村雨型宇宙巡洋艦、

磯風型宇宙駆逐艦などの波動エンジン搭載改修の原案作成が課されてしまったのである。

もっとも、技術本部の艦船設計部門は相次ぐ宇宙艦隊の敗北と遊星爆弾攻撃で

新造艦設計はおろか、損傷艦の改修も十全にできなくなっていた。

それでも、第二次火星沖での勝利を呼び込んだショックカノンの搭載や

あの宇宙戦艦ヤマトの設計など地球防衛には貢献している。

この既存艦艇への波動エンジン搭載計画は、それらの大事業に匹敵するものだった。

こうした事業は用兵側や整備方、南部重工など造船担当をはじめ多方面との

兼ね合いが必要になるがそこは芹沢軍務局長が一筆書いてくれるそうだ。

 

今のところは、まだ計画というか前段準備も駆け出しなのでたった三人での作業だが

いずれはさまざまな方面から人を引っ張った一大事業となるだろう。

それを考えて藤本は戦慄した。そんな大プロジェクトのリーダーを自分が

務めるのか、と。自分は技術屋にすぎずこの艦船設計部長職も前任の平賀艦船設計部長が

一線を退いたため繰り上がりで副部長から部長になっただけなのに!

 

万一まかり間違って防衛軍直轄の技術本部でも高位に上がってしまったら……

身震いが止まらない。人の上に立つ器では無いのだ、自分は。

そう思いながらいると、

いつの間にか部下から送られたデータのダウンロードが終了しているのに気づいた。

 

このデータは、金剛型など既存艦艇の機関出力などがまとめられたものである。

既存艦艇改修計画策定にはそれらの現在のスペック把握が第一に来なければならない。

機関換装でスペックがどれだけ上下するのか把握し、問題点を見つけ対処する必要がある。

 

頭をボリボリ搔きながらタブレット画面のファイルアイコンを押す藤本。データが展開されてゆく。

その瞬間、二人の部下は藤本の雰囲気が一気に変容するのを感じ取った。

 

 

 

藤本喜雄。

 

その本質は誰よりも宇宙艦艇に精通した鬼才、とりわけデータベースを読み解き

艦艇の最適値を弾き出すことに長けている。

小心者ではあるがコミュニケーションは取れ、チームワークにも適している。

若き日にAU型宇宙戦艦設計に携わり、冥王星沖海戦後退任した

前艦船設計部長・平賀穣太郎の愛弟子とされ、その後任につけられただけはある。

この極東管区科学技術本部・艦船設計部門において藤本の実力を疑うものは誰一人としていない。

 

それ故に彼は、二年後にアンドロメダ級宇宙戦艦の設計チーム主任を務めることになるが

これはあの芹沢虎鉄も知らぬことであった……。





平賀穣太郎:元ネタは戦艦「大和」を設計した平賀譲海軍造船中将

藤本喜雄:元ネタは知名度的に平賀譲と双璧を成す、最上型巡洋艦などを設計した藤本喜久雄海軍造船少将


今回は少々短めでしたね。(加筆するかも)


追記・2023年1月17日位置変更。
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