宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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芹沢という文字を打ちすぎてゲシュタルト崩壊寸前です。




第二十話 猛虎帰還せり

【第二十話】

 

 

西暦2200年 12月20日 1100時。

各地の軍を視察した芹沢や、便乗した各管区の武官などを乗せた

コスモシーガルは2機の護衛機を伴い東シナ海・日本海を東進していた。

長旅の疲れからか、輸送機客室内の面々は警備の者を除く大半が俯き、船を漕いでいる。

芹沢もまた、シートに身体を預け目を閉じていた……が、不意に眼を開き安眠から帰還。

喉の乾きを感じた彼は、懐からタブレット錠剤のパックを取り出して

錠剤を口に放り込んだ。

そして自らの手帳を開いて視察行を振り返る。

 

 

芹沢は視察行において各管区の部隊の状況をチェックする傍らで

各管区の要人と接触を図った。彼は以前の「地球連邦建設策定サミット」において

目を付けた人物ら全員と面会を果たしていたのだ。

 

東南アジア管区で、

芹沢は東南亜管区の軍務局長・防衛軍の地上部隊総司令官に内定している

プラヤー・パノムヨン大将に面会し、新防衛軍における防空戦略についてを論議した。

 

オセアニア管区では

チャールズ・C・エバット外交部長とそう遠くない先に接触を図ってくる

大ガミラス帝国との外交関係をどのように構築していくべきかを語らった。

 

南米管区においては

防衛軍の宇宙艦隊総司令官をポストとして用意されている闘将パウロ・タナカ提督と

防衛軍宇宙艦隊の再建計画と運用方針についてを話し合った。

 

北ユーラシア管区のモスクワ地下都市ではスヴォーロフ次期連邦資源生産局次官と会い、

彼から鉱物資源の埋蔵量と今後の生産の見通しについてを説明され、

問題点への対応策を共に策定。

 

地中海管区においては、芹沢自身が防衛軍発足後に上司として

共に仕事をする予定のブルーノ・プリエーゼ次期防衛軍統括司令長官・大将と会合し、

地中海管区到達以前に巡った各管区の軍部隊の状況を報告・今後の部隊の編成について

確認と論議を行い防衛軍移行後にスムーズな業務ができるよう土台作りを図った。

 

続く北アフリカ管区で訪ねたムアンマル・ユーニス=ジャーベル准将に至っては、

予め同管区での参謀本部での職を防衛軍発足まで休職扱いにして貰う算段まで付けて

芹沢一行に同道し、現在も芹沢が乗るコスモシーガルに同乗している。

目的としては、防衛軍の本部が置かれるであろう極東管区に一足早く移動し

早急にパイプを作っておき円滑に仕事のできる環境を作ろうという

芹沢と同じような思想から来たものだった。

 

南アフリカ管区における視察行では、

同管区の若手ホープである次期物資配給局次官に内定した、A・カビラ現物資配給部長と

連邦体制下で南ア管区の行政次官に昇進するF・ボガンダ情報部長と

管区ごとの内政と物資から視た防衛軍駐屯部隊のあり方について意見を戦わせた。

 

中東管区の面会相手は連邦の資源生産局計画部長に就く予定の

現工業生産部長ハサン・アル=アディーブで、

主に現有艦艇や航空機の修復やそれに伴う補修部品の生産を議題として展望を訊いた。

 

最後に訪れた南アジア管区では

ジャワハルラール・デーサーイー次期厚生労働局長官と対談し、

極東管区の森田製薬が(芹沢の手引きがあって)遊星爆弾症候群の治療薬を

完成させつつあることを秘密裏に明かし、

医薬品生産や医療現場に対応させる準備を始めさせるようアドバイスした。

 

 

こうして芹沢は2200年の暮れを地球一周視察行に費やしたわけだが、

その結果は厳しい芹沢当人をして高得点をつけ得るレベルの成功度であった。

自身が目をつけられるほど明らかに優秀な人材と面識を得た上、

その彼らの行動の方向性を自身が望むように、地球連邦にとって一層有利に働くように

コントロール出来たことになるのだ。

彼は自身の持つ次期防衛軍統括副司令という肩書きに加え、

未来視によって得た知識による情報的優位、それを提案として話す際に

「ヤマトがガミラスから得た」というフェイクを極東管区の軍高官という

立ち位置から混ぜやすいことなどをフル活用してこのコネづくり計画に臨んだのだから、

いわば当然の結果だとも言えた。

 

 

機上の人である芹沢の心中は、大満足である。

目的をすべて達成した上、副産物として各管区の技術部に

自分の推し進めさせている無人機や新型艦艇の研究に協力の確約も取り付けたのだから。

芹沢は自分のメモの、筆記してある最後のページに行き着くと、

ほっと一息をつき力を抜いた。

 

 

 

 

時刻は12月20日 1300時。

冬の陽光が降り注ぐ中、旧近畿地方の地下都市出口近くに置かれた仮説飛行場に

ついに芹沢らが乗るコスモシーガルが着陸しようとしていた。

地上の管制と誘導に従い、整地された地表を特殊パネルで覆った仮置きの滑走路に

97式輸送機は降下していく。VTOL機である同機種はエンジンの轟音を周囲に響かせ、

指定場所へと垂直に降り立った。

このコスモシーガルは各地において給油や整備を時々に受けつつ、

無事芹沢を地球一周させたのだった。

 

 

「………久々だな。やはり、ずいぶんと冷えたようだ。」

 

 

コスモシーガルから降機する芹沢。再び極東管区の大地に立つ。

12月も半ばを過ぎ、日本列島はすっかり冷え込んでいる。

そのため芹沢をはじめとした一行はみな上着を羽織って基地の建物に移動した。

 

 

「ご無事のご帰還、何よりであります、芹沢閣下。」

 

「うむ、出迎えにわざわざご苦労。」

 

 

基地で待っていたのは、芹沢が留守を任せた井上玄三宙将補であった。

井上は見事な敬礼で軍務局長一行を迎え、

武官が多い一行もまた、格式高い答礼を行った。

 

「……井上君、互いに積もる話はあるようだが、

 地下に降りる前に地上で済ませておきたいことがある。

 君は同道してくれた各管区からの客人たちを先に我が極東管区の地下都市に案内してくれまいか。」

 

「わかりました。では、後程。」

 

「すまんな」

 

 

芹沢は、井上にジャーベル准将を始めとした同行者たちを

地下都市に先行させるよう頼むと、秘書官と護衛をつれて再び建物の外へと向かう。

 

飛行場では、コスモシーガルの後に着陸した護衛役のコスモファルコンの整備・補給に

人が動き回っていた。その飛行場の片隅に、装輪式の車両が停車しているのが

芹沢らの視界に入ってきた。どうやら車両は芹沢を待っていたようだ。

車両の傍らには人影があり、それは芹沢のよく知る人間の物だった。

 

 

「…お待ちしておりました、閣下。」

 

「寒い中、本当にご苦労だった。早速だが頼むぞ。」

 

「了解!」

 

人影の正体は、国連極東管区軍所属で土木工事などを専門分野とする

国連軍二等宙佐・下村光次郎。

彼は帰還直前の芹沢から、個人的な依頼によって呼び出されていたのである。

 

芹沢、下村、秘書官と護衛の計5人は車両へ乗り込むと、

下村がハンドルをとり運転をはじめた。

舗装が所々までしか進んでいない悪路を走る車両。

揺れるためシートベルトをつけている芹沢らも時折尻が浮く。

こうした道を数十分も走ると、車両は突然開けた区域へと出た。

 

 

「……おぉ……ここまで進んでいたか……」

 

芹沢は、目に映る景色に息を呑んだ。

開けた区画は、車両のハンドルを握る下村が指揮官として森林の開拓に勤しんでいた、

地表への復員の前進基地であった。

既に策定されていた広さの区画の整地は完了した上、地下都市の集合住宅を解体し

それを移設する形で居住施設の建設が行われていた。

当然ながら、インフラの整備も済んでいるようだ。

 

車両を停めさせた芹沢は降車し、窓を隔てずに復員基地を眺める。

だが、その瞳にはそれだけでなくこれから建設されるメガロポリスや、

ガトランティスとの戦乱を乗り越えた先に建設されるであろう

まだ見ぬ都市の情景が幻視されていた。

 

 

……それから数分後、芹沢は下村の方へ振り返った。

その表情は不敵にも険しくも見える。

眼差しは、未来像を望むものから、直前の厳しい現実を鋭く見据える物へ変わっていた。

 

「……ようやくだが、まだまだだ。」

 

「はっ!」

 

「忙しくなるぞ、下村二佐」

 

芹沢の言葉に、下村は身震いした。

自分の想像は正しく、自分はこれから地球の未来に関わる重要事項に

携わることになることを確信したのだ。

 

芹沢は身を翻し車内へと戻っていく。

 

西暦2200年も大詰め、12月20日。

次期防衛軍統括副司令官にして、現国連軍極東管区軍務局長・芹沢虎鉄。

彼は新連邦の主と所在地にして、自らのホームグラウンドへ帰還した。

地球人類防衛の決意も新たに――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その同時刻。

 

地球から、16万8000光年の彼方にて。

 

 

 

奏でられる勇壮な音楽。

 

 

《 蒼き花咲く大地 気高き我が故郷よ 》

 

 

歓声が沸き起こる。

 

 

《 響け歓喜の歌 神の加護は我らと共に在り続けん 》

 

 

集った大衆は、今しがた空へと飛翔した船を見上げる。

 

 

《 ガーレ・ガミロン! 讃えよ祖国の勝利を 》

 

 

内殻の空から外殻の穴を通り、遥かな宙へと旅立つ船。

 

 

《 気高きは勝利の意思 示せあまねく宇宙に 》

 

 

禿頭の首相も、天真な皇女も、紅毛のエースも、老練な提督も船を見上げる。

 

 

《 理想貫く愛 神の加護は我らと共に在り続けん 》

 

 

その眼差しには一様に期待と、不安が入り交じる。

 

 

《 ガーレ・フェゼロン! 誇りある鋼の国家 》

 

 

この日。

 

共和制ガミラスは、

地球との正式な終戦と友好条約締結を目的とした外交団を送り出した。

 

 

 

 

 





追記・2023年1月17日位置変更。
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